赤マルダッシュ☆「ワンダフル☆スマイル」

2015年4月16日


前回の記事赤マルダッシュ☆のららぽーと横浜でのリリースイベントの動画がすごく気に入ったこと、特にまーりんのダンスに魅せられたということを書いた。このグループは周知の通り東洋水産の人気商品「マルちゃん」シリーズのプロモーションを目的に結成されたもので、他にあまり例を見ない経緯なのでそれなりに注目して情報を追ってはいたのだが、ダンスがこれほど楽しいグループだとは認識してなくて、一連の動画には目を見開かされる思いだった。

それでスケジュールを調べてみたら、ちょうどリリース週の最終日に近くでイベントをやる予定だったので足を運んでみた。当日は小雨の降る生憎の肌寒い天候だったが、フリーにしてはもったいないほどの充実したライヴで、途中に初のワンマンライヴについてのアナウンスがあったりして長めのMCを挟んだが、一時間強にわたって持ち歌を惜しげもなく披露してくれた。


さてそのフリーライヴでプロモートされていたニューシングルだが、タイトル曲「ワンダフル☆スマイル」は王道的なアイドルポップスで、朗らかなメロディと希望に満ちた詞が聴く人を勇気づけてくれる。実は横浜でのライヴ動画を見た時に「4 colors」という曲がすごくいい曲だと思ったのだが、メジャーデビューシングルの赤盤に収録されたこの曲は、メンバーたちがそれまでの活動で感じてきた思いを歌詞にしてもらったとのことで、インタビュー(ナタリーBillboard JAPAN)でもライヴのMCでも、彼女たちにとって大切なレパートリーである様子が伝わってくる。そして今度の「ワンダフル☆スマイル」はその「4 colors」と曲調がよく似ていて、前作を下敷きにしつつそれをさらに膨らませたような作りになっている。そういう意味でこの新曲には、誰よりも歌っているメンバーたち自身が励まされているのではないだろうか。

この曲は伴奏も実に丁寧にアレンジされているのが印象的で、打ち込みがメインとは思うが、背景の細かな音の動きに注意して聴いているだけで何度繰り返しても飽きることがない。「3分待って…」というフレーズでわずかにほのめかされてはいるものの、歌詞にうどんやそばを直接表す言葉は含まれていないことでもあり、この曲は単なる販促用商品のような位置付けではなく、自立した作品として、それも上質なポップスとして親しまれていって欲しいと思う。

MVは見ての通りクイズ仕立ての凝った作りになっている。最後の問題の答えは1分30秒頃の控え室シーン、キッチンの上ということでいいのだろうか。しかしこの曲にはとてもキュートで楽しい振りがついている(ライヴ動画 4月22日追記:練習動画)ので、シンプルにダンスショットをメインに据えてもよかったという気がする。ただ、リリース当日のイベントについてのニュースによると、あーちゅんが怪我をしていて激しいダンスができないとのことで、横浜でのライヴでも“省エネダンス”のようになってしまっているのはそのせいのようだ。そのあーちゅんが怪我をしたという時期とMV制作の日取りとの時系列がわからないのだが、MVをこういう趣向にしたのはあるいはあーちゅんの状態を慮っての苦肉の策だったのかも知れない。


ヒッパレ☆うどんそば」は打って変わってカップ麺のモティーフを前面に出した楽曲で、これこそが“食べドル”としてのレゾンデートルとでもいうべきか。マイナー調のノリのいい曲で、聴いているとお腹が空いてくる。

赤い鞠のように」(ライヴ動画)はまーりんのソロ曲で、マルちゃんシリーズと連動したウェブ上の投票企画で優勝したご褒美として収録されることになったという。ピアノの伴奏によるしっとりしたメロディで、まーりんの情感ある歌唱を堪能できる。私が見に行ったライヴの時はスペシャルヴァージョンだったのか、さらに3人の丁寧なコーラスワークが聴けてお得だった。

もう一曲はタイプ別にそれぞれ違った曲が収録されているのだが、「クロノス」(ライヴ動画)が好みの曲なので推しは赤担当と決めたのに黒盤を買ってしまった。プリンセスプリンセスの「Diamonds」以来この手のモータウン風のリズムには弱いんだよ…。黒担当のあーちゅんもたいそうお気に入りの楽しい一曲である。


赤マルダッシュ☆は前述のように大手食品メーカーのプロモーションのために結成されたグループで、テレビのCMにもたびたび登場していることから、数多あるアイドルグループの中でも特に世間一般に知られたグループの一つといっていいだろう。常に大手企業の後援を得ながら活動できるのは大きな利点であり、心強いことに違いない。しかしその一方で、あまりにも特定商品の色がついているために、アイドルヲタクにとってはむしろその存在が心理的な盲点に入ってしまっているという面も、少なからずあるのではないかという気がする。

しかしインタビューなどを読んでみると、メンバーたちがアイドルになった経緯や活動にかけた思いはごく普通のアイドルグループと特に変わったものではないことがわかる。元からアイドル志望だった二人と、まさか自分がアイドルをやることになるとは夢にも思っていなかった二人が、なかなか曲を作ってもらえない不遇の時も経験しながら活動を続けるうちに絆を深めていくという、ドルヲタ好みのストーリーを背負ったグループでもあり、ヲタクたちの共感を広く集める資質は十分に備えている。今度の新曲はそうしたメンバーと食べ友の間に広がる共感の受け皿となるアンセム的な存在に育っていく力を秘めた楽曲であり、このリリースを機にアイドルシーンに於ける存在感をさらに増していくことになればいいと思う。

こんなに強く 願っていても 叶わぬ夢があることも
どこかでそう わかっているけど
それならまた 歩み出せる 信じているよ

折角の機会なので、ここでメンバー一人一人について、新参なりに今の時点で感じた印象を書いておくことにする。まずリーダーで赤いきつね担当の“まーりん”こと北澤鞠佳さんは、繰り返し述べているようにダンスのセンスにとても惹かれる。プロフィールでも「ダンスの実力はメンバー1」と謳われているから当初からうまかったのだろうけど、最近になってさらに一段と上達したのではないだろうか。手足の長い恵まれた体型によるところも大きいだろうけど、身長ではねーさんやあーちゅんよりやや低いのに、踊り始めると誰より大きく見えるのは確かな技術の証しでもあると思う。

ソロ曲の歌唱も堂に入ったものだし、他の楽曲でも要所のソロパートを任されていて、歌でもグループをリードする存在である。インタビューによると素顔は“ポンコツ”キャラとのことで、そういうギャップにも魅力を感じる。サイドポニーがとても似合っていて素敵。

緑のたぬき担当の“ねーさん”こと玉城茉里さんは上背があってスタイルがよく、ステージの立ち姿を見ているだけで惚れ惚れする。本人も周りからも元ももクロのあかりんに重ねて見られることが多いようだけど、私はむしろ元AKBの麻里子様と共通するものを感じる。長身のモデル体型で一般的なアイドル像とは異質なタイプながら、年長のお姉さんキャラとしてクレヴァーに立ち回り、グループの初期の人気を牽引したその姿は、今のねーさんの置かれている立場と重なって見える。半年ほど前の時点でもまだ語っていた、思いがけずアイドルになってしまったことへの違和感のようなものは今どうなっているのかわからないが、ねーさんもあんな風に颯爽とアイドルシーンを駆け抜けていってくれたらいいな、などと、傍で見ているだけのお気楽な立場ゆえの勝手な願望ながら、そんな風に感じている。

黒い豚カレー担当のあーちゅんこと川村彩花さんは、まーりんと同様元からアイドル志望だったそうで、おっとりした物腰の中にも秘めた情熱を感じる。童顔に似合わぬ長身で並ぶとねーさんと同じほど背丈があり、今ダンスが満足に踊れてなくて気の毒なのだけど、メジャーデビュー時のライヴ動画を見るとまーりんにも負けずに大きく踊れている。握手の時に横浜でのライヴの動画がよかったので来てみたということを伝えたらすごくうれしそうにしてくれたのが印象に残っている。

白い力もちうどん担当のNAYUこと大西菜友さんは最年少ながら一番のしっかり者との評判だが、そのことは一度ライヴを見ただけでもMCの様子から窺い知ることができる。リーダーがポンコツなのでMCはNAYUが中心になって仕切るという役割分担になっているようだ。ねーさんと同じく元はアイドルになるつもりは全くなかったとのことだが、ステージでの様子はそんなことを感じさせないほど生き生きとしている。

ダンスは決して下手ではないのだけど、他の3人に比べて小柄な分だけどうしてもややこじんまりと見えてしまう。そのあたりを本人も気にしているようだけど、ねーさんはそれも赤マルダッシュ☆の個性として生かしていきたいと語っていて、私もその方がいいと思う。そういうサイズの不統一感もむしろアクセントとして効いているし、そういう意味で「明日もきっと急上昇☆」(ライヴ動画)の出だしの振付けなどは工夫されていていいなと思った。


最後に余談だが、この間のライヴでは、最前の一群の中でむちゃくちゃかわいいツインテ女子(JCかあるいはJSか、正確にわからないけどかなり幼い感じに見えた)が楽しそうに踊っていた。振りコピの習熟度とか「Heartbeat」のイントロが聴こえてからグッズのタオルを取り出すまでのスムーズさとかからみてかなり現場慣れした食べ友さんと思われる。あの子いずれはどこかのグループからデビューすることになりそうな…。

追記(4月18日)

この記事はサウンドプロデューサーの貝塚翔太朗さんのお目に留まり、ツイートでご紹介いただいたことで思いがけず多くのアクセスがあった。本稿ではメンバーたちを主体にした書き方をしたけれども、この曲が放つ魅力は、貝塚さんをはじめ作曲者の村山シベリウス達彦さん、振付けを担当したB.M.Hのみなさんの力量によるところが大きいことを、遅まきながら付け加えておきたい。

最後の「余談」については食べ友さんによるツイートを参照。特に踊っている後ろ姿が子供っぽくみえたんだけど、わからないもんだな…(でも“バ○ア”はひどい)。もしこういうのをご本人が目にしてご気分を害されたらごめんなさい。



追記(4月21日)

4月5日のららぽーと柏の葉店でのリリースイベントの動画が公開されたので貼り付けておく。私は第二部を見たのだけど、おそらくは一部と二部を混ぜて編集しているかと思われる。

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