寺嶋由芙さん「君にトロピタイナ」

2018年10月30日


今月17日に寺嶋由芙さんのシングル「君にトロピタイナ」がリリースされた。タイトル曲は西寺郷太さんが作詞・作曲・編曲を手がけている。西寺さんは周知の通りノーナ・リーヴスの中心メンバーであるとともに、多くのアーティストへの楽曲提供やプロデュースなどで幅広く活躍するミュージシャンである。アイドルシーンとの関わりも深い方だが、ゆっふぃーとのコラボレーションはこれが初めてとなる。

注目されるその初提供曲について、西寺さんは“トロピカルミネアポリスユーロ歌謡”という耳慣れないジャンル名を謳っている。詳しい趣旨はゆっふぃーとの対談記事[1]において語られているが、要はゆっふぃーの受容力の高さを見込んで、思いつく限りのアイディアを欲張って全部詰め込んだということのようだ。あまり細かいことは私の知識ではついていけないのでここでは深入りしないでおくが、大雑把にいえば80年代に隆盛を極めたユーロビートを基調とした楽曲作りと見ていいのだと思う。“古き良き時代から来ました”というコンセプトに沿って80年代をフィーチャーしたという点で「ふへへへへへへへ大作戦」や「天使のテレパシー」などと共通するが、それら過去作とは違った方向を追求したものということになるだろう。いわば聖子ちゃんからWinkへのシフトチェンジとでもいったところか。

ゆっふぃーは今月でソロデビュー5周年になるが、Dorothy Little Happyの髙橋麻里ちゃんとの対談で「この5年、やりたいことを経験してきて、今の時点では自分の中にあるものを出しきったな、という想いがあ」り、今度のシングルでは「西寺郷太さんを始め、初めてご一緒する方々が手掛けてくださったので、そこから新たな刺激をいただき、そこから出てきた反応に私がどう応えていくのか?に挑戦したい」と語っている[2]。この曲を一聴して感じるのは、やはりこれまでのゆっふぃー楽曲にはないタイプの“懐かしさ”ということで、サウンドからもそうしたゆっふぃーの新たな抱負を感じ取れる。リリース週最終日の21日に開催された5周年記念のワンマンライヴではメドレーも混じえてこれまでの持ち曲全てを披露したのだが[3]、その際もそうした思いを深くした。

歌詞はタイトルにもある“トロピたい”という謎めいた造語が耳を惹くが、ゆっふぃーには「トロッとして、ピタッとしたい」という意味だと説明されたという[4]。対談では西寺さん自身がやや詳しく説明しているが、「言葉のキャッチーさで攻める作詞をしたい」とのことなので、あまり深く穿鑿するのは野暮というもので、そこはかとない熱帯感に身を浸しつつ、語感のおもしろさを楽しめばいいのだと思う。夏フェスでプロモーションしていた際にはちょうどよい趣向だったのだが、リリースのタイミングではやや季節外れになってしまったのが惜しまれる。

録音の際は西寺さんが直々にヴォーカル・ディレクションを行ったそうなのだが、ゆっふぃーの持っている癖を出さないように、フラットな歌い方をするように指導したという[5]。「たぶん…」の時に作詞したクリス松村さんから受けたアドヴァイスとはまさに逆方向のディレクションで、様々な作家さんの要求に応えるのも容易なことではではないのだな、と思わせられる。しかしそれだけ多彩なクリエイターが明確なイメージを負託したくなるような素材としての魅力を、ゆっふぃーが備えてきているということでもあるのだろう。初回限定盤Aに付属のDVDにはおまけとしてレコーディング映像が収録されていて興味深いのだが、こちらの方がCDの音源よりもゆっふぃーらしい癖が自然に出ている感じなので、おそらく西寺さんの手直しを受ける前の別テイクなのではないかと思う。

曲中にはオーディエンスにクラップを煽る箇所があり、一体感を醸し出す演出になっている。前述のワンマンライヴの時はうまくできるか不安だったのだが、やってみるとそれほど難しくはなかった。同じリズムで7回叩くだけなので、リズム感に自信のないヲタクにもやさしい作りなのはまことにもって有り難い。

MVはレトロ感を強調した映像で、ゆっふぃーにはめずらしく人間のダンサー二人(“トロピ隊”と命名されている)と共演している。これまでにはなかったタイプのダンス曲なので、そのことをアピールしたい狙いもあるのだろう。トロピ隊の二人はワンマンライヴにも登場してステージを盛り上げてくれた。振付けはソロデビュー曲「#ゆーふらいと」であのハッシュタグポーズを考案した竹中夏海さん。5周年というこのタイミングでまたコラボが実現したことにゆっふぃーは感慨深そうにしていた[6]が、ヲタクとしても同じ思いを抱く。

今回の衣装は思い切って明るくポップな雰囲気で、このところはシックなものが続いていただけに対照が際立っている。ポイントは何といってもおなかを出しているところで、ゆっふぃーの見事に縦に割れた腹筋を堪能できる。ワンマンライヴの時はアンコールでソロとして初のステージで着ていた衣装で登場したのだが、5年前の衣装がまだ着られるというより、むしろややゆるそうなのが印象的だった[7]。日頃の節制の賜なのだろうが、本人はそんな素振りを見せないのがまたすごい[8]


カップリング「彼氏ができたの」はまたしてもヲタクを病ませる系譜の作品となった。しかし実際に聴いてみるとタイトルとは裏腹に、嬉しい報告というよりは元彼への未練を強くにじませた、切ない女心を歌った曲になっている。作詞はハナエさんで、同じ加茂啓太郎さんのプロデュースを受ける歌手同士という縁もあっての起用だろう。作編曲は“ヲタクを病ませる担当”[9](?)の藤田卓也さんで、曲想が明るい分だけ歌詞の切なさが際立ってくる。藤田さんは大江千里さんへの憧れが強いそうなのだが、なるほどイントロのキーボードなどに大江千里的なセンスを感じる。


このほか初回限定盤Bには今年7月の生誕記念ライヴの音源から「コンプレックスにさよなら」「天使のテレパシー」の2曲が収録されている。いずれもGOOD BYE APRILとの共演で、前者はバンドメンバー二人からの提供曲を録音時の編成で再現している。後者はアコースティック編成というゆっふぃーのライヴにはめずらしい取り組みの貴重な記録である。


前述の通りゆっふぃーは今月でソロ活動を始めてから5年になるのだが、その勤続期間を表彰するかのように、このところゆっふぃーにはアイドルクイズ王、木更津警察署一日署長、串カツ田中一日店長、Pop’n’Roll編集長、@JAM EXPO総合司会といった肩書が立て続けに増えている。そのあらましは最近のインタビュー[10]で詳しく述べられているが、東京アイドルフェスティバルのアイドルクイズ王決定戦は私も配信で見ていて衝撃を受けた。賢い人なのでかなり健闘するだろうとは期待していたが、予想を遥かに上回る圧倒的な強さだった。出題者の古川洋平さんも強い印象を受けていたようなので、今後はより広い場でその才能を発揮できるチャンスもめぐってくるかも知れない。

本業ではすでに来春のシングルリリースが決まっているそうで、アイドルの解散や卒業が相次ぐ昨今にあって順調に活動が継続できているのは喜ばしい。この稿で参照したインタビューや対談記事はどれもライターさんの意気込みが溢れんばかりの力作だったのだが、楽曲制作陣の並々ならぬ創作意欲もそうした記事からは伝わってくる。そうした周辺の業界人はもとより、ワンマンの現場で感じたヲタクの盛り上がりも含めて、アイドルシーンは今なお高い熱気を保っているように見える。明るい話題ばかりではない中でも、そうした周囲の熱量と、それに応えられるアイドルの力量さえあれば、シーンは更なる進展を遂げることができると信じたい。そんなことを考えさせられたこのひと月だった。


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最近のMVから

2018年5月31日










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寺嶋由芙さん「きみが散る」

2018年4月30日


寺嶋由芙さんのセカンドアルバム「きみが散る」が今月25日にリリースされた。昨年のシングル三部作の収録曲に加え、6作の新曲を含む意欲作となっている。

タイトル曲「きみが散る」は詩人の最果タヒさんによる作詞で、先に詞だけが公表されて曲をプロアマ問わずに公募するというあまり例を見ない(というか私は他に見たことがない)方法で制作された。タヒさん自身のコメント[1]によると失恋をテーマとしつつも“痛み”のその先にあるものを描こうとしたということのようで、光や色彩へのこだわりが印象深い作品である。特に「乱反射した、あの光へ、/いやでも伸びる、黄緑の茎、」というフレーズは道元「正法眼蔵」の一節[2]を思い起こさせるものがあり、惹きつけられる。たとえ失恋の痛みを負ってでもその先を生きていかなければならない、生き物として備わった生命力を象徴的に表した言葉なのだろう。

曲は多数の応募があったようだが、採用されたのは「わたしを旅行につれてって」を作曲した望月ヒカリさんによるものだった。仮に一つの作品に三桁の応募があったとして、二作で採用される確立は一万分の一以下になる。相性のようなものもあるのだろうけど、プロデューサーの加茂啓太郎さんのチームが求めるものに対する理解力や適応力がもたらした結果なのだろう。タヒさんのやや静的なイメージの詞に抑揚のあるメロディーを当て嵌めることで、舞台映えのする一曲に仕上がっている。

今作のMVは、三部作で一続きの物語を描いたのとは打って変わって、物語性のあまりない幻想的な映像美を強調したものになっている。衣装は「結婚願望が止まらない」に合わせて作ったのに、MVはこの曲で作ることにしたので、歌詞と映像とがうまく整合するような物語を設定するのが難しかったせいもあるのだろう。ともあれこういう趣向のお蔭で、この世のものならぬ雰囲気の中でゆっふぃーの美しさ、可憐さが存分に堪能できる、ゆふぃすとにはうれしい一編となった。

そのウェディングドレスを模した今回の衣装に身を包んだゆっふぃーはまさに妖精のようで、息を呑むほどに美しい。スカート部の前が短くて後ろが長いデザインは流行りなのか最近よく見かける気がするが、実際に見ると前は思った以上の短さで、ライヴの客席から見ながらでもどぎまぎしてしまう。腋が大きく空いているのも相変わらずで、これはもう脚と腋はゆふぃすとに捧げる覚悟でやっているに相違なく、こちらとしても渾身のフェティッシュな愛を奉ることで答礼するほかはない。


君より大人」は年下の恋人との微妙な関係性を少しひねったロジックで歌っている。ソロとして5年のキャリアともなると年下のゆふぃすとも増えてきたので、それに応える意味もあるのだろう。作詞はゆっふぃーにはおなじみのヤマモトショウさんで、こういう凝った言い回しの妙はいつもながらの手馴れた手腕である。作曲は「知らない誰かに抱かれてもいい」の藤田卓也さんで、前作とはだいぶ違った曲調で多彩な才能の片鱗を窺わせている。編曲と演奏を担当した宮野弦士さんは他にも多くの曲でサウンドメイクに携わっている。


結婚願望が止まらない」は作曲を鈴木慶一さんが手がけているのが注目される。ナビゲーター役を務めているテレビ番組「japanぐる~ヴ」でインタビューしたのが縁で実現したコラボレーションだが[3]、これまでのゆっふぃーへの楽曲提供者としては最大級のネームヴァリューということになろうかと思う。私はムーンライダーズ周りの音楽にそれほど多くは接してこなかったけれども、鈴木さんがプロデュースした原田知世さんのカヴァーアルバム「カコ」はよく聴いていて、特に「T'en va pas」の原語カヴァーはお気に入りだった。バンド仲間のかしぶち哲郎さんも大石恵さんをプロデュースして同じエルザの「Jour de neige」のカヴァーを制作していて、私にとってムーンライダーズの音楽性は主にエルザを介して吸収してきたということになりそうだ。この「結婚願望…」もそうした洒脱なポップセンスや遊び心が遺憾なく発揮されている。“毒リンゴ”のくだりで曲調が変わる(評論家の宗像明将さん曰く“アラブ風”[4])のもいいアクセントになっている。

作詞のいしわたり淳治さんは「…旅行…」と「知らない誰か…」に続く起用で、今作でもまたもやヲタクを病ませる路線が継承されている。先に述べた衣装も含めアルバムのアートワーク全般の発想に影響を及ぼしているのはタイトル曲以上にむしろこの曲といっていいだろう。


背中のキッス」を作詞した“kiki vivi lily”というのは以前カヴァーした「80デニールの恋」を作詞作曲したゆり花さんの新名義で、作編曲はおなじみrionosさん。ゆっふぃーにとっては初のクリスマスソングで、若い女性作家二人のコラボによるお洒落な一曲に仕上がっている。rionosさんはこの曲だけでなくタイトル曲も含め多くの収録曲で編曲やコーラスとして参加していて、宮野さんとともにゆっふぃーの音楽制作には欠かせない人材となっている。

加茂啓太郎さんによるとこの曲も詞先で作られたそうで[5]、加茂さんのチームの最近のこだわりがこのアルバムでも重要なテーマとなっているようだ。おそらく二人ともあまり経験したことのない手法だったと思われるが、敏腕プロデューサーが若い才能に新たなチャレンジを焚きつけている様子が窺えて興味深い[13]

シングル「…旅行…」に収録の三曲がいずれも夏の曲だったので、今度は冬の曲をという意向もあったのだろう。同じ冬のイベントとはいえクリスマスソングがバレンタインデーに先行配信されたのは何だかおかしかったが、その配信のアートワークにゆっふぃー本人のキスマークがデザインされているのは憎い演出だった。


たぶん…」の作詞は“孔璃麿艶”という怪しげなペンネーム(“くりまつ”と読むらしい)になっているが、その正体はクリス松村さんである。作詞を手がけるのは初めてだそうだが、音楽上のキャリアはともかく、一般的な知名度では鈴木慶一さんにも遜色のない大物タレントで、今回のアルバムの大きな話題の一つとなっている。作曲の藤本和則さんについては私はよく存じ上げないのだが、作編曲やプロデュースに幅広く活躍されているようなので、気づかないところでいろいろと耳にしているのかも知れない。

80年代風の歌謡曲はゆっふぃーにはおなじみの趣向だが、これまでは松田聖子さんに寄せているものが多かったのに対し、この曲はどちらかというと中森明菜さんをイメージさせるものとなっている。ちょっとおもしろいのはサビの終わりで「たぶん…たぶん…たぶん」と三度繰り返すところで、「知らない誰か…」の「バカ バカ バカ」を彷彿とさせる。クリスさんのコメント[6]からするとこちらは曲先だったようなのだが、作詞も作曲も顔ぶれが違い、制作の順序も違うのに似たような着想が盛り込まれることに何か必然性があるのかどうか、興味をかき立てられる[14]

往時をよく知るクリスさんは歌い回しにも格別のこだわりがあるらしく、レコーディングの際は電話を通じて懇切丁寧なディレクションを受けつつ進めたという[7]。SHOWROOMの配信の時だったか、その内容を少し話してくれたのだが、「息を多めに」とか「色気を出して」といったアドバイスがあったそうで、そこそこ古参なゆふぃすととしてその言葉にいささかこみ上げてくるものがあった。というのも、クリスさんはご存じないだろうけど、グループに所属していた頃のゆっふぃーはむしろそういう歌唱が持ち味だったのだ。ソロに転向してからはそういう方向は封印して、よりアイドルらしいかわいい歌い方にシフトしてきたが、それには相応の覚悟を以て過去の自分と訣別しようという意思が働いていたはずだ。そして今またその地点に立ち返るような課題に無理なく取り組めているのは、これまで積み重ねてきた歩みに確固たる手応えがあるからこそに違いなく、今年で5周年となるソロでのキャリアが報われた一つの証しのように思えてならなかった。


コンプレックスにさよなら」は「初恋のシルエット」と同じくGOOD BYE APRILの延本文音さんと倉品翔さんの提供で、演奏もバンドのメンバーが担当している。倉品さんによるとこちらも「ほとんどやらない詞先での作曲」とのことで[8]、ここでもアルバムのコンセプトは貫かれている。倉品さんはさらに槇原敬之さんの「冬がはじまるよ」や岡村孝子さんの「ピエロ」などを目指したと手の内を明かしてくれているが、特に「ピエロ」はとても好きな曲なのでそれを知ってうれしくなるととともに、腑に落ちるような感覚を抱いた。このアルバムのもう一つのコンセプトとして女の子のファンに訴求するということがあるようなのだが[9]、実際にこの曲に熱く共感する女性の意見を多く目にする。それは一つには女性シンガーソングライターとして一世を風靡した人の名曲にインスパイアされて生み出されたことにも要因があるのだろう(作詞した延本さんの方もその発想を共有していたのかはわからないが)。特に「あなたはイマドキの子が好き?/真面目な私は少し重いかな」という問いかけなどは、まさに「ピエロ」の世界[10]と重なって聴こえる。


以上の6曲のほか、昨年のシングル三作からカヴァーを除く8曲が収録されている。それについては以前に書いたレヴューを参照していただくことにしたい。


ところで、上の解説では今作のMVには物語性がない(もしくは乏しい)ことを強調したのだが、アルバムの現物を手にしてからブックレットの写真を眺めているうちに、ふと“若き日のミス・ハヴィシャム”というコンセプト[11]が頭に浮かんで、そこから離れられなくなってしまった。タヒさん自身としては「失うことすら、瑞々しいものに変えていけるのが生き物の力」という考えが背景にあるようなので[12]、時が止まったままプリザーヴド・フラワーのように干からびてしまった老婦人のイメージは似つかわしくないのかも知れない。しかし、以前島田紳助さんがクリス松村さんのことを“干からびた宮本亜門”とか“お湯で戻すと宮本亜門になる”などと散々からかっていたのに因んで、「ディケンズの小説の不幸な老女が音楽の魔法で若さと瑞々しさを取り戻し、幻想世界の森に遊んでいる」という裏設定をこじつけて鑑賞するのも“あり”な気がしてきた。タヒさんが詞を手がけている時点ではおそらく他の収録曲の詳細は知らされていなかっただろうけど、こうやって別の曲と結びつけることで解釈の奥行きを深めていくのもアルバムならではの楽しみ方には違いなく、これも一つの創造的誤読ということで許容していただければ、と思う。


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最近のMVから

2018年3月31日









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最近のMVから

2018年2月28日



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最近のMVから

2018年1月31日








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第6回アイドル楽曲大賞2017

2017年12月 4日

アイドル楽曲大賞に今年も投票してみた。


メジャー部門

寺嶋由芙「天使のテレパシー」


今年リリースされた三部作の第一作。三曲とももちろん好きだけど、あとの二曲は歌詞が心にグサグサ刺さるので、心穏やかに聴けるこの曲を選んだ。レヴューは以前書いた通り。


Party Rockets GT「キミと見た空」


青春の感傷をさわやかに歌い上げた好曲で、今年特に好きになった曲の一つ。シングル「START!!」のカップリング曲だけど、こちらがタイトル曲でもよかったのではないかと思う。人気メンバー二人が卒業することになる彼女たちの、現体制の記念碑ともいうべき一曲。


SUPER☆GiRLS「スイート☆スマイル」


久しぶりにスパガらしい良曲を聴いたな、という感慨を抱いた。歌詞も曲調も明るいのに、聴いていてなぜか切なさがこみ上げてくるところがいい。幸愛ちゃんとなぁぽんのダブルセンターという配役がスパガの未来を切り開いてくれることを願って。


STU48「瀬戸内の声」


郷土愛を美しく歌い上げていて感銘を受けた。各地方に拠点を置いて活動している48グループの利点が生きた一曲だと思う。


Flower Notes「恋花」


4曲はすんなり決まって、あと一曲をどうしようか迷っていた時にこの曲がエントリーされているのに気づいて意外の感に打たれた。コロムビアのアイドルレーベル“LABEL THE GARDEN”からの第一弾となるグループ Flower Notes のデビュー曲だが、エース格と目されていたあいねってぃこと藤井愛願さんがあっけなく卒業してしまったのもあって、この曲のリリースが遠い昔のことのように思える。“花の音符”というグループ名がまず素敵だし、それに絡めたMVの作りもハイセンスで好印象。それもこめてこれを選ぶことにした。メンバーの卒業という転機も乗り越えて、後続の姉妹グループともども活躍の場を広げていって欲しい。


インディーズ部門

アイドルネッサンス「前髪」


“名曲ルネッサンス”をコンセプトに活動してきたグループが満を持して発表したオリジナル曲。提供した小出祐介さんのアイドルネッサンスへの並々ならぬ思い入れはメンバーたちとの対談記事からも窺い知れる。外部の楽曲提供者が対象のアーティストについてここまで深く考えて作品を創るというのもなかなかないことではないだろうか。今年のアイドルシーンを象徴する楽曲の一つだったし、今後の彼女たちにとってアンセム的な存在に育っていくことと思う。


Fullfull☆Pocket「キミトシル」


Fullfull☆Pocketらしいエモーショナルな一曲。こちらも初期メンバー二人が卒業することが発表されて、この曲はその忘れ形見のような存在になっていく定めにある。


転校少女歌撃団「ときめけ☆アフタースクール!」


自分がふだん好んで聴くのとはややテイストの異なる楽曲だが、なぜか不思議と耳について離れなくなった。


AIS「こいしょ!!!」


アイドルネッサンスの妹分のAIS。この曲はおはガールちゅ!ちゅ!ちゅ!のカヴァーだが、初期から中心的なレパートリーとして歌っていて、すっかり板についている。


ぜんぶ君のせいだ。「無題合唱」


現体制による新録音。この曲は前回も投票したばかりなのでほかを選ぼうかとも考えたのだが、この甘い感傷の誘惑には抗い難かった。


なお、メジャー、インディーズともにここに記載した順序で投票したが、ポイントは全て一律に2.0をつけた。


アルバム部門

今回も不参加。


推し箱部門

寺嶋由芙さんに投票した。


番外

橘ありす(CV:佐藤亜美菜)「in fact」


「アイドルマスター シンデレラガールズ」に登場するキャラクターの一人、橘ありすのソロ曲で声は元AKB48の佐藤亜美菜さんが担当している。最初に発表されたのはもう二年も前になるようだけど、音ゲーに実装されたのは今年のことなので、今年特に印象深かったアイドル楽曲の一つとしてここに記しておくことにする。作詞・作曲はシンガーソングライターとして今をときめく藤田麻衣子さんで、まさに“麻衣子さん節”とでもいうほかない独自の作風に心惹かれる。

今年のアイドルシーンで起きた大きな出来事に、 Dorothy Little Happy の白戸佳奈さんの卒業・引退があり、ドロシーはついに高橋麻里ちゃんのソロプロジェクトになってしまった(ドロシーとミライスカートがソロプロジェクトになるなんて、今年初めの時点でいったい誰が予想できただろう?)。そんな麻里ちゃんが決断した新たな一歩が声優業への挑戦だった。いま名前を挙げた佐藤亜美菜さんがインターネットの配信番組で今が「人生で一番楽しいです」と話しているのを聴いて、いい決断をしたんだな、と感じさせられたのだが、麻里ちゃんにもそんな未来が待っているといいな、と願わずにはいられない。そしていずれ声優として大成した暁には、井上喜久子さんの17歳教に対抗して例の“15+◯歳”というのを声優界にはやらせて欲しい…、なんて思ったり。

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寺嶋由芙さん「知らない誰かに抱かれてもいい」

2017年11月16日


寺嶋由芙さんの今年3枚目となるシングル「知らない誰かに抱かれてもいい」が今月8日にリリースされた。「天使のテレパシー」「私を旅行につれてって」に続く三部作の最終作となる今作のタイトル曲は、まず何よりも正統派アイドルにあるまじき刺激的なタイトルに目を瞠る。9月にタイトルが発表された時はゆふぃすとの間に衝撃が走ったが、プロデューサーの加茂啓太郎さんはその狙いを「清純派と思われてるアイドルがショッキングな歌詞でブレイクするという事例を踏襲したんです」と説明していた[1]。おそらく山口百恵さんの「ひと夏の経験」のようなものを念頭に置いているのだろうと想定されたが[2]、この戦略にはなかなか平静ではいられなかった。というのも私はかつて「1986年のマリリン」や「Sosotte」の路線でそれまで好きだった本田美奈子さんから離れてしまったという前歴があるからだ。美奈子さんが亡くなった時、そのことをどれほど悔やんだかは言葉には尽くし難いものがある。ゆっふぃーを推すようになって以来、有り難いことに気持ちが離れるような危機もなく、幸せなヲタク生活を送ってこられたけれども、今作のリリースは私にとってゆふぃすととして結構な試練になることを覚悟しなければならなかった。

そんなわけでリリースイベントでの初披露の模様をかなりの緊張感を以て配信で見守ったのだが、実際に聴いてみると、奇抜なタイトルとは裏腹に中身は真っ当な失恋ソングという印象だった。前作「私を旅行につれてって」では全く無防備な状態で“それ以上”というキラーフレーズの不意打ちを食らったからショックが大きかったけど、今回はタイトルでまず打ちのめされたから、曲を聴いてさらに心を抉られるということはなかった。タイトルと同じフレーズはサビで歌われるが、恋人の心変わりに直面した女性のいじらしい反論として理解可能な文脈に収まっている。

むしろそれ以上に強く印象づけられたのは締め括りの「頭がいいのに バカ バカ バカ」という捨てゼリフだった。これを聴いた時のくすぐったいようなむず痒いような感覚は、曰く言い難いものがある。ゆふぃすとにはそれなりの高学歴者が多そうだと見越しての戦略もおそらくあるのだろう。私信といってはおこがましいけど、私のような聴き手が感情移入しやすいように作ってくれているのだろうな、というのは感じる。ゆっふぃーは実際にはたとえ売り言葉に買い言葉的な状況でも「知らない誰かに…」みたいなことはいわない人だと思うけど、「頭がいいのに」云々には妙なリアリティーがある。繰り返し聴いていると、推しと痴話喧嘩をしているような感覚に陥ってくる。

この問題含みの際どい歌詞を手がけたのはいしわたり淳治さんで、「私を旅行につれてって」に続く起用となる。加茂さんは「作詞家の最高のポテンシャルを引き出せた」と手応えを口にしていたが[3]、正統派のアイドル楽曲としてぎりぎり成立する境界を攻めた意欲作といえるだろう。ゆっふぃーは「いや嬉しかったですね、こういう曲を歌いたかったので」と話しているが[4]、大人の失恋ソングが歌いたいという望みはかねてから口にしていたことでもあり、まさに念願叶った一作ということになる。

作曲は藤田卓也さんで、コンペで70曲の中から選ばれたという。愁いを帯びたAメロから未練のうちに逡巡するようなBメロを経て決然としたサビへと至る展開が、ショッキングな歌詞によって綴られるドラマを的確に曲に映し出している。特にサビは同音反復が多いのに、平板な印象を与えずに劇的な効果を演出しているのが見事で、どこかベートーヴェンを彷彿とさせる。

最後に“バカ”と連呼する箇所に関して、詞が先にないとメロディーがこういう終止にはならないのではないか、ということを聴いた当初から感じていたのだが、はたしてこの曲は詞先で作られたことが明らかにされている。加茂さんによると自身の発案に加え、ヤマモトショウさんからの提言もあってのことだという[5]。ショウさんは自身のブログでもフィロソフィーのダンスのアルバムに絡めて詞先の意義を語っているが[6]、ゆっふぃーがMCを務めるテレビ番組「japanぐる~ヴ」のインタビューで松本隆さんも、近年は曲先が圧倒的に多くて詞先で曲を作る技術が継承されてきていないことへの懸念を表明していた。加茂さんが「業界の安易な慣習へのアンチテーゼにもなってます」と述べていた[7]のもそのあたりを意識してのことかと思われるが、業界でもめずらしいという詞先でのコンペという方式で作られたこの曲は、そうした意味でも価値ある挑戦だったに違いない。

タイトル公表時から謳われていた“1990年代前半のJ-POPを彷彿とさせるメロディー”というコンセプト[8]については、私の90年代の音楽についての知識に偏りがあるのか、実際に聴いてみてそういう印象はあまり受けなかった。藤田さんは大江千里さんに強く影響されているそうなのだが[9]、大江さんは「格好悪いふられ方」で爆発的にブレイクしたのは1991年だったものの、それ以前からすでに広く知られた存在だったので、私にはどちらかというと80年代の人というイメージが強い。ただ、イントロがちょっと古めのトレンディドラマの主題歌みたいだなという印象はあって、渋谷系とかビーイング系、小室サウンドといった系統のどれかに括るのは難しいけど、確かにあの時代の雰囲気をどこかに湛えているという気はする[10]

その印象的なイントロを含め編曲を手がけたのはrionosさん、ゆっふぃーにはおなじみの存在である。若さに似合わぬ熟練の手腕によって、曲のドラマティックな性格がより際立たせられている。

ゆっふぃーは幾分背伸びした感のあるこの曲で、他の曲よりも落ち着いたトーンで大人びた歌唱を聴かせている。特にブリッジ的なパッセージで、ポルタメント気味にやや音を下げながら「忘れないでね ずっと」と消え入るように歌うところは絶妙で、切なさや哀しさ、そしてこういってよければ少しの怖さをかき立てられる。

Shoさんによる振付けはなまめかしい手の動きが特徴的で、“知らない誰か”の愛撫や抱擁をほのめかしつつ曲の世界を際どく表現している。落ちサビで手を引っ張られるような動きもヒロインの未練を表しているようで、大きなアクセントになっている。

“トレンディドラマの主題歌”という印象はMVの監督を務めた荒船泰廣さんも抱いたようで、MVもまさにそうした感じの作りになっている。荒船さんは今年の前二作に続く起用となるが、春の出会いから夏の旅行、そして秋の別れという恋の展開を三部作として描き出している。印象的なのは最後のシーンで、恋人にバカと言い放って走り去るヒロインが、朝食のパンをくわえて道を急ぐ姿と重ねられている。三部作の最初のシチュエーションへと回帰するこの構図は、長い黒髪と一緒に失恋の痛手を振り捨てたヒロインが、また元の日常を取り戻して前に進もうとしていることを暗示している。

ジャケット写真もおなじみとなった大川晋児さん、三形態それぞれ違ったテイストでゆっふぃーの魅力を引き出している。特に初回限定盤A、ゆっふぃーがボブがこんなに似合うとは知らなかった。ケース裏の埠頭にコート姿で佇むゆっふぃーも、長身が夕闇に映えて心惹かれる。

衣装は大人っぽさを意識しながらも、むしろシックなデザインで曲の危うい雰囲気とは対照をなしている。“伊勢丹の紙袋”などと揶揄されたりもしたが、緑を基調とした色合いは、タイトルに衝撃を受けたゆふぃすとの心を少しでも平穏にしようという効果も狙って選ばれたものと思われる。腋が大きくあいているのはゆっふぃー自身の発案だそうで、さすがにヲタクの喜ぶツボをよく心得ている。



カップリングの「世界で一番かわいい君へ」は一転して幸福感に溢れる明るい楽曲で、ゆっふぃーのゆるキャラへの一途な愛を歌っている。とはいえ聴く人それぞれが自分の“世界一かわいい君”に重ね合わせることができるように作られていて、ゆっふぃー自身「みんなはゆっふぃーだと思って聴いてくれる曲にしてほしい」と述べているので[11]、ゆふぃすととしては当然そのつもりで聴くことになる。

作詞は先に名前の出たヤマモトショウさんで、「なにもできないくせに」「なにもいわない君」「雨はにがてなくせに」とゆるキャラの特性を的確にとらえた文言が迫真のリアリティーを生み出している。作曲の芦沢和則さんは「終点、ワ・タ・シ。」のコーラスアレンジを手がけた方で、多面的な音楽性の持ち主なのだろう。フィロソフィーのダンスではブラックミュージック寄りの楽曲[12]を提供してもいて、加茂さんの「職業作家としてプロだから、良い意味で作家性がない」という評言[13]からは筒美京平的な才能が窺われる。

編曲の小佐井彰史さんについては私は知識がないのだが、rionosさんのコーラスをフィーチャーしていることが特筆される。先月「ハシタイロ」[14]で歌手としてもデビューを果たしたrionosさんの美声をOff Vocalヴァージョンで堪能するのもまた一興である。その歌手デビューというのが実はゆっふぃーのソロデビュー曲として提供した「#ゆーふらいと」が招き寄せた幸運だったそうで[15]、二人の運命的な縁を感じさせる。


もう一曲のカップリング「好きがはじける」はミナミトモヤさんの作詞・作曲で、「好きがはじまる」「好きがこぼれる」に続く“好きがシリーズ”の第三作である。過去二作はともにライヴで映える人気曲で、今作もゆっふぃーのレパートリーの中で切り札的な存在に育っていくに違いない。ミナミさんも最初期からゆっふぃーの楽曲制作に携わってきた一人だが、「今度はどこにも行かないから」とゆっふぃーの側からのマニフェストを歌ったのが「ほら みて/わたしはここにいるでしょ!」「ほら 来て/みんなもここにいるでしょ!」とヲタクへの呼びかけを含むものになり、今回は逆に「キミだ!決めたんだ!」「やっぱり キミなんだ」とヲタクの心情を歌っていると思われるものに遷移している。この移り変わりにゆっふぃーとゆふぃすとが積み重ねてきた歳月の重みが表れている気がする。

編曲はこちらもおなじみ宮野弦士さん。本人のいう「眠れるロック魂が燃えたギターソロ」[16]もさることながら、サビのコード進行も素敵で胸がときめいてしまう。


かくしてゆっふぃーの2017年のシングルリリースは、ハッピーエンドとはいかなかったけれども、ともかく無事に完結することとなった。推しが出逢った彼と自己同一化することで病んでしまいそうなシチュエーションを乗り越えるすべをどうにか習得してきたゆふぃすととしては、二人の恋物語にようやく愛着も湧いてきたところで結末を迎えることには、一抹の寂しさがある。

実は、歌詞自体は最終的な破局に至る一歩手前を描いているようなので、MVを見るまでは、今回の大きな危機を乗り越えた二人が次作以降でさらに絆を深めていく、という展開もあり得るかと思っていた。しかしMVがああいう終結をして“おわり”のテロップまで出てしまった以上は、これで本当に完結なのだろう。それまでロジカルな思考しかできなかった彼が彼女の捨て身の反論にほだされて、三軒茶屋に行こうと思って草加にたどり着いてしまう彼女の謎思考[17]も許容できる度量を身につける、という展開もなかなか感動的だと思うのだが…。

しかしともかく、今作のリリースが私にとってトラウマと化してしまう事態はどうやら避けられそうなことに胸をなで下ろしつつ、来年以降の新たな展開を楽しみに待つことにしたい。


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