N響アワー シューマン夫妻の音楽

2006年9月10日

今日のN響アワーはロベルト・シューマン没後150年を記念してシューマン夫妻の特集。ロベルト・シューマンはドイツロマン派を代表する作曲家だが、妻のクララも当時を代表する名ピアニストであり、作曲家として作品も残している。クララは今でこそ「ロベルト・シューマンの妻」になってしまったが当時は夫以上に盛名を馳せており、彼女の演奏旅行に夫が同行した際には鞄持ちと間違えられたこともあったらしい。

二人の名声が逆転してしまったのは、一つにはクララが女性であることも原因だろうが、作曲家には後世にスコアを残すことが可能だが当時の演奏家には演奏を残すことができなかったということも大きな理由だろう。生前は評価の定まっていなかったロベルトがほかならぬクララの尽力によって大作曲家として認知されるようになったのに対し、今日クララの演奏がどのようなものであったのかは誰も知ることができないのだ。

しかし残された作品は彼女の芸風を窺知する上で重要な資料となり得るだろう。私はピアノ独奏曲を集めたCDを持っているのだが、いかにも音楽と夫への愛に生きたクララらしい、清楚なロマンティシズムを感じさせる佳品がそろっている。作曲家としてはロベルトほどの独創性には欠けるようにも思われるが、この類稀な芸術家の真の姿がよく理解されるようになるためにもこうした作品により光が当てられるようになるといいと思う。

今日はそのクララのピアノ協奏曲が聴けるというので楽しみにしていたのだけど第3楽章だけのダイジェストで少し肩透かしを食ったような気分になった。ロベルトの交響曲第1番は全曲が放送されたので、やはりこの二人の認知度には差があるのだなと感じてしまう。

演奏は現在ロベルトの全曲録音に取り組んでいることで知られる伊藤恵さん。22年前のインタビューではクララのような女性になりたいと語っており、この作品には打ってつけの人選だろう。テクニックの切れの甘さを感じさせるところもあったが、この夫妻への共感の込められた丁寧な演奏だったと思う。

第3楽章だけなので曲の全貌はわからないが、やはりクララの内面の美しさ、やさしさを感じさせるような佳曲だと思った。これからは演奏の機会も増えていくのではないだろうか。

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コメント

こんにちは。先日は情報有難うございました。
まだまだリンク増えそうです。が、ちょっと最近忙しくしておりまして、更新は秋の終わりくらいになるかもですが。。

クララ・シューマンといえば「哀愁のトロイメライ」という映画を思い出します。学生時代ナスターシャ・キンスキーが好きで、彼女主演の映画は手当たり次第見ていたのですが、映画の内容自体てんで思い出せませんがクララ役のナタキン(死語)は恐ろしいほどにべっぴんでした。

クラシックに関してはそんなに詳しく無いですがピアノ曲やヴァイオリンの曲はわりと好きでエレキギターの速弾きの練習曲にも最適なものが多いのでCD買いあさってた時期がありました。だからクラシックのCDは割と持ってます。
ロックの視点から見たクラシックはすごい新鮮で複雑で、摩訶不思議な発想で作られていて、流行りの音楽なんかよりよっぽどクレイジーで自由奔放だと感じます。僕のお気に入りであるショスタコーヴィチの作品は下手なプログレ音楽より断然聞きごたえありますし。
とにかくかっちょいいジャンルなんで、もっと若い人とかもクラシック聞いて硬い脳みそをぐちゃぐちゃに掻き混ぜたほうがいいと思いますですね。

すみません熱くなってしまいまして。

-> REBIRTHさん

こんにちは! 熱いコメントありがとうございます。

サイト運営ご苦労さまです。どうぞ時間と労力に余裕のある時に作業なさって下さいね。

ナスターシャ・キンスキーがクララを演じたことがあるんですね。知りませんでした。クララは夫への愛に動機づけられながら音楽に取り組んだ才能ある女性ということで、どんな人だったのかとても興味があります。作品が取り上げられる機会が増えて実像がもっとよく知られるようになるといいな、と思っています。

ロックって意外にクラシックから強い影響を受けているんですよね。私はプログレというジャンルがクラシック志向が強いとか、イングヴェイ・マルムスティーン等の速弾きギタリスト達がバッハやパガニーニから影響を受けているといったことは知識として知ってはいるのですが、あまりよく理解できていないんですよね。もっとロックについて知らないといけないですね。

ショスタコーヴィチがお好きなんですね! 私も現代音楽は基本的に苦手なのですがショスタコーヴィチだけは例外的に愛好しています。いろいろとこみいったことをやってはいても、その底流にはチャイコフスキーやラフマニノフに連なるロシア音楽特有の哀愁を帯びたロマンティシズムが流れているのを感じることができるような気がするんですよね。体制からの圧力と芸術家としての信念の間で苦悩しながら創作を続けた不屈の意志にも敬意を抱いています。

ロックとかクラシックとかジャンルにとらわれずにいつも開かれた心で音楽と接していたいですね。

そかそか、ショスタコーヴィチは現代音楽ってことになるんですね。
苦悶にゆがむショスタコーヴィチの顔も魅力的ですよね。

イングヴェイはネオクラシカルというジャンルを確立した偉大な人ですが演奏がいささか感覚的かつワンパターンでして、、それに天才(自称)であるがゆえ性格的にも難ありますね。構築美を追求していた初期のアルバムがおススメです。
ネオ・クラシカルではインペリテリってギタリストのプレイもストイックで凄いです。他にシンフォニーXとかアングラ、アダージョ、キャメロットなんかがいいアルバム作ってます。
あ、上に挙げたのは本当に素晴らしいアーチストですが基本ヘビーメタルですから注意!ですー。

-> REBIRTHさん

正確にはどこからどこまでを「現代音楽」と呼べばいいのかは私もよくわかっていません。私としては乱雑にラフマニノフよりも後の作曲家はおしなべて「現代音楽」と理解してしまっています。^ ^

イングヴェイが開拓したジャンルは「ネオクラシカル」というんですね。ほかに挙げて下さったアーティストの名前は知りませんでした。ご教示ありがとうございます。でもヘヴィメタルと聞いてちょっと尻込み…。「アダージョ」なんて癒しを求めて聴いてみたら驚かされてしまうかも知れませんね。

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