キャンベルカップの地上波放送、男女シングルについては全選手を放送してくれてまずは一安心。荒川さんの成功物語にいらいらさせられるようなこともなく、懸念材料が全て杞憂に終わったのはありがたいことだった。
シーズンはじめのこの時期の開催ということで各選手の今シーズンのプログラムのお披露目ということでも注目されるこの大会。すでに完成度の高い演技を見せてくれた選手もいれば昨シーズンのプログラムで臨んだ選手もいて様々だった。
ジョニー・ウィアー選手:チェスの王様
ほぼノーミスの内容でそつなくまとめてきたという感じ。高い点は出ていたものの彼本来の魅力の感じられない、私としては少し不満の残るプログラムだった。トリプルアクセルは高さも幅もあり見事。ステップも滑らかに足を運べていてなかなかよかったと思う。
中庭健介選手:アランフェス協奏曲
この曲は日本男子では本田さんが素晴らしい演技を見せてくれたもので、見る人にはその印象が強く残っているのでこれを滑るのは少し損な気がする。ジャンプの調子が悪くて見せ場を作れていなかった。スピンでバランスを崩してしまったのも残念。ただ四回転に挑戦する選手が少なくなってしまっている中で強いこだわりを持って取り組んでいるのは頼もしいところ。
高橋大輔選手:オペラ座の怪人
彼に合ったいい音楽だと思うのだけど、曲の編集の仕方が悪く全体にやや単調で冗長な感じがしてしまうように思った。もう少し緩急のメリハリをつけたドラマティックな構成にした方が彼のよさが生きるのではないかと思う。靴を新調した影響か、先週のアイスショー出演の疲れもあるのかジャンプでミスを連発。ただ全体の動きはそれほど悪くはなかったと思う。ステップはやはり華麗で見映えがする。
スコット・スミス選手:ロミオとジュリエット
多分初めて見た選手だと思う。典型的なアメリカの好青年といった印象を受ける。演技はやや情感に欠ける感じがするが、ジャンプの技術には手堅いものがあるように思った。四回転サルコウはすっぽ抜けてしまったがほかに目立ったミスはなく、さわやかな印象の演技。
織田信成選手:チャイコフスキー 交響曲第4番
最初に織田選手がこの曲を滑ると聴いた時は今までの彼のイメージと懸け離れているように感じ、少し難し過ぎるテーマを選んでしまったのではないか、と思ったのだけど実際見てみるとそれほど違和感はなかった。寧ろこの時期にしては非常に高い完成度で、男子の中では最もいい演技だったと思う。好きな音楽なので気分よく見ていられたというせいもあるとは思うけれど。もう少しこれまでの彼のコミカルな雰囲気をそのまま活かせるようなプログラムでもよかった気がするのだけど、本人はもっと大人の雰囲気の表現を身につけていきたいという意志が強いのかも知れない。
エヴァン・ライザチェク選手:カルメン
昨シーズンのプログラムをもう一度見せてくれた。滑り慣れているだけあってよくこなれた演技。あらためてこのプログラムは曲のつなぎ方がうまくできていると思う。高橋選手もこうしたプログラムならいいのに、と思ってしまう。長身をいかしたダイナミックな演技だけど、今の時期に古いプログラムを滑っているというのは今シーズンの準備はどうなっているのかと少し心配にもなる。
浅田舞さん:白鳥の湖
黒いコスチュームなので黒鳥オディールを演じているのだと思う。黒鳥といえば今シーズンの太田由希奈さんのショートプログラムと重複してしまっている。曲がかぶった場合というのはどうしても力の劣った選手に不利に働いてしまうのではないかと思うが、現状では由希奈さんの方がそのことを心配しなければならない立場にあるのだろうか。由希奈さんのファンとしては少し気がかり。(追記参照)
これまでより氷に立った姿が大きく見えるように感じるのは実力のついてきた証拠だと思う。すらりとした長い手足をいかした優美な演技は真央ちゃんとは違った魅力。芸能活動は引退してスケートに専念するとのことで、今シーズンの飛躍が期待される。
エミリー・ヒューズ選手:シルヴィア
元気で力強い演技が印象的。ジャンプの軸が空中で崩れてしまっても力で踏みとどまってしまうのはこの選手の個性の一つといえるだろうか。昨シーズンに比べるとしなやかさも増してきているように思った。体をひねった少し変わった姿勢でのシットスピンも印象に残った。実況のアナウンサーは姉とよく似ていると強調していたけど私はサラさんとは少し持ち味が違うように思う。
安藤美姫さん:シェエラザード
昨シーズンの苦しそうな姿を見てきただけに彼女が楽しそうに滑っているのを見るとうれしくなってしまう。よく滑り込めているようで完成度の高い演技だったと思う。女子では一番よかったのではないか。ステップの部分はテンポが速く激しい曲調の音楽だが音に負けずによく動いて踊れていたと思う。
サーシャ・コーエン選手:黒い瞳
こちらはすでに見慣れた「黒い瞳」。相変わらずの柔軟性をいかした優美な演技で魅せてくれた。ただフリップがパンクしてしまったほかスピンもいつもよりスピードがなかった気がする。グランプリシリーズ欠場がすでに決まっているが、今シーズンの試合出場がどうなるのか気になるところ。新しいプログラムは準備しているのだろうか。
浅田真央ちゃん:チャルダーシュ
曲はロマ(いわゆるジプシー)の伝統音楽に根ざしたモンティの作品。意図して選んだのかはわからないが、昨シーズンの「カルメン」でロマの女性を演じた経験をいかせるプログラムだと思う。子供から大人へと成長しつつある難しい年頃にある今の真央ちゃんには助けになっているのではないだろうか。表現のスタイルとしてはまだあどけない少女が大人の女性の妖艶さを演じようと努力している姿がいじらしくかわいらしい、といったところで、今の真央ちゃんにはベストな選択ではないかと思う。サーキュラーステップは曲が加速していく部分で、こうしたところをもっと曲に合わせられるようになればさらにいいプログラムになっていくと思う。
冒頭のトリプルアクセルの失敗は右足でステップを踏んでから踏み切る難しい入り方に挑戦したため。彼女はモティヴェーションを保つためには常に新たな挑戦を必要とするタイプなのだろう。真剣勝負に臨む前にこうした大会で新しい技を試すのはいいことだと思う。
キミー・マイスナー選手:ガリシア・フラメンコ
彼女もトリプルアクセルに挑んできた。練習では成功していたらしいが本番ではあえなく失敗。つられるようにジャンプでミスが続出。ただ全体としてはそれほど悪い動きではなく、優勝した昨シーズンの世界選手権の時よりもむしろよく踊れていたのではないかと思う。
スタジオではゲストとして荒川静香さんが出演。落ち着いたそつのない受け答えはゲストコメンテイターというよりももう一人のキャスター、といった感じ。堂々とした態度はさすがに金メダリスト、と思わせるのだけど完璧過ぎる荒川さんには少し寂しさも感じてしまう。もう少し初々しい感じがあった方が素敵でかわいらしい気がするのだけど。
音楽情報:浅田真央ちゃん使用曲「チャルダーシュ」について
追記:10月18日
浅田姉妹の公式サイトによると舞さんのフリープログラムは「白鳥の湖」に変更された。(もっささんに教えていただいた。)