亀田興毅の世界戦について思うこと

2006年8月11日

このブログを開設するにあたっては音楽の話題をメインに更新するつもりでいて、スポーツについてはフィギュアスケートなどの話題を音楽に絡めて紹介し、ほかに気になる出来事があればそれについても少しふれることにしよう、というくらいの気持ちでいた。ところがいざ始めてみるとスポーツ界でいろんなことがありすぎて音楽どころではないような状況が続いてしまった。実際のところ私はスポーツは昔から好きだったけど音楽について関心を深めるようになったのは比較的最近のことなので、スポーツの話題の方が無理せず楽に語ることができるのだ。それでも音楽をメインにしようと思ったのはそうすることが音楽についての勉強に励みになるし、ほかの方からいろいろと教えていただくこともできるのでは、と考えてのことだった。しかしそのスポーツ界の出来事というのがスポーツの理念を根底から揺るがすようなものだったので書かずにはいられなくなってしまったのだ。

亀田興毅の世界戦も記事にするつもりはなく楽な気持ちでみていたのだけど、あの判定を見たら書かないわけにはいかなくなってしまった。あれから少し時間が経ったが自分の気持ちを整理するためにも今思うところを書いておこうと思う。こんなところで論じてみたからといって何がどうなるというわけでもないだろうけど。


なお、この話題は深く知ろうとすると暗澹とした気分にさせられてしまうこと請け合いなので関心のない方は読み飛ばして下さい。


あの試合について論じるとはいっても私はTV局やボクシング界の裏事情などについて知りうる立場にはないので、真相究明といったようなことはもっと詳しい方に譲ることにして、あくまで私が直接知り得たことだけに基づくことにしたい。


まずはあの判定のことだがあれはどう見てもまともな代物ではない。少なくとも私は試合終了時点で倒されずに立っていたことを称賛してやろうと思っていた選手が判定で勝利をおさめた試合などこれまで見たことがない。一部では「ラウンドマストシステム」を理由に正当化しようという議論もあるが全く当を得ていない。ダウンのあった1Rを10-8とし、最後の二つのラウンドを10-9とすれば、残りのほぼ互格だった九つのラウンドのうち七つを亀田につけなければ逆転できないことになる。こんなことは亀田を勝たせようという意図がはたらかなければあり得ないことではないか。(あまり他の人は問題にしていないけど私は4Rもはっきりとしたランダエタのラウンドだったと思っているのだが、そのことは議論を徒らに煩雑にするだけなのでひとまずおくことにする。)それにキムジャッジは最終ラウンドを亀田につけているのだ。彼がこのラウンドをランダエタにつけていれば試合はドローになっていたはずなのである。

なぜこんなアンフェアな判定がなされたのかについては上に述べた通り私は知る立場にないので憶測で語ることは避けたいと思う。しかしこの判定がTV局、所属ジム、WBA、JBCにとって都合のいいものであったことは確かである。


一方でこの件が亀田バッシングの様相を呈してしまっているのには違和感を覚える。彼の特異なキャラクターはあくまでプロモーションの一環として演出されているものであり、格闘技の選手としては特に問題になることではない。もちろん個性の強い彼のキャラクターには熱狂的なファンがいる一方で嫌悪を感じる人がいるのは無理もないことだし、それに対して批判を行うのも結構なことだ。しかしそれは今回のタイトルマッチでのアンフェアな判定とは別個の問題なのである。免許を受けて公共の電波を預かる立場のTV局を含む大手企業が彼を強引にスターに仕立て上げることで利益を貪ろうとした問題と、亀田興毅の個人的な好き嫌いとが混同されていいはずはない。彼が疑惑の判定でチャンピオンの座を手にしたからといって彼個人への感情的な憎悪をぶちまけることは問題の本質を曖昧にするだけのことだ。

先日TV朝日で興毅の父史郎氏とやくみつる氏の対決があり大きな反響を呼んだようだ。私は見ていなかったのだけど、伝え聞くところではやく氏は判定の正当性については問題にせず、亀田親子の傲慢な態度について糾弾したそうだ。これでは何の問題解決にもならない。教育論をたたかわせたいのなら世界戦の前にだってできたはずだ。今問題なのは彼の人気によって生ずる利益のためにスポーツにとって最も大切なことが蔑ろにされたかも知れないということなのだ。興毅の無礼な態度が許されるかどうかについては別の機会に議論したらいい。


私自身はどうかというと特にファンでもなければアンチというわけでもない。ただ彼の存在がボクシング人気の復活につながればいいという気持ちで見守っていた。私はまだ19歳の格闘技選手が変にお行儀がよかったら却って気持ち悪いと感じてしまう方なので無礼だとか傲慢だとかいったことはあまり気にならない。もちろん嫌いだという人の気持ちもよくわかるけど。

それよりも気になるのは彼とややキャラクターの似ている辰吉丈一郎が一見頭が弱そうに見えても自己イメージをセルフプロデュースするだけの才覚を備えていたのに対し、彼の場合は単に周囲の大人達に踊らされているだけのように見えることだ。今回の試合でまともな判定が下されていれば自分を見つめ直すいい機会になったはずなのだが、勝ってしまったことで却って彼にとって困難な状況に追い込まれてしまったのではないだろうか。


最後にこの件について考える上で参考になった記事を紹介しておきたい。

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コメント

sergeiさん、こんばんは。
過日はMy Blogにいらしてくださりありがとうございました。
亀田の判定に関しては、あれだけの抗議があったのですから
不自然な点が多かったのだろうと思います。
サッカーも同様、判定も試合内容も"きちんと正確に"が
大事ですよね。

ヤッホ〜〜〜、sergeiさん!!!
おひさで〜〜〜す(^^♪
実は、僕もボクシングやってました。
亀の実力はすんごっいすよ!
でも、今度の世界戦は、亀の負けっす!!!
負けは負けでいいんっすよ、まじ。
オシム監督の言葉染みますよね!「負けは最大の教師!」
もし、先のW杯で日本が勝たしてもらったら、その時点で日本サッカーの将来は丸つぶれです!
亀は負けるべだった、挫折を知らない亀は早晩転落しますヨ〜〜〜!!
世界はそんなに甘くも、狭くもない、しーちゃんに聞いてみろって!!!

-> fuさん

お名前が空欄になっていますが、URLから察するにfuさんですよね。ようこそお越し下さいました♪

みんなが注目する中での出来事でしたので大騒ぎになってしまいましたね。スポーツはやはり場外での騒ぎではなく、競技そのもので楽しませて欲しいですね。

またよかったらお越し下さいませ。

-> 風の又三郎さん

何と、ボクシング経験者だったのですか!! やわらかな物言いに似合わず、実は強い男だったのですね!

経験者から見てもあの判定はおかしいと聞いてほっとしました。経験者だからなおさらおかしいと感じるという方が正確でしょうか。亀田はまだ若いし、負けてもそれをバネにして伸びていけるはずなのにこんなことになって本当に残念ですね。全くオシムの言う通りですよね。

サッカーワールドカップ、日本は負けを認識することからはじめなければ将来はない、亀田も同じですよね。19歳にして不幸な十字架を背負ってしまった彼の将来が気にかかります。

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