寺嶋由芙さん「いやはや ふぃ〜りんぐ」

2015年11月23日


今月11日に寺嶋由芙さんのメジャー2枚目のシングル「いやはや ふぃ〜りんぐ」がリリースされた。9月に設立した自主レーベル“#Yuffy_Store”からの第一弾シングルで[1]、タイトル曲は自ら作詞し、“寺嶋由芙 with ゆるっふぃ〜ず”名義で十体のゆるキャラとコラボレーションしている。

この曲を一聴して感じたのは、これまでゆっふぃーがソロになってからの楽曲をプロデュースしてきた加茂啓太郎さんのテイストが希薄で、代わってゆっふぃー自身の嗜好が前面に押し出されているな、ということだった。それでプロデュースがどういう体制になっているのかが気になっていて、盤を手に入れるとすぐにクレジットの記載を確認してみたのだが、前作との違いが微妙過ぎて詳しいことはわからなかった。

ただ、これまでの作品では恒例だった加茂さんによる饒舌なまでの趣旨説明が今作では今に至るまで出てきていないこと、現在のところ加茂さんは新たに立ち上げた“フィロソフィーのダンス”というグループの方に掛かり切りでいるらしいことから推して、実際にはセルフプロデュースにかなり近い形で制作が進められたのではないかと思われる[12]。自主レーベルの設立というニュースを知った時にはその意味がよくわからなかったのだが、実際に音を聴いてみてこういうことかと得心が行った。

作・編曲もいつものrionosさんではなく、ゆっふぃー作品では初めて鶴崎輝一さんが起用されている。曲調はゆっふぃー好みのかわいらしさに溢れていて、ゆるキャラのファンだったり、それこそ小さな子供たちにも親しみやすいものとなっているのではないだろうか。聴き手の間口を広げることをだいぶ意識したと思わせる作りだが、Aメロの低音に控えめだがEDM風の動きがあったり、2番から大サビへのつなぎのパッセージに三拍子を採用していたりと新鮮な趣向にも事欠かない。

ゆっふぃーの歌唱もこれまでになくかわいさが強調された仕上がりで、それこそ聴いていて胸がキュンキュンする。本人もインタビューで「歌い方も、ゆるキャラファンにとってアイドルは『かわいいもの』だから、その先入観のまま、かわいく歌いました」と語っている[2]。最近はテレビのナレーションの仕事などもこなすようになったのでゆっふぃーの声を聴く機会は多いのだが、実はその度に発声がすごく綺麗になったな、と感じていた。少し高めのトーンで女の子らしいかわいい声を使いながらも、不自然に飾ったような調子にならないので心地よく聞ける。滑舌も以前と比べるとかなり改善されており、おそらく地道に努力を重ねてきたのだろう。曲調とも相俟って、そういう成果が歌にも如実に表れているように思う。

歌詞はゆるキャラにハマる瞬間を恋の始まりに重ねたもので、自身の普段の口癖がふんだんに盛り込まれているほか、ゆるキャラにまつわるキーワードが随処に散りばめられていて、西洋の寓意画を読み解くような知的なスリルを味わわせてくれる。タイトルの“いやはや”からして配信番組「#ゆっふるーむ」[3]での頻出語で、そうした場でのトークに慣れ親しんだ人なら聴いていてニヤリとさせられること請け合いである。そんな中に“をたく”の語が隠されているところがまたいかにもゆっふぃーらしい。

MVは十体のゆるキャラとの共演なのでさすがに賑やかな映像になっている。場所が銭湯なのは「ゆるキャラをふだんいない場所に連れていこうというコンセプト」だという[4]。ヲタク相手には決して見せないゆっふぃーのデレた表情だとか、“あざとい”は褒め言葉だと思っているふしのある[5]ふっかちゃんのアイドルっぷりとか、みっけちゃんの華麗なターンなど見どころは多く、忘れものをチェックするオカザえもんの律儀なような不審なような挙動(断じて女性の下着を物色しているのではない!)[6]もいいアクセントになっている。

声の出せるキャラクターは音源の方にも参加していて、ペッカリーはコーラスで得意の美声を響かせている。有明ガタゴロウが“永遠の56歳”らしからぬかわいい声で合いの手[7]を入れる一方、ちょうせい豆乳くんは空気を読まない粗野なかけ声[8]を飛ばしていて、それぞれのキャラクターの個性が表れておもしろい。


カップリングの「ぼくらの日曜日」もゆっふぃー作品では初の起用となる宮崎誠さんの作・編曲で、ギターサウンドが心地よく響く、どこか懐かしいテイストのナンバーである。歌詞は早稲田大学の同期生でミスiDのオーディションでも同期だった詩人の文月悠光さんとの共作で、互いに相手を思い合うアイドルとヲタクたちの週末をテーマにしている。

この曲は「いやはや ふぃ~りんぐ」のカップリング曲で、週末好きな人に会いにいく時の気持ちを、週末好きなアイドルに会いにきてくれるヲタさん、そして週末好きなヲタクに会いにいくアイドルの気持ちに重ねた曲です(゚ω゚)

【ライブレポ】寺嶋由芙スペシャルライブ in サンリオピューロランド ヾ(*゚ω゚*)ノ|ゆふろぐ(*´∀`)~♪

今回は変なタイミングで風邪を引いてしまったせいでリリースイベントに行きそびれて、かなり凹んでいたのだが、思い返すとゆっふぃーと出会えてからたくさんの優しい気持ちを教えてもらったなと、この曲を聴きながらそんな感慨にとらわれて心が暖かくなった。



先にも少しふれたがこのところゆっふぃーは活躍の場を着実に広げていて、そろそろ私も情報を全て追うのが大変になってきている。そんなうれしい悲鳴の元となっている活動の一つがドラマ『監獄学園』への出演で、上に貼ったのはそのマユミ役の衣装での“おどってみた動画”である。ヲタクとしてのひいき目もあるだろうけど女子高生姿もなかなか様になっていてかわいい。コスプレ感は…、私は感じないよといっておく。

ドラマは壮快なまでにバカバカしい内容で、タイトルからパノプティコンとか規律権力といったテーマ[9]を予想すると肩透かしに遭うのだが、お下劣もここまで徹底すればもはやあっぱれというほかない。こういう趣向のドラマでゆっふぃーにお呼びがかかったというのがやや意外なのだが、第1話[10]ではかなり衝撃的なシーンもあり、千代役の武田玲奈さんともども体を張った演技で楽しませてくれている。


今年の9月に音楽祭「夏の魔物」に出演した際、そのステージを見たJOJO広重さんがブログで感想を述べているのだが、その言葉がそんな最近のゆっふぃーの活躍ぶりを実に的確に言い当てている。

ゆっふぃーこと寺嶋由芙ちゃんは元BiSメンバーの中では、元BiSとしてではなく、最も早く彼女オリジナルの「世界」を構築し実現した一人だと思う。

青森・夏の魔物/成田大致の”世界” | JOJO広重|じょじょひろしげ(非常階段) official ブログ by ダイヤモンドブログ

正確なところはよくわからないが、楽曲制作の方向性をかなりの程度任せてもらっていると思われる今回のシングルを聴くにつけ、そんな思いを深くする。半年ほど前まではブログ等に綴った文章に不安で心細いような心情をふと覗かせることもあったのだが、気がついてみるとそういうこともほとんどなくなってきた。もちろん今でもいろいろと思い悩むことなどはあるだろうし、アイドル界の厳しい競争を生き抜く上での苦労は絶えないのだろうけど、今のゆっふぃーは心の芯に何か確信めいたものを掴んでいるように見える。

苦しい時をともに歩んできたゆふぃすととしてそこに一抹の寂しさを感じなくもないのだが、ちょうどそんなタイミングで「でも全然大丈夫じゃないからね、あなたに来てもらわなくちゃ困っちゃうからね!」[11]と煽ってみせるあたり、さすがに私の見込んだクレヴァーなアイドルだけのことはある。ゆふぃすとは“#Yuffy_Store”の強制的構成員だそうで、そもそも“ゆふぃすとあ”というレーベル名に“ゆふぃすと”が入っている時点で、よくできた構想というほかない。

まあ何というか、何かの節目を迎えるごとに「推しててよかった」と思わせてくれる、素敵なアイドルである。

ああ ぼくらの未来 もしも 雨降りでも
ひとつ傘 ふたり ずっと
隣にいたいな
ぼくらの日曜日 - 寺嶋由芙 - 歌詞 : 歌ネット

脚注
  1. ^ 寺嶋由芙がユニバーサル内に自主レーベル設立「わくわくしております」 - 音楽ナタリー
  2. ^ 寺嶋由芙、ゆるキャラ10体と共演『オタサーの次はゆるサーの姫を目指したい』/<視線の先>インタビュー - トレンドニュース
  3. ^ #ゆっふるーむ - SHOWROOM(ショールーム)
  4. ^ Featured Interview with Yufu Terashima: The Latest Single “Iyahaya Feeling” and Yurukyara | Japanese kawaii idol music culture news | Tokyo Girls Update
  5. ^ ふっかちゃん11月9日付のツイート
  6. ^ オカザえもん10月29日付のツイート
  7. ^ クレジット上は“GAYA”という名目になっている。
  8. ^ これも同じく“GAYA”。
  9. ^ 「監獄が工場や学校や兵営や病院に似かよい、こうしたすべてが監獄に似かよっても何にも不思議ではないのである。」(ミシェル・フーコー「監獄の誕生」p.227)
  10. ^ ドラマ「監獄学園-プリズンスクール-」第1話 - ニコニコ動画:GINZA
  11. ^ リリース週最終日ヾ(゚ω゚)ノ|ゆふろぐ(*´∀`)~♪
  12. ^ 12月15日追記: 12月15日付の加茂さんのブログ記事によると、「悪い意味ではなく ディレクションは新しいスタッフに最近は任せて僕はオブザーバーという感じです。」という。
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