高橋大輔選手 今季のフリーは『道』

2008年10月28日

さっきNHKのニュースを見ていたら高橋大輔選手が今シーズンのフリー・プログラムにイタリア映画の巨匠、フェデリコ・フェリーニ監督の代表作『』の音楽(担当はニーノ・ロータ)を使用することを明らかにしたと伝えていた。『道』とはまた洒落た選曲をしたな、と思う。サーカスの動きを振付けにどんな風に採り入れるのか、あのジェルソミーナの主題はどんなところで使われるのかと興味は尽きない。中国杯で見るのが楽しみになる。

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スケートアメリカ2008 女子シングル フリー

2008年10月28日

ニュースでヨナさん優勝、中野さんが2位という結果だけ知って放送を見た。


スザンナ・ポイキオさん:ラフマニノフ チェロ・ソナタ〜ピアノ協奏曲第2番

フィンランドのベテラン選手は全体をそつなくまとめて総合6位と健闘した。音楽はラフマニノフのチェロ・ソナタのスケルツォとピアノ協奏曲のフィナーレのコーダをつなぎ合わせたもの。中間のスロー・テンポな部分がちょっとわからなかった。同じチェロ・ソナタのようではあったけどどの部分かがわからなくてちょっと悔しい。


アネッテ・ディトルトさん:サン=サーンス「白鳥」

この人の演技が放送されるとは。私は見るのはもしかすると初めてだったかも知れない。ほっそりとした体型が魅力的な選手。ジャンプを尽く失敗してかなり痛々しい感じの演技だったのだけど、めげずに笑顔で滑り切った心の強さが長年ドイツの第一人者として君臨してきた秘訣なのかも知れない。


キミー・マイスナーさん

こちらもジャンプが不調で見るのがつらい感じの演技。モチベーション自体をどこまで維持できているのか、ちょっと気になるような出来だった。


レイチェル・フラットさん

トリプル–トリプルのコンビネーションを自重して無難にまとめてきた。キミーもそうだけど彼女も体型でちょっと損をしているかな、という気がする。しかしアジア系の選手が世界に出ても体型で見劣りせず、むしろヨーロッパ系の選手の方が彼女たちに比べて見劣りしてしまうということに驚いてしまう。


長洲未来ちゃん:オッフェンバック「天国と地獄」ほか

終盤に疲れが出たのかミスを連発してしまった。でもシニアのグランプリシリーズ初参戦としてはいい内容だったのではないかと思う。振付けは随所にかわいらしさが出ていたので今度はもっと完成された演技を見せて欲しい。


中野友加里さん:『ジゼル』

ジャンプの調子が今一つなのかトリプルアクセルを回避。中野さんらしい思い切りのよさが見られなかったのは少し残念。衣装や振付けはなかなかかわいらしくてよかったけど、欲を言えばもう少しプログラムにメリハリをつけて、自然な盛り上がりをつくり出せる部分があった方がよかったかな、と思う。


安藤美姫さん:『ジゼル』

こちらも4回転のサルコウを回避。やるぞと見せかけて本番ではぎりぎり回避するというのはモロゾフコーチ得意の戦術なのだろうけど、安藤さんのモチベーションがそういうやり方についていけるのかは気になるところである。冒頭のコンビネーション・ジャンプがダウングレードされたせいもあり得点は伸びず、今回はこの作戦が奏功とはいかなかった。そろそろ本気になって跳ばせて上げてもいいのではないかと思うのだけど。

衣装や振付けはちょっとかわい過ぎて今の安藤さんには似合わないような気がした。中野さんとの『ジゼル』対決ということで言えば中野さんの方がクラシック・バレエらしさが出ていたように思う。


キム・ヨナさん:リムスキー=コルサコフ「シェエラザード」

冒頭のコンビネーション・ジャンプは二つ目のトウループの着氷がやや引っかかったような感じでいつものヨナさんらしさがなかったかな、という感じがした。6分間練習では踏み切る前のところで転倒していたループはやはり苦手意識であるようで初めから諦めたような跳び方でシングルにしていた。それでも全体には高いレベルの安定した演技で地力のあるところを見せつけた。

プログラムはただ名旋律を漠然とつなぎ合わせたような感じで全体にやや散漫な印象を受けた。昨シーズンの『ミス・サイゴン』に比べて今一つ惹き込まれるようなものを感じなかった。ただ今後繰り返し見るうちにその印象も変わってくるかも知れない。

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スケートアメリカ2008 女子シングル SP

2008年10月27日

今年も選手の一挙手一投足にはらはらどきどきさせられる季節がいよいよやってきた。まずは女子シングルSPの感想から。


レイチェル・フラットさん:「ムーン・リバー」

冒頭のトリプル–トリプルはダウングレードとなった模様だがピアニスティックな技巧が散りばめられた音楽が美しく楽しんで見た。今シーズンを通じて楽しみなプログラムになりそう。


長洲未来ちゃん:チャップリン・メドレー

身長がだいぶ伸びたそうですらりとした体型が氷の上に映えた。ルッツの着氷が乱れた後、急遽フリップをコンビネーションにした落ち着きは大したもの。


キミー・マイスナーさん:アンジェパッセ

得意のはずのジャンプに切れがない。体も十分に絞りこめてないように見えた。


中野友加里さん:ショスタコーヴィチ『馬あぶ』から「ロマンス」

衣装がきれいで見惚れてしまった。今シーズンのベスト・コスチューム賞はこれで決まりという感じ。これほどお似合いの出で立ちで魅せてくれればルッツがダブルだっていいじゃないか。音楽はひたすら甘く美しいロマンスで、ショスタコーヴィチらしいグロテスクさの片鱗も見られない。こういうのは何だか却って気持ち悪く感じてしまう。


安藤美姫さん:映画『SAYURI』から「Chairman's Waltz」

衣装の色合いに品がなくて残念。日本を題材にした映画の音楽なのにどう見ても日本の色合いでないというのはいかがなものか。冒頭のコンビネーション・ジャンプは残念ながらダウングレードで、ステップでまた転んでしまったが演技終了後に笑顔が見られたのがよかった。スパイラルでフリーの左手をひらひらとさせる振付けが印象的だった。体の線がとてもシャープなのでしっかりと調整できていることが窺われる。フリーでは4回転ジャンプの挑戦を明言しているので楽しみ。


キム・ヨナさん:サン=サーンス「死の舞踏」

音楽の主題に合わせたのだろうけど衣装がちょっと地味過ぎる気がする。せっかくの若さが映えない出で立ちは損だと思うのだが。冒頭のコンビネーション・ジャンプは相変わらずの高さとスピードで素晴らしい。ダブルアクセルのミスはスパイラルからすぐに入る難しい跳び方なのでこういうミスも仕方ないところ。得意のイナバウアーからからだけではないヴァリエーションを見せようという意欲が感じられる。


男子シングル

男子はSPの放送をうっかり見逃してしまった。結果を知らずに夜のフリーの放送を見たが小塚崇彦選手の優勝にびっくり。冒頭の4回転のトウループは回転不足で転倒してしまったがその後をきっちりとまとめ、コンビネーション・ジャンプを規定の回数一杯に跳んだことが勝利を呼び込んだようだ。これで彼もいよいよ世界のトップ選手の仲間入りを果たしたことになる。これからもますますあの滑らかなスケーティングで世界のフィギュアスケートファンを魅了して欲しい。欲を言えばもう少しプログラムの中でメリハリをつけて劇的な構成を作り出すような演技になるともっといいと思う。

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ランビエール選手引退

2008年10月19日

すでに周知の通りステファン・ランビエール選手が引退を表明した。フィギュアスケートファンとして自分も何かひとこと言っておくべきなのだろうけど…。

私にとっては彼はついに謎のまま終わってしまったな、というのが正直な感想かな。彼の独特の不思議テイストが私にはついに理解できないままだった。一時代を築いた名選手であることは疑いようがないので、一つの時代が終わったな、という感慨は禁じ得ないけど…。


私が彼のプログラムで一番好きなものというと、ほとんどの方が挙げる「ポエタ」ではなく、エキシビションで見せてくれた「ロミオとジュリエット」だった。この古今の恋愛悲劇の名作にはいろんなヴァージョンの音楽があり、それに応じてフィギュアスケートにも多くの名プログラムがあるけど、私は彼の演じたロミオが最もよくこの劇の本質を表現していたように思う。ジュリエットを思うロミオの切なさがこちらにまで伝わってくるような演技だった。

私としては4回転ジャンパーとしての彼よりもエキシビションでのカジュアルな姿の方に親しみを感じてきたので、この決断はそれほどショックではなく、むしろこれからが楽しみなところもあったりする。今後もスケートには関わり続けることだろうし、とにかく今は体をゆっくりと休めて、これからの活動に備えて欲しい。またぜひ「ロミオとジュリエット」のような名演技を見せてくれたら、と思う。

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シベリウスとベートーヴェンの夕べ

2008年10月16日

近所の女子大で講義の一環として催されるコンサート・シリーズ、今回は今月10日に開催されたウィーン・トーンキュンストラー管弦楽団の演奏会に招待券をいただいて聴きに行ってきた。指揮者はクリスチャン・ヤルヴィさん、高名な指揮者のネーメ・ヤルヴィさんの次男でパーヴォ・ヤルヴィさんの弟である。ソリストに2002年のチャイコフスキー・コンクール最高位に輝いたヴァイオリニストの川久保賜紀さんを招いてのシベリウスとベートーヴェンのコンサートである。


エドヴァルド・グリーグ:『ペール・ギュント』第1組曲

コンサートはまずグリーグの『ペール・ギュント』第1組曲で幕を開けた。クリスチャン・ヤルヴィさんが指揮台に登り聴衆の期待の拍手が収まると実にさりげなく演奏が始まった。こういう音出の軽いオーケストラはあまり聴いたことがなかったので少し驚いた。聴いているうちにこれまで自分が好んで聴いてきたのとはかなり違ったタイプの音作りをする指揮者なのだということがわかってきた。何というか、ふわふわと宙を漂うような軽々とした演奏だった。二曲目の「オーセの死」などはまるで荘重さが感じられない。しかし三曲目「アニトラの踊り」は軽快で洒脱な舞曲となっていて、最後の「山の魔王の宮殿にて」の終盤の引き締まったアッチェレランドなどはこうした音作りの利点が生きた演奏だとも思った。


ジャン・シベリウス:ヴァイオリン協奏曲 ニ短調 Op.47

シベリウスのこの作品はロマン派を代表する名協奏曲とされているが、私はあまり馴染みがなくて何となく小難しい音楽という印象を抱いていしまっていたのだが、あらためて聴いてみると随所に美しい歌が散りばめられていて実にいい曲だった。シベリウスは元々ヴァイオリニスト志望だったというだけあって、ヴァイオリンの技巧を存分に堪能できる作品でもある。この作曲家の真価を再認識するいい機会になった。

川久保賜紀さんはチャイコフスキー・コンクールでの活躍でお名前だけは存じていたが、演奏を聴くのは放送や録音などを含めても初めてなので楽しみにしていた。もう少し神経質な感じの音を出す人かと勝手にイメージを描いていたのだけど、実際に聴いてみるとおおらかで温かみのある音色で心地よく聴くことができた。

あまり大げさに見えを切るようなところはなく、音楽に誠実に向き合いながら深い内省に沈潜していくような演奏、という印象を受けた。技術的に危なっかしく感じるようなところは皆無だったのでテクニックにも確かなものを持っているのだろうが、それをことさらにひけらかすような素振りの全く見られないところに好感を覚えた。

1位なしの2位ということは2002年のコンクールの時点では他人との比較でなく彼女自身の演奏に何か足りないところがあると判定されたのだろうが、その後も自分の音楽を極めるべくひた向きに研鑚を積んできたのであろうことがこの日の演奏から窺われた。あの時は同時にピアノ部門で上原彩子さんが優勝して脚光を浴びたためにその影に隠れる形でやや目立たなくなってしまった印象があるが、こうして実演に接してみるとやはり才能豊かな演奏家なのだということを実感させられる。今後もぜひ弛まずに自身の音楽を深めていっていただきたいと思う。


ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン:交響曲第5番 ハ短調 Op.67

フル・オーケストラには手狭なはずの大学講堂の舞台にすき間が目立つほどの小規模な編成にまず驚かされる(コンチェルトの時はもっとスカスカだった)。特にピリオド奏法を謳っているわけではないようだけど、おそらくその影響を採り入れた演奏スタイルなのだと思う。第1楽章の有名な出だしから“重厚なるベートーヴェン”への聴衆の期待を裏切りつつ軽快なテンポで進んでいく。荘重な響きの中に余韻を楽しみたいところで尽く音符が短く断ち切られる。こういうのが今はやりの音楽なのか、と納得のいくようないかないような思いで聴いていた。

それでも第3楽章以降は慣れてきたせいか違和感はやや薄らいで、特にフィナーレではベートーヴェンらしい歓喜の調べを聴くことができた。どんな風に演奏しようとベートーヴェンはベートーヴェンということか。もちろんカルロス・クライバーのようなおとなしく座って聴いているのが困難なほどの高揚感は望むべくもないのだが…。

近年こうした聴衆の期待を肩透かしするような演奏が盛んに行われるのは、現代の演奏家にとってウィルヘルム・フルトヴェングラーやクライバーの路線を踏襲しようとして二流の物真似に終わってしまうよりも、何か人と違った新奇なことをやってみせた方が話題を呼びやすく、他との差別化が計れるという事情があるのだと思う。録音という技術のお蔭で彼らは常に過去の名演奏と比較されるという苛酷な状況に晒されているわけだ。それを負担に感じる若い演奏家が往年の巨匠たちとまともに対峙するのを避けて、それまで人があまりやってこなかった方向性に活路を見出そうとする心理はわからなくもない。また音楽は生き物である以上、古典的作品にも常に時代の要請に応じて新たな光が当てられていかなければならないことも理解している。それでも私にはこの種のマーケティング理論が優れた芸術を生み出すとは思えないのだ。この情報過多の現代に、フルトヴェングラーに正面から挑みかかるドン・キホーテのような若い演奏家の登場を期待するというのは無理な注文なのだろうか…。

もっとも彼のお兄さんであるパーヴォ・ヤルヴィさんの場合はピリオド奏法の手法を一部に採り入れているようだが、シューマンの作品などでは実にロマンティックな熱のこもった演奏を聴かせている。だからクリスチャンさんの演奏も曲目などによってはまた違った印象を与えてくれるのかも知れない。そういうわけでこの一回の演奏会を聴いただけで彼をつまらない指揮者と切り捨ててしまうのは避けておきたい。

ウィーン・トーンキュンストラー管弦楽団は弦楽器の洗練された美しい音色にさすがにウィーンのオーケストラ、と思わせられるものがあった。管楽器はというと、金管楽器がかなりしょぼい音だったのに対し、木管楽器はいずれも愛らしい音色で楽しませてくれた。特にフルートの主席奏者の音色が素晴らしく、最初の『ペール・ギュント』はこれを聴かせるために選曲したのではないか、と思わせるものがあった。終演後の喝采は天国のベートーヴェンとこの方に捧げたい気分だった。


アンコールは「ソルヴェイグの歌」でもやってくれないかと秘かに期待していたのだが、この期待も当然のように肩を透かされ演奏されたのは活気のある短い曲だった(初めて聴く曲で曲名がわからなかった)。あくまでも仕事はなるべく早く片づけるというのが現代の気鋭の演奏家たちの流儀なのか…。全体にプログラムが短めの曲で構成されていたので満腹とはいかなかったが、まあ何にせよこうして生演奏が楽しめたというのはありがたいことだった。

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長谷川穂積 またしても2RでKO勝ち

2008年10月16日

WBC世界バンタム級タイトルマッチ、長谷川穂積アレハンドロ・バルデスはチャンピオンの長谷川が前回の防衛戦に続き2RでKO勝ちした。長谷川はサウスポーに対しやや苦手意識があるためもつれることも予想されていたが、2R終盤に強烈な左ストレートを打ち下ろすとバルデスはたまらずダウン。何とか立ち上がったもののすでに戦える状態ではなく、長谷川がロープ際でラッシュしたところでレフェリーがすかさず試合を止めた。

バルデスとしては身長とリーチで上回る体格差を生かしてジャブとフットワークを使ってアウトボクシングに徹した方がよかったのではないかと思うが、中途半端な距離で打ち合いを挑んでむざむざと撃沈された。世界ランク2位の選手でも全く勝負にならないとすると、バンタム級における長谷川の圧倒的な優位は当分揺るぎそうにはない。あまりにあっけない結果で長谷川自身も物足りなそうだった。

それ以上に困惑したのがおそらくTV局で、余った時間を利用してマイク・タイソンが東京ドームでKO負けした試合のダイジェストを流していた。この試合はちょうど高校の卒業式の日で、終わった後みんなで教室のTVで見ていたのを思い出す。ジェームス・ダグラスのアッパーからの連打にタイソンがたまらずに崩れ落ちたシーンは強烈に目に焼きついている。ちなみに私はタイソンが初めて東京ドームで戦ってトニー・タッブスに2RでKO勝ちした試合は生で観戦していた。あれから随分と時が経ってしまったな…。

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パーヴォ・ヤルヴィさんの「ライン」

2008年10月12日

今日の『N響アワー』は川にまつわる名曲の特集ということでシューマン作曲の交響曲第3番「ライン」が全曲放送された。指揮は気鋭の若手指揮者、パーヴォ・ヤルヴィさん。パーヴォさんのシューマンは以前にも『N響アワー』で聴いたことがあって、それが今日と同じ「ライン」だったか別の曲だったか覚えていないのだけど、とにかく素晴らしい名演だったのを覚えている。パーヴォさんはシューマンには特に強い共感を抱いているようで、それが演奏にも如実に表れているのを聴き取ることができた。

今日聴いた「ライン」も(以前聴いたのと同じ演奏だったのかも知れないのだけど)熱のこもった素晴らしい演奏で、シューマンがライン川沿いの街、デュッセルドルフに住んでいた時に書き上げたという作品にこめられたロマンティシズムを存分に堪能することができた。シューマンの素晴らしさとパーヴォさんのシューマン作品に寄せる情熱を再認識さそられる放送だった。

実はつい先日パーヴォさんの弟のクリスチャン・ヤルヴィさんの演奏に接する機会があった。それについてはそのうちレポートすることにしたい。

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「ソルヴェイグの歌」

2008年10月 6日

日本語詞:岩谷時子 作詞:ヘンリク・イプセン 作曲:エドヴァルド・グリーグ 編曲:井上鑑
アルバム「」COCQ-83683(2004.11.25)所収。

数日前から金木犀がいよいよ匂い始め、日が沈むのも早くなり秋も深まりつつあることが感じられる。今回はそんな秋の夜長にしんみりと聴き入るのに相応しい曲を、と思い「ソルヴェイグの歌」を取り上げることにした。ノルウェーの作曲家、エドヴァルド・グリーグヘンリク・イプセンの劇詩『ペール・ギュント』のために作曲した劇付随音楽の中の一曲である。

ペール・ギュントはノルウェーの伝説に登場する人物で、実在の人物がモデルになっているらしい。奔放な放浪生活を送った末に故郷に帰り恋人の元で息を引き取るという破天荒な物語を、イプセンは上演を前提としない物語詩として執筆した。イプセンは後にこの物語を実際に上演するにあたって同郷の作曲家であるグリーグに劇付随音楽の作曲を委嘱した。こうした経緯で完成されたのが劇付随音楽としての『ペール・ギュント』である。後にこの中から8曲を選んで二つの組曲に編曲されている。

イプセンの劇が自然主義的な筆致で描かれているのに対し、音楽の方は本質的にロマンティックな作風を示しているために劇の内容との乖離が指摘されてもきたようだ。しかしそれはそれとしてここに盛り込まれた楽想の愛らしさはグリーグならではのものであり、音楽自体はグリーグを代表する傑作と称して差し支えないだろう。現在ではピアノ協奏曲と並んで最も人気のあるグリーグの作品の一つとなっている。ことに「朝のすがすがしさ」や「ソルヴェイグの歌」はクラシック・ファンの枠を越えて広く親しまれている名曲である。


ソルヴェイグの歌」は恋人のソルヴェイグ(“ソールヴェイ”という表記が原語の発音に近いらしいがここでは慣例に従っておく)が放浪を重ねるペールを嘆きつつ、いつまでも待ち続けるという決意を歌った歌である。その悲しげな旋律は彼女の健気な決心を物語るかのようである。元の劇付随音楽としては独唱を伴うのだが、組曲として編曲された版では器楽曲として演奏されるようになっている。歌詞は本来はノルウェー語なのだが実際にはドイツ語など他の言語で歌われることが多いようだ。

本田美奈子さんはクラシック・アルバムとしては二作目となるアルバム「」でこの歌を歌っている。ペールへの献身的な愛を歌うこの歌は美奈子さんの琴線にふれるところがあったのだろう。日本語詞はもちろん岩谷時子さんである。

実はこの曲に関しては美奈子さんの歌ったもののほかにもう一つ愛聴している音源がある。ここではそれと聴き比べながら感想を述べてみたい。それは私のお気に入りの女性歌手、メイヴさんのデビュー・アルバムに収録されたものである。メイヴさんは主にケルト系の楽曲を中心に歌っているアイルランド出身の歌手なのだが、自身の名を冠したデビュー・アルバム「méav」にはこの「ソルヴェイグの歌」が収録されている。ノルウェーとアイルランドは音楽文化の面で互いに通じ合うところもあるようで、これは余談になるが彼女も参加したケルティック・ウーマンの歌唱によって日本でも広く知られるようになった「ユー・レイズ・ミー・アップ」も元々はノルウェー人とアイルランド人の二人組、シークレット・ガーデンの作品だった。


メイヴさんは私には奇跡としか思えないほど美しい声の持ち主で、この歌の歌唱でもそののびやかな声を存分に響かせている。ヴィブラートを抑えめにした発声によるその清楚な歌声からは透明な悲しみのようなものが感じられる。それは生身の女性が抱く悲しみというよりは何か天上的とでもいうべき清澄な響きとなって聴こえてくるのだ。

一方美奈子さんはそれに比べると恋人の帰りを待ち侘びる女性の悲しみをよりドラマティックに歌い上げている。ヴィブラートを効かせた発声や歌い回しの抑揚のつけ方には劇的な迫力が宿っている。こういうところはやはりミュージカルの舞台で場数を踏んできた美奈子さんならではの個性なのだろう。

岩谷さんの詞がまた簡素な言葉の中にも生身の女性の痛切な悲しみを表現している。メイヴさんの歌っている英語詞が待つ身の女性のつらさを過ぎ行く季節に托して歌ったやや抽象的な内容であるのに対し、岩谷さんの詞はヒロインの心身に根ざした嘆きの歌となっているのだ。こうした詞の性質の違いは歌にもそのまま反映されている。それは二人の言葉に対する豊かな感受性の表れでもあるのだと思う。

ヴォカリーズの部分の歌い回しが両者で微妙に異なっているのも興味深いとこるである。このヴォカリーズ部の細かい音符をメイヴさんが旋律として平板に歌っているのに対し、美奈子さんは幾分技巧的に音を転がすようにして歌っているのだ。美奈子さんはおそらくこうした箇所を一種の装飾音符のように解釈していたのではないかと思う。こうした歌い回しは聴き手の耳に幻惑的な効果を伴って響いてくる。


両者に共通しているのはともに伴奏として木管楽器がフィーチャーされていることである。メイヴさんの歌にはデイヴィッド・アグニューさんによるオーボエが温かみを添えている。このオーボエ独特の朴訥とした音色にはノスタルジックな感慨をかき立てられる。キーを押さえる指の音まで聴き取れる優秀な録音もうれしい。

一方美奈子さんの歌は山本拓夫さんのソプラノ・サックスの華やかな響きによって彩られている(意外に思う人も多いかも知れないがサックスは木管楽器に分類される)。両者ともにヴォーカルとソロ楽器の編曲の組み立て方が共通の発想に基づいているのがおもしろいところである。アイルランドの民俗音楽に根ざした活動を行っているアグニューさんの演奏はけれん味のない素朴な味わいだが、サザンオールスターズなどのサポートを行ってきた山本さんのサックスはジャズ風の洒脱なセンスが感じられる演奏になっている。


この二つの音源は私にとってはいずれ劣らぬ愛すべき歌唱で、こうした贅沢な聴き比べができる幸せを思わずにはいられない。実を言うと私は先に入手して聴き込んでいたメイヴさんの録音があまりにも素晴らしかったので、この曲についてはもうほかの音源は要らないと思っていたくらいだった。しかしこうしてあらためて双方を聴いてみると安易な限定をして自分の嗜好を狭めてしまうものではないな、と思い知らされる。この素晴らしい歌唱のどちらがより優れているかなどという野暮なことは考えず、これからもそれぞれの魅力に酔いながら聴いていきたいものである。

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幸田浩子さん TV番組で佐藤しのぶさんと共演

2008年10月 4日

幸田浩子さんがテレビ神奈川制作の佐藤しのぶさんのTV番組に出演するらしい。放送は6日(月)の夜。テレビ埼玉や千葉テレビでも放送されるようなのでこれらの局を視聴できる環境の方はご覧になることをお薦めしたい。

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十二階に住んでるすいこさん

2008年10月 1日

芸術の秋だというのに秋の夜長をおばか番組を見て過ごしてしまった。“親鸞”を“おやどり”と読んだり、“冠位十二階”が“十二階に住んでるすいこさん”になってしまうのは仕方ないとして、「『泣かしたこともある…』で始まるサザンオールスターズの名曲は『○○の○○』?」という問題で正解がなかなか出てこなかったのは意外だった。日本のポピュラー音楽を代表するこの名曲も今の若い人には縁遠い存在なのかと思うとちょっと寂しい。

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