最近の動画から

2017年8月31日

今月公開されたアイドル動画から印象的なものを二つほど。



“さや姉”こと山本彩さんは今のアイドル界を代表する名歌手といっていいだろう。艶のある声にハスキーなトーンが混じるのが堪らなく魅力的で、その恵まれた天分と豊かな歌心が、彼女を傑出したヴォーカリストに仕立てている。この「365日の紙飛行機」は朝ドラのテーマ曲として広く親しまれた曲だが、やはり歌い出しにさや姉のソロを起用したところに成功の要因があったのではないだろうか。AKB48名義の曲でありながら自身の持ち歌のようにしてしまっている貫禄が素晴らしい。



こちらはアイドルネッサンスが今月リリースした4曲のオリジナル曲のうちの一つ、「5センチメンタル」のMVだが、リリースした音源に映像を被せたのではなく実際に歌っているシーンを一発撮りした異色のMVである。校舎の屋上から校庭へと移動しながらアカペラで破綻なく一曲を歌い切っているところに彼女たちの実力のほどが窺える。この曲は石野理子ちゃんをリード・ヴォーカルに据えた構成になっているが、理子ちゃんも声に魅力のあるアイドルの代表格で、伴奏がないことでその魅力をより純粋に堪能できる卓抜なMVに仕上がっている。

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寺嶋由芙さん「わたしを旅行につれてって」

2017年7月20日


今月12日に寺嶋由芙さんのシングル「わたしを旅行につれてって」がリリースされた。今回はタイトル曲をコンペで発注したそうで、105曲の候補曲の中から選ばれたのが望月ヒカリさんによるこの曲だった。プロデューサーの加茂啓太郎さんによると80年代風の夏のイラストを見てもらって、それに合ったイメージの曲を、ということで発注したらしい[1]。おそらく構想の段階で既に大瀧詠一的な方向性が定まっていたのだろう。望月さんは新進の作曲家で、これがメジャーでは初仕事になるそうだが、実にさわやかなメロディーでこの注文に応えている。今回はサビから始まる構成ということもあり、一聴してすぐに陽光きらめく夏空のイメージが胸に広がってくる。

いしわたり淳治さんによる歌詞は恋人との旅行を前に揺れ動く乙女心をかわいらしく描いている。夏を直接イメージさせるような言葉は入っていないが、ゆっふぃーからは「夏のドキドキする感じをテーマに」という依頼をしていたそうだ。メロディーも含めて夏にこだわったのは、持ち歌も増えてきたことで、これまで避けてきた季節感の強い歌にもそろそろチャレンジしてみよう、という意図があったようだ[2]。ヲタクにとって衝撃的なのは2番の出だし、“きっとノーメイクも それ以上も見られてしまうね”というフレーズで、リリースイベントを配信で観て初めて聴いた時からすごい歌詞だな、と戦慄したが、何度聴いてもその度に心を抉られる思いがする。字面だけ見ると特にどうということもない言い回しなのに、ヲタクが勝手に色々と想像して病んでしまうというのはなるほどよく出来た仕掛けだ。

編曲はゆっふぃーにはおなじみのrionosさんで、クレジットの記載はないが演奏には宮野弦士さんがギターとベースで参加している[3]。作曲を公募した本作でも周りをいつもの面々が固めているのは心強く感じる。

ゆっふぃーの歌唱は、発声を少し工夫しているのか、声があどけない感じになっているのが印象的だった。初めはこの曲の曲調に合わせているのかとも思ったのだが、8日の生誕ワンマンライヴでは全曲そんな感じだったので、これが20代後半を迎えたゆっふぃーの新たなヴァージョンということなのだと思う。BiSに所属していた頃のゆっふぃーが吐息混じりの色っぽい歌声で曲にアクセントを与えていたことを思うと隔世の感があるが、年を経るごとに声が若返っていくとのいうはなかなか稀有なことに違いない。


「天使のテレパシー」に引き続き荒船泰廣さんが担当しているMVは、内容的にも前作の続編のような構成になっている。今作の見所は何といっても水着姿を披露していることで、ソロになってからのMVとしては初めてになる(ここに貼り付けたショートヴァージョンでは見られないが、フルヴァージョンが8月31日までの期間限定で公開されているほか、30秒のCM用ダイジェスト版でも一部を見ることができる)。短パンを履いているのでそれほど露出度が高い印象は受けないが、元々はもっと布面積の大きい水着を予定していたそうなので[4]、これでもゆっふぃーにしてはかなりのサービスということになるだろう。とはいえもっと水着シーンを大々的にフィーチャーしたアイドルのMVは数多くあるし、あんまりいうと申し訳ないけどゆっふぃーはそれほど見映えのする体型でもないので、大きなインパクトのある映像というわけにはいかない。それでも数多のセクシーなMVの中に埋もれないよう見せ方をうまく工夫して、控えめな露出ながらもアイドルヲタクの界隈を騒然とさせることには成功していたと思う。そうした奥ゆかしさといい意味での計算高さこそはゆっふぃーの真骨頂だろう。体型ということでいえば浴衣姿の折れてしまいそうな細さが可憐で、強く印象づけられた。演技に関しては雨宿りのシーンと最後の待ち合わせのシーンの表情の変化が自然で、演出の意図をうまく体現していてとてもいい。セリフはないのに会話が聴こえてきそうなこれらのシーンが全体を一つのドラマに仕立て、淡い色気と文芸性とが同居した秀逸なMVに昇華させている。

衣装はオードリー・ヘップバーンをイメージしたはずがバスガイド風になってしまったとこぼしていたが[5]、今作の旅行というテーマに添ったものになったので結果的によかったのではないか。青を基調にした色合いが砂浜でのダンスショットによく映えている。配信で最初に見た時にはスカートのテラテラした感じが些か安っぽく感じられて不満を抱いたのだが、MVを観て陽光きらめく海の水面をイメージしているらしいとわかり、得心がいった。

アイドルヲタクの間での話題作りにMVの水着シーンと並んで貢献したのは、濡れたTシャツにビキニが透けた初回限定盤Aのジャケット写真で、撮影の大川晋児さんはこちらも「天使のテレパシー」に続いての起用となる。このショットに限らず三形態全て、ジャケット裏やケース裏との表情の対照が見事で惹き込まれる。



カップリング曲「夏'n ON-DO」(通常盤と初回限定盤Bに収録)は怒髪天の増子直純さんによる作詞、上原子友康さんによる作曲の音頭である。これも加茂さんのアイディア[6]とのことだが、怒髪天はテイチクのレーベルメイトでもあり、前作の演歌「終点、ワ・タ・シ。」に続き老舗レーベルへの所属によって切り開かれた新境地ということになるだろう。音頭という情報だけ先に公表された時点では「イエロー・サブマリン音頭」的な奇抜なものになることも予想したのだが、実際に出来てきたのは極めて真っ当な、どこかの町の盆踊りで使われてもおかしくない正統的な音頭だった。実際にもアイドル現場を盆踊り会場に変えてしまう[7]、魔法のような曲である。

作詞の増子さんは合いの手として歌にも参加していて、“なんならスイカになりたいよ!”はヲタクの願望を代弁してくれているようで楽しいし、そう思って聴くと“ズッキンドッキン罪なヤツ!”も“それ以上”で抉られた傷に対して一矢報いようとしているかのようでもある。さらに曲を賑やかしているのはでんぱ組.incの成瀬瑛美さんで、えいたそのハイテンションな合いの手が入ると体感温度が数度上がったような感覚に陥らされる。ゆっふぃー自身の“たまや〜”“かぎや〜”のかけ声もチャーミングだ。

編曲は先に名前の出た宮野弦士さんで、「終点、ワ・タ・シ。」に続き川嶋志乃舞さんの三味線をフィーチャーしている。三味線のカラッとした音色が刻む小気味よいリズムが祭り気分をいやが上にも高めてくれる。8日のワンマンライヴではさらに和太鼓アイドルの桜りりぃさんが華を添えてくれた[8]のも楽しい体験だった。


もう一つのカップリング曲は早見優さんのカヴァー、「夏色のナンシー」である(通常盤と初回限定盤Aに収録)。この選曲は、今年3月くらいから放送されたロート製薬のテレビCMでゆっふぃーがこの歌の替え歌を歌ったことがきっかけだった。因みに先に名前を挙げた大瀧詠一の「君は天然色」もリリース当時ロート製薬のCMに起用された[9]そうで、どこか不思議なつながりのようなものを感じさせる。

編曲はタイトル曲と同じくrionosさんで、オリジナルを尊重しつつも今の音に生まれ変わらせることに成功している。ヲタクが口上を入れられる[10]ように長い間奏を挿入している[11]のもまさに今風の趣向である。実は原曲の音源をたまたま持っていたのであらためて聴いてみたのだが、今は亡き茂木由多加のアレンジワークに今さらながら瞠目させられて、繰り返し聴き入ってしまった。ピコピコした装飾音にやや時代を感じるものの、全編にわたって楽しい仕掛けがほどこされていて、伴奏にだけ注目して聴いていても少しも飽きることがない。やはり近年亡くなった佐久間正英が「僕は打ちのめされた」と述べた[12]のも頷ける話で、名曲というのは作詞や作曲だけでなく編曲家の確かな腕前があってこそ生まれるのだということを示す好例だろう。こうした歴史ある名曲を旬のアイドルのフレッシュな歌唱で聴けるのは何ともうれしいことだ。


今回のシングルではヲタクとして試されている感じの作品をつきつけられた形になった。ヲタクの道もなかなかに険しいが、それでも強い心を持って乗り越えていきたいものだ。幸いタイトル曲の歌詞は旅行の相手を二人称で“君”と呼んでいるし、MVの主要なシーンも“君”から見た主観映像になっているので、その構図に乗っかっていつかゆっふぃーと二人で旅する未来を夢見て乗り切るのもいいだろう。前作のレヴューでも引いた名言[13]を俟つまでもなく、ヲタクの“好き”を受け止める覚悟こそはゆっふぃーがこうしてシーンに立ち続ける理由の一つに違いないのだから。


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最近のMVから

2017年6月30日






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最近のMVから

2017年5月30日









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寺嶋由芙さん「天使のテレパシー」

2017年4月12日


先月22日に寺嶋由芙さんの6枚目のシングル「天使のテレパシー」がリリースされた。テイチクに移籍してからシングルとしては初の作品となる。タイトル曲「天使のテレパシー」は80年代風のアイドル楽曲で、懐かしさが一周回って新しいというゆっふぃーにはおなじみの路線である。作編曲は前作アルバムのリード曲「わたしになる」と同じく宮野弦士さんで、今やプロデューサー加茂啓太郎さんのチームには欠かせない人材という感がある。往時を知らない若い作曲家なのにいかにもなキラキラした雰囲気を苦もなく再現してみせるのはさすがで、ノスタルジックな感興を喚起しつつも古さは少しも感じさせないところが素晴らしい。

作詞の真部脩一さんは、同じく前作アルバムの収録曲「101回目のファーストキス」が好評だったことに応えての起用ではないかと思う。私もこの曲は大のお気に入りだったので、各曲の提供者の発表があった時点でもうすでに胸が高まるものがあった。“ピッピッピ”、“パッパッパ”といった要所に配した擬態語は意外だが効果的で、ああそういえば昔のアイドルソングってこんなだったなぁと懐かしくなる。その一方で「マグマのように 熱は湧き出る」「今日だけの冷めない火照り」といったフレーズに、アイドルらしいかわいさの奥にひそむ“女”としての芯のようなものもほの見えてドキリとさせられる。前作でもそうだったけど、こうした生々しい情念めいたものをキラキラした言葉遣いの合間から品よくこぼれさせるのが実にうまい。最後の「湯気が出るほどに/ホカホカのわたしを/温かいうち まるっとあげる」という部分は「わたしになる」のMVの最初の方のシーンにつながっているようで心憎い。アルバムのレヴューにも書いたように、このシーンにちょっとした思い入れのある私としてはうれしい演出だった。「感触ごと 読みとってほしいよ」が不自然な譜割りのせいで「看取ってほしい」と聴こえてしまうのも何だか楽しい。

MV(全編は初回限定盤Aに付属のDVDに収録)はベタなドジっ娘シーンをこれでもかと詰め込んだもので、ヲタク心を巧妙にくすぐられてきゅんきゅんする。細かく言及していくときりがないが、書店のシーンはアルバムのレヴューでもふれた大学一年生の時のエピソード[1]を思い起こさせてお気に入りだし、サッカーボールのシーンは黄色のワンピースが似合い過ぎて胸が締めつけられる。各所でさり気なくゆるキャラが登場するのもゆっふぃーらしいサービスで、ゆるキャラヲタクの方ならお気に入りのキャラを探しながら見るのも楽しいだろう。

今回着ているのはいかにもアイドルという感じのフリフリの衣装で、ヲタクを陶酔させる魔力を秘めている。私は初披露のイベントを配信で見ながら、ふと加藤千恵さんのいう“まっピンク”というのはきっとこんな感じの色合いをいうのだろうな、と頭に浮かび、熱に浮かされた勢いで下手なパロディ[2]まで作ってしまったほどだった。その時は本人はだいぶ照れた様子を見せていたが、リリース週最終日のワンマンライヴの頃になるとすっかり板について、堂々と着こなしていた。ゆっふぃーが踊るたびにスカートの裾がひらひらと舞うのを眺める気分は、まさに夢見心地だった。



終点、ワ・タ・シ。」はゆっふぃーにとって初となる演歌で、作詞・作曲は町あかりさんが手がけている。ゆっふぃーは予てから演歌も好きだと話していたし、テイチクは演歌の大御所を数多く擁するレコード会社なので、いつかは歌って欲しいと思っていたが、これほど早く実現するとは思ってなくてうれしい驚きだった。町さんはここまで振り切ったド演歌は初めてのようだけど、昭和歌謡をオマージュした活動をしてきた才人ということもあり、あまり苦労もなく産み出すことができたようだ。クール・ファイブ風の“ワワワワ”コーラス(コーラスアレンジは芦沢和則さん)や編曲の宮野さんこだわりのヴィブラスラップ(この楽器名は宮野さんのツイート[3]で知った)の効果も相俟って、まさに演歌の世界を形作っている。特筆すべきなのは川嶋志乃舞さんの三味線で、出だしのソロのカッコよさからしてもうただごとではない。演歌の編曲で三味線が使用されることはよくあるが、一流の奏者を起用するとこうも違うかと感嘆させられる。

このようにフォーマットは完全に演歌なのだが、中身は今どきのアイドルとヲタクの関係性を描いたアイドルソングとして成立しているのがこの曲のユニークなところだ。この“ヲタクが最後にたどり着く終着駅”というモティーフについては、以前に絵恋ちゃんが「オタクが最終的にたどり着くのはゆっふぃーさん」と発言して[4]、それがアイドルヲタクの間でちょっとした話題になるということがあった。だからこの曲を最初に聴いた時はてっきり町さんもその件を元に作詞したのだと思ったのだが、町さんはこのエピソードを全く知らなかったそうで、本人のいい方によると「「なんて信頼できるアイドルなんだ」と勝手に感じて出来た曲」だという[5]。ゆっふぃーに対して絵恋ちゃんと町さんの二人が偶然にも同じ印象を抱いたというのは何とも興味深い。

ゆっふぃーの歌唱は、かなり付け焼き刃的に習得したようで幾分ぎこちなさは感じさせるものの、随所にしゃくり(挙げるときりがないが例えば歌い出し“見送るたび”の‘び’とか)やポルタメント(“ちょっぴ〜り”、“しっか〜り”の伸ばすところなど)、ルバート(一番わかりやすいのは大サビで“きっと最後は”の‘さ’が少し遅れるところ)を織り交ぜながら叙情的で粘っこい歌い回しを聴かせている。宮野さんが検索して調べた[6]という「母音を二回続ける」技法は産み字というそうなのだが、“たどり着く”(た〜ど〜おり〜つう〜く〜)、“待っています”(ま〜あってい〜まあ〜す〜)といったあたりに生かされているようだ。

MV(全編は初回限定盤Bに付属のDVDに収録)はシンプルな作りながら、藤色の振袖に身を包んだ凛とした佇まいを存分に堪能させてくれる。“古きよき時代から来”たゆっふぃーに和装が似合うのはもちろんだが、うなじをしっかり見せようと襟まわりをゆるくした着こなしがまた何とも罪深い。

リリースイベントではテイチクのスタッフさんたちがこの着物に合わせて作った紫の法被を着るという力の入れようで、ワンマンライヴの最後のアンコールの際は、ゆっふぃー自身がそれをピンクの衣装の上に羽織って登場した。細身で手足の長いゆっふぃーが法被をまとうその姿は祭りで出会ったいなせなお姉さんといった風情で、長く垂らしたポニーテールと相俟って得難い情緒を漂わせていた(写真、正面後ろ姿)。このまま時間が止まってしまえばいいという思いにとらわれながら客席から眺めたその光景は、私の心に忘れ難い印象を刻みつけた。


もう一曲「みどりの黒髪」はやはりおなじみのヤマモトショウさんが作詞作曲を手がけている。この“みどりの黒髪”という古式ゆかしい修辞法はかつて一度も染めたことがないという黒髪ロングがトレードマークのゆっふぃーにはまさにうってつけのテーマで、いわれてみればむしろなぜ今までこういうタイトルの曲を歌ってなかったのだろう、という倒錯した思考にも陥ってしまう。こういう絶妙なツボをついてくるセンスはショウさんならではだし、キーワードとなる単語や擬態語のヴァリエーションを執拗にたたみかけてくる特徴的な手法も“ショウさん印”の感が深い。編曲のrionosさんもゆっふぃーの楽曲制作陣には欠かせない人で、今回はやや影が薄い形での参加になったけれども、クレジットにお名前を連ねているのを見るのはやはりうれしい。


かくしてこの「天使のテレパシー」は三曲の中に推しへのいとしさがいや増しになる要素が一杯に詰め込まれたシングルとなっている。それにつけても、ゆっふぃーが最近のインタビュー[7]で語った「“好きだ!”という気持ちをぶつける対象があるだけで、人生はとても豊かになる」という言葉は、まさに至言だと思う(その前に述べている一言は前髪をブラインドにして見なかったことにする)。思えばゆっふぃーを推すようになってからというもの、何気なく過ごす日々がいかに彩り豊かになったことか。そんな奇跡を起こしてくれるアイドルって尊い存在だな、とあらためてしみじみと感じさせられる。

最後に余談だが、“80年代風アイドルソング”と“テレパシー”というキーコンセプトから、私は「てれぱしいください」という歌のことを懐かしく思い出した。当時それほどヒットした曲ではないが、NHKの動物番組のテーマ曲に採用されいていたのでご記憶の方も多いと思う。私自身、歌っていた歌手の名前すら覚えていなかったくらいなので大して気にとめて聴いていたわけでもなかったのだが、曲は今でも鮮明に思い出せるので、番組視聴の傍ら小耳にはさんだだけでも心を惹きつけるものがあったのだと思う(あらためて調べてみるとこの曲はどういうわけか森村聡美さんと北島美智代さんという二人の歌手によって歌われていて、「ウオッチング」のテーマ曲は北島さんの方のヴァージョンだったようだ)。この曲がリリースされたのが真部さんの生まれた1985年というのはどこか因縁めいているようでもある。はたして真部さんはこの曲をご存知だろうか……。


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寺嶋由芙さんワンマンライヴ「ピピピっのレッツぐる〜ヴ!」

2017年3月29日

先日の日曜日に寺嶋由芙さんのワンマンライヴ“ピピピっのレッツぐる〜ヴ!”に行ってきた。現場レポートは得意じゃないのでシングルをレヴューする際に簡単にふれるくらいにするつもりでいたのだけど、諸々の雑然とした感想をまとめておきたくなったので書くことにする。

内容の詳細はゆっふぃー自身のブログを参照していただくことにして、まず一つの目玉は“キラキラシャミセニスト”の川嶋志乃舞さんがサプライズゲストとして登場したことだった。サプライズとはいっても諸般の情勢からかなりの確度で予測できたので出演自体は驚きではなかったけど、最初に一人で登場してひとしきりソロを聴かせるという進行はやはり意外だったし、「終点、ワ・タ・シ。」以外の二曲の選曲にも意表をつかれた。志乃舞さんはいかにもなイマドキ女子が邦楽器を弾きこなすという意外性に目を奪われるが、ライヴの翌日に東京藝術大学を卒業した本格派で、ステージの上を跳びはねながら三味線を掻き鳴らす姿からは心から音楽を楽しんでいる様子が窺われた。後で知ったのだけど、最近おばあさんを亡くしたばかりだったそうで[1]、そんなことを微塵も感じさせない舞台での振る舞いに、肝の据わったプロ根性を見た思いがする。

肝腎のゆっふぃーの歌は、プロデューサーの加茂啓太郎さんからのお褒めの言葉[2]にもあったようにますます磨きがかかり、連日のリリースイベントの疲れを感じさせないきれいな歌声を存分に楽しめた。特にうれしかったのは、今回は座席が真横からゆっふぃーを見る位置だったにも関わらず、「101回目のファーストキス」でフレーズの合間に目線をくれた(と思っている)ことだった。

この日の会場の品川プリンスホテルClub eXは、円形のステージを周り360度座席が取り囲む配置で、アイドルとヲタクが一体となった親密な雰囲気を作り出していた。特に各曲の落ちサビで繰り広げられる“ケチャ”の光景(写真)は、本場のバリ島の儀式を思わせる壮観さだった。

この広すぎないスペースゆえの親密さにはなかなか得難いものがあったのだが、ゆっふぃー自身は、空席が目立つというほどではないとはいえソールドアウトさせることができなかったことに悔しさもにじませている。この日はちょうど年度最後の日曜日ということもあっていくつかのグループが解散ライヴを行っており、下火になったというほどではないにせよ、アイドルブームも曲がり角にさしかかっているのは確かなようだ。現場派のアイドルヲタクが求めるのは若さだとか初々しさだとか努力ではいかんともし難いことだったりするのだろうし、20代も半ばを迎えたゆっふぃーにとってはいろいろと考えさせられるところも多いのだろう。

そんな危機意識も漂わせたゆっふぃーの言葉を読みながら、昨年のAKB48の紅白選抜の投票結果を何となく思い出した。この投票は一人一票でCDを買わなくても参加できるということもあり、総選挙とは違った傾向を示していたのが興味深く、特にテレビのバラエティなどではあれほど活躍しているのに総選挙の結果はぱっとしない大家しーちゃんや市川みおりんが見事に選ばれていたのが印象的だった。グループ内で傑出したヴォーカリストである山本さや姉が一位に輝いたことも含め、見てる人はちゃんと見てるのだな、と感じさせられた[3]

この日はライヴを後援しているテレビ番組「japanぐる~ヴ」で共演する映画評論家の添野知生さんも会場にいらしていた[4]そうだけど、世にかわいいアイドルは多くても、こういう番組でMCを安心して任せられる子はそうそういるものではないだろう。映画の情報が目当てで番組を見ている人たちの中に「MCのお姉さん知的だけど気取ったところがなくて親しみやすいな」といったようなことを感じている人も一定数いるのは確実で、ライヴの動員などの数字に直接は表れなくても、見る人はちゃんと見ている。そこを信じて励みにしていくしかないのかな、などと、「長く楽しく一緒にいられるように」というゆっふぃーの思いをありがたく共有しながら、そんな風につらつらと考えてみた次第である。


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最近のMVから

2017年2月28日







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最近のライヴ動画から

2017年1月31日

‪Dorothy Little Happy×アイドルネッサンス×‬ミライスカート‪「‬デモサヨナラ‪」


先月、というかもう去年のことになるけど‪Dorothy Little Happy、アイドルネッサンス、ミライスカート‪の3組のコラボによる「デモサヨナラ」のライヴ映像が公開された。今をときめくアイドルグループ3組による、ドロシーの、というよりアイドル界にとってのアンセム的な存在である「デモサヨナラ」のパフォーマンスとあって、さすがに観ていて興奮させられる。この動画を観た寺嶋由芙さんは興奮醒めやらぬままに熱に浮かされたような感想をブログに綴っているが、「ラブレターは深夜に書いてはいけませんってこのことだね」という言葉に頷きつつも、気持ちはよくわかる。ちなみにこの後にゆっふぃーがこの3組とコラボした映像も公開されている。ゆっふぃーの表情の幸せそうなこと!


こけぴよ「君の名は希望」ほか


こけぴよは去年の愛踊祭のWEB予選課題曲の動画を観てそのハイクォリティなパフォーマンスに驚嘆させられて以来注目するようになった。ここに紹介する動画は年末の公開イベントの模様で(ファンの方による撮影のようだが、撮影が許可されていたようなのでここに貼ることにした)、おなじみのクリスマスソングやオリジナル曲、さらには乃木坂46「君の名は希望」のカヴァーなどで美しい歌を聴かせてくれている。中でもエース格の二木蒼生さんの才能は出色で、別の機会にソロで歌った「瑠璃色の地球」(松田聖子さん)のカヴァー(動画)なども実に素晴らしい。埼玉のミュージカルスクールの生徒さんたちで結成されたグループだが、本田美奈子さんの「Oneway Generation」もカヴァー(動画)しており、同郷の大先輩にあやかって今後ますます活躍の場を広げていくことを祈りたい。

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第5回アイドル楽曲大賞2016

2016年12月 3日

アイドル楽曲大賞に今年も投票してみた。投票内容は以下の通り。


メジャー部門

寺嶋由芙「わたしになる」


同名タイトルのアルバム「わたしになる」(レヴュー)のリード曲。やはり今年最も気に入って繰り返し聴いたアイドル楽曲だった。


寺嶋由芙「101回目のファーストキス」

同じくアルバム「わたしになる」の収録曲。一人(一組)一曲のつもりだったけど、この曲も好き過ぎて一つに絞れなかったので両方に投票した。ここに貼り付けられる公式のMV等がないのでファンの方撮影のライヴ映像にリンクしておく。


AKB48「翼はいらない」


秋元康さんの太く長いキャリアの中でも、今年はとりわけ充実した一年だったと思う。アイドルヲタクのみならず幅広い層を巻き込んで話題となった「サイレントマジョリティー」(MV)は、私は初めのうち乃木坂46の「制服のマネキン」(MV)と同工異曲だなというくらいに考えて、あまり感銘を受けなかった。しかし時が経つうちに、この曲は何か非常に重要な問題を示唆しているのではないかという認識を深めるようになった。今から思えばこの曲は、イギリスとアメリカで国民がエリートの推し進める経済のグローバル化に相次いで反旗を翻した現象を予告していたのかも知れない[1]。各種の統計調査には姿を現さずメディアや識者の予測を誤らせた隠れトランプ票の存在[2]は、まさに“サイレントマジョリティーの叛乱”というに相応しかった。

という次第でもちろん「サイレントマジョリティー」に投票してもよかったのだけど、私にとってはそれ以上にインパクトのあったAKB48の「翼はいらない」を投票先に選んだ。この曲は明らかに赤い鳥の「翼をください」を意識したアンサーソングなのだが、私はこの「翼をください」の「悲しみのない自由な空に…行きたい」というフレーズはあまりに安直な願望の表明ではないかとかねがね考えていた[3]。“悲しみのない自由な空”とは、現代の自己疎外状況にあっては“意味のない世界”にしか帰結しないように思われて、私はむしろ、喜びも悲しみも道連れに、地に足をつけてとぼとぼと歩いて行くことを志向する以外に道はないだろうと思っていた。だからこの「翼はいらない」の「大地を踏みしめながら/ゆっくり歩こう」「悲しみも道の途中/ひたすら歩こう」「翼はいらない/今の僕がいい」といったフレーズを聴いて、この稀代のヒットメイカーも自分と同じような感慨を胸に抱いていたのだと知り、大いに意を強くしたのだった。秋元さんがどのような方向からこうした考えを持つに至ったのかがわからなくて興味深いのだが、ともかくこの「翼はいらない」は優れた作詞家の鋭敏な感性が生んだ“現代のフォーク”として、実に秀逸な作品だと思う。

ついでながら大物OGが多数参加した「君はメロディー」(MV)も今年特に好きな曲の一つだった。

  1. ^ こうした現象を“ポピュリズム”と呼ぶことの愚かさについてはエマニュエル・トッド氏のインタビュー(アメリカ大統領選投票前の毎日新聞と投票後の朝日新聞)を参照されたい。
  2. ^ 「隠れトランプ票」番狂わせ招く 世論調査に回答せず:朝日新聞デジタル
  3. ^ 近代的な自由の概念が持つ複雑な性格については例えばエーリッヒ・フロムが「自由からの逃走」で論じているが、ここでの文脈では、カール・マルクスが「資本論」において本源的蓄積について説き起こすくだりで“鳥のように自由なプロレタリア”という言い回しを繰り返し用いていたことに言及しておくのがいいだろう。

赤マルダッシュ☆「心のピアス」


赤マルダッシュ☆に関しては危惧していたことがこの一年で全て現実に起きてしまったという感じで、つい先日始まったクラウドファンディングの呼びかけからもその苦境のほどが察せられる。私はあまり力になれないけど、せめて励ましの気持ちもこめてこの曲に投票した。以前ごく簡単にレヴューしたけど好きな曲調で心惹かれる。


Party Rockets GT「虹色ジェット」


パティロケも一時は苦しい状況を経験したけど、魅力的な新メンバーの加入もあって順調に活動を継続できているのは喜ばしい。「虹色ジェット」は実に彼女たちらしい壮快なロックナンバー。


インディーズ部門

Fullfull☆Pocket「流星Flashback」


からっと☆に至っては一度は解散してしまったわけだけど、うれしいことにFullfull☆Pocketとしてシーンに復帰してくれた。「流星Flashback」は前にも少し述べたけどからっと☆時代のエモさを引き継ぐ名曲。


PiiiiiiiN「絶対NEVER DIE」


この曲については昨年の投票の時にも述べた通り、私の好きな松隈サウンドそのもので深く魅了された。


アイドルネッサンス「君の知らない物語」


アイドルネッサンスの楽曲はずっと好きだったのだけど、過去の投票では何となく選びそびれていたのが、この曲は極めつけのレパートリーがついに出たという感じで迷わず選んだ。アニメのエンディングテーマとして親しまれた曲なので、そのアニメも原作も全く知らない私はこの曲の魅力を半分程度しか理解できていないのかも知れないけど、ともかく彼女たちのよさが一杯に詰まった秀逸なカヴァーだと思う。


ぜんぶ君のせいだ。「無題合唱」


ピアノをフィーチャーしたロックサウンドが甘い感傷を誘う名曲。“病みかわいい”をコンセプトにしたグループだが、キワモノ的な方向ではなく正統的なエモさを追求する姿勢に好感を抱いた。


アップアップガールズ(仮)「君という仮説」


このところアイドル界隈ではなぜか哲学や科学思想をモティーフに採り入れた楽曲が目立つのだが、その中でもこの「君という仮説」は最も成功している部類に入るのではないかと思う。科学上の発見に至るプロセスと、自己実現を目指して足掻く全ての人への励ましのメッセージとがうまく重ね合わされている。そこに彼女たちの歩んできた道のりがさらに透けて見えるところがまた憎い。


なお、メジャー、インディーズともにここに記載した順序で投票したが、ポイントは全て一律に2.0をつけた。


アルバム部門

アイドルの楽曲をアルバム単位で聴くということをほとんどしていないので今年もこの部門は不参加にしたが、寺嶋由芙さんの「わたしになる」(レヴュー)は名盤だということだけここに記しておく。


推し箱部門

寺嶋由芙さんに投票した。


番外

こぶしファクトリー「辛夷の花」


辛夷(こぶし)の花をモティーフとして命名されたグループによる、まさにその名を冠した楽曲で、おそらく満を持して出してきた自信作なのだろう。力強く暖かいメッセージに魅了された。長渕剛さんとか吉田拓郎さんを思わせるような曲調がハロプロの楽曲にしてはやや意外なのだが、演歌風の小節(こぶし)を効かせたソウルフルな歌唱も隠れた名前の由来となっているに違いない彼女たちには、実によく似合っている。ハロプロ楽曲大賞の方に投票すればいいだけの話なのだけど、そちらにまで手を出す余力がないので代わりにここに記しておく。彼女たちにとってのアンセム的な存在に育っていくといいな、と思う。

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D♭ライヴ映像など

2016年11月30日


かつて仙台を拠点に活動していたB♭というグループに所属していたメンバー4人が、この夏にD♭(ドリームフラット)としてライヴを行った際の映像が公開された。今はそれぞれParty Rockets GT、SUPER☆GiRLS、アイドルネッサンスと別々のグループで活躍している彼女たちだが、このような形でステージを務める機会を得たのは実に粋なはからいで、その模様がこうして動画で閲覧できるのは貴重である。




こちらはBerryz工房と℃−uteの選抜メンバーで構成されるBuono!の武道館公演の映像である。これだけのパフォーマンスを見せられるグループなのに、ももちこと嗣永桃子さんが芸能界から引退してしまうのは何とも惜しまれる。


ほかに今月公開されたアイドル楽曲のMVから気になったものをいくつか。





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