スケートアメリカ2007 女子シングル フリー

2007年10月29日

エレーネ・ゲデヴァニシヴィリさん

SPはジャンプがうまくいかなかったので心配したが最初のルッツは見事に成功。その後フリップと二つ目のルッツは失敗したものの全体には高い能力を示す演技だったと思う。今後の完全復活に期待したい。


アレクサンドラ・イェヴレワさん

昨シーズンあたりから名前を聞くようになっていたけど演技を見るのは初めて。ジャンプの構成はトップ選手にくらべるとかなり物足りない感じ。スピンなどでは多彩な技も見せていた。スパイラルシークェンスでのバックアウトからインへのチェンジエッジはかなり難しそうなポジションで実施していた。


ミラ・リョンさん:ラフマニノフ ピアノ協奏曲第2番〜第3番

この曲が鳴り出すと音楽に聴き入ってしまい演技に集中できなくなる。第2番の第1楽章から第2楽章に移ったあと第3番の第3楽章が鳴り始めたので驚いた。

以前見た時は元気でかわいらしい感じの演技をする選手という印象だったが、かなりやわらかい動きも見せていた。おそらく相当に意識してイメージチェンジを計っているのだろう。欲を言えばステップなどでもう少しダイナミックな感じを出せればなおいいな、と思った。


浅田舞さん

舞さんらしくて優雅でとてもいいプログラムだと思った。二度目のルッツに加えてステップでも転んでしまったのはもったいないが、見終って満足感のある演技だった。フィニッシュの後の本人の笑顔も素晴らしかった。


エミリー・ヒューズさん

かた太りみたいな感じで体が大きくなってしまったので全体に演技が無骨な印象を受けた。ミスがあってもそれが後を引かない快活さは健在。キス&クライでの笑顔もとてもかわいかった。


キャロライン・ジャンちゃん

容貌や体型はまだ幼いけれど、お姉さん選手たちに引けをとらない優雅な表現のできる稀有な選手だと見る度に感嘆してしまう。このシューベルトの「アヴェ・マリア」もそんな彼女のよさを生かした素晴らしいプログラムだと思う。レイバックスピンはレベル4で全てのジャッジがGOEで+3をつけていた。演技が終わった後キス&クライへの段差に腰かけてエッジにカバーをつけていたのがかわいかった。


安藤美姫さん:カルメン

冒頭のマイムの動きはモロゾフコーチならではの振り付けだと思う。全体にカルメンらしさはまずます出せていたのではないか。おそらく右肩の影響もあって得意のトリプル–トリプルのコンビネーションジャンプを入れられないのはキミーとの競り合いの中では苦しいところ。フリップはエッジの矯正によって不安定になっているようだ。ジャンプの切れを欠いているのは心配だが、PCSで比較的高い点数が安定して出ているのは世界女王の強みでもある。前向きに考えてグランプリシリーズを戦い抜いて欲しい。

先ほど『報道ステーション』でエキシビションを見た。女王の風格漂う見事な演技だったけど、私としては「ムゼッタのワルツ」が見たかった。あれはもうやってくれないのかな?


キミー・マイスナーさん:トゥーランドット

トリノオリンピックでの荒川静香さんの演技が記憶に新しい「トゥーランドット」を敢えて選んだのは勇気ある挑戦と言えるだろう。彼女にもミスがあったがそれでも安藤さんに競り勝ったのはやはり力のある選手だということ。日本勢にとって侮れないライバルだということをあらためて印象づける優勝だった。

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スケートアメリカ2007 女子シングル SP

2007年10月29日

浅田舞さん

ルッツからのコンビネーションは二つとも回転不足気味ながらまずまずいい演技だったのではないか。女子選手にしては大柄な舞さんだけにスケール感のあるプログラムになっていると思う。高橋大輔選手と曲がかぶってしまったが特に見劣りはしなかった。


エレーネ・ゲデヴァニシヴィリさん

久しぶりに見るエレーネさんの演技だがルッツ、フリップともにすっぽ抜けて本来の力は出せなかった。プログラム自体はなかなかかわいらしいものだったと思う。


キャロライン・ジャンちゃん

日米対抗の時よりもさらに充実した演技を見せてくれた。今シーズンの台風の目となりそうな予感。ルッツの踏み切りはやはりかなりあやしい感じ。


エミリー・ヒューズさん

オフの間よほど陸上での筋力トレーニングに励んだのかものすごい筋肉をしていた。フィギュアスケート選手としては少し大きくなり過ぎたのではないだろうか? お気に入りの曲とのことで演技はとてもいきいきとしていた。


キミー・マイスナーさん

スパイラルから始まるユニークな構成のプログラム。3回転–3回転のコンビネーションジャンプは解説の佐藤有香さんによると回転不足気味とのこと。それでもやはり元世界チャンピオンの実力を発揮してトップに立った。


安藤美姫さん:サムソンとデリラ

今できることを精一杯やったという感じの演技だった。コンビネーションジャンプはトリプルルッツ–ダブルループの構成。レイバックスピンはビールマンポジションはおろかキャッチフットもなかった。ストレートラインステップでもまさかの転倒。やはり右肩のトラブルは演技に影響が出ているようだ。

モロゾフコーチから恥ずかしがらずにやれと指示されている開始直後の腰の動きはやはりまだ少し羞じらいがあるだろうか。おそらくもう少し妖艶なデリラを演じることを意図しているのだと思うが、どこまで思い切って表現できるようになるか楽しみにしたい。

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スケートアメリカ2007 男子シングル フリー

2007年10月29日

高橋大輔選手:チャイコフスキー ロミオとジュリエット

注目された4回転ジャンプは一つだけ、トリプルアクセルとトリプルルッツで転倒、と彼にしてはやや物足りない印象の演技になった。ジャッジスコアを確認するとスピンやステップでもレベルをとりこぼしている。フリーのみではライザチェク選手に及ばなかったがSPの貯金が生きて優勝した。

全体としては非常に密度の濃い見応えのあるプログラムだと思う。今後はもっと完成された姿を見てみたい。


エヴァン・ライザチェク選手:トスカ

まず上が白い衣装だったので驚いた。そのせいかいつもよりやや体型が太めに見えたような気がする。あるいはもしかすると彼がこれまでずっと黒い衣装にこだわってきたのには恵まれた体型をより際立たせようという意図もあったのだろうか。

得意のフリーはさすがにノーミスでまとめてきた。4回転トウループもスローではやや回転不足気味ながら認定されている。プログラムの印象としては動きが激しすぎて処刑を控えて悲嘆にくれる男の悲しみは伝わってこなかったように思う。


小塚崇彦選手

ジャンプが絶不調で何とも残念な演技。ステップなどはなかなか見応えのあるものを見せていただけにもったいない。こんなにガタガタとジャンプが崩れる選手ではないはずなのだが…。早く調子を取り戻した彼の演技を見てみたい。

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スケートアメリカ2007 男子シングル SP

2007年10月27日

いよいよ始まったスケートアメリカ。まずは男子シングルSPから。


高橋大輔選手:「白鳥の湖」

注目された高橋選手のSP、ヒップホップ調「白鳥の湖」はノーミスの素晴らしい演技。ほかの選手にミスが多かったせいもあり断トツの一位だった。今までにない斬新なプログラムなだけにジャッジにどう評価されるのか興味深かったが、PCSのCHやINなども問題なく高い点をもらえているのでまずは成功といえるだろう。ただ直後の本人のインタビューによるとステップがレベル1だったそうで、技術的には今後少し改善が必要になるのかも知れない。鑑賞している分にはとてもエキサイティングなステップだったと思う。

三つのジャンプも全てクリーンに決め、シットスピンのポジションもかなり意識して腰の位置を低くしている様子がうかがえた。今シーズンにかける強い意気込みが感じられる演技だった。2位以下に大きな差をつけているが、フリーでは4回転ジャンプを2回跳ぶのか注目される。


エヴァン・ライザチェク選手

彼の場合は体型のお蔭で立ち姿だけでほかの選手たちとは差がついてしまっている。本当に得をしている選手だと思う。果敢に挑戦した4回転のトウループは転倒してしまったが、それ以外は大きなミスはなくいい演技だったと思う。ステップなどはあの長い手足をよくあれだけ細かく動かせるものだと感心してしまう。

TESはほかの選手たちよりやや低かったが、おそらく過去の実績のせいもあってPCSで高い点をもらい2位につけた。フリーでは大幅な巻き返しが期待できる選手だが、トップの高橋選手にどこまで迫ることができるだろうか。


パトリック・チャン選手

滑らかなスケーティングが目を引いた。どことなく先輩のジェフリー・バトル選手を彷彿とさせるものを感じた。PCSが高橋選手やライザチェク選手はともかくプレオベール選手やキャリエール選手より低いというのは素人考えだがやや解せない気がする。


アンドレイ・ルータイ選手

昨シーズンあたりから活躍し始めた選手だが演技は初めて見た。ジャンプに力強さがあって見応えのある演技だった。4回転のトウループはスローで見るとやや回転が足りてない感じだがTESの高さを見ると認定されたのだろうか(29日0時20分追記:ジャッジスコアを見て認定されていることを確認)。

顔はまだあどけなさが残るが体格は立派で演技に迫力を感じる。トリノオリンピック以降低迷してしまっているロシアの救世主として期待される。


そのほかの選手たち

アルバン・プレオベール選手は相変わらず独特の感性の表れた演技で楽しませてくれた。スティーヴン・キャリエール選手はシニア・デビューを無難な演技で飾り昨シーズンのジュニアチャンピオンの実力を示した。今後はもう少しはっきりとした個性を感じさせる演技を見せるようになって欲しいと思う。ケヴィン・レイノルズ選手は両足着氷ながら4回転サルコウからのコンビネーションジャンプを決め能力の高さを見せつけた。顔はまだ幼いが実力はシニアで通用するものがありそうだ。南里康晴選手と小塚崇彦選手はともにトリプルアクセルを見事に成功させたのにそのほかのジャンプでミスしてしまったのがもったいなかった。フリーでの巻き返しに期待したい。

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亀田興毅 亀田家を代表して謝罪

2007年10月26日

先日の世界フライ級タイトルマッチで亀田大毅選手が反則行為を繰り返した問題で、亀田興毅選手が会見を開き亀田家を代表して謝罪した

夕方のニュースなどで会見の模様をダイジェストで見た。私はずっと亀田家のことは冷やかに見ていた方だが、マスメディアの手のひらをかえしたような興毅への苛烈な追求ぶりには少し辟易した。父親の史郎氏が会見に顔を出さない理由を興毅に問いただしても仕方ないだろうに…。全く節操がないというか定見がないというか。二十歳の青年に返答に窮するような質問をぶつける前に、自分たちがこれまで彼らのことをどんな風に伝えてきたかを自己検証するのが先ではないだろうか。

こうなることはわかりきっていたにもかかわらず長男の興毅を矢面に立たせて自分は表に出なかった亀田史郎氏は非道な父親だとしか言いようがない。ボクシングからは身を引くということなのでとにかく今後はおとなしくしていてくれることを願うばかりだ。

興毅は何度か言葉に詰まる場面もあったが自ら進んであの場に出てきただけでも大したものだ。「世界一の親父やと思っている」と言いながら少し涙ぐんでいたところに彼の素顔を見る思いがした。彼も弟たちも本来は素直で心の優しい青年なのだと思う。今後はもうこれまでのような特別扱いをされることはないだろうが、一人のボクサーとして一から再スタートを切るのなら暖かく見守ってやりたい。

これで一連の騒動はひと区切りということになるが、これをきっかけにボクシング界がよりよい方向へ向かっていくことを願っている。

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Sports@nifty フィギュアスケートアワード2007 結果発表

2007年10月25日

グランプリシリーズが開幕する前に駆け込みでもう一つエントリーを公開しておきたい。Sports@niftyで投票が受け付けられていたフィギュアスケートアワード2007の結果が6月初めに発表された。もうすでに4ヶ月も前のことになるがいろいろあって反応しそびれていたので、この機会に感想を少し述べておきたい。なお私の投票内容は以前のエントリーに記した通り。

投票結果詳細


フィギュアスケーター・オブ・ザ・イヤーは安藤美姫さんだった。やはりキス&クライでのあの涙を見せられたら誰しも彼女に投票したくなるだろう。もちろん私も彼女を選んだ一人である。

ジュニアスケーター・オブ・ザ・イヤーは傑出した選手が二人いたので選ぶのに苦労した人が多かっただろう。日本国籍を持っている分長洲未来ちゃんに注目する人が多いようだが、キャロライン・ジャンちゃんの方も素晴らしい選手でとてもかわいい女の子なのでぜひ応援して上げて欲しいと思う。


プログラム・オブ・ザ・イヤーは高橋大輔選手のフリー「オペラ座の怪人」だった。このプログラム、最初に日米対抗で見た時はあまりにも音楽を細かくつなぎ過ぎていて印象の薄いプログラムなのではないか、という気がした。しかしNHK杯や全日本選手権での後半にジャンプを集めた難しい構成をノーミスでこなした演技を見ると、さすがに深い感銘を与えるプログラムだと思い直した。

振付けをしたニコライ・モロゾフコーチによるとこれはミュージカルに使われる音楽のほとんど全てをつなぎ合わせたもので、『オペラ座の怪人』の物語をそのまま表現しようとしたプログラムなのだそうだ。こうした試みはフィギュアスケートとしてはおそらく異例のもので、その意味で斬新なプログラムだった。

これはエヴァン・ライザチェク選手の「カルメン」とは対照的な発想だと思う。彼の「カルメン」には特定の役柄を演じようとしたり物語を表現しようとする意図は感じられないが、オペラの有名な旋律のみを巧みにつなぎ合わせることでオペラの筋とは関係なくドラマティックな構成を実現していた。どちらが優れているというのではなく、物語に付随した音楽を利用したプログラムの構成の仕方の対照的な二つの例として記憶にとどめられていくことになると思う。


少し意外だったのはキム・ヨナさんの二つのプログラムのうち、SPの「ロクサーヌ」の方が差はわずかだが上位につけていたことだった。ウェブ上での意見を見る限りノーミスで滑ることはできなかったもののフリーの「あげひばり」の方がヨナさんらしくて好きだ、という人の方が多かったような気がする。もちろん世界選手権ではSPの歴代最高得点を叩き出したプログラムなので高く評価されても少しも不思議なことではないけれど。


概ね妥当な投票結果だったと思うが、やはり日本選手に偏っているという印象も受けた。人気投票という面が出るのはある程度仕方ないだろう。ただフィギュアスケーター・オブ・ザ・イヤーの項目で、出場した全ての試合で圧倒的な強さで優勝した申&趙組の順位がシーズンの半分をお休みしていたランビエール選手より低いというのはあんまりな気がする。まだこの賞自体二回目であり、今後は投票する側がどんなスタンスで参加していくのかも注目される。

投票内容を述べた時のエントリーでは第1回の結果発表が翌シーズンが始まってからになったことを少し非難がましい調子で述べたのだけど、今頃こんな記事を書いて全く人のことは言えない状態になってしまった。軽々しく批判などするものではないということを痛感させられた。

いよいよ本格的に始まる新しいシーズン、今度はどんな選手が活躍するのか、楽しみで今からどきどきする。

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ONE OK ROCK の新曲「エトセトラ」が着うたサイトをジャック

2007年10月25日

森進一さんと森昌子さんの長男森田貴寛(Taka)さんがヴォーカルを務めるロックバンド“ONE OK ROCK”がメジャーデビューしたことにふれたエントリーに昨日驚くほど多くのアクセスがあった。何があったのかと思って調べてみたら昨日発売のこのバンドの新曲「エトセトラ」が大きく報道されたためらしい。現存するほぼ全ての着うたサイトに相当する184サイトから配信されるとのことで、新人バンドとしては異例の展開のようだ。

決して親の七光りではなく実力が評価されてのことのようで、このことを伝えるバークスのニュースにも、バンドのプロフィールのページにもヴォーカルTakaの両親のことについては一言もふれられていない。家庭環境にはいろんなことがあったが、偉大な両親から授かった才能を生かしつつ自力で自分たちの音楽の世界を切り開いていっているようで実にたくましい。メッセージ映像ではTakaがほぼ一人で楽曲紹介をしている。父のハスキーヴォイスとも、母の切なく哀愁を誘う繊細な声とも違った声質のようだが、どんな歌声を聞かせるヴォーカリストなのだろうか? このバンド、ちょっとおもしろい存在になりそうな気がする。

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もうすぐグランプリシリーズ開幕

2007年10月22日

グランプリシリーズがもうすぐ始まるけど、その前に少し古い話題についていくつか思うところを述べてみたい。


安藤美姫さん 今季も4回転を封印

先日の日米対抗フィギュアでの転倒の翌日、安藤美姫さんが会見で今シーズンも4回転ジャンプを封印する方針を明らかにしたと報じられている。この試合の前までは今シーズンはいずれかの大会で挑戦したいという意向が伝えられていたので、おそらく本人としては意欲を抱いているのだと思う。ただ日米対抗の試合前日の怪我でそういうわけにもいかなくなったものと思われる。やはりこの右肩のトラブルは彼女の競技生活に影を落とすことになっていくようで気にかかる。


フィギュアスケート女王はあの歌のヒロイン?

上の情報を伝えるスポーツ報知の記事を見ていたら、前日の試合での安藤さんの演技を「美姫女王の意地、泣き顔でスマイル」という見出しで報じていることに気がついた。わかる人にはわかると思うけど、この「泣き顔でスマイル」というフレーズは先日このサイトでもふれたわがままジュリエット」の冒頭の歌詞である。記者さんBOØWYのファンだったんだな、と思わずにやりとしてしまった。右肩のトラブルに悩み内面に危うい脆さを抱える氷の上のビューティー・プリンセスは確かにこの歌のイメージに合っているかも知れない。


フィギュアスケートにおける同性ペア

すでに各所で話題になっているけど、男性同士のフィギュアスケートペアを主人公にした映画『俺たちフィギュアスケーター』が日本でも公開されることになった。内容はよく知らないのだけど全米で大ヒットとなった爆笑コメディーらしい。これが日本でのフィギュアスケート熱をさらに盛り上げることになるのか、あるいは水を差してしまうことになるのか、注目される。

この映画の肝はやはり男性同士のペアという異色さにあるようだ。同性によるペアというと私は(何年のことだったか忘れてしまったが)NHK杯のエキシビションでの八木沼純子さんと佐藤有香さんによる即席ペアを思い出す。二人とも今もとてもきれいな人だけど、あの頃は本当にかわいらしくて、何とも微笑ましいエキシビションだったのを覚えている。その時はさすがにリフトやスロージャンプ、デススパイラルといったペア特有の技はなく、シングルスケーターが二人同時に滑っているという趣きのプログラムだった。

あの時二人の初々しくかわいらしい演技を見ながらふと思ったのは、日本では全く何の問題もなく受け容れられているが、欧米ではこれはもしかするとタブーなのではないか、ということだった。性についての厳しい倫理規範を持つキリスト教社会ではこうした試みは少し微妙な反応を惹き起こすのかも知れない、などと思ったものだった。しかしふと気がついてみるとアイスショーではベセディン&ポーリシュク組のアクロバティックな演技が大人気を博しているし、この度こうした映画が大ヒットしたということは私の思い過ごしに過ぎなかったようだ。

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世界チャンピオンを励ました歌

2007年10月16日

先日のWBC世界フライ級タイトルマッチについて述べた際、チャンピオンの内藤大助選手が入場のテーマ曲としてC-C-Bの「Romanticが止まらない」を使用していることに少し言及した。厳密に言うとC-C-Bには「Romantic…」のほかにもヒット曲がないわけではないが、今日彼らの存在は専らこの曲によって記憶されているので実質“一発屋”と見做して差し支えないだろう。それだけに今時彼らの音楽がゴールデンタイムの全国放送で流れたことに不思議な感慨にとらわれた。

この「Romanticが止まらない」と内藤選手を巡るエピソードを夕刊フジが今日付の記事で紹介している。内藤選手がこのような今あらためて聴き直す価値があるとは思えない曲にこだわっている理由がよくわからなかったのだが、これを読んで納得した。音楽には人を励ます力があることを示す、ちょっといい話である。


なお挑戦者の亀田大毅選手は試合前に「アイツはいじめられっ子やろ。オレはいじめっ子や」と内藤選手を挑発している。私は彼ら亀田家兄弟のいわゆる“ビッグマウス”については寛容な考えなのだが、この発言はたとえパフォーマンスの一環だとしても極めて不愉快だ。いじめに苦しんでいる子供たちを励ますことはプロのアスリートの役割りではないのか。こうしたパフォーマンスはあくまで彼の虚勢であって、根は人の心の痛みがわかる優しい青年なのだと信じたいが…。

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JBC 亀田家を処分

2007年10月15日

JBCは今日午後倫理委員会を開き、先のWBC世界フライ級タイトルマッチで反則行為を繰り返した亀田大毅選手らにライセンス停止などの処分を下した。


事前に予想されていた通りの厳しい処分になった。すでに二度までも問題を起こし厳重注意を受けていた父親の亀田史郎氏のセコンドライセンス無期限停止は当然のことだろう。もうこれ以上ボクシングに関わるべきではない。

大毅本人についても無期限でよかった、という意見もあるだろうし、そう言われても仕方ないことをしてしまったが、若い選手の再挑戦の可能性を完全に摘み取ってしまうのはあまりいいことではないので、一年間のボクサーライセンス停止は妥当なところだと思う。

自分としても若い人の可能性は最大限信じて上げたいと思うので、性根を入れ換えて真摯にボクシングに取り組むのなら歓迎する、というスタンスをキープしておきたい。もっとも本人はすでに歌手デビューの方に気が向いてしまっているかも知れないが。


彼らがここまで増長してしまった最大の責任は技術的にも精神的にも未熟な選手をあたかも最強のヒーローであるかのように祭り上げてきたマスメディアにある。彼らの力を誇大に喧伝し世の中を欺いてきたメディア関係者には猛省を促したい。

先のタイトルマッチは、ボクシング・ヒーローとはメディアの演出によって作られるのではなく、負けることを恐れずに強い相手に挑戦し続ける不屈の精神によって生み出されるのだということがあらためてはっきりした、という点で意義深いものだったと思う。

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内藤大助 日本人対決を制する

2007年10月11日

注目の日本人対決となったWBC世界フライ級タイトルマッチはチャンピオンの内藤大助選手が3–0の判定で亀田大毅選手を下し、初の防衛を果たした


大方の戦前の予想通りの一方的な試合だった。ガードを固めて前へ出る大毅に対し、内藤は巧みに距離をとりながら左右のパンチを浴びせ、終始試合をリードしていた。ジャッジは三者とも大差で内藤有利とする完璧な内容だった。長い間苦労しながら努力を重ねてきたチャンピオンの経験が試合運びのうまさに表れた一戦と言えるだろう。

大毅はあれだけ一方的に打たれながらも終始前へ出る姿勢を崩さなかったのは称賛に値する。ただガードを固めてから前へ出てパンチを繰り出すという亀田家特有のボクシングスタイルは世界の強豪には通用しないと思う。

それからいくら点数で大差がついて勝てる見込みがなくなったからといって相撲か柔道のような投げ技を繰り返すのはみっともないのでやめた方がいい。試合後に相手と握手も交わさずにリングを去るのもアスリートとして見苦しい行為である。

おそらく彼らがセルフプロデュースの仕方を参考にしているであろうと思われる辰吉丈一郎さんは薬師寺保栄さんに敗れた際、試合前は口汚く罵っていたが試合後は敗戦が決まるとリング上で相手の体を高々と抱え上げて勝利を祝福していた。そうした先輩の潔さを少しは見習ってはどうだろうか。まだ若いし将来のある選手なので今後はボクサーとして真っ当に精進を重ねて欲しい。


なおこれは余談だが試合前のセレモニーでC–C–B高橋ジョージさんという、それぞれ80年代と90年代を代表する一発屋の共演になったのが何ともおかしかった。対戦する二人の音楽の嗜好がこういう事態をもたらしたのだろう。両者の世代の違いも反映されていて実に興味深かった。

亀田一家の常軌を逸したプロモーションに加担し続けるTBSの番組制作の姿勢は相変わらず気持ち悪い。「大毅は前回対戦したポンサクレックよりはるかに弱かった」という内藤の談話に湧いたボクシングファンの歓声を番組スタッフはどう聞いただろうか…。

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六手のピアノのための「ロマンス」 続報

2007年10月10日

以前ラフマニノフの若き日の作品である六手のピアノのための「ロマンス」について紹介記事を書いたが、その後新たに気がついたことがあるのでその報告をしたい。


ラフマニノフはよく知られているように交響曲第1番の初演の失敗の後何も作曲できない日々が続いていたが、幸い精神科医のダーリ博士の助力により精神的な危機を乗り越えることができた。再び創作への意欲を取り戻した彼が最初に取り組んだのが2台のピアノのための「組曲第2番 Op.17」だった。ピアノの名技性と交響的な響きの効果の両面を追求したこの作品は1900年から翌年にかけて作曲され、今日ラフマニノフの最高傑作の一つに数えられ、高く評価される名曲である。2台のピアノのためのレパートリーとしては現在最も演奏される機会の多い作品の一つとみていいようだ。

この組曲は以下の4曲から構成される。

  1. 序曲
  2. ワルツ
  3. ロマンス
  4. タランテラ

勇壮な行進曲風の序曲に始まり活気のあるタランテラで締めくくられる壮麗な組曲で、ラフマニノフが作曲の才能を自ら確認し、再び作曲家として歩んで行く決意を高らかに宣言した記念すべき作品である。友人のピアニストで教育者としても知られるアレクサンドル・ゴリデンヴェイゼル(“ゴールデンワイザー”と表記されることも多い)に献呈され、私的な会合で二人の共演により演奏が披露された。公式の初演はその後作曲者自身と従兄にあたるピアニスト、アレクサンドル・ジロティとの共演により行われた。

この初演は「ピアノ協奏曲第2番 Op.18」の初演よりも後だったが、出版は組曲第2番の方が早かったようで作品番号はこのような順序になっている。実際にはどうやらこの二曲は並行して作曲されていたらしい。


当然のことながらこれよりも前に2台のピアノのための「組曲第1番 Op.5」という作品が存在する。こちらは「幻想曲–絵画」というタイトルがつけられ、四つの曲にはそれぞれレールモントフ、バイロン、チュッチェフ、ホミャコフによる詩が添えられている。これらの詩から受けた印象の音楽による絵画的表現ということなのだろう。

一方この組曲第2番には標題その他のコンテクストが存在せず、着想の源泉は明確にされていない。ところがある時この曲を聴いていてそれを読み解く重要な鍵がひそんでいるのに気がついた。

「組曲第2番」の第3曲「ロマンス」の終盤に、六手のピアノのための「ロマンス」のコーダが引用されているのだ。「組曲第2番」は手許にあるCDを比較してみると演奏によってテンポ設定がかなり違うようだが、現在日本で最も広く流通していると思われるマルタ・アルゲリッチさんとアレクサンドル・ラビノヴィッチさんによる録音では第3曲の5分12秒から40秒ほどの間、六手のピアノのための「ロマンス」の方はヴラディーミル・アシュケナージさんがご家族と共演した録音でいうと3分10秒以降である。お聴きになればこの二つの部分の曲想がほとんど一致しているのがおわかりいただけるだろう。これほどの一致は決して偶然類似した音型になったというようなものではなく、意識的に自作から引用したとみて間違いないと思う。

六手のピアノのための「ロマンス」の序奏がピアノ協奏曲第2番の第2楽章に用いられていることは冒頭で言及したエントリーですでに述べたが、コーダまでもが同じ時期の自作に引用されているというのは驚きだった。並行して作曲されていた二作品でともに引用されているということは、この時期のラフマニノフにとってスカローン三姉妹とイワノフカで過ごした日々の想い出がいかに大切なものであったかを物語っている。若き日にプライヴェートな目的で作られた小品とはいえ、この曲が彼の創作を理解する上で重要な作品であることはいよいよ明らかになった。

これはもしかすると新発見なのだろうか? いやいや、両方の作品を演奏した経験のあるピアニストなら気がつかないはずはないと思う。ただ、少なくとも私はこれまで文章として記されたのを見たことがないし、ウェブで検索してみてもそれらしい記述は見当たらない。あまり知られていない事実であるのは間違いないだろう。

なお以上の説明は楽譜もろくに読めない素人の音楽ファンが耳で聴いた経験を基に述べたものであることをご承知おき下さい。できればご自身で音源を聴き比べて、あるいは楽譜を見比べてお確かめ下さい。


実を言うとこの事実に気がついたのはもう去年のことになるのだけど、何となく書きそびれているうちに一年近く経ってしまった。私にとってクラシックの記事を書くというのはなかなか荷が重い作業であるようだ。

なおこれはすでによく知られていることだが、ラフマニノフは1900年の春にイタリアを旅行しており、その痕跡は組曲第2番の終曲「タランテラ」に残されている。このイタリア旅行、当初は作家・劇作家のアントン・チェーホフと行くことを計画していたが、チェーホフの健康状態が悪化したため実現しなかった。代わりにフョードル・シャリャーピンを誘ったもののこちらもシャリャーピンの都合がつかず、結局一人で行くことになったものである。

チェーホフとモスクワ楽派の音楽家たちとの関わりもこのサイトで論じてみたいテーマの一つなのだけど、これもなかなか大変なことなので手をつけられずにいる。できればそのうち少しずつでも語っていきたいと思っている。

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「日米対抗フィギュア2007」エキシビション

2007年10月 7日

昨日に引き続きエキシビションの感想を簡単に。


ライアン・ブラッドリー選手は高さのあるバレエ・ジャンプ、テコンドーのような廻し蹴りに片足着氷のバック・フリップと多芸なところを見せてくれた。人を楽しませるのが根っから好きな選手という印象を受けた。


浅田真央ちゃんの「So deep is the night」は書きそびれていたのだけど前に名古屋で披露した時の動画を見て「今シーズンの真央ちゃんは違う」と目を瞠ったプログラム。「青い衣装を見て一瞬荒川静香さんかと思った」というような感想を述べている方が多くいて、「そんなまさか」と思いつつ見てみたら実際そんな感じだった。

手足の動きに表情があって、何気なくとったポーズがとても美しかったりする。明らかに表現への気配りがこれまでとは格段に違っていることを窺わせた。これはタラソワさんの指導の賜とみて間違いないだろう。タラソワさんは真央ちゃんに内面を表現するよう指導していたようだけど、早くもその成果が表れてきているようだ。最初にタラソワさんに師事すると聞いた時には相性がどうだろうかと気になったが、これだけ見違えるほど演技が違ってきているのは真央ちゃんならではの柔軟な吸収力のなせるわざだろう。

今回の演技も素晴らしかったが、ライティングが衣装の色とほとんど一緒だったのはよくない演出だったと思う。同系統の色でも濃淡を少し変えればもっと真央ちゃんの演技が映えていたはず。誰に責任があるのかわからないけど、今後はもっと工夫して上手に見せて欲しい。

なお使用していた曲はショパンの「エチュード ホ長調 Op.10-3」、通称「別れの曲」として知られる曲に詞をつけて歌にしたもの。歌っているのはレスリー・ギャレットさんというイギリスのソプラノ歌手らしい。日本ではあまり紹介されておらず、国内盤のCDも出ていないが、地元ではとても人気のある歌手らしく、クロスオーヴァー路線も積極的にこなしているようだ。こうした選曲も外国人コーチに師事している成果といえそうだ。


高橋大輔選手は今シーズンのSP、「白鳥の湖」のヒップホップ調アレンジを披露してくれたのだが、事前に青嶋ひろのさんが興奮気味に紹介して下さったように実に斬新なプログラムだった。こうしたプログラムは普通「おもしろい」とは思ってもなかなか深い感銘を受けるような演技にはならないものだ。しかしさすがに高橋選手だけあっていささか奇を衒ったような選曲でも存分に持ち味の表現力を発揮していた。特に彼のアグレッシヴな面が強調された、興味深いプログラムだと思う。今シーズンを通してこれからどんな風に仕上っていくのかとても楽しみだ。


最後にTBSの放送について一言。

昨日は全ての選手の演技を放送してくれてよかったのだけど今日はまた3人の演技がダイジェストになってしまったのは残念。それから真央ちゃんの「So deep is the night」や高橋選手の「バチェラレット」を“今シーズンのフリー”というなど、実況の戸崎アナウンサーが選手のプログラムをよく把握していないことが露呈してしまっていた。

キャロライン・ジャンちゃんのスピンを“パール・スピン”と呼ぶのは知らなかったけど、多分レイバックのポジションからキャッチ・フットしてフリー・レッグと両腕で円を描いた状態のことを指すのだと思う。解説の八木沼純子さんはちょうどそのタイミングで指摘していたのに、戸崎アナウンサーは普通のビールマン・スピンのポジションになったところで「これですね」と言っていた。おそらくアメリカの一部のファンの間で広まりつつある愛称を拾ってきて彼女のキャッチコピーにしたのだろうけど、それならそれで番組スタッフの間に共通理解が徹底していて然るべきではないだろうか。

村主章枝さんの紹介VTRのBGMに「トゥーランドット」を使用していたのもいかがなものかと思う。選手のプライドへの配慮が足らないのではなかろうか。今後の反省材料として改善に取り組んで欲しい。

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「日米対抗フィギュア2007」

2007年10月 7日

フィギュアスケートの本格的なシーズンの開始を告げる「日米対抗フィギュア」が6日開催された。ジュニアはすでにシーズンが佳境に入っているが、シニアは注目選手の今年のプログラムが披露される初の機会となった。今年もまた気の休まらない日々が続くことになりそうだ。

気になった選手を中心に感想をダイジェストで。


高橋大輔選手はきれいに決まらなかったけど4回転ジャンプを2回入れてきたところに今シーズンにかける意気込みを感じた。サーキュラー・ステップの後に美しい旋律に乗せて情熱的なマイムの仕草を取り入れたところにモロゾフコーチならではのセンスを感じる。彼の持ち味を生かしたいいプログラムだと思う。


ジョニー・ウィアー選手はやはりこういう情感のあるピアノ曲が絶妙に似合うと思う。少し手をついてしまったけど高さと幅のあるトリプルアクセルは健在で、調子は悪くなさそうだ。昨シーズンはあまりいいところの見られないシーズンになってしまったけど、今シーズンはぜひ彼らしい魅力溢れる演技を披露して欲しい。


女子はまさかこのメンバーで日本が敗れることになるとは思ってもみなかった。特に安藤美姫さんの転倒による怪我には驚いた。おそらく右肩を痛めたのだと思うが、どうも脱臼が癖になってしまっているようで心配される。一頃見られた精神的な脆さはもう全く心配しなくてよさそうだが、この肩のトラブルは今後の競技生活を通じて彼女につきまとうことになりそうで不安になる。

肝腎の演技の内容は、最初のルッツでの転倒による怪我からの再開後はやはりこの怪我を気にしながらの演技になったようで、慎重に要素をこなしているという印象。事前には「セクスィーな女性の演技」を意識していることを話していたが、取り敢えず無難な演技に収まっていた。シーズンを通じてより“セクスィー”さに磨きをかけていって欲しい。


浅田真央ちゃんはやはりタラソワさんの指導を受けて手足の動きに表情が出てきたと思う。特にストレートラインステップで上体を大きく動かしてダイナミックさを出していたのは今までに見られなかったところで印象に残った。コンビネーション・ジャンプが抜けてしまったのはらしくないミスだけど、半分お遊びの大会なので気にすることもないだろう。

先月で17歳になったそうで、いつまでも“ちゃん”づけで呼んでいいものか、というのは気になるところではある。でもまだ当面はやはり“真央ちゃん”が似合いそう。きっと彼女のことはおばあちゃんになっても“真央ちゃん”と呼んでいそうな気がする。


長洲未来ちゃんとキャロライン・ジャンちゃんの二人はいつも見ていると「相手は子供だぞ、落ち着け!」と自分に言い聞かせるのに必死になる。あまり心の奥底にひそむ(?)ロ○コン魂を揺すり起こさないでくれ、と哀願しながら見守るほかない。

未来ちゃんはスパイラルから入るちょっと変わった構成のプログラム。連戦の疲れからかめずらしくジャンプがガタガタになってしまったが、彼女の持ち味が出た夢のあるプログラムだったと思う。足を止めたマイムの動きには村主章枝さん並みの女優魂を感じた。

キャロラインちゃんの方は実力のあるお姉さん選手たちを差し置いて最もまとまりのある演技を披露してくれた。ただ、演技に子供っぽいところのない、大人びた表現のできる選手ではあるけれど、さすがに「Spanish Gypsy」は背伸びをし過ぎかな、とも思った。

多くの方が指摘されているように、ルッツの助走に癖があるのがルールの変更もあって今後注意を要するポイントになってくると思われる。しかしスピンやスパイラルのポジションはすでにシニアのレベルでも最高峰と言っていいように思う。


参加選手全員の演技を見せてくれたTBSの放送は満足のいくものだった。ファンの意見を番組構成に反映しようと配慮してくれているのなら歓迎したい。ぜひ今後もこれを継続していって欲しい。

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「アヴェ・マリア」

2007年10月 6日

作曲:伝ジュリオ・カッチーニ 編曲:井上鑑
アルバム「AVE MARIA」COCQ-83633(2003.05.21)所収。ベスト・アルバム「クラシカル・ベスト〜天に響く歌〜」COZQ-255,6(2007.04.20)にも収録されている。

多忙なミュージカル出演の傍らクラシックへの志向を強めていた本田美奈子さんは、プロデューサーの岡野博行氏の助力を得て2003年に念願のクラシック・アルバムの第一作「AVE MARIA」をリリースした。収録曲は100曲以上の候補の中から厳選されたそうだが、その中でも栄えあるタイトル・トラックとして収録されたのがこのジュリオ・カッチーニ(1545頃 - 1618)の「アヴェ・マリア」である。


愁いを帯びた叙情的な旋律が美しく、高貴な悲しみと密やかな祈りを感じさせるこの作品は、近年になって人気が急速に上昇し、演奏・録音される機会も極めて多くなった。「アヴェ・マリア」というと従来はシューベルトグノーによるものが広く親しまれてきたが、今やそれに並ぶ存在になったとも言えそうな勢いである。

この「“カッチーニの”アヴェ・マリア」として知られる作品、私は単純に埋もれていた名曲に新たに光が当てられるようになったものとばかり思っていたのだが、調べてみると事情は少し違うようだ。Wikipediaによるとこの曲は90年代以前には楽譜も録音も存在せず、現在流通している楽譜はいずれも編曲を経たもので、出典が明らかにされていないことから偽作の可能性が高いという。

なるほど、言われてみると確かに奇妙な曲である。まず曲調が私たちが普通抱いているバロック音楽のイメージから懸け離れている。優美な旋律にこめられた濃密な情感はどう見てもむしろロマン派の音楽に近い。フォーレの「夢のあとに」やラフマニノフの「ヴォカリーズ」を髣髴とさせるものがある。歌詞が「Ave Maria」だけでほとんどヴォカリーズで歌われるのもバロック時代の習慣ではあり得ないことなのだそうだ。

この曲が一般に広く知られるようになったのはカウンター・テナーのスラヴァさんが取り上げて以降と見られるが、この曲の最も古い録音はイネッサ・ガランテさんというソプラノ歌手がデビューCDに収録したものらしい。従って実際にはこのイネッサさんの周辺の作曲家によるものであることが推測されているようだ。

自分の作品を遠い過去の作曲家の名前で発表することは折角の労作を無条件にパブリック・ドメインとして提供することに等しいもので、現代の作曲家がこうしたことを行う動機には少し理解し難いものがある。絵画などの偽作と違って金銭的な利得にはつながらないはずなのだが…。名前を使われたカッチーニとしてはやはり自分の預かり知らぬところで作曲された作品によって有名になってしまったことを苦々しく思っているだろうか。


出自の問題はともかく、名曲であることに変わりはないので、音楽ファンとしてはそうした点も念頭に置きつつ純粋に音楽を楽しめばいいのだと思う。美奈子さんがこのあたりの事情をどの程度認識していたのかはわからない。CDにはカッチーニの名がクレジットされているが、ブックレットの岡野氏による曲目解説にはカッチーニにより作られたとはっきりとは記されていない。あるいはもしかすると岡野氏もある程度事情を把握していて、美奈子さんも説明を受けていたという可能性も考えられそうだ。

しかし今それよりも重要なのは美奈子さんが数ある名旋律の中からこの曲を選んでアルバムのタイトルにも起用したことの意味だろう。「命を懸けている」とまで語った、それほど強い決意を以て制作に臨んだこのアルバムにオープニングの「流声」に続く最初の曲として収録したのだから、よほどこの旋律に魅入られていたのだと想像できる。こうした愁いを帯びたゆるやかな旋律というのは私たちにふくよかな時の流れをもたらしてくれる。そんなところが新たな歌の世界を模索していた美奈子さんの心をとらえたのかも知れない。


このトラックは今年4月に発売されたベスト・アルバム「クラシカル・ベスト〜天に響く歌〜」にも収録されている。このアルバムは録音が行われた時間的な順序に従って曲が並べられているのだが、その中で「アヴェ・マリア」は二番目に置かれている。従ってこの曲はアルバム「AVE MARIA」の収録曲の中でも早い時期に録音が行われたものと思われる。

そのせいか美奈子さんの歌い回しには若干の硬さが感じられるような気がする。丁寧に楽譜をなぞるかのような歌唱からは、自分にどのような表現が可能なのかを慎重に見極めているような様子が窺われる。おそらくこの頃はまだ独自のソプラノ唱法を完璧に自分のものとするために磨きをかけている途上だったのではないだろうか。もう少し経験を積んだ後ならばもっとしなやかで闊達な歌い回しを聴かせてくれただろうと想像できる。

もちろんそうは言っても、ここでの歌唱も美奈子さんらしく心のこもったものであり、十分に魅力的である。発声自体はすでに美しく磨き抜かれており、聴く人の心にやさしく響いてくる。

井上鑑氏はこの曲にスタジオでの技術を駆使した凝った編曲を施している。私としてはもう少しシンプルでアコースティックにこだわった作りにした方がこの曲の美しいメロディーを引き立てていたのではないかという気がする。しかし刈田雅治氏による力強い響きのチェロ・パートは美奈子さんの繊細なソプラノ・ヴォイスを支え盛り立てることに成功している。


謎に包まれたこの名旋律だが、今こうして美奈子さんの歌唱で聴けるということに感謝したい思いである。ソプラノ歌手としての出発点にこの曲を選んだ美奈子さんの気持ちに思いを馳せつつ聴いていきたい。


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緊急メンテナンスのお知らせ

2007年10月 4日

レンタルしているXREAのサーバが10月5日の午後10時から11時にかけて緊急メンテナンスを行うそうです。

一部のサーバーの緊急メンテナンス
時間 2007年10月5日(金)10:00 PM〜11:00 PM の間の1時間程度
内容 無停電装置の交換と電源回路の変更・増設

夜間帯の作業となり、大変ご迷惑をお掛けしますが、ご協力の程よろしくお願い申し上げます。

XREAから上記の案内がありました。この時間帯には当サイトへの接続ができなくなるものと思われますが、ご理解・ご協力のほどよろしくお願いします。

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