ハワイの空に響く日本の調べ
2008年9月28日
昨日27日の朝日新聞土曜版は日系ハワイ人たちの間に伝わる民謡「ホレホレ節」の特集だった。私がこの歌を初めて聴いたのは2000年にホノルルで開催された『NHKのど自慢 ハワイ大会』でのことだった。日系4世の女性が農作業の衣装を着てこの歌を歌ってくれたのだが、私はあの時の歌声の素晴らしさを忘れることができない。この大会はそれまでかなり陽気な雰囲気で進められていたのだが、彼女が歌い始めた途端に場内はしんと静まり返って歌声に聴き入っていた。あの時の私の感動はそれを聴いた誰もが共有していたのだと思う。この日のチャンピオンの座は当然のように彼女に輝いた。
彼女は翌年3月の『のど自慢 チャンピオン大会』にも出場してこの歌を歌ったのだが、私は迂闊にもこの放送を見逃してしまった。私はこのことを大袈裟でなく人生の一大痛恨事だと思っている。
そして記事によるとこの女性は2002年のNHK連続テレビ小説『さくら』にも出演してこの歌を歌ったという。これは私はよく覚えていないのだが、確かこの時はヒロインの祖母役の津島恵子さんも歌っていたように記憶している。このドラマも日系4世の女性がヒロインだった。この歌をご存知の方の多くはおそらくこの時にお聴きになったのではないかと思う。
“ホレホレ”とはハワイ語でサトウキビの枯葉を茎から取る作業のことをいう。日系ハワイ人の1世たちは現地でかなりの苦労をしたとのことで、この歌には短い中にもそうした1世たちの生活実感が余すところなく凝縮されているようで、聴く者の心を揺さぶらずにはおかない力強さがある。
ハワイへの移民には沖縄出身の人が多かったそうなのだが、この歌は琉球の音階ではなく日本の伝統的な音階である二六抜き短音階(“ラドレミソラ”で構成される五音音階)で作られている。瀬戸内海の船頭歌や熊本の農民歌、山口や広島の紡ぎ歌など多くの地方の民謡が元になったといわれているらしい。このメロディーの訴求力からは伝統というものの持つ力を思い知らされる気がする。
歌詞には様々なものがあるそうだが、代表的なのは以下のものである。
ハワイハワイとよ 夢見てきたが 流す涙もキビのなか
簡素な言葉だが1世たちの苦難の歴史がそくそくと胸に迫ってくるようである。
ワイキキで音楽院を主宰したハリー・ウラタさんにより標準化されたヴァージョンには労働の厳しさや家族について歌った歌詞が採用されているのだが、実際に1世たちに歌われた歌詞は男女の仲を歌ったものが半数ほどを占めるのだという。ラヴ・ソングとしての「ホレホレ節」もぜひ聴いてみたいところである。
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