「アメイジング・グレイス」再び

2008年6月 6日

日本語詞:岩谷時子 作詞:ジョン・ニュートン 作曲:不詳 編曲:井上鑑
アルバム「AVE MARIA」COCQ-83633(2003.05.21)所収。ミニアルバム「アメイジング・グレイス」にはスタジオ録音の音源とともにライヴ映像が収録されている。ベスト・アルバム「クラシカル・ベスト〜天に響く歌〜」COZQ-255,6(2007.04.20)にもスタジオ録音の音源が収録されているほか、入院中に病室でボイスレコーダーに録音した音源が配信限定でリリース(2008.03.24)されている。ヘイリーさんとのデュエット・ヴァージョンはシングル「アメイジング・グレイス2008」(2008.05.21)、アルバム「純~21歳の出会い」(2008.06.04)に収録されている。

今やすっかり本田美奈子さんの代名詞のようになっている感のある「アメイジング・グレイス」だが、この歌をめぐって先月とてもうれしい出来事があった。ヘイリーさんが美奈子さんの遺された音源と仮想的な“デュエット”をしてくれたのだ。

ヘイリーさんは日本では彼女の歌う「アメイジング・グレイス」がTVドラマの主題歌に採用されたことがきっかけで広くその名を知られるようになった人で、この歌とは美奈子さんと同様に浅からぬ縁がある。この二人の共演がこんな形で実現するとはちょっと出来過ぎているのではないか、と思うくらい感慨深い出来事である。


最初にこの話を聞いた時にはどんなアレンジになっているのだろう、と興味があったが、実際聴いてみると交互にソロで歌い合った後、最後にワンコーラス美奈子さんの歌う主旋律にヘイリーさんがコーラスをつけるというシンプルなものだった。もう少し凝ったものを想像していたのでやや意外だったが、あまり装飾的なアレンジはこの歌には似つかわしくないのかも知れない。

この二人はどちらも甲乙つけ難い美声の持ち主だが、こうして同じ歌の中で聴き比べてみるとやはり両者の個性の違いも感じとれるような気がする。ヘイリーさんの歌がピュアな魂がそのまま表れているかのような真っ直ぐな美しさだとすれば、美奈子さんの方は旋律線の描き方が柔かいというか、幾分かの陰影を包み込んだ崇高さといえばいいのか…。とにかくとても贅沢な共演である。最後のワンコーラス、二人の音高が波打ちながら交錯する様は両者のこの歌との結び付きの強さが拮抗する様子を描いているかのようでもある。


今月3日にはヘイリーさんがNHKの『歌謡コンサート』に出演し、美奈子さんとのデュエットを披露してくれた。この放送を通じて多くの方が二人の歌心にふれて下さったことと思う。この番組には「虹と雪のバラード」でトワ・エ・モワのお二人も出演していた。白鳥英美子さんの歌う「アメイジング・グレイス」も日本ではひろく親しまれてきた。日本でのこの歌の受容に決定的な貢献をした三人の歌手がこうして一堂に会した様は感慨深いものがあった。


ヘイリーさんと美奈子さんはおそらくファン層の重なる部分も多く、ヘイリーさんにとって美奈子さんはある意味で“ライバル”というべき存在でもあるのではないかと思う。この共演がどのような経緯で実現に至ったのかはよくわからないが、こうしてヘイリーさんが深い共感を以て美奈子さんと一緒に歌ってくれていることに心から感謝したい。きっと歌声そのままに心の優しい人なのだと思う。ぜひその素晴らしい才能を大きく花開かせて、美奈子さんの分まで精一杯歌っていって欲しい。そしてできることならこの共演、海外のヘイリーさんのファンの方たちにも聴いていただく機会があれば、と願わずにはいられない。

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コメント

sergeiさん、こんにちは。

NHK『歌謡コンサート』観ましたよ。演歌中心の番組みたいで、本田さんのことでもなければ観ませんでした。トワ・エ・モワの「虹と雪のバラード」が、まず良かった。これが次へ道を開いてくれた感じ(笑)

ヘイリーさんとのデュエットは、シンプルでしたが、それがむしろ良かったです。
やっぱり、涙が出てしまいました。気持ちを切り替えるきっかけになりました。

ヘイリーさんのコンサートは、観に行く予定なので、本田さんとの「アメージング・グレース」も演ってくださるといいなと思います。

-> ysheartさん

私は鳥羽さんの熱唱とか藤さんの新曲とか楽しんで見ましたけどね。^ ^ モニターに大きく美奈子さんの姿を映し出してくれてうれしかったです。

ヘイリーさんのコンサート行かれるんですね! ぜひ美奈子さんとのデュエットやっていただきたいですね。

私も先日のNHKでの共演を観て、胸が熱くなりました・・。
このお二人のデュエットは本当に素晴らしく、二番目の美奈子.さんの歌い出しの時は、本当に自然に伴奏と歌声が溶け合い、まるでこの曲の為に、録り直したのでは?・・と思える程でした・・。
このデュエットのお話は、去年の美奈子.さんのファンイベントでBOSSが美奈子.さんのボイストラックを使用し誰かと共演させたいと言っていたのを思いだしました。ちょうど、その頃は岩崎宏美さんが「つばさ」をカバーしていましたので、多分、その線で来るのかな?と思っていましたが、ヘイリーさんとのデュエットには驚きました・・。
ただ、「アメージング・グレイス」自体が賛美歌であるので、心の旋律に触れるものとしては、お二人は出会うべきものに出合ったのかもしれませんね・・。


NHKの評判によるものか先日のスポーツ紙にヘイリーさんの新アルバムが発売で7万枚を突破したとの事で、クラシック系歌手としては異例の大ヒットになっているそうです・・。
是非、この勢いで、今度は全世界にこの歌が響き渡り、「DIVA MINAKO HONDA」の名が知れ渡って欲しいですね・・。


来週、11日の東京オペラシティでのヘイリーさんのコンサ−トはNHKと同じ、美奈子.さんとのデュエットを披露するとの事・・。
そのコンサートに美奈子.さんのお母様も招待を受けているそうです。
きっと、素晴らしいコンサートになるに違いありません・・。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20080606-00000020-sanspo-ent

-> ヒロさん

去年の段階でBOSSさんにそういう構想があったんですね…。ということはやはりBOSSさんのご尽力があって実現した企画なのでしょうか。今をときめく歌姫と共演させてもらって、美奈子さんきっと喜んでいるでしょうね。

新アルバムは私もやっと入手できたので、これからゆっくり聴かせてもらおうと思っています。これはぜひ海外のファンの方にも聴いていただきたいですよね。

お母様がコンサートに招待されているのですか。ヘイリーさんの粋なはからいが少しでもお母様の心の慰めになることを祈っています。

sergeiさん
「純(限定版)」手にはいりました。選曲がおじさん泣かせる、いえ嬉しいで〜す。
聴きなれた曲も英語だと不思議な雰囲気です。
  
・・・一曲めは流石に泣きました。
  
「翼をください」「時代」の英語詩はヘイリーさん自らなさってますが、素晴らしく曲にマッチして自然です。日本語の勉強大変だったと思うので感謝申し上げたい。

-> Kenおじさんさん

日本の音楽ファンを泣かせるツボを心得たにくい選曲ですよね。^ ^ ヘイリーさんの澄んだ歌声で聴く日本のスタンダード・ポップスはまた格別です。訳詞も(おそらく下訳をした人がいるのでしょうけど)お見事ですね。

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