追悼 高塚省吾さん
2007年5月31日
連日湿っぽい投稿が続いて恐縮だけど追悼文をもう一つ。28日洋画家の高塚省吾(たかつかせいご)さんが盲腸がんのため亡くなった。
私は美術のことはよくわからないのだけど、高塚さんの絵は好きで画集を持っている。何をきっかけに高塚さんのことを知ったのかはもう思い出せないのだけど、その静謐な美しさには見るなり目を奪われたのをよく覚えている。
高塚さんは専ら裸婦を描く画家である。抑制の効いた色彩と透明感の溢れるタッチで女性の肌を淡く繊細に美しく描き出す。自身"引き算の美学"と称する澄明な画風は、肌の奧にひそむ女性の内面まで見透かすことができるかのようである。
ラグビーが好きでTVの中継がある時は必ず見ること、道元の「正法眼蔵」を学び禅の素養があること、どうもフランス現代思想がお嫌いらしいことなど、自分と関心が似ている点が多くて勝手に親しみを感じていた。絵を描きながら音楽を聴くことも多いそうで、クラシックはグレゴリオ聖歌からアルヴォ・ペルト、武満徹まで、スーフィー教の神秘曲やキース・ジャレットなども聴くけど、演歌やショパン、シューマンなどは聴かないとのこと。音楽の嗜好は私と随分違うようだ。
伊東深水や竹久夢二など美しい女性を描いて広く人気のある画家はいるけれど、美術の素養のない素人が見て素直に美しいと思える裸婦の絵を描く画家というのは実は意外に少ないように思う。高塚さんはその数少ない一人なのではないだろうか。美術界では名の通った人なのだろうけど、一般にはあまりその画業が浸透していないのか訃報も大きく扱われなかったのは残念である。もっとこの画家の孤高の美の世界が広く知られることを願っている。
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