「超・人〜virtuoso〜」荒川静香さん出演

2007年2月25日

BS-i放送の『超・人〜virtuoso〜』を見た。今回は荒川静香さんの特集。これまで何度も放送されてきた類似の番組とは一味違い充実した内容で楽しんで見ることができた。


全体が三部構成で第一部は荒川さんのエッジの使い方に焦点を当てたものだったのだがこれが実におもしろかった。詳しい内容は番組ホームページに記載されているのでそちらを参照していただきたい。荒川さん自身による解説のほかハイスピードカメラの映像による分析などもあり、かなりコアファン向けの作りだった。トリノオリンピックでの金メダル以来おびただしい数の荒川さん特集を見てきたが、ここまで技術的な細部にまで踏み込んだ番組はなかったように思う。BSだからこそできた番組作りといえるだろうか。

ジャンプの際に空中で両足先をそろえて回転するための秘訣については よくこうやって体を締めるんですけど、真ん中ではなく右足で降りてくるので、真ん中より少し右に軸は取られていて、その軸を中心に回っている。 と説明していた。このあたりはもし中野友加里さんがご覧になっていれば参考になったのではないだろうか。

なおハイスピードカメラによる分析では比較のために石田さやかさんという方が技を披露してくれていた。オリンピック金メダリストとの比較という損な役回りを引き受けてくれた石田さんに、荒川さんのファンの一人として感謝したいと思う。


第二部は荒川さんのスケート人生を回顧するもので、これまで何度も見てきた内容で特に目新しいことはなかった。ただ、一つ印象に残ったのは イナバウアーが多くの方に覚えていただけることとなって、記憶に残る結果となったので、私としては「あの人金メダル取ったね」と言われるよりも、「イナバウアー」と言われることが嬉しいですね。 という言葉だった。

あれ以来“イナバウアー”は流行語になってそのことばかりが語られるようになり、しかも多くの場合誤用されてしまっているような現状を荒川さん自身はどう受け止めているのかが気になっていた。見る限りではイナバウアーのことばかり質問されるのを荒川さんは嫌がる様子もなく、むしろ嬉々として受け入れているかのようだった。それは金メダルという結果ではなく、演技の内容をみんなに覚えてもらえたということに満足しているからだということがわかり、彼女のそんな態度に納得がいったのだった。


第三部はアマチュアを引退しプロスケーターとして活動するようになった今の心境について。番組の取材が行われていたのは難度の高いトリプルルッツを集中的に練習していた時だったようだ。プリンスアイスワールド広島公演のため広島へ向かう車中で荒川さんは これまでアマチュアの時は、ジャッジに向けてプログラムはほどんど作られているので、裏返しから見るときちんと伝わらない部分が多い。アイスショーの場合は全面にお客さんがいて、全部がジャッジみたいな感覚なので、四方八方にアピールポイントがあるという事が大きな違い。 と語る。その広島公演では練習していたルッツを跳んで見せた。ショーでは、これまで、失敗の確率の高い技は、あえて封印してきたが、スケートが再び楽しくて仕方がなくなると、アマチュアのときよりも純粋に、難しい技に挑みたくなったのだという。この広島公演については会場で鑑賞されたsashaさんがレポートして下さっているのでご覧になるといいと思う。もう一つ跳んだフリップというのもルッツに次いで難度が高いとされるジャンプである。競技会から退いても高い技術を維持しようと心がけている荒川さんが頼もしく思えてくる。


この番組、初めて見たのだけど凝った作りでなかなかおもしろかった。副題を"virtuoso"というらしい。ヴィルトゥオーソとは「徳のある人」という意味で、優れた芸術家に用いられる敬称であり、特に音楽の演奏家に対して用いられることが多い。荒川さんはまさにヴィルトゥオーソと呼ばれるに相応しい人だ。

なお余談だがいつも“virtuoso”という言葉に女性形はないのかと疑問に思っていた。今Wikipediaで調べてみたら女性の場合は“virtuosa”というらしい。ただほとんど用いられることはないように思う。この言葉の元となった“virtus”という言葉自体が「男らしさ」を含意するようなのでおそらくそれも一因なのだろう。

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コメント

おはようございます、昨夜の「超・人」面白かったですね!
まさか広島公演の画像が出るとは思わなかったので驚きましたが、
やっぱりあれはルッツでしたね、良かったァ〜〜(^^;)
それから副題にはそういう意味があるのですね、素敵な言葉ですね。
私はかねがねトップアスリートになる人は、技術だけでなく
人格的に優れた人でないとなり得ない、と思っていますので
番組が荒川さんに対しての敬称として使った事に、大変意義があると思います。
まさに彼女は優れた芸術家、ですから。

-> sashaさん

さすがにsashaさんの目は確かでしたね。あの公演はプロスケーターとしては初めてルッツを跳んだ機会だったようで、貴重な歴史の目撃者になりましたね。

トップアスリートになるには技術はもちろんのこと、知性や人としての魅力も必要なんですよね。荒川さんが私たちを惹きつけてやまないのはまさに彼女がそうした人だからなんだな、とあらためて思いました。番組の副題は毎回用いられているもので特に荒川さんのためにつけたわけではないようですが、彼女にはぴったりの言葉ですよね。

こんばんは^^
私も先日、荒川さんがプロスケーターとして
全米のツアーを回るドキュメントタッチの放送を見ました!
競技とアイス・ショーはまったく別物なんですよね〜♪
観客を「楽しませる」、観客に「魅せる」・・・
荒川さんも海外で大人気のスケーターになっていただきたいですね。
とっても落ち着かれてる女性だな〜と思いました^^

-> ももこさん

ご覧になったのはファッション・オン・アイスのドキュメンタリーでしょうか。例のセントラル愛知交響楽団の「悲愴」の後に見ました。ですので最初の部分を少し見逃してしまいました。^ ^

アイスショーで活躍するようになって意識の持ち方も変えてきているようですね。その中でも技術レベルを下げないようにと努力しているのに頭が下がります。クワンさんのファンの方たちも荒川さんについては絶賛しているようですので、アメリカなど海外でも大スターになるのは間違いないでしょう。どんな時も落ち着いて自分らしく振舞うことのできる素敵な女性ですよね。

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