ジダン 仏TVに出演
2006年7月13日
ワールドカップ決勝戦で相手選手に頭突きをして退場になったフランス代表のジダンがフランスのTV番組に出演し、事件の経緯について説明した。注目されたマテラッツィの発言の中身については、「母と姉を侮辱するものだった」と述べたが、具体的な言葉については明らかにしなかったという。
以前フランスのプロフィギュアスケーター、フィリップ・キャンデローロさんが番組内で荒川静香さんを侮辱する発言をしたとしてフランスTV局が謝罪したというニュースが伝えられた時は、私はキャンデローロさんが荒川さんに悪意をもって侮辱したという可能性はほとんどないと考えて気にも留めなかったが、今回は問題のシーンを見てマテラッツィの発言の内容に極めて深刻なものがあった可能性が高いとみて成り行きを注視していた。ジダンの両親がアルジェリア出身であることに関わるものであったのではないかという憶測が流れていたが、今回のジダン自身による説明ではその点は明らかにされなかった。ただ母親と姉が侮辱の対象になったということは女性蔑視とも見做され得るものだった可能性もあり、真相解明が求められる。
マテラッツィも侮辱したこと自体は認めており、侮辱行為もFIFAによる制裁の対象になるので、彼にも何らかの処罰が下されることになるだろう。発言の内容によってはジダンよりもさらに重い処分が必要になる。FIFAはこの問題に関心をもっており、調査を行うという声明を発しているので厳正な調査が行われることを期待したい。ジダンに与えられたMVPを剥奪する可能性も示唆されているが、場合によってはマテラッツィのPK戦におけるゴールの認定を取り消して、フランスの5人目の選手からPK戦をやり直す、といった措置も視野に入れるべきだと思う。
口頭でのやりとりなので事態を正確に把握できているのは当事者二人だけという可能性もあり、真相究明には困難も予想されるが、世界中が見守る中で起きた事件なので十分納得のいく結論が導き出されて欲しいものだ。引き続きこの件には注目していきたい。
追記:
中東調査会上席研究員の大野元裕氏がこの件について解説記事を寄稿されている。
マテラッツィはジダンによる説明の一部を事実上認める発言をしたらしい。
FIFAはこの問題について20日に開かれる規律委員会にジダン、マテラッツィの両者を呼んで聴取すると発表した。
コメント
セリエAではあたりまえの心理的口撃のようですね。
事が大きいので、言った 言わないで終わらせてはいけないと思います。
-> アキラさん
汚い言葉を浴びせて挑発するというのはごく普通に行われているようですね。それに乗ってしまったら負け、ということなのでしょう。
ただ今回は単に「汚い」というだけで済むような言葉だったのかどうかが焦点になりますね。うやむやにならず、はっきりとした結論が出ることを望みたいです。世界一大きなスポーツの祭典であるサッカーワールドカップの決勝戦でこのような問題が生じてしまったというのはスポーツファンとして悲しいことです。
マテラツィが何を言ったのか。ジダンも、勿論マテラツィも、まだ正確には明らかにしていないようです。ただ、イタリア語の読唇できる人の言葉がネット上を流れているようです。それは、「あんたは**の息子」と言ったという。もしそうだとすると、母がどうのこうのと直接言っていないにしても、本人だけじゃなく、ファミリーを侮辱したことになるんだろうな。
「私は男」だから頭突きをやってしまった言った、そのジダンの言葉がひっかかります。ひとりのスポーツマンである前に、ファミリーの長たる「男」なんだと言っているのじゃないかな。
-> シーン2さん
おひさしぶりです。こちらでは初コメントですね。今後ともよろしくお願いします。
読唇術というのがどの程度信頼できるものなのかわかりませんが、ジダンが「彼が何を言ったかは唇の動きを見ればわかるだろう」とインタビューに応えているようなので、報道されている内容は概ね合っていると言いたかったのかも知れませんね。FIFAは水面下でジダンから文書による報告を受けていて、マテラツィ発言の中身について把握しているらしい、という情報もあるようです。
ジダンの行動は決して許されるものではありませんが、移民の息子として背負ってきたであろう悲しみを思うと、軽々に非難できるものでもないように思います。
sergeiさん、HP開設おめでとう!!!(挨拶が遅くなりました)
マテラツィの暴言の読唇は、この記事で知りました。
http://news.bbc.co.uk/sport2/hi/football/world_cup_2006/5168126.stm
ジダンの頭突き写真の下(「BBC Radio Five Live」の下)
Jessica Reesさんの読唇内容が書かれています。
英語にすると"you're the son of a terrorist whore"と言ったとのこと。
(先のコメントを訂正します。マテラツィが英/伊のどちらの言葉で暴言したのか私にはわかりません。)
私も、サッカーファンとして、試合中の暴力が許されるとは思いません(ジダンもそう考えている)。
だけど、人としてのプライドを持ち、家族を愛する人として、ジダンの行為は当然と思うタイプの人間です。
特に、日本以外の外に目を向けると、
つまりイスラム教徒に限らず、まず家族を大切にする主義の人のことを思うと、
セリエAとかJリーグがグローバルであるためには、試合中の暴言は許さない、つまり試合中の暴力と同じ制裁をして当然と思います。
つまり、私はジダンと全く同じ考えなんですね。
-> シーン2さん
祝辞をありがとうございます。またいろんな話で盛り上がりましょう。
日本のメディアでも読唇術の結果は報道されていましたが、この記事がネタ元だったのですね。Jessicaさんが読み取った音をそのままイタリア語通訳に伝えて、通訳が英語に訳したようなのでマテラツィの発言はイタリア語だと思われます。
私はマテラツィの発言がいかに悪質であったとしても、ジダンの行為を容認してしまうのには慎重であった方がいいと思っています。ただ、自分がジダンの立場だったとしたら、と考えるとやはり自制しきれずに同じことをしてしまったかも知れない、とも思い、彼を責めることにはためらいを感じてしまいます。
言葉による暴力は時には身体的暴力よりもっと酷く相手を傷つける行為ですから、私もFIFA、セリエA、Jリーグともに、そうした発言には毅然たる態度をとって欲しいと思います。
マテラツィとは比べようがない、しょぼい私の懺悔を。。。
私は機嫌が悪くなると、つい、口走ってしまいます。「バカ!」
悪い口癖ですね。これで私は大失敗しました。それは。。。
日本語がわかる外国人の前で、つい、小さな声で口走ってしまった。聞き逃されることはなかった。
怒られましたよ、そりゃ、えらい剣幕で。
だから、マテラツィも少しだけわかるような気がします。
イタリアでは「プッターナ」(売春婦)という言葉が頻繁に使われる。「プッターナ」の名のついた料理さえある。
そんなイタリ人と比べて、イタリア語が解るフランス人の方が敏感なんですね。その侮辱の言葉に。
みなさんも気を付けてくださいね。日本語のわかる外国人に、じゃなくて、自分の何気ない言葉の暴力に。。。私も思い出し反省してます。
アキラさんのコメントの意味もわかります。
-> シーン2さん
貴重な体験談、ありがとうございます。母国語として日本語を話す人なら「バカ」という言葉には無限のニュアンスがありうるということを知っていますが、外国人には文字通りに受け取られてしまうのでしょうね。今回の件もジダンがイタリア語のわかるフランス人であるということが問題をより複雑にしてしまっているのかも知れませんね。
本当に言葉というのは大事に使わないといけませんね。私も日常生活はもちろん、ネット上でも気をつけたいと思います。
sergeiさん
私ばかり話題を続けることになって恐縮です。どうしても気にかかる話題なので。
情報(誤報や、個人的な憶測に過ぎないもの)が溢れる中で、 sergeiさんの情報提供はいつもぶれが少なく信用度が高いです。感心します。今回の情報も、かなり多くの情報を読まれた上で信憑性のより高そうな情報を選び、それに基づいて書き込みされたと認識しています。
私の方は、最近、特にスポーツ選手とスポーツファンの心(同じ方向をむくときもあれば全く逆の方向を向くこともある)をよくわかっていなかったな、と自分のことを思うときが多々あります。
ジダンよ、一流のスポーツマンだろ、しかもW杯のファイナルだろ、わかっていてどうして最後までコントロールできなかったんだよ、という気持ちと、
ジダンよ、人として当然の行為だよ、私も同じことをしたよ、という気持ちが交錯して、今回は特に複雑です。
サッカーに愛情を持っているほど、前者の気持ちの人が多いと思うし、特にセリエAを知っている人ほど、暴言は日常だしジダンもセリエ
Aで5年もプレーしていたからよく知っていたはずだ、と感じるはずです。
実際、ジダンはあの試合で何度も自制を働かせ、警告を受けない程度の荒いプレーで反撃したり、ジョーク(後でシャツをあげるよ)を飛ばしたり、無視したり(一般に無視が最高の逆襲)、とあまり問題ない範囲で応酬してました。
それでも最後に頭突きをしてしまったのはなぜか、と考えると、ここからは私の個人的な憶測ですが、「死んでしまえ」を意味する言葉、軽い気持ちでよくいってしまう「くたばれ」ですね、が彼の感情の逆鱗に触れてしまったのではないかな。Jessica Reesさんの読唇結果には入っていませんが、何回も誹謗の言葉を浴びせたあと「くたばれ」と言ったという記事が多かった。
私の方こそ、感情の乱れをいまだ抑えられないでいますが、それでは、このへんでコメントをやめにしておきます。
-> シーン2さん
たくさんのコメントありがとうございます。こういう繊細な問題では不確かな憶測を元に判断せず、確度の高い情報の収集に神経を使わなくてはいけませんよね。前のエントリーで言及したジダンの親族の「証言」も結局根拠のない憶測でしかなかったようですね。NHKのニュースで取り上げるくらいだから大丈夫だろうと思いすぐに書いてしまったのですが、少し拙速だったかな、と反省しています。
つい最近も(全く別の話題に関してですが)ネット上の怪情報に振り回されるという失態を演じてしまいました。本当に情報の取捨選択には気をつけなければいけないと自戒しています。
この件についてのニュースには慎重に目配りしているつもりですが、シーン2さんのように海外メディアによる外国語の記事まではチェックしていませんでした。シーン2さんこそよく目が行き届いているなぁ、と感心しておりました。
マテラツィはすでにFIFAによる事情聴取を済ませていて、ごくありふれた売り言葉に過ぎない、という弁明をしたようですね。シーン2さんご指摘の通り、イタリアでは特に問題になるような表現ではないのに、フランス人であるジダンが必要以上に深刻に受け取ったのが原因ということを示唆しているようです。
それも確かにあり得ることだ、と思う一方、腑に落ちない思いも払拭できません。セリエAでプレーした経験もあり、いくらかっとなりやすい性格とはいえ、地位も名声もある大人の男があんな切れ方をするのだから、単なる「売り言葉」では済まない内容だったのでは、という疑念がどうしても残りますね。
20日に行われるというジダンの事情聴取と、それを受けて下されるFIFAの決定が注目されます。