世界選手権2011 男子シングル

2011年5月26日

パトリック・チャン選手

SP、フリー合わせて3度の4回転ジャンプを成功させての優勝。歴史的快挙と呼んでもいい圧巻の演技だったと思う。元から評価の高かったスケーティング技術に加え、今シーズンは4回転ジャンプの安定性でも他を圧倒して、まさに敵なしの状態だった。これまでは優れたスケーティングの割りにはプログラムのドラマティックな表現があまり上手ではない印象もあったのだが、フリーの演技では緊迫感の漂う演技が素晴らしかった。昨シーズンからプログラムを持ち越したのは自分の表現に自身も満足できていなかったのでもっと演技を深く追求していきたいという意欲があったためらしいのだが、そういう意気込みの成果がよく表れていたと思う。これからしばらく男子シングルは彼を中心に回っていくことになるだろう。


小塚崇彦選手

小塚選手の銀メダルもうれしかった。事前の段階から好調が伝えられていて、それを裏づけるように予選でも圧倒的な高得点でトップ通過して期待を持たせてくれた。それだけにSPでトリプルアクセルの着氷が乱れてしまったのが惜しまれる。しかしフリーは目の醒めるような完璧な演技で、チャン選手にも引けを取らない素晴らしい内容だった。銅メダルのアルトゥール・ガチンスキー選手も含めてメダリストには若い選手が並んだのが印象的な今大会だったが、これを見てベテラン選手たちがどう奮起してくるのかが楽しみになる。


高橋大輔選手

今回の結果にあらためて闘志をかきたてられているベテラン選手の一人が高橋選手だろう。演技中にエッジをとめるビスが抜けるという不運なアクシデントもあって不完全燃焼となってしまったが、そのことで却って競技への意欲を高められているようだ。東京開催を予定していた今年の世界選手権を以て一区切りという可能性も考慮に入れて臨んだシーズンだったのだろうが、この結果を天の配剤と受け止めて競技続行を決断したことを、うれしく、そして頼もしく思う。


フロラン・アモディオ選手

フリーでヴォーカル入りの音楽を使用したことが話題になったが、彼自身は試合後にユニヴァーサル・スポーツのインタビューに答えて、シーズン最後の大会なので観客のみなさんと一緒に楽しみたかったから、そして日本のみなさんへのささやかなプレゼントにしたかった、と説明していた。ルールに確信犯的に違反するというのは決してほめられたことではないが、そういうことだったのならこれも気が利いた演出だったといえるかも知れない。実際あのマイケル・ジャクソン・メドレーは、確かにヴォーカル入りの方が盛り上がるのだ。これが減点対象にならなかったのも、あるいは彼の意図するところが事前にジャッジに伝わっていたためとも考えられる。惜しまれるのはそれが放送局に伝わっていなかったことだった。実況の解説でそのことにふれてくれていれば、ルール違反であることを気にせず心置きなく楽しめたはずなのだが。まあそれはともかく、こんなプログラムが楽しめたのも開催地が急遽変更された今大会ならではのことといえそうだ。


このアモディオ選手のフリーに限らず、今回の大会は震災で甚大な被害を受けた日本に配慮した、気の利いた演出が随所にあって、大いに勇気づけられた。た。予定されていた東京での開催が震災のために中止になり、代替開催が急遽決まった今回のモスクワ大会だが、全ての日程が無事滞りなく進められたのは関係者の尽力の賜物だろうと推察する。スポーツの持つ力をあらためて感じさせられた大会だった。この大会が与えてくれた感動が、少しでも被災地の復興の力になることを祈りたい。

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世界選手権2011 女子シングル

2011年5月19日

すっかり遅くなってしまったけど世界選手権の感想まとめ。


安藤美姫さん

抜群の安定感で素晴らしい優勝だった。前回の優勝は僅差の競り合いの中で勝利が手許に転がりこんできたといった感じの結果だったけど、今回は勝つべくして勝ったという内容だった。本人としてはフリーの後半でダブルアクセル–トリプルトウループが抜けてしまったのが少し心残りかも知れない。しかしトリプル–トリプルもダブル–トリプルもない構成で優勝という結果からは、フィギュアスケートは単発の技ではなくて総合力が問われる競技なのだということをあらためて認識させられる。

シーズン途中で曲を変更したSPの「ガブリエルのオーボエ」は穏やかな曲調に当初は戸惑っていたようにも見えたが、すっかり板についてきた感じがする。トリノ・オリンピックのシーズンに「戦場のメリー・クリスマス」を選んだ時は明らかな選曲ミスだと思ったものだが、それを思うと実に感慨深い。

そしてまたエキシビションが素晴らしかった! 彼女が4回転サルコウをひっさげて颯爽と登場した頃には、競技以上にエキシビションでの演技が楽しみな選手になるとは思ってもみなかった。震災の被災者の心情を幼い頃に父を亡くした自分の気持ちに重ね合わせて共感する様子が演技からひしひしと伝わってきて、本当に素晴らしい選手になったな、と感嘆した。


キム・ヨナさん

事前の情報では好調と伝えられていたのでSPでトリプルルッツをステップアウトしたのには驚いた。フリーではルッツからのコンビネーションは見事に決めたものの、サルコウからのコンビネーションやフリップでミスが出てしまった。やはりこれほど試合から離れているとヨナさんほどの選手でも勘が鈍るのだろう。全体の印象としては手足を柔らかく使って表情をつけた演技が相変わらず優雅で美しかった。

SPはあまりバレエらしくは見えなかったけど、ピーター・オペガードコーチは敢えて従来の『ジゼル』のイメージを変えようと意図して衣装をデザインしたということなので、そういうコンセプトのプログラムならそれはそれでよかったのではないかと思う。フリーは個性的でいいプログラムだと思ったけど、さすがに今回が初めての披露ということで表現がやや淡泊に見えた。できれば来シーズンもこのプログラムを滑って、もっと完成度の高い演技を見せて欲しい。衣装は“Homage to Korea”と銘打つならチマチョゴリ風の民族衣装みたいなものにしてもよかった気がする。


カロリーナ・コストナーさん

シーズン序盤は怪我の影響でルッツとフリップを跳んでなかったけど、今大会ではSP、フリーともにフリップを入れてきた。SPでは転倒してしまったけど、フリップに挑戦できる程度には足の状態が改善しているのならフリーではかなり健闘するのではないかと予想していたら、期待した通りの素晴らしい演技だった。個人的にはこの人フリーが今大会の演技の中で一番心に残った。今シーズンはプログラムが二つともとてもよかったので、それが銅メダルという形で結果に出てすごくうれしい。


アリョーナ・レオノワさん

この人の大躍進はうれしい誤算だった。ジュニアチャンピオンに輝いた後、シニアではやや伸び悩んでいた感があったけど、これまでのもやもやを払拭するような活躍だった。ロシアはジュニア世代の台頭が著しくて、クセニヤ・マカロワさんも含めて現状ではトップ選手の位置にいる彼女たちも安閑とはしていられないわけだけど、今大会は彼女たちの意地と底力を感じさせる結果となった。

プログラムが二つともとても凝っていて、彼女の個性をうまく生かしていると感じた。会心の演技ができた時の喜び方がとにかくかわいいのが魅力的だ。


アリッサ・シズニーさん

SPではフリップ、フリーではルッツで転倒…。ある意味彼女らしい結果ではあったけど、しかしともかく一頃のことを思えばよくここまで立て直してきたものだと思う。引退というような話も出ていたが、せっかくこれだけの成績を残せるようになったのだから、もう少し競技を続けて欲しい。


浅田真央ちゃん

競技が始まる前の段階からすでにいわれていたが、とにかくやせ過ぎなのが目についた。足に力が入ってない感じで、演技が痛々しく見えてしまった。スピンの失敗というのも普段ならあり得ないミスだった佐藤信夫コーチからは回避を薦められていたようだが、こんな状態でもトリプルアクセルに跳んできたところは真央ちゃんらしかったけれども。地震の影響で開催が一か月ほど延期されたことが、真央ちゃんの場合にはマイナスに作用してしまったのかも知れない。自己最悪の6位というのは不本意な結果だろうけど、これもソチへ向けての一つのステップととらえて前を向いて進んでいって欲しい。


村上佳菜子ちゃん

そう悪い出来ではなかったと思うのだけど、今一つ点数が伸び切らなかったのが残念だった。確かにジャンプはいい時にくらべると力強さがなかったように感じたけど。これもシニアの壁ということなのか。しかしこの調子で実績を積んでいけばすぐにまた高い評価を得られるようになるだろう。


男子についてはまた後日。

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「SLOW WALK」

2011年5月 6日

作詞:MINAKO 作曲:樫原伸彦 編曲:樫原伸彦
アルバム「豹的 (TARGET)」(1989.07.05)に収録。

本田美奈子さんは自身が歌う曲の歌詞をいくつも手がけているが、最初に自作の歌詞を発表したのはロックバンド Minako with Wild Cats として活動していた時期のアルバム「豹的 (TARGET)」が最初である。このWild Cats としては二枚目のアルバムで、美奈子さんは三曲の歌詞を手がけている(「朝まで」は秋元康さんとの共作、「愛が聞こえる」は先行シングルとしてアルバムに先立って発表されていた)。このうちの一曲が「SLOW WALK」である。


ロックバンドとしての楽曲ながらバラード風の曲調で、せかせかと急ぎ足で道を通り過ぎることを戒めて「心で道を歩いて」と語りかける作品である。私はこの曲のことを美奈子さんが亡くなってから知ったが、最初に作詞に挑んだ作品の一つがこのような歌だったということに深く感銘を受けたものだった。

1989年といえばスローフードとかスローライフといった理念が日本で知られるようになるよりも何年も前のことである。過労死が社会問題として顕在化しつつあるまさにそのただ中で、「24時間戦えますか」という宣伝文句とともに空虚な華やかさが踊り狂ったあの忌まわしい時代…。そんな時代風潮に逆らうかのようにこうした楽曲を制作していたということに、美奈子さんの類い稀なる鋭敏な感受性を見る思いがする。

バラードということもありバンドサウンドはやや希薄な楽曲なので、ソロに戻ってからでも歌っておかしくなかったように思うのだが、詳しくは知らないが歌われる機会はあまり多くなかったようなのが惜しまれる。これからも折に触れ聴いていきたい美奈子さんの楽曲の一つである。この曲を聴きながら、美奈子さんのいうように心で道を歩くよう心がけたいと思う。

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