ブラジル先住民が伝えた歌 続報

2008年1月13日

昨年の7月にブラジルの先住民族が突然姿を現して二曲の歌を残し去っていったというニュースが伝えられ、このサイトでも取り上げたが、その後この報を伝えた朝日新聞が12月28日の朝刊に続報を掲載した。話題の主であるメチキチレ族とはカヤポ族の一グループだが、文明と共存して生きる道を選んだカヤポ族とは異なり文明との接触を絶って今も森に暮らす部族である。

メチキチレ族は5月末、カヤポ族の村カポに現れた。最初に姿を見せたのはリーダーの男だった。メチキチレ族との仲介役を務めたメガロン・チュカハマエさんによると「彼らはひどくおびえていた」。村ではしきたりに従って焼き魚やバナナ、芋を贈った。危険はないと知ったリーダーは歌うような声で仲間を呼び、男女計87人に脹れあがった。

チュカハマエさんの前で突然、彼らは歌い始めた。彼らは開発で住みかをなくし、行き場がない窮状を訴えた。村人たちは「里帰り」の受け入れを決め、祝いの食事の準備を始めた。その時一機の小型機が静けさを切り裂き、低空を飛んだ。国立インディオ基金(FUNAI)の飛行機だった。パイロットが部族の出会いがうまくいっているかどうかが気になって近づいたらしい。驚いたメチキチレ族は森に走り去った。


ブラジル政府にとってアマゾン流域は開発の対象であり、経済振興の上でインディオは長らく邪魔な存在とみなされた。そのくらしと文化を保護する公的機関としてFUNAIが設立されたのは67年。参政権や土地所有権を認められたのは73年だ。いまは保護区であれば一般人が入ることは厳しく規制されていある。しかし広大な国土を綿密に監視するのは困難で、保護区に伸びる乱開発の波を防ぎ切れていないのが現状だ。

朝日新聞2007年12月28日朝刊より要約して引用

ウェブ上で公開されていた彼らの歌を聴いて、意味は全くわからないながらも何とはなしに物悲しさを感じたのは彼らの置かれている窮状ゆえのことだったのだろうか。彼らが今どこにいるかはチュカハマエさんにもわからないそうで、それを思うと胸が痛む。

その一方で保護区に隣接する町コリデルには保護区から出てきた多くの若者が暮らし、カヤポ族の村祭りの踊りや歌をディジタル映像で保存する活動も行われているということに興味を惹かれた。ブラジル先住民出身の青年がPCを操る姿は奇妙な取り合わせに見える。しかし文明社会の住人たちの表現の自由を飛躍的に増大させたネットワーク技術が、アマゾン奥地の森の民の文化を保存し彼らの姿を世界に伝えることにも役立つとしたら素晴らしいではないか。

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コメント

続編ですね。
何かを訴える時というのは、時として悲しくなるものです。
胸が痛みますね。

-> moonさん

彼らが今、アマゾンの森の中で暮らせる場所を確保できているのか、気になりますね。しかし同時にこうして地球の裏側にいて彼らの歌を聴くことができるのは素晴らしいことだな、とも思います。

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