ジャンプの見分け方 フリップ

2006年10月15日

ジャンプの見分け方、今回はフリップを取り上げることにする。いつもの通り反時計回りの回転をする選手の場合について説明する。時計回りの回転をする選手の場合は全て右と左が逆になることを念頭に置いて読んでいただきたい。


フリップは左足のインサイドで後ろ向きに滑りながら右足のトウを突いて踏み切るジャンプである。前回説明したルッツとは左足のエッジがインかアウトかの違いしかない。ルッツは助走の描く曲線がジャンプの回転とは逆のカーブになるために難しいとされているのだが、フリップは左足のエッジがインであるため助走のカーブはジャンプの回転と同じ向きになり、ルッツより易しいとされている。ただ両足の前後の関係はルッツと同じであるため、ルッツに次いで難度の高いジャンプである。

ルッツと最も大きく異なるのは助走にターンを組み込むことができる点である。ルッツの場合は後ろ向きのままでの長い助走を必要とするが、フリップは直前にジャンプの回転と同じ向きのターンをするとちょうど左足のインサイドのエッジに乗ることができるので、多くの場合ターンをしながらその回転の慣性を利用してジャンプに移るのが普通である。したがってルッツとは異なり、前後の振り付けの動きを途切れさせることなくプログラムに組み込むことができるのがこのジャンプの特徴である。


6種類のジャンプの中で最も見た目に美しいのは何か、というのは主観的要素に依存するので一概に規定することはできないが、私の好みとしてはこのフリップが最も見映えのするジャンプではないかと思っている。両足の前後の関係からトウループやサルコウよりも実質的な回転数が多くダイナミックな印象を受けること、ルッツと異なりジャンプ以外の踊りの部分と自然につなぐことができる点などがその理由である。

時々エキシビションでルッツに挑戦して失敗する選手を見かけるのだけど、個人的にはそんな訳でルッツよりもフリップを跳んで欲しいと思っている。真っ直ぐな助走でルッツを跳ぶよりも、ステップやターンを織り交ぜながらフリップを跳んだ方が見た目にはずっと美しく見えるからだ。もちろん、こうしたことは全くの好みの問題ではあるけれど。


見分ける際のポイントはまずは右足でトウを突いて踏み切ること。そしてもう一つは同じく右足のトウを突くルッツとは助走路の描く曲線の向きが逆になることである。ルッツは後ろ向きの長い助走を必要とし、ステップを踏むことはあってもターンが入ることはないのに対し、フリップの場合はほとんど必ずジャンプの回転と同じ向きのターンをしながら踏み切るのでそこで区別ができる。

踏み切りの際トウを突くことと振り付けの流れの中でそのままジャンプに移行する点が共通することからトウループとの区別が難しいと感じる人も多いようだ。しかしフリップはトウループとは逆の足のトウを突くので注意して見ていれば区別は可能である。またトウループよりも実質的な回転数がやや多いのでよりダイナミックに見えるのも特徴である。

まとめ:フリップの見分け方

  1. 左足のインサイドで後ろ向きに滑りながら右足のトウを突いて踏み切る。
  2. ルッツ、トウループとともに3種類のトウジャンプの一種。
  3. ルッツとは異なり直前にほとんど必ずターンが入る。
  4. トウループとはトウを突く足が逆になる。
Figure skating_Jumps_Demonstration by Yukina Ota - YouTube
太田由希奈さんによる模範演技

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コメント

 フリップジャンプ、ダイナミックさと流れの良さがほどよくいいですね。
 回転方向が逆ですけど、カロリナ・コストナーの3回転フリップ-3回転トウループ-2回転ループの3連続ジャンプは、ダイナミックで流れがあって、お見事です。中野さんとは全く違う外人ゲイシャのコストナー、東京の世界選手権のフリーの演技、とっても楽しみにしてます。

-> やまぼうしさん

コストナーさんのユーロでの演技、動画で見たのですがトリノの時のように焦って跳び急いでいるような感じがなくて、落ち着いて自信を持って跳んでいるように見えました。この時の調子を維持できていれば世界選手権では台風の目になるかも知れませんね。中野さんと曲がかぶってしまったことが吉と出るか凶と出るか、興味深いところです。

古いエントリーですみません。昨シーズンの記事、思い出しました。

ルッツは ”)”の軌道を描いてから飛ぶジャンプが好きです。これはルッツの記事で1年前にお話してました。女子だと、陳露(Lu Chen)、佐藤有香、荒川静香。。。なんだか、今では見られなくなったジャンプばかりですが。いいなと思います。。。

フリップはというと、好きなジャンプが私はあまり思い浮かばないんだけど。このジャンプは別名”トゥサルコウ”なんだとおっしゃる方がいて、ヤグディンの昔の動画を見ていたら、綺麗だなと、思いました。フラットエッジ”|”から急にインエッジに切り換えて飛ぶんじゃなくて、インエッジのまま回転しながら踏み切るフリップ。今の女子でいうと、やっぱりコストナーや、ロシェットかな。

最近、ロングエッジ(e)の話題が沸騰していますよね。私もスロー再生して確認するという、おバカな事?をしばらくしていたんですが。。。やっぱり普通の速度で”楽しむ”のがいいですね。フィギュアの正しい見方?じゃないかくらいに思います。
飛ぶ瞬間のエッジがどちらなんだ?正しいか間違いか?という見方はつまらないし、それで点数が左右されるのもあまりよろしくないような気がしています。できれば、美しさを競って欲しい。

どうも、古き良き?ルッツやフリップを飛ぼうとすると、回転不足や着氷の乱れも起こしやすくなるので、飛ぶ直前にエッジだけイン・アウトにチョイと切り分ける選手が多くなったじゃないかなとも思います。美しい図形(フィギュア!)へ回帰してくんないかな、というのが最近の希望です。

-> やまぼうしさん

正しい見方ですか、それはやはりジャッジとファンとでは違うのではないでしょうかね。ジャッジがエッジの正確さを厳格に判定するのはいいことだと思いますよ。正確な技術は高い評価を受けて然るべきですし。でもファンがそれと一緒になってジャンプの時にエッジがインかアウトかを目を凝らして見るのはつまらないですよね。

特に女子の場合はルッツとフリップを正確に跳び分けるのはとても難しいんだな、と痛感させられますね。先日NHKでみどりさんの特集をやっていましたが、みどりさんが登場したせいで女子でも5種類のトリプルジャンプが必要ということになってしまったんですよね。一人の天才の登場が競技の性格そのものを変えてしまったという意味で、やはりみどりさんは偉大な選手だったんだなぁ、とひとしきり感慨にふけってしまいました。

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