NHK杯2006 エキシビション

2006年12月12日

感動のNHK杯から一週間。まだ書いていなかったエキシビションの感想を含めて少し振り返ってみたい。


一番驚いたのはベアトリサ・リャンさんの演技。試合では力強いスケーティングが印象的な彼女だが、エキシビションではしっとりとした曲に乗せて柔軟性をアピールした演技を見せてくれた。イナバウアー、シャーロットスパイラル、バレエジャンプなど、どれも十分に美しい技だった。こういう普段とは違った面を見ることができるのもエキシビションの楽しさだ。

浅田真央ちゃんはいつもの「ハバネラ」。フィリッパ・ジョルダーノさんによる癖のある歌唱といい、黒とショッキングピンクの衣裳といい、あまり真央ちゃんに似合うとは思えず、見ていて今一つ乗り切れなかった。アンコールで見せてくれた「ノクターン」の方がやはりしっくりとする。

村主章枝さんは「イパネマの娘」。衣裳や照明がボサノヴァの雰囲気と合わないような気がしたけど、村主さんらしくサービス精神一杯の演技。上着を一枚脱ぎ捨てたところでは客席の村主ファンが鼻血を噴き出す音が聞こえたような気がした。

私が一番よかったと思ったのは中野友加里さんの演技。得意のスピンを存分に堪能させてくれる構成でうっとりとなった。中野さんの清楚な美しさに惚れ直してしまった。


ほかに心に残ったのはやはり申&趙組の「My way」。おそらく今シーズンが最後となる彼らの決意が感じられるようで感慨深かった。この曲はフランク・シナトラ引退の噂を聞いたポール・アンカがシャンソンにオリジナルの英語詞をつけてはなむけに贈ったもの。シナトラはこの曲のヒットにより歌手として復帰を果たしたのだった。張&張組が昨シーズンにくらべやや精彩を欠いている現状では彼らはグランプリファイナルの優勝候補であり、このままいけば世界選手権でも覇者となる可能性は十分にある。あるいはひょっとして彼らもシナトラのように競技を続ける方向に気持ちが傾いていくこともあるかも知れない、そんなことを考えさせられるプログラムだった。


今大会の放送で多くの方が五十嵐文男さんが解説をされていないのを残念がっておられたけど、何と今年から競技本部長を務めておられたとのこと。より高い見地から大会運営を監督する立場に立たれたようで、これは五十嵐さんのために喜んで差し上げるべきことなのだろう。

五十嵐さんの解説はファンが専門家から何を聞きたいと思っているかを熟知した上で演技の合間に簡潔にコメントを挟み、決して鑑賞の妨げにならないよう気を配った、実に優れたものだった。選手に注ぐ眼差しも温かく、特にトリノオリンピックのエキシビションでスルツカヤさんを称えた言葉などは素晴らしかった。今後はあの解説を聞くことができないのは残念だけど、また違った立場からフィギュアスケートの発展に尽力して下さるのだと思う。(ただ実を言うと以前私が衣裳のセンスがどうしても好きになれない複数の選手について「この選手はいつも衣裳がいいですね」とコメントされているのを聞いて以来、審美的なセンスについてはあまり真に受けない方がいいのかな、と思いながら聞いていたのも事実なのだけど。)


放送についてはさすがにNHKは落ち着いて見られた。中でも実況の森中アナウンサーは素晴らしかったと思う。民放のアナウンサーはぜひあれを手本にして鑑賞の妨げにならない実況のあり方を研究して欲しい。というよりできることなら森中さんにTV朝日のアナウンス室まで出向いてレクチャーしていただきたいくらいだ。

その森中アナウンサー、印象的だったのはキム・チェファさんの演技の時、カメラが濱田美栄さんの姿をとらえる度に間髪を入れず「濱田コーチが…」と言及していたこと。きっと彼も田村岳斗さんや私と同じくあの方の美貌に心を奪われてしまった一人なのに違いない。


ほとんどのフィギュアスケートファンがそうだと思うけど、私も日本選手だけでなく外国選手にも熱い共感をこめて声援を贈ってきた一人。だからもしコストナーさんやゲデヴァニシヴィリさん、ランビエール選手などが出場し会心の演技をして表彰台の一角にくいこんだとしても、それはそれで心から祝福していたと思う。それでもやはり男女シングルで日本選手が表彰台を独占したのは感慨深い出来事だった。八木沼さんがジャンプで転ぶ度に心を傷めながら応援していた頃はこんな時が来るとは夢にも思わなかった。多くの方の長年の努力の結晶がこうした形で報われたのだと思う。国際大会としては外国からの参加選手の顔ぶれがやや寂しくなってしまったことの帰結とはいえ、たまにはこんなこともあっていいのではないかと思う。


最後に少し気になっていることを一つ。今回高橋大輔選手はSP、フリーともにストレートラインステップでレベル4を認定されていて、“世界一のステップ”の称号が伊達ではないことを証明してみせた。ところでまだほかのサイトで話題になっていないようなのだけど、実はカナダのパトリック・チャン選手もSPのサーキュラーステップでレベル4をもらっている。ステップでのレベル4認定はこれまでプルシェンコと高橋選手しかもらったことがないと聞いていたけど、彼が3人目の選手ということになるのだろうか。チャン選手のSPは地上波でもBSでも放送がなかったのだけど、どんなものだったのかぜひ見てみたかった。

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