グランプリシリーズ 2011 男子シングル

2011年12月19日

男子ではハビエル・フェルナンデス選手の躍進が目についた。昨シーズンまではニコライ・モロゾフコーチが凝った振り付けで彼のよさを生かそうとしているのが感じられたが、今シーズンはブライアン・オーサーコーチに師事することでスケーティングの技術が全般的に向上し、本格派の演技にかわってきているように見受けられる。そして何といっても二種類の四回転ジャンプは圧巻である。ファイナルでは初の表彰台という成果を手にしたが、これは決して一時の勢いではなく、世界のトップ選手と言われるに相応しい実力をつけてきたとみて間違いないだろう。

シニア2年目の羽生結弦選手も進境著しい。ステファン・ランビエールさんに助言を仰いだとのことで、四回転ジャンプはコツをつかんだようでかなり自信を持っているらしい。仙台に拠点を置く彼は震災でしばらくは避難所で過ごしたそうで、今シーズンは被災地にみなさんを勇気づけたいとの思いも込めて競技に臨んでいる。そんな彼を心から頼もしく思う。

ベテラン高橋大輔選手の復調も心強い。シーズンオフに膝に埋まっていたボルトを抜く手術をした関係でジャンプの練習は十分に積めなかったようだが、その分フランスでアイスダンサーたちと一緒にスケーティングを練習してきたそうで、元々トップクラスだった音楽表現がさらに豊かなものになった。今シーズンはSP、フリーともに抑揚のない曲を選んでいて、演技中に曲に助けてもらうということがしにくいプログラムなのだが、それでも見ていると曲の世界にぐいぐいと惹き込まれていく。後は四回転ジャンプが戻れば、ということになるが、NHK杯フリーの6分間練習中に四回転フリップを降りたのが生涯初の成功とのことで、これからに期待したい。

四回転ジャンプといえばブランドン・ムロズ選手にもふれないわけにはいかない。グランプリシリーズが始まる前のアメリカでの大会で、彼は何と四回転ルッツを成功させ、フィギュアスケートファンを驚かせた。NHK杯のSPでも、この驚異的な技を見せてくれた。四回転ジャンプといえばこれまでトウループとサルコウしかなかったのだが、技術の進展もついにここまで来たか、と感慨深い。しかしこれほどの技を成功させても成績はさほどでもない、というのがこの競技の奥深いところである。

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グランプリシリーズ 2011 女子シングル

2011年12月19日

ブログの更新をサボっているうちにグランプリシリーズもファイナルまで終了してしまった。全日本選手権ももう間もなくだがその前にこれまでをざっと振り返ってみる。


今シーズン目を引くのは、まず何といっても鈴木明子さんの活躍だと思う。NHK杯では競技生活で初めてトリプルトウループ–トリプルトウループのコンビネーションを成功させ、ファイナルでは成功はしなかったもののトリプルフリップ–トリプルトウループという高何度の技に挑戦した。6分間練習ではこのコンビネーションを成功させている様子も確認することができた。フィギュアスケート界ではもうベテランと呼ばれる年齢の鈴木さんがジャンプの難度を上げるというのは実に驚異的なことだ。適切な比喩かどうかわからないけど、野球でいうなら30歳を過ぎたピッチャーが球速を増した、というのに近いだろう。昨シーズンの世界選手権出場を逃した悔しさをばねに、これまでになく意欲的に練習に打ち込んできた結果がこの躍進につながっているようだ。ファイナルでは自己最高の2位という成果を得たが、PCSでもかなり高い点をもらえるようになってきているので、シーズン後半に向けてもさらに期待が高まるところである。

プログラムはSP、フリーとも魅力的だが、SPの「ハンガリー狂詩曲」でアクセルの前のつなぎの部分で小走りに駆けるようなところは長久保裕コーチのアイディアなのだそうだ。ここは「豊の部屋」で太田由希奈さんが好きだと仰っていたところだが私もお気に入りで、鈴木さんのコーチを長年務めてきた方だけあって、さすがに彼女の魅力をよく知り抜いてらっしゃるな、と思う。


浅田真央ちゃんはトリプルアクセルに過剰にこだわらなくなったのが目を引く。元々真央ちゃんは決してジャンプだけの選手ではないので、状況に応じてアクセルをトリプルとダブルで使い分けるようにするばより安定した成績が残せるようになるだろう。

しかしファイナルを直前にしてお母さんが亡くなったのは実に悼ましいことだった。親を亡くすのは誰にとっても辛いことだが、真央ちゃんはまだ21歳。しかもフィギュアスケートが家族の献身的な支援がなくては成り立ちにくい競技であることを思えばなおさらである。競技生活の支えとしてなくてはならない人だっただけでなく、一人の女性としてもお母さんとの関わりを通して学びたいこともまだまだたくさんあったに違いない。しかし真央ちゃんのことだからきっとこの悲しみも乗り越えて、また力強く復活を遂げてくれることと思う。

SPの「シェエラザード」は音楽のアレンジがあまりに凝り過ぎていて今一つのることができない。原曲がこれ以上は望むべくもないほどファンタジーに満ち溢れているのだから、余計な装飾を施したりややこしい変奏をしてみたからといってより豊かなイマジネーションがかき立てられるということもないと思うのだが。しかしスタイルのいい真央ちゃんにはパンツルックもよく似合うということがわかったのはこのプログラムの収穫だった。本当はもう少し肉付きがいい方がアスリートとしても健康のためにもいいのだろうけど。昨シーズンの世界選手権の際のあまりの激やせぶりも含めて、このあたりはお母さんの闘病とも関係があるのかも知れない。

フリーの「愛の夢」は昨シーズンからの持ち越しだが、素晴らしいプログラムに仕上がってきているのを感じる。真央ちゃんもいろんなタイプのプログラムをこなしてきたが、真の真央ちゃんらしさとはこういう方向に定義づけられていくべきなんだろうな、と思わせるものがある。今後の大会でより完成度の高いものを見せてもらえるのを楽しみに待ちたい。


ファイナルを制したのはカロリーナ・コストナーさんだった。もう長いこと世界の一線で活躍している彼女だが、ヨーロッパ選手権では3度の栄冠に輝いているものの、世界規模の大会では意外にもこれが初めての優勝になる。好不調の波が激しい選手だが、今シーズンは安定して実力が発揮できている。怪我をした昨シーズン以来ルッツをプログラムから外しているが、それを補ってあまりあるだけのスケーティング技術の持ち主なので、他のジャンプが安定すればライバルたちにとって脅威になるだろう。真央ちゃんのお母さんの訃報を聞かされた時は絶句して涙をこぼしたという心やさしい一面も持つカロリーナ。これからもこの調子で活躍して欲しい。


今シーズンのグランプリシリーズで旋風を巻き起こしたのがシニア初挑戦のエリザヴェータ・トゥクタムィシェワさん。グランプリシリーズ初参戦で優勝は史上初の快挙で、しかも第2戦でも優勝してしまうという快進撃だった。ファイナルではSPでつまづいてふるわなかったが、トリプルルッツ–トリプルトウループを軽々と決めてしまうジャンプの能力は他のお姉さん選手たちにとって脅威である。練習ではトリプルアクセルも成功させており、今後の成長には目が離せない。彼女も今年4月にお父さんを亡くしていて、SPの黒い衣装はお父さんへの哀悼の意を表したものだそうなのだが、そんな悲しみにも耐えて競技に打ち込んでいる彼女に温かい声援をおくりたい。


昨シーズンのグランプリファイナルの覇者、アリッサ・シズニーさんは引き続き安定した演技でファイナル進出を果たしたが、そのファイナルでは足首の怪我があったそうで思うような演技ができなかったのが惜しまれる。しかし彼女も鈴木さんと同様トリプル–トリプルのコンビネーションに取り組んでいるので、その成果が表れるのが楽しみである。

そのシズニーさんと同じく佐藤有香夫妻の元で練習している今井遥さんはシーズンオフに足を怪我してジャンプの練習が十分にできなかったそうで、本来の力を十分に発揮できなかったのが惜しまれる。しかし有香さん夫妻の指導でスケーティング技術に磨きがかかり、シズニーさんという素晴らしいお手本を間近に見ることでスピンが上達していることでもあり、今後の活躍が楽しみである。独特のはにかんだような笑顔がとても魅力的な選手で、いつもキス&クライで両手でハートマークを作ってくれるのを見る度にハートをきゅんと撃ち抜かれてしまう。

笑顔がかわいいといえば忘れてならないのが村上佳菜子ちゃん。今シーズンは新調した靴が合わないとかで苦しんでいて、なかなかいつもの輝くような笑顔が見られなかった。これまで順調にキャリアを重ねてきた彼女だが、苦手なループをSPとフリーの両方に採り入れるなど、山田満知子コーチは将来を見据えて敢えて険しい道程を歩ませようとしているようだ。佳菜子ちゃんならきっとそんな親心に応えて、また一回り大きく成長してくれるだろう。


なお、グランプリシリーズの各大会は今シーズンからエントリーする選手の数と基準が変更されて、以前よりも出場が厳しい門になっている。そのために出場選手の顔ぶれが例年より限られた人数になっていて、クヮク・ミンジョンさんとかアマンダ・ドブズさんといった私のお気に入りの選手が出場していないのはおそらくそのせいなのだろう。しかしこういった実力ではトップ選手にまだ一歩及ばない選手たちにとっても、グランプリシリーズのような大きな大会への出場は得難い成長の機会なので、門戸はなるべく広く開いておいた方がいいのではないか。今回の変更がどういう趣旨で行われたのかよく知らないのだが、この点は改善した方がいいように思う。

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