全日本選手権2009 女子シングル

2009年12月29日

ついに結果が出た全日本選手権、選手たちが背負っているものの重さを考えるとお気楽に感想など書くこともできなかったが、二日経ったところで熾烈な争いとなったこの大会を回顧してみる。見所の盛り沢山なこの大会の中でも、特に注目されたのはやはり鈴木明子さんと中野友加里さんの争いだろう。どちらもとても好きな選手なので、この二人が三人目のオリンピック代表の座を争うのは、見ていていたたまれなかった。0.17というのはほとんど誤差といってもいい数字で、このわずかな差によってオリンピック出場の可否が決まったのだから、勝負というものは本当に残酷なものだと思い知らされる。日本の女子はレベルが高過ぎるんだ、とか、一国当たりの最大の枠が三つというのはおかしいんじゃないか、とかいろいろ愚痴を言ってみたくもなる…。


この僅差の争いを分けたポイントは何だったかと振り返ってみると、やはり鈴木さんが5種類のトリプルジャンプをバランスよくプログラムに採り入れることができていた、ということにあるのではないかと思う。SPではフリップからのコンビネーションと単独のループという無理のない組み合わせで、ルッツとフリップを跳んだ中野さんとほぼ互角の点数を出すことに成功した。フリーでもやはりフリップとループを二度ずつ跳んで、エッジに問題のあるルッツを一度だけ跳ぶという無理のない構成だった。しかも5種類のトリプルジャンプを跳べるために、必須要素であるアクセルをジャンプシークェンスの二つ目として組み入れるという効率的な配置にすることが可能だった。これは国内の選考会だけでなく、オリンピック本番でも有利に働くことが予想される、彼女の強みである。

片や中野さんはループがないためにフリーでは難しいルッツとフリップを二度ずつ跳ばなければならならず、鈴木さんに比べるとややリスクの大きいプログラム構成になっていた。冒頭のルッツで回転不足でステップアウトしてしまったのは、確率的にいうと起こることが想定され得るミスだった。彼女の場合逆にハイリスク・ハイリターンを狙ってトリプルアクセルという博打的な手に打って出る方法もあるにはあったのだが、さすがにこの大事な試合ではそういうことができる状況でもなかっただろう。このルッツのミス以外はどこも文句のつけようがない素晴らしい出来で、日本以外の国ならどこででも間違いなく代表に選出されたはずで、オリンピックで彼女の姿を見ることができないというのは何とも残念である。

まあともかく選ばれた鈴木さんの今シーズンの勢いには目覚ましいものがあり、オリンピックでまたあの「ウェストサイドストーリー」を見ることができるのは楽しみである。この間のグランプリファイナルの時から着ている赤い衣装がとてもかわいくて、彼女の魅力を実によく引き立てている。


浅田真央ちゃんに関してはまあ順当な出来で、取り敢えずはほっとできた。ただ国内選考会ではあれでよくても、オリンピックで金メダルを目指すとなると少し不安なところもある。今シーズンはルッツを全く放棄しているし、トリプル–トリプルのコンビネーションジャンプも跳んでいないので、トリプルアクセルをSPとフリーで合計三度跳ぶというハイリスクな挑戦に賭けなければならないという状況を作ってしまっている。大舞台の重圧の中でそういう試みが果たしてうまくいくのか、ファンとしては何ともやきもきさせられてしまう。

安藤美姫さんは可もなく不可もなくという感じの中途半端な内容だったかな…。すでに内定を得ていたことを考慮すれば四回転のサルコウやトリプル–トリプルのコンビネーションジャンプにも挑戦して欲しかったところ。それで結果が悪くても仕方ないが、失うものがない状況で安全策を採り、それでいて細かなミスをしてしまうというのはある意味最悪の結果ともいえる。しかしインタビューの受け答えなどはとてもしっかりしていて、四年前とは別人のよう。すっかり頼もしい存在になったな、と思わせられる。彼女は二度目の出場なので、他の選手たちをリードするような役割りを期待したい。


村主章枝さんは大舞台で力を発揮する人なので今回もあるいは、と予想していたが、何度も見せられてきた奇跡は今回ばかりは叶わなかった。これまでずっと武器にしてきたルッツとフリップで大きなミスを連発しての落選という結果なので、本人としてもある意味ふっきれているのではないか。四大陸や世界選手権の代表からも洩れたので、あるいはこれが彼女にとって最後の試合ということになるのだろうか。

今回はオリンピック代表の選考会という位置付けに大会なのでそのことに関心が集中してしまったが、もちろんそれ以外にも見所はたくさんあった。その中でもやはり、村上佳菜子ちゃんのかわいさにはふれないわけにはいかない。フリーでは直前に演技した鈴木さんの涙を見て自分も感極まって泣きそうになってしまったそうで、スタートのポジションを間違えて横歩きで移動し、笑いながら演技を始める姿はこの大会の重苦しい雰囲気を瞬時に一新してしまった。ほとんどの選手は演技前は他の選手のことは気にしないようにするのが普通だが、鈴木さんの喜びに一緒になって感涙してしまう素直さは得難いものだと思う。このまますくすくと成長していって欲しいと願わずにいられない、貴重な逸材である。

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ラグース 〜アイリッシュ・ダンスの夕べ〜

2009年12月17日

うちの近所の女子大学で講義の一環として開催されるコンサート・シリーズ、先週の11日の分の招待券をまたまたいただいて行ってきた。今回は「ラグース」というアイリッシュ・ダンスのパフォーマンスである。

『ラグース』はアイルランド随一の観光地であるアラン諸島を訪れる観光客のためのショーとして結成。歌、音楽、踊りが一体となったそのステージは、アイルランドでも最高のクオリティを持つショーとして、小さな島を超えて世界中からオファーが来る大人気エンターテイメントに成長した。

ザ・アイリッシュダンス -RAGUS Show-

アイリッシュ・ダンスについては前々から興味があって、一度見てみたいと思っていたのでこうした機会を得たのは実に幸運だった。よく知られているように、アイリッシュ・ダンスは上半身を使わずに脚だけを使って激しいリズムで踊るのが特徴である。これはイングランドの統治下で彼らの伝統文化が禁じられていた時代に、外からはダンスをしていることがわからないように、室内で脚だけを使って踊ったことに由来すると言われている。

このラグースの公演では男女二人ずつのリード・ダンサーと、女性ばかり十人のアンサンブルという構成だった。計四人のリード・ダンサーのうち三人は「リバーダンス」にも出演した経験があるとのことで、いずれも実力のある踊り手のようだった。編成はソロや二人、三人によるものから大人数の群舞まで様々に変わりながら、実に信じ難いような見事な脚捌きで激しいリズムを刻んでいく。その生命の躍動そのもののような律動からは、イングランド統治下にあっても自らの文化的伝統を守り抜こうとするアイルランド人たちの不屈の魂が伝わってくるかのようである。

たたみかけるような靴音の響きは耳だけでなく体全体を心地よく刺激してくれる。見ながらふとタップダンスとも似てるな、と思ったのだが、調べてみるとやはりタップダンスはアイリッシュ・ダンスの影響も受けて発達してきたらしい。

群舞での一糸乱れぬユニゾンも見事なら、男性二人で技を競い合うようにかけ合いも見せてくれるところも楽しい。そこにさらに伴奏の打楽器も加わって賑やかに音が入り乱れる様は、さながら会話を楽しんでいるかのようである。本当に気心の知れた同士なら、この多彩なリズムの応酬で簡単な意思疎通ができてしまうのではないかという気さえする。

女性ダンサーたちの迫力も少しも負けてはいないが、重力の制約からときはなたれたかのようにピンと背筋を伸ばして軽やかに跳びはねる姿にはどこか妖精を思わせるような可憐さもあった。女性二人ずつがワルツのように向かい合って踊るパートもあり、何組ものカップルが舞台上を目まぐるしく駆け回るところは何だか微笑ましかった。


伴奏はアコーディオン、フィドル、イルン・パイプ、ギター、キーボードという五人の編成。とにかく速いテンポで、活気のある音楽に座って聴いていても心にリズムがこだまするのが感じられる。一つの曲の中ではほとんど拍子もテンポも変わることなく、同じような音型を延々と繰り返すのが特徴的である。この愚直なまでのひたむきなエネルギーの充溢こそ、アイルランド民族を歴史上の幾多の苦難を乗り越えて生き延びさせた原動力なのかと思わせられる。クラシック音楽で常用される主題労作のような作業とは無縁の音楽作りで、ふとこれは現代音楽でいうミニマル・ミュージックと何か関係があるのだろうか、という疑問が頭に浮かんだが、残念ながら私にはよくわからない。アコーディオン、フィドル、イルン・パイプをそれぞれソロとしてフィーチャーする楽曲もあり、それぞれの奏者の技量や、楽器の特徴をも楽しむことができた。

アコーディオンを弾くファーガル・オー・マルクルさんがバンドのリーダーで、このショー自体のプロデューサーでもあるようだった。このマルクルさんがMCも担当していたのだけど、大勢の女子学生を前にしての演奏ということで舞い上がっていたようで、かなりおかしなテンションでの進行だった。まあこういうところもエンタテイナーとしての技量のうちなのだろうけど。このほかマルクルさんは歌も一曲披露してくれた。

フィドル奏者のファーガル・スカヒルさんは多才な人で、バウローンという打楽器でも超絶的な技巧を披露してくれた。ヴァイオリン系の擦弦楽器と打楽器では必要とされる技術が全く違うはずなのだが、才能のある人というのは何でもできるものなんだな、と感嘆させられる。

イルン・パイプというのはバグパイプの一種だそうで、とても変わった楽器だった。イルンとはゲール語で肘を意味するとのことで、肘に取り付けられたふいごで空気を送る仕組みになっているらしい。独特の音色で、この音が鳴るだけでいかにもアイルランドの音楽らしい響きになる。音を出すのがとても難しい楽器で、そのため一時期は奏者が途絶えそうになる危機にも見舞われたそうだが、現在はアイルランドの音楽になくてはならない楽器として定着しているようだ。シェーン・マッカーシーさんは若手の第一人者として期待されている奏者のようだった。


そしてこのショーに花を添えていたのがディアドレ・シャノンさんの歌である。ディアドレさんはアヌーナケルティック・ウーマンに在籍した経験もある女性歌手で、アヌーナ在籍時にはやはり「リバーダンス」に出演したことがあるそうだ。この経歴から想像されるイメージそのままの、とても美しい歌声でうっとりと聴き惚れてしまった。

歌ってくれたのは全四曲。最初の「サリー・ガーデン」はとても好きな歌で、これを聴けたのはラッキーだった。ただ、移調してもう少し高い音域で歌った方が彼女の美声がより生かされたのではないか、という気もした。続いてはタイトルがわからないのだけどゲール語と英語の歌が一曲ずつ、どちらも叙情的な美しい旋律の歌だった(大阪での公演を鑑賞された方のレポートによると前者が「Ardaigh Cuain」、後者が「Song for Ireland」という歌らしい)。ゲール語の歌の方はやや愁いを帯びていて、残念ながら意味はわからないのだけどゲール語特有の言葉の響きも相俟って、アイルランド人たちの感情の陰影を繊細に描き出しているように感じられた。

そして最後はやはり期待通り「ユー・レイズ・ミー・アップ」を歌ってくれた。ディアドレさんはケルティック・ウーマンには途中の一時期の参加なので、私たちがよく聴くこの歌の録音には参加していないのだが、今回聴いたディアドレさんの歌唱はまさに“ケルティック・ウーマンのあの歌”としかいいようのないものだった。アイルランドという国はよくぞこうした美しい歌声の女性歌手を次から次へと輩出するものだと感嘆させられる。この歌を聴けただけでも来た甲斐があったというものだ。事前に寄せてくれていたメッセージによるとディアドレさんは今回が初来日とのことで、日本のことを気に入ってくれたらいいな、と思う。


ダンスでのひたすら激しいリズムと歌での伸びやかなカンタービレは実に対照的で、この両者の弁証法的な対立とその融合こそがアイルランドの音楽の本質をなしているのかも知れない。このショーを見ながらそんなことを考えた。いやとにかく、ダンスに音楽に歌にと全てに満足の一夜だった。


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「星に願いを」

2009年12月 6日

訳詞:渋谷森久 作詞・作曲:Ned Washington, Leigh Harline
アルバム「ラスト・コンサート」(2008.12.10)所収。

本田美奈子さんを巡っては私にはあまりにも悔いることばかり多いのだが、その一つは2003年8月12日にNHK総合で放送された『夢と未来へのメッセージ 魔法の国から子どもたちに贈る歌』という番組に美奈子さんが出演したのを、わかっていながら見逃したことである。この番組は子どもたちに贈る歌という趣旨でディズニーの映画音楽を特集したものだったのだが、この日新聞のTV欄に美奈子さんの名前の記載があるのに気がついて刮目したものの、次の瞬間に「何だディズニーか…」と思ってしまって見る気を失ったのだった。

その後美奈子さんが亡くなった時にはNHKのニュースで「星に願いを」を歌う映像が流れるのを見て、「ああそうか、あの時美奈子さんはこの歌を歌ったのか…」と思い込んで、激しく後悔した。ディズニーの映画音楽の中でも、この『ピノキオ』の主題歌だけはとても好きな曲なのだ。あの時につまらない分別を起こさなければこの歌を聴くことができていたはずなのに、と思うとたまらなく切なくなった。


そんなわけでこの「星に願いを」という歌は私にとってちくりと胸の痛む思い出となっていたのだが、この度あらためてこのことについて調べていて、この私の思い込みは誤りだったことに気がついた。この時美奈子さんは中川晃教さんとのデュエットで『アラジン』のテーマ曲、「A Whole New World」を歌ったらしい。「星に願いを」を歌ったのは、2004年11月27日放送(BS2)の『わが心の愛唱歌大全集』という番組でのことだったのだそうだ。この番組は存在自体を知らなかったので、見ていなかったのは残念ではあるものの、そこに妙な呵責は感じなくて済む。このことを知って、少し心が軽くなった気がする。

肝腎の映像そのものは、昨年夏に川口のNHKアーカイブスで開催されたイベントに参加した際にビデオ・コンサートで見ることができたので、あの時NHKのニュースを見て感じた胸の痛みは、その時に幾分かやわらいでいた。そして、このイベントではもう一つ別の「星に願いを」の音源を聴くことができた。


周知の通り美奈子さんは入院中に骨折のため同じ病院に運ばれてきた恩師の岩谷時子さんのために、ボイス・レコーダーに歌を吹き込んで励ましのメッセージを伝えていた。その時に歌った三十曲近くの歌の中に、この「星に願いを」が含まれていて、昨夏のイベントではその音源を聴くことができるようになっていたのである。この歌唱は実に素晴らしく、ビデオ・コンサートの方で聴いたものに優るとも劣らないものだった。これを何とかしていつでも聴けるようにしてはもらえないものか、と願っていたところ、有り難いことに昨年12月にこの歌を含む19曲を収録した、ボイスレターの音源によるアルバム「ラスト・コンサート」がリリースされたのである。

これら19曲をあらためて聴いてみても、やはりこの「星に願いを」は抜きん出て素晴らしいと思った。病気で入院している時に歌ったにしては、というような留保なしで、十分に優れた歌唱なのである。この歌には歌い終えたあとに美奈子さんが語っているメッセージの部分も収録されているのだが、「病気がよくなってみると」という言葉にあるように、実際に体調もこの時はかなりよくなっていたのだろう。この音源が幸いにして残った以上、正規のスタジオ録音が残されなかったことを惜しいとは思わない。川口でのイベントで聴いた時はノイズがかなり酷かったのだが、アルバム化に当たってはうまく除去されていて、聴き苦しく感じるところはない。


美奈子さんはこの歌を一般的に知られている日本語詞ではなく、恩師の故渋谷森久さんによる訳詞で歌っていた。それなのにどうしたわけかアルバムには訳詞者として島村葉二という名前がクレジットされている。初めこれは渋谷さんが用いていた別名義なのかと思ったのだが、調べてみるとこの方こそが一般的に知られている日本語詞を訳した人であるらしい。とするとこの記載は単なる誤りなのだろう。

美奈子さんは渋谷さんをとても慕っていたそうで、アルバム「」がリリースされた際にはわざわざ墓前に報告してCDの音声を流して聴かせたというエピソードも伝えられている。この歌を渋谷さんの歌詞で歌うというのも相当にこだわりを持ってしていたことであるはずで、こういう大事なところでミスをしてしまう不注意さはいただけない。

それはともかく、島村葉二版の日本語詞というのもウェブ上にあったので読みくらべてみたが、私はやはり美奈子さんと同じく渋谷さんの方を支持したいと思った。特に実際に歌ってみた時に、こちらの方がメロディーに自然に合うように思う。どちらも原詞にくらべると内容が薄くなっているのだが、日本語と英語とでは音節の数にどうしても違いが出てしまうので、これは致し方のないところだろう。


すでに述べたように、この歌には歌い終えた後に美奈子さんが語ったメッセージも併せて収録されている。そこで彼女は「願いごとをするばかりではいけない」といった趣旨のことを述べているのだが、これを聴いて私は、宗教思想家のひろさちやさんが子供の頃におばあさんから教えられた、という言葉を思い出した。ひろさんのおばあさんは「ほとけさまを拝むとき、絶対にお願いごとをするな! “ほとけさま、ありがとうございます”と拝め!」と教えたのだそうで、このことをひろさんは「いまにして思えば祖母は大事な『ほとけのこころ』を教えてくれたのです」と述懐されている(「こだわりを捨てる ‹般若心経›」中央公論新社)。ここに記録されたメッセージと、あの「ありがとう」の詩を考え合わせれば、この頃の美奈子さんは“ほとけのこころ”の真髄を会得していたのだろうな、と思わずにはいられない。


最後になってしまったが、本来は岩谷さんに宛てた私的なメッセージであるこれらの音源を、こうした私たちにも聴けるようにして下さったことに、岩谷さん及び許諾をしていただいたご遺族をはじめとする関係者の方々への感謝を表明したい。特に岩谷さんには申し訳ないような思いもしつつ、大切に聴かせていただくことにしたいと思っている。一部にはこのアルバムのリリースに対して批判もあったようだが、私としては今回収録されなかった歌たちもまた何か別の機会に聴かせていただけることを願っている。


謝辞

美奈子さんの出演した番組と歌った曲目についての情報はケイさんにご教示いただきました。ここに記してお礼申し上げます。ありがとうございました。

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グランプリファイナル2009 男子シングル フリー

2009年12月 6日

トマーシュ・ヴェルネル選手

4回転トウループは一つ成功させたものの、それ以外には見所のない演技になってしまった。彼は元から調子の波が大きい選手だが、今回はそれが取り分け悪い方向に振れてしまった。


ジェレミー・アボット選手

4回転トウループは果敢に挑んだが失敗、しかしその後は手堅くまとめたいい演技だった。彼も上背があって手足の長い、フィギュアスケートには恵まれた体型だが、少しずつそのメリットを生かせるようになってきているように感じる。


ジョニー・ウィアー選手

彼がSPとフリーで両方ともよかったというのはかなり久しぶりに見た気がする。フリーは特にプログラムが彼に合っていて、見ていて引き込まれてしまった。銅メダルは立派な成績だけど、彼にはこれ以上の伸びしろがあまり感じられないのがちょっと気にかかるところ。


織田信成選手

全体にはまずまずよかったのだけど、アクセルが二つシングルになったのが痛かった。最後のはおそらくダブルの予定だったものをミスを取り返すためにトリプルに挑戦したのだろうけど、それは裏目に出てしまった。これまでの二試合に比べると、動きも表情もちょっと硬かったように感じた。この緊迫感のある試合では無理もないことだけど。まあとにかくこれで念願のオリンピック出場が決まったので、今後はそれに向けて入念に準備を進めていって欲しい。


エヴァン・ライザチェク選手

彼もアクセルが一つシングルになってしまったが、ほかには大きなミスはなく、手足の長さを生かしたいつもの彼らしいダイナミックな演技だった。今シーズンは「火の鳥」と「シェエラザード」というフィギュアスケートでは王道のプログラムで臨んできているが、私の感覚ではどちらも女子選手向きというイメージがあり、これがファンやジャッジにどのように受け容れられるのかが少し気になるところ。

あとやはり4回転ジャンプへの意欲が全く感じられず冒頭に当たり前のようにルッツを持ってきているのもちょっと寂しい気がする。今大会は結局全選手を通じて4回転ジャンプは最下位に沈んだトマーシュ・ヴェルネル選手がSPとフリーで一度ずつ成功させただけという結果になった。このことをエヴゲニー・プルシェンコ選手やブライアン・ジュベール選手はどう感じただろう。


高橋大輔選手

最初の4回転トウループで転倒し、それが響いたのか残りの演技もガタガタになってしまった。特にスピンは壊滅的な状況だった。怪我から復帰してまだ4回転ジャンプの感覚が完全に戻っていない中で先を見据えて果敢に挑戦しているのが悪い結果に出てしまった、というところか。まあ結果にはあまりとらわれず一歩一歩ステップアップしていってくれればそれでいいのだけど。

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グランプリファイナル2009 女子シングル フリー

2009年12月 5日

アシュリー・ワグナーさん

後半のルッツとフリップで着氷が乱れたが、全体には彼女のよさが発揮されたいい演技だったと思う。「韃靼人の踊り」は彼女にとてもよく似合っていて、うっとりと見惚れてしまった。


鈴木明子さん

私のアドバイスを受け容れて、というわけでもないだろうけどルッツを一回にしてフリップを二度跳ぶ構成に変更してきた。これは賢明な判断だと思う。ダブルアクセルからのコンビネーションはトリプルトウループからのシークエンスに変更し、これで5種類のトリプルジャンプが全て入ったことになる。旧採点の頃からこの競技を見てきた身としては、点数の足し算をするばかりでなくプログラム全体のバランスにも配慮した構成には好感が持てる。

ストレートラインステップは彼女らしい躍動感に溢れていて、見ていて胸が熱くなった。今日の鈴木さんは最高に輝いていた。世界のトップ6が集まった大会での銅メダルは実に見事。この素晴らしい快挙を心から祝福したい。あの赤い衣装がまた彼女の輝きを引き立てていたけど、これも荒川静香さんのデザインなのかな?


ジョアニー・ロシェットさん

今シーズンの彼女は波が大きいので、SPの出来からするとフリーでいい演技を見せてくれるかとも期待したけど、逆に悪い方への振れ幅の大きさを示す結果となってしまった。これほどジャンプが決まらないロシェットさんの演技というのは初めて見た気がする。唯一トウループからサルコウへのシークエンスがきれいに決まったのだけが好材料というところか。


アリョーナ・レオノワさん

このところ躍進著しいレオノワさんだが、今日はジャンプでミスを連発し冴えない演技だった。笑顔のとてもかわいい人なのに、キス&クライでは今にも泣き出しそうな表情で、コーチが必死に慰める姿が印象的だった。しかし少し前まではロシアの女子は壊滅的な状況だったことを考えれば、彼女がこうしてシニアでも活躍できているのはとても明るい材料ではある。


キム・ヨナさん

最初のルッツは着氷が乱れ、続くトウループがダブルになってしまった。ダブルアクセルからのコンビネーションも、トリプルトウループが明らかに回転不足だった。彼女もシーズン初戦があまりにも会心の出来だったために、ここにきてそのプレッシャーに苦しんでいる様子が窺われる。しかし決して万全の出来ではない中でもフリーでトップに立つ実力はさすがに素晴らしい。


安藤美姫さん

コンビネーション・ジャンプ二つの難度を落として手堅くまとめる戦術に。SPはトリプル–トリプルを跳ぶ予定でいたのをとっさにトリプル–ダブルに変えたようだが、今日の選択はどういう判断だったのか。全体にはややおとなしい感じの演技で、ストレートラインステップなどはいつもの彼女らしいはち切れるような躍動感に乏しかった。優勝も期待される状況ではあったけれど、ヨナさんに一歩届かなかったのも仕方のないところか。しかし今シーズンは以前の彼女からは考えられないような抜群の安定感で、着実に成長しているんだな、と実感させられる。

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グランプリファイナル2009 女子シングル SP

2009年12月 5日

鈴木明子さん

ルッツを回避してフリップからのコンビネーションとループという構成で臨んできた。ジャンプの調子が万全ではない状態だったのだとしたら、これは賢明な選択だったと思う。しかしそのループで乱れてしまった(おそらくダウングレード)のがもったいなかった。それでも鈴木さんらしいところは出ていたと思う。PCSで今までより高めの点をもらえていたのは好材料。


アシュリー・ワグナーさん

フリップとルッツのどちらも着氷がきれいに決まらなかった。低めに抑えられた点数から判断するとどちらか(もしくは両方?)がダウングレードされたのではないかと思う。それでもやはり表現力の素晴らしい選手だとあらためて思った。


アリョーナ・レオノワさん

ルッツの着氷が乱れたものの、楽しいプログラムで魅了してくれた。このメンバーの中でSP3位は立派なものだと思う。フリーでも結果を意識せずに彼女らしくはじけて欲しい。


ジョアニー・ロシェットさん

ルッツからのコンビネーションで着氷が乱れてしまった。ことによるとほかにダウングレードでもあったか? 今シーズンの彼女はどうも調子が安定しないのが気になるところ。しかし逆にいうとフリーでは巻き返しも期待できそう。


安藤美姫さん

ルッツからのコンビネーションはループをダブルに。これがとっさの判断で変えたのか事前のモロゾフコーチとの申し合わせで回避を決めていたのかがよくわからない。インタビューでそこのところを確認してもらいたかったのだけど番組内で放送がなく、報道ステーションを見てもそれについてのコメントはなかった。解説の荒川静香さんはとっさに変えたのだろうと判断されていた。まあともかくトリプル–トリプルがなくてもトップに立てたのは、ヨナさんのミスもあったとはいえさすがに実力者というところを見せてくれた。


キム・ヨナさん

フリップがシングルになってSPでは首位に立てなかった。ここしばらくはSPでは無敵の強さを誇っていただけに、やや意外な展開となった。エッジのこともあってフリップには少し苦手意識が出てきているのかも知れない。しかしやはりあの表現力は圧巻だった。


男子シングル

女子が全体にやや低調な演技が続いたのに比べ、男子は極めて高いレベルでの競り合いになった。トマーシュ・ヴェルネル選手があれだけミスを連発した割りには高い点数だったのでインフレ気味の採点だな、と思っていたら、その後いい演技が続いたために高得点ラッシュとなった。

ジョニー・ウィアー選手は久しぶりに会心の演技を見たという感じ。高橋大輔選手はここへきて調子が上がってきているのを感じた。最後の決めのポーズでの表情がとてもよかった。エヴァン・ライザチェク選手もさすがに素晴らしい仕上がり。サーキュラー・ステップでのジャンプ・キックのような動作が格好よかった。織田信成選手も完璧な演技。PCSで今までになく高い点をもらえているのも今後に向けて好材料。ジェレミー・アボット選手はこのところ安定した演技が続いていただけに、ミスを重ねたのはちょっと意外だった。

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