エド・デ・ワールトさんの“ベートホーフェン”
2009年5月 3日
今日の『N響アワー』はN響とは初共演になるエド・デ・ワールトさんの特集だった。私はこの指揮者の演奏はほとんど聴いたことがなかったのだけど、CDショップでラフマニノフの交響曲全集を聴いてみたいな、と思いつつ棚の前を未練たらしくうろうろするのが常だったので、こうしてTVの放送を通じて演奏に接することができたのはうれしいことだった。
メインに紹介されたのはベートーヴェンの交響曲第5番だったが、磨き抜かれた表現と引き締まった演奏がいかにもベートーヴェンの作品らしい緊迫感を作り出して見事だった。この指揮者の実力を窺い知るには十分の名演奏だった。ワールトさんはその実力に比して日本ではあまり注目される機会の多くなかった指揮者ではないかと思うのだけど、ご本人は自分の名前が“江戸”と同じ音だということで日本には親しみを感じておられるとのことで、今回のN響との共演をきっかけに日本での評価も高まっていくことになるといいと思う。
ところで、演奏に先立って放送されたインタビューで、ワールトさんは基本的には英語で話しながらも Beethoven については“ベートホーフェン”と発音していた。オランダ語というのは北ドイツ方言に極めて近いのだそうだけど、やはりこの作曲家の名前はこのように発音するのだということを実際に確認できたのは収穫だった。
しかし日本のクラシック音楽の愛好家にはおそらくドイツ的な教養の持ち主が多いと思われるのに、“ベートーヴェン”という英語風(?)の表記が定着しているというのは考えてみれば奇妙なことである。私自身このサイトでも無用の混乱を避けるためにこの伝統的な表記に従っているのだが、本来は楽聖とまで呼ばれ崇められている人の名前ならそれなりの配慮があって然るべきだと思う。
コメント
エド・デ・ワールトのCDではゾルダン・コチシュ、サンフランシスコ響によるラフマニノフの「ピアノ協奏曲全集」があります。フィリップスによる録音が多い。オランダ出身ですが、同郷のベルナルト・ハイティングの方が知名度が高いようです。マーラーなどの「交響曲」がメインのハイティングに対して、デ・ワールトは「協奏曲」を録音していることが多いのか、そんなところでハイティングに一歩譲っている状態です。このところは「交響曲」といった大曲も取り上げていることも多く、成長してきていることが著しいですね。
-> eyes_1975さん
ワールトさんはハイティンクさんの次の世代を担うオランダの指揮者ということになりそうですね。コチシュさんとのラフマニノフは80年代の録音ですが、それから着実に実績を積み上げて、今では世界的な巨匠指揮者の一人といえるのではないかと思います。NHKの岩槻里子アナウンサーの紹介によるとオペラの分野でも活躍が著しいそうで、頼もしい方だな、と思います。