「プロフェッショナル」大野和士さん出演
2007年1月25日
今日放送のNHK「プロフェッショナル」は指揮者の大野和士さんの特集だった。大野さんは現在国際的に活躍する日本人指揮者として小澤征爾さん、小林研一郎さん、佐渡裕さんらと並ぶ存在といっていいと思う。素顔はどんな人なのか知りたいと思っていたので楽しみに見た。
番組を見て受けた印象は情熱的で感性豊かな人、だった。もう少し知的でクールな感じの人かと勝手にイメージしていたのでやや意外だった。自分の音楽についての思いを熱く語り、周囲の人たちとの関係性をとても大切にする人のようだ。彼の名を一躍有名にしたのは2年前、パリでの公演でオーケストラのストライキという非常事態を、急遽オーケストラパートを3台のピアノに編曲して乗り切ったという快挙だった。この件も公演をキャンセルせずに実施したのはそのために準備してきた歌手たちや合唱団、ピアニストたちの努力を無駄にしたくなかったからと説明していた。
数年前にN響を指揮したベートーヴェンの第九を放送で見たことがあるのだけど、その演奏が細部にまで指揮者の意図を浸透させた精密な印象を受けるものだったので、かなり厳しくメンバーを指導するタイプの指揮者かと思っていたがそうではなかった。彼はオーケストラがいい音を出すのは「あなた弾きなさい」と指示を与えた時ではなく、メンバーが自分の弾きたい呼吸で音を出した時だ、と語っていた。演奏の細部にまで彼の意図が行き渡るのは決して力ずくでリードするのではなく、自分の音楽観を相手に伝わるまで情熱的に話すことによるもののようだ。
番組ではワグナーの「トリスタンとイゾルデ」の公演の準備の模様を放送していた。ヒロインのイゾルデ役のソプラノ歌手が突然気管支炎を起こし、リハーサルで大野さん自らがイゾルデのパートを歌う様子が紹介されていた。弾き振りというのはよくあるが"歌い振り"はなかなか見られるものではない。フランス語、ドイツ語、イタリア語、英語を自在に操る彼の今後のさらなる活躍が楽しみになる。
コメント
この番組は見なかったのですが、"歌い振り"とは興味深いですね。
指揮者は最低、ピアノとヴァイオリンはできないと務まらないらしい
ですが、歌も歌えるならそれは素晴らしいことです。
大野和士さんはあまり知らないですが、2年前のパリでの出来事と
いい最近の活躍といい、その実績からしても今注目に値する指揮者の
一人といっていいでしょうね。
毎週この番組は楽しみにしてるのですが、今回も大変面白かったです。
私は楽器専門で、オペラってほとんど見ないヒトなんですが
番組を見て大変興味を持ちました。
機会があればじっくり見てみたいです。
プロフェッショナルのサイトに、キャスターのコラムが毎回載ってるのをご存知でしたか?
http://www.nhk.or.jp/professional/column/070125/index.html
住吉さんの観察眼がホントにいいんですよね〜、今回も楽しく読みました。
テレビではわからないゲストの素顔がわかって面白いし。
大野さんはその場の空気を変えることの天才かもしれません。
-> にゃお10さん
とてもおもしろい番組でしたよ。sashaさんが教えて下さったページによるとカラオケがお好きなようで、それがこの"歌い振り"にも生かされたのでしょうね。そのうちリハーサルではなく本番でも歌うようになるのでしょうか?!
番組を見て今後ますます活躍が期待される指揮者だ、との確信を深めました。
-> sashaさん
この番組見るのは多分初めてだったと思うのですがとてもおもしろかったです。私もオペラにはあまり詳しくないのですが、「椿姫」前奏曲の解釈などとても興味深く見ていました。
番組のオフィシャルサイトは知りませんでした。ご教示ありがとうございます。
本当に放送だけからではわからないゲストの素顔を知ることができますね。大野さんが森さんの歌をお好きだというのもうれしかったです。指揮者としてオーケストラのメンバーや歌手たちからの信頼を得るための手腕の一端はこういうところにあるのでしょうね。
3月15日NHKプロフェッショナルで、大野氏が”おふくろさん”を例に
解説をした際に、スタジオからゲラゲラと笑い声が聞こえました。
大野氏が3回、詳しく語られましたが、その都度同じような声がありました。
誰が笑ったか、教えてください。
-> 有坂日出夫さん
はじめまして。コメントありがとうございます♪
15日の放送で大野さんが登場したのですか、知りませんでした。どうもここ数日このエントリーへのアクセスが多いな、と思っていたらそういうことだったのですね。
1月に放送された際には「おふくろさん」の場面は一切オンエアされなかったのですよ。番組のオフィシャルサイトを見てこのエピソードを知った次第です。ですので誰が笑っていたのかはわかりません。その時の様子を私が知りたいくらいです。
お役に立てなくて申し訳ありません。