稀代のヒットメーカーの転落
2008年11月 4日
世の中はかつて一世を風靡した名音楽プロデューサーが逮捕された件で持ち切りである。彼の身にもしこのような災厄が起きるとしたらお薬関係のことではないかと思っていたので詐欺事件というのは少し意外だった。かつて2年連続で長者番付の全国4位になった人が借金返済に苦しんで詐欺をはたらくとは私の金銭感覚では理解不能なことである。
彼の音楽は最盛期にはヒットチャートの上位を独占していたものだが、私ははっきり言ってどれも全く好きになれなかった。あの時代は日本のポピュラー音楽史における暗黒時代だったと言えるのではないかとさえ思っている。確か『ニュースステーション』だったと思うのだが、彼がスタジオに生出演してインタビューを受けた時に、ファミリー・レストランなどで周りの客の会話に聞き耳を立てるのが好きだと答えるのを聞いてとても嫌な気分になったのを覚えている。彼はそうした取材によって世の中が何を求めているのかを察知して音楽作りに生かしているというのだが、ヒット曲が周到なマーケティング・リサーチに基づいて生み出されるようになった時代を象徴するエピソードだと思う。音楽は作り手の思いも聴き手の共感もなくただただ消費されるだけの存在に成り果ててしまうのかと思うと暗澹とした気分にさせられたものだった。
幸いに、というべきか、そうした時代は長続きせず、しばらくすると世の中には再び丁寧に言葉を紡ぎ出された歌があふれるようになった。ゆずがブレイクし始めた時の安堵感は忘れることができない。私がZARDの音楽を懐かしく思い出すのも、坂井泉水さんがあの時代に弧軍奮闘して良質な詞を発表し続けた得難い存在だったという認識が根底にあるからでもある。飛ぶ鳥を落とす勢いだった彼がこれほどまであっけない転落を迎えた理由はよくわからないが、セールスの記録とは裏腹に彼の音楽には時の試練に耐えて生き残るだけの力がなかったというのも一つの要因なのではないだろうか。
彼の作品の中で私がほとんど唯一共感して聴くことのできる曲である「My Revolution」を聴いてみた。発表から20年を経てなおこの曲に新鮮な感動を覚えるのは彼の卓越したメロディー・センスもさることながら川村真澄さんによる詞の力も大きいと思う。彼の作品が今後どのような運命を辿るにせよ、この歌だけは後々まで聴き継がれていって欲しいと願わずにいられない。
求めていたい My Revolution 明日をかえることさ 誰かに伝えたいよ My Tears My Dreams 今すぐ 自分だけの生き方 誰にも決められない 君とみつめていたい My Fears My Dreams 抱きしめたい
コメント
朝から凄かったですね。
最近、globeが活動を再開するような感じだったので、
そろそろお金がヤバいんだろうな・・・とは思ってましたが、まさかこんな状態だったとは・・・。
自分は詩よりも曲から入るタイプなので、
小室サウンドもそんなに違和感なく耳に入ってきてました。
まあそれでも、篠原涼子『恋しさと せつなさと 心強さと』と
華原朋美『I BELIVE』くらいしか好きな曲はなかったですけど・・・。
と言うより、好きじゃない曲の方が多かったかも知れないです。(笑)
特にtrfあたりはまったくキライでした。
何がどうキライだったのかは、うまく説明できないですが、
一言で言うと「耳障りが悪かった」って事になるんでしょうかね・・・ちょっとわかりませんが。
それにしても、自ら「こんないい目、いつまでも見れるわけじゃない」って言ってたのに、
欲が出過ぎたのか・・・それとも、自分の居場所を失ってしまうのが怖かったのか・・・。
どっちにしても、両方失ってしまったのは間違いないですね・・・。
-> ボランチさん
私はサウンド自体も好きになれませんでした。まあ朋ちゃんはかわいいな、とは思っていましたけど。^ ^ trfに関してはヴォーカリストが美奈子さんの大切なお友達なのであまり悪く言う気にはなれないです…。でも「My Revolution」はいい曲だな、とあらためて思いました。昨日も何度も聴き返してしまいました。
何でこんなことをしでかすまでに落ちぶれてしまったのかよくわかりませんが、哀れとしか言いようがないですね。私としては今後彼の楽曲がどんな風に評価されていくのかということに興味があります。単なる時代の徒花だったのか、それとも何かの必然があって生まれたブームだったのか…。今こうして振り返ってみても不思議な現象でしたね。
trfは、ヴォーカルがYUKIさんですもんね〜。
自分もキライなのはあくまでも“曲”でしたから。(笑)
なんか「薄っぺらい」というか「平べったい」というか、
うまく表現できないですが、そんな感じを受けました。
それら当時の一連の曲は、YUKIのヴォーカルをも
殺してしまっているような感じがしたのも一因ですかね・・・。
ダンスに合わせて作ると、ああなっちゃうのかもですが。
まあ、その「曲が好きだ」って人もいるとは思うので、
これ以上は言わないですが。
小室サウンド・・・薄っぺらいとか、好きキライは別にして、
安室奈美恵「CAN YOU CELEBRATE?」のような、
明らかに後世に歌い継がれていく名曲も生み出しているので、
『小室哲哉』の名は、忘れ去られる事はないんだろうな・・・とは思っています。
-> ボランチさん
私もダンス・ミュージックというジャンル自体にあまり興味がなかったので、それが小室ブームを受け入れられなかった要因だったという気もします。trfのヴォーカリストとしてではなくミュージカルなどでの歌唱を聴けばYU-KIさんの印象もかなり変わるかも知れませんね。
未来の若いミュージシャンたちが小室サウンドへのリスペクトを表明するという光景は私にはちょっと想像しずらいのですが、でもあれだけのセールスを記録したということだけでも歴史に名前は残るでしょうね。
お久しぶりにお邪魔いたします。
小室氏自信には全く興味がありませんでしたが
私も渡辺美里さんの歌う My Revolution は唯一好きな歌です。
高校生の女の子(確か主演はいしのようこさん)3人を中心とした
ドラマの主題歌でしたよね。
このドラマの躍動感を更に高めるような本当に素敵な歌だと思います。
立ち直る事はたやすい事ではありませんが、
彼を慕っている人たちの為にも頑張って立ち直っていただきたいと思います。
-> sashaさん
こんにちは! お久しぶりです。
「My Revolution」はTBS系のドラマ『セーラー服通り』の主題歌だったみたいですね。私はこのドラマは見ていなかったのですが、女子高校生たちの青春群像を描いたドラマにはぴったりの曲ですよね。この事件があってからかなり久しぶりに聴き直してみましたが、本当にいい歌というのはいつになっても古びることはないんだな、と強く感じました。
ブームとなっていた頃の音楽に私自身が関心を持てなかったために辛辣な書き方になってしまいましたが、今事件の報道に接して悲しんでいるファンの方たちのためにも立派に更生していただきたいですね。
sergeiさん
流行好きなおじさんなので・・・結構聴きましたw。
TMネットワークからで全てではないですが、一応ヒット曲は (;^_^A
安室さんまでくらいかな。「シティー・ハンター」「セーラー服通り」などのテーマ曲など・・・etc.
お金持ちになると人間は何故って考えさせられました。あ〜ぁ
-> Kenおじさん
小室サウンド聴いておられましたか。まあ音楽の好みは人それぞれということで…。^ ^
あれだけのお金を持ちながら魚が嫌いでファーストフードばかり食べていたそうで、何とも貧しい生活だな、と思ってしまいます。私なら毎日おいしいお寿司でも食べて過ごしていたでしょうね。
彼の作品の中で唯一好きな作品です。
音楽を作る事と著作権のビジネスはまた別物だと個人的に思います。
金で人が変わると言いますが、まさにそんな方ですね。
-> moonさん
彼がこういう事件を起こしたのは、国内での成功に飽き足らず世界に打って出たいという野心が裏目に出たという面もあったようで、単純に金に汚いからやってしまったというわけでもなかったようです。とはいえ音楽で人を喜ばすべき人が起こす事件ではなかったですね。