SRAM「ユー・メイ・ドリーム / 可愛いアノ娘」

2015年6月28日


今月9日にSRAMの両A面シングル「ユー・メイ・ドリーム / 可愛いアノ娘」 がリリースされた。SRAMは福岡を拠点とするアイドルグループ、LinQから派生したロックユニットで、かつて博多を中心に栄えた“めんたいロック”のスピリットを継承すべく活動を繰り広げている女の子たちである。今作には博多を代表するロックバンドの有名曲のカヴァー2曲が収録されている。


ユー・メイ・ドリーム」はシーナ&ロケッツのカヴァーで、彼女たちはすでに昨年に「レモンティー」をカヴァーしていたから、シナロケカヴァーとしては第二弾ということになる(正確には「レモンティー」は前身のサンハウスの楽曲だが)。プロデューサーのCrazy.Funky.TOMYさんよると[1]この曲は1月に録音したそうだが、2月14日にシーナさんが亡くなったことで、はからずもシーナさんへの追悼という意味合いを背負い込むことになった。シーナさんは「レモンティー」のカヴァーをたいそう気に入っていたようで、SRAMのことは亡くなるまで気にかけていたらしく、葬儀の際に鮎川誠さん経由でSRAMへの伝言も伝えられたという。メインヴォーカルのMYUさんは「シーナさんと共演したくてこの曲を選んでもらった」とコメントしている[2]が、トラックダウンが終わったのが亡くなった翌日だったそうで、共演はおろか聴いてもらうことさえできなかったのが惜しまれる。

このSRAMによるカヴァーは、13歳のMYUさんのいたいけな歌声のかわいらしさを強調した作りになっている。この曲は寺嶋由芙さんも先月にリリースされたメジャーデビューシングル「ふへへへへへへへ大作戦」でカヴァーしているのでいい比較対象になるのだが[3]、太くて強い声を出すことを意識したというゆっふぃーのヴァージョンがかっこよさを志向しているのとは好対照をなしている。このあたりはそれぞれのカップリング曲の性格によるところも大きいのだと思う。どちらが正解ということもないだろうが、“時分の花”とでもいうべき可憐さが、このSRAM版の魅力となっている。



一方の「可愛いアノ娘」は、少し背伸びした少女の心意気を感じさせるような壮快なロックである。この曲はおそらく一般にはザ・ロッカーズによるヴァージョンで知られていると思うが、私も正確な経緯を知らないのだが、オリジナルは山部善次郎さんだったらしい。このSRAM版はその山善さんがシャウトで参加し、MVにも出演して華を添えている。

ところで、TOMYさんが「本当はルーツにまでいってほしいんですけどね」と話しているのでためらわずに踏み込んでいくことにするけど、この「可愛いアノ娘」にはザ・フーの「サマータイム・ブルース」(MV)からの影響が顕著に認められる。この曲はオリジナルはエディ・コクランなのだがザ・フーによるカヴァーが有名で、山善さんやロッカーズが元にしたのもおそらくザ・フーのヴァージョンだろう。特徴的な低音の箇所がないのでヴォーカルのメロディは印象がやや異なるが、ギター・パートはほぼそのままという感じがする。

「レモンティー」でもそうだったけど[4]、洋楽ロックについては通り一編のことしか知らない私でさえ簡単にルーツを辿れてしまうあたり、めんたいロックのオリジナリティって一体何なのだろう、と思わなくもない。オマージュとかパロディと見做すのも些か困難なこうした“創作”は、熱心な洋楽リスナーと一般的な音楽ファンの間に圧倒的な情報格差があったからこそ可能なことで、SNSの発達した今もしこんなことをしたら、きっと猛烈に炎上するに違いない。

まあともかく、前にも書いたけどこうしてアイドル楽曲の根を掘っていくとロック史上のビッグネームに行き当たるというのは、今のアイドルシーンのおもしろさを象徴する現象でもある。今これを書きながらも、アイドルのCDのレヴューにエディ・コクランの名前が出てくるのがおかしくて仕方ない。

現在のアイドルブームが過去のムーヴメントと結びつくことによってシーンがより活況を呈するなら、それは実に望ましい傾向である。最近ツイッター上でミュージシャンの間にカヴァーをめぐるトラブルが起きて[5]、カヴァーというものの難しさという側面も露わにされたが、「レモンティー」や「可愛いアノ娘」がそれぞれのバンドのオリジナル曲として通用してしまうような鷹揚さが良くも悪くもロック本来の精神風土だと思うので、こうした試みは今後もさらに追求されていって欲しい。


脚注
  1. ^ 「めんたいロック」継承のために生まれたアイドルユニットとは【福岡にリンク】|エンジョイ!マガジン
  2. ^ LinQ発の派生ユニット“SRAM” 初の全国流通版となる3rdシングルを6月9日に発売! | GirlsNews
  3. ^ 寺嶋由芙さん「ふへへへへへへへ大作戦」 - Giorni Cantabili
  4. ^ 第3回アイドル楽曲大賞2014 - Giorni Cantabili
  5. ^ カルメン・マキ、キレる。 - Togetterまとめ
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