「春〜spring〜」

2008年3月18日

作詞・作曲:たくや

最近お友達のブログなどで春に因んだ音楽の話題をいくつか読み、春の気分を満喫させてもらった。そこで私も触発されてこの季節を歌った曲のことを書いてみたいと思い立った。1990年代以降、日本のポピュラー音楽では女性ヴォーカルの周りを男性メンバーが固めた編成のバンドが数多く活躍するようになった。おそらくは80年代末に活動を始めた DREAMS COME TRUE の影響を受けているのだろうが、名前のつけ方にも何か独特の感性が見られるのが特徴である。Every Little ThingMY LITTLE LOVERthe brilliant green、などなど…。そうしたバンドの一つに Hysteric Blue というのがある。


この Hysteric Blue を音楽シーンの最前線に押し出したのは2枚目のシングル「春〜spring〜」(1999年1月21日発売)の大ヒットだった。私はこの手の系譜のバンドにはそれほど思い入れを以て聴いたことがなかったのだけど、この「春〜spring〜」には心を揺り動かされるところがあった。メロディー・ラインの抑揚のつけ方が私の好みに合っていて、移り行く季節に揺れ動く心情が痛切に伝わってきた。ヴォーカルのTamaさんの声質も私の好みのタイプだった。途中曲が止まったかと思われるような長い音符を使ってリズムに変化を与えているあたりもうまいところだ。当時は歌詞のことはあまり気にせずに聴いていたが、今あらためて見てみると実にいい詞だと感嘆する。言葉を読んでいるだけでもこの季節特有のやや物憂くセンチメンタルな心象風景が浮かんでくる。「チクリ」、「ひらり」といった擬態語の使用も効果的である。

調べてみるとこのバンドはこの曲で1999年の紅白歌合戦に出場していたらしい。私はこの曲を紅白で聴いたという記憶が全くないので、おそらくこの年の紅白は見ていなかったのだろう。いずれにしても私と同じ様にこの曲に心を揺さぶられた人が多かったことの証である。


しかしこのバンドの栄光は長くは続かなかった。2004年にバンドのメンバーが不祥事(いや、こういう曖昧な言い方はよくないのではっきり言うと犯罪行為)を起こし解散を余儀なくされてしまったのだ。実際にはその前年から活動を停止していたようだが、これで Hysteric Blue の曲が新たに生まれることはなくなった。

このバンドが単発のヒットで終わったのは何とも残念なことだった(実際にはほかにもそれなりにヒットした曲がいくつかあったようだが)。それこそ「こういう夢ならもう一度逢いたい」ものだが…。

去年の夏だったか、高校野球を見ていたらどこかの高校のブラスバンドがこの曲を演奏しているのを聴いた時には「おや」と思ったものだった。今の高校生の部活動の現場でこの曲がタブー視されていないというのは何だかうれしかった。

現在ヴォーカルのTamaさんと「春〜spring〜」を作詞作曲したたくやさんはそれぞれ別のバンドで活動しているそうだが、ともに Hysteric Blue の栄光には遠く及ばずにいる。それでも彼らの胸の内には今もこの歌の最後の一行がこだましているだろうか…。

こういう夢だしもう一度懸けたい いつか…
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コメント

どうでもいい話なんですが、その当時、自分のコンポのデッキを
カセットからMDに変えて、最初にダビングした曲なんですよ。
(確か、CDからではなく“セントギガ”っていうBSのラジオ放送からだったかと・・・)
手入力ですが、曲名を “ハル −spring−”(漢字や 〜 が入力不可なので
って打ち込んで、それが表示されたのを見て、すごく感動したのを憶えています。(笑)
 
他にも 『なぜ・・・』 って曲が好きでした。
いわゆる “ヒット” という事だったら、こちらの方が売れたんじゃないですかね・・・。
たしか、KinKi Kidsのどちらかが出てたドラマの主題歌だったはずです。
 
こんな感じで、結構自分の中にも曲を残してくれただけに、
あの事件は本当に残念でした・・・。

-> ボランチさん

iPodとかまだなくてMDの時代の曲でしたね。そんなに古い曲という印象はないのですが、時の経つのは早いというか、技術革新が目覚しいというか…。

「なぜ…」は調べたら堂本光一さん主演のドラマ『P.S. 元気です、俊平』の主題歌だそうです。私はこの歌は知りませんでしたが、「春」以外にも人気のある曲があったようですね。せっかくの魅力あるグループだったのに、残念なことでした。Tamaさん、たくやさんそれぞれに今の自分の場所でいい音楽を作ってくれるといいのですけどね。

1980年代後期から1990年代前半に登場しているバンド名を見ると映画のタイトルを思わせる名前が多く存在していると思います。
DREAMS COME TRUEが筆頭に挙げられるのではないでしょうか。

私は聴いたことが無いのですが、きっと良い曲なのでしょうね。
今の季節にピッタリなタイトルですね。

-> moonさん

この手のバンドは名前のつけ方がおもしろいです。ELTの場合はビートルズの同名曲があるようで、そこからつけたのかも知れないですね。「春」はとてもいい曲なので何かの機会にお聴きになって下さい。

自分のブログの記事、ちょっと手直ししてTBさせていただきました。
 
あと、『ELT』で思い出しましたが、ヴォーカルのもっちー(持田香織)の声が心配ですね・・・。
いつも聴いているこっちが苦しくなってきてしまうんですよ・・・。

-> ボランチさん

TBありがとうございました。持田香織さんもとてもきれいな声の人ですけど、今のどを痛めてしまっているんですよね。ぜひまた元のように歌えるようになって欲しいですが…。

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