全日本選手権2006 女子シングル フリー

2006年12月30日

これまで放送についていろいろと文句をいってきたけど、今回に関しては12位の由希奈さんの演技を放送してくれてありがたいと思った。由希奈さんよりも順位が上だったのに放送してもらえなかった選手のファンのみなさんには申し訳ないけれど。


武田奈也さん

フリップがダブルになった後ダブルアクセルの予定を変更してもう一度フリップに挑戦したが転倒してしまう。最後の3連続のコンビネーションジャンプはザヤックルールにひっかかって点がつかないのでは、と心配してしまったがこれは私の勘違いで、最初のフリップははじめから2回転の認定なので問題ないのだった。選手達は演技の最中にこうした計算をしなければならないのだから本当に大変だと思った。ピンクの衣装はこの人には似合っていない気がする。


太田由希奈さん:ファリャ 火祭りの踊り

6分間練習でルッツを失敗している場面を見てしまいひやひやしながらの観戦だった。最初のルッツは何とかこらえてほっとした。ループがダブルになったほか最後の二つ目のトウループで転倒したもののまずまずジャンプも跳べていたので少し安心して演技を見終えた。ところがTESが思いのほか低くて悲しくなってしまった。プロトコルを確認するとルッツと二つのサルコウ、そして転倒した二つ目のトウループがダウングレードされてしまっている。3回転と認定されたのが一つ目のトウループだけではこの点数も仕方のないところ。素人目にはルッツもサルコウも昨日のSPのサルコウよりはよかったように見えたのでショックだった。

表現面に関していえばこの「火祭りの踊り」はこれまで由希奈さんが演じてきたものとはかなり違った趣きのプログラムだと思う。少し前のインタビューで「振り付け師から新たな挑戦をしてはどうか、ということでこの曲を薦められた。はじめはとまどいもあったけど今は前向きにとらえて取り組んでいる」といった趣旨のことを語っていた意味が実際に見て初めてわかった。

この「火祭りの踊り」は激しい情熱や猥雑なエネルギーといった要素が求められるプログラムといっていいだろう。由希奈さんは小柄な体格で、決してスケール感や力強さを持ち味とするスケーターではないので、このプログラムは彼女にとってかなりの挑戦だったと思う。今シーズンは2シーズンぶりの競技会復帰であり、もう少し自分にとって慣れ親しんだスタイルで臨んでもよかったのではないかという気もする。叙情的な音楽に乗せた由希奈さんらしいプログラムなら、もう少しいい結果を生んでいたのではないかという思いもある。ただ新たなスタイルへの模索は、かつての自分を取り戻すのではなく、新たな輝きを放ちたいという由希奈さんの前向きな姿勢なのだろう。今はただ一言、「戻ってきてくれてありがとう」と声をかけて上げたい。


澤田亜紀さん:Paint it black

ループがダブルになったほかは大きなミスのないまとまった演技。もう少し彼女らしい元気のよさが前面にでるとよかったと思う。


恩田美栄さん:レッドヴァイオリン

最初のルッツは高さがありとてもよかった。それだけに2度目のルッツがシングルになったのが惜しまれる。それでも今シーズン一番のできだったのではないか。去年の大会ほどではなかったものの力を出し切ることはできたと思う。


中野友加里さん:プロコフィエフ シンデレラ

最初のトリプルアクセルは回転不足で転倒。中野さんのトリプルアクセルはうまくいかなくても転倒してしまうことは少ないので驚いた。インタビューによると本人にとっても意外だったらしい。しかしそれを引きずらずに後の演技をノーミスでこなしたのがいい結果をもたらした(ルッツの後はダブルトウループとのコンビネーションに変えていた)。今シーズンは序盤からやや不調に苦しんでいたが、大事な日本選手権で一番の演技をすることができた。世界選手権ではさらに磨き上げた美しさで世界の強豪達と競り合って欲しい。


浅田真央ちゃん:モンティ チャルダーシュ

初めてステップからのトリプルアクセルに成功。続くダブルアクセルからのコンビネーションは二つ目のトウループがダブルになってしまったが予定した要素がこなせなかったのはここだけ。後は真央ちゃんでしかできないような完璧さで圧倒的な優勝を決めてしまった。よほどうれしかったらしく演技後は涙ぐんでいた。こんな演技をしたらほかに敵う選手は一人もいないはず。改めて真央ちゃんの強さを見せつける演技だった。


村主章枝さん

いつも大一番では底力を発揮する村主さんだが今回は力を出し切れずに終わってしまった。やはりNHK杯からの連戦は体力的にきつかったのかも知れない。グランプリファイナル進出を逃してこの大会に照準を合わせてきた中野さんと明暗を分ける結果となってしまった。サルコウの失敗は折り込み済みだとしても、SPに続き得意のフリップでミスが出てしまったのは痛かった。ただサーシャやスルツカヤさんなど去就を明確にしないまま競技会を欠場し続けるベテラン選手も多い中で、全ての大会に全力で臨んできた村主さんの一途なスケートへの取り組みは大いに讃えて上げたいと思う。


安藤美姫さん:メンデルスゾーン ヴァイオリン協奏曲 ホ短調

最初のルッツからのコンビネーションはめずらしく二つ目のトリプルループの着氷が乱れてしまった(プロトコルを見るとダウングレードされている)。サルコウを跳んだ後のフリップに入る動作が少しぎこちなくてやや苦しそうな表情を浮かべていたのでまた腰にでも痛みがあるのかと思った。2度目のフリップで転倒し、ダブルアクセルを跳んだ後のスピンでついに動きを止めてしまいやはりどこかに痛みがあることが明白になった。インタビューによると昨日のSPの後で肩を脱臼し、自分ではめた時にどこか筋を痛めてしまったとのこと。このスピンの後には両腕を大きく振り回すストレートラインステップが控えていたので演技を続けられるかとても心配になったが、気を取り直して激しいステップを始めた時には驚かされた。その後も二つのスピンをこなし精神力の強さを見せつけた。

今シーズンは由希奈さんを別にすれば安藤さんに最も肩入れして応援してきたので彼女がこうした強さを見せてくれたのはとてもうれしい。トリノで4回転サルコウを失敗した後立て直すことができずにずるずると失敗を重ねてしまった時とは見違えるような成長ぶりだった。グランプリファイナルに続きトラブルを抱えた状態で試合に臨んでしまったのは残念だけど、こうした状況でも2位に入れたというのは今の安藤さんの充実ぶりを象徴する結果だと思う。世界選手権では今度こそ万全の状態で最高の演技を見せて欲しい。


浅田舞さん:白鳥の湖

シーズン開幕直前にプログラムを「白鳥の湖」に変更したはずなのに元の黒い衣装で登場したのにまず驚いた。フリップで転倒したのをはじめミスが多かった。フライングシットスピンでバランスを崩して手をつく場面もあった。せっかくの美しさをいかせず、もったいない演技になってしまった。

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全日本選手権2006 男子シングル フリー

2006年12月29日

今日は女子と両方で疲れたので男子の方の感想はダイジェストで。


神崎範之選手:オペラ座の怪人

のびやかなスケーティングが光る素晴らしい演技だったと思う。濱田コーチも跳び上がって喜んでいた。またしてもご褒美の抱擁をしてもらっていて羨ましかった。


小塚崇彦選手:ショパン ピアノ協奏曲第2番

最初のトリプルアクセルの転倒をはじめジャンプでミスを連発。昨日の公式練習での右足首の怪我がかなり深刻であることを窺わせた。力のある選手なのに大事な試合でアクシデントに見舞われてしまったのは残念。こうしたことも乗り越えてまた一回り強くなっていって欲しい。


織田信成選手:チャイコフスキー 交響曲第4番

プログラムを変えるのかとも思われたが変更は衣装だけで、音楽も要素の構成も今までと同じだった。最初のトリプルアクセルからのコンビネーションで着氷が乱れ、いつもの調子ではないことを感じさせた。その予感通り2度目のトリプルアクセルで転倒してしまった。本気で高橋選手に勝つつもりで臨んでいたようで、インタビューでは涙をこぼしながら話していた。NHK杯の時とは様子が違っていて驚かされた。しかし高橋選手も今のレベルにたどり着くまでには幾多の挫折を乗り越えてきた。この悔しさを糧にさらにまた成長した姿を見せてくれることと思う。


高橋大輔選手:オペラ座の怪人

何だかすごいものを見てしまったという感じがした。ヤグディンプルシェンコなどの過去の伝説的な名演技と比べても遜色ないような、素晴らしい記念碑的な演技だったと思う。最初の4回転トウループは素晴らしい出来で、余裕のある着氷だった。ジャンプはループの着氷がややオーヴァーターン気味だったもののほぼ完璧な出来映えだった。今シーズンは格段にジャンプの質がよくなっているように思う。これほど好調なら世界選手権ではSPで4回転を跳ぶことも考慮に入れてもいいのではないか。ステップもいつも通り華麗で、特にストレートラインは激しさがあって今シーズン一番の出来だったように感じた。敢えて不満をいえばスピンのスピードが物足らなかった点に改善の余地があっただろうか。

男子も今や世界のトップレベルにあることを示す素晴らしい優勝だった。もしこれをジュベール選手やランビエール選手が見たらかなりのプレッシャーを感じるのではないだろうか。来年の世界選手権が早くも楽しみになってきた。

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全日本選手権2006 女子シングル SP

2006年12月28日

澤田亜紀さん

濱田コーチの"でこぴん"を受けての演技。フリップがステップアウトし、次のフライングシットスピンでバランスを崩す。それでも彼女らしい元気のいい演技だった。今日はカメラが濱田コーチの姿を映してくれたのでご満悦だった。


安藤美姫さん:リムスキー=コルサコフ シェエラザード

男子の高橋選手と同じくグランプリファイナルで体調を崩したが、高橋選手が世界選手権出場の内定を得たのに対し安藤さんは全日本での活躍が求められることとなった。その意味でどんなコンディションで臨めているのかが注目されたが、今日のSPを見る限りでは特に問題はなさそうだった。シーズン序盤の好調時に比べると動きにやや切れがなかったような気がしたが、ジャンプも全て華麗に決めており、安藤さんらしい演技だったと思う。ストレートラインステップの最後の部分でわずかにバランスを崩していたようにも見えたが大きな減点にはならなかっただろう。今シーズンの復活への意気込みの全てを明日のフリーにぶつけて欲しい。


武田奈也さん

長い手足をいかしたのびやかな演技。解説の荒川さんは身長で抜かれたことにショックを受けたのだそうだ。


浅田真央ちゃん:ショパン ノクターン第2番

真央ちゃんらしいノーミスの演技。全く隙のない完成されたプログラムに仕上ったと思う。フリーの「チャルダーシュ」の方は今シーズンまだ会心の演技をできたことがないので、明日はどこまで完璧に近づけることができるか注目される。インタビューでは「(ステップからの)トリプルアクセルを決めてノーミスの演技をして200点を達成して優勝したい」とどこまでも強気な言葉を並べていた。頼もしい16歳!


恩田美栄さん

プログラムを「春の海」から変えてきていた。やはりあの曲は本人としても滑りづらかったのだろうか。私としてはもう少しこだわって挑戦して欲しい気持ちが強かったので少し残念。しかしその甲斐あってかノーミスの演技で上位に食いこんだ。明日のフリーはことによると現役最後の演技になるかも知れない。悔いのない演技で締めくくって欲しい。


村元小月さん

ジュニアの全日本選手権優勝の選手。同じくジュニアで活躍中の哉中(かな)さんのお姉さん。演技を見るのは初めてだったけど、しなやかで丁寧なスケーティングが印象に残った。ステップでの転倒などもあったけどなかなか存在感のある選手だと思った。ここでも濱田コーチの笑顔が見られてうれしかった。


太田由希奈さん:チャイコフスキー 白鳥の湖

待ちに待った由希奈さんの試合での演技。これを見られただけでも感慨深い。ジャンプはかなり難度を落とした構成にしていたが、それが功を奏してノーミスの演技。細かくいうとサルコウの着氷はやや危なかった。この構成にしては比較的高いTESがでていたのでおそらくダウングレードはされていないと思うが、されたとしてもおかしくない内容だったと思う。スピンではビールマンポジションを採り入れていたが、これも回転が不足していたのではないかと思う。

しかしそんなことより何より、やはり彼女の演技は別格の美しさだった。日本の女子はレベルが高いので素晴らしい演技には見慣れてしまっているが、世界のトップ選手達の中に交じっても一際美しいと思った。一人だけ別の次元で演技をしているような印象だった。この人が競技会に戻ってきてくれただけでもうれしくなる。

心配していた点数だがTESに関しては予想より高かったのに驚いた。ジュニアのトップ選手にも劣るようなジャンプの構成ながらこれだけの点数が出るというのはやはり彼女の演技の質の高さによるのだろう。その半面PCSは低過ぎるのではないかと思う。あの演技にこんな点がつくのならPCSの存在意義とは何なのだろうかと思ってしまう。

しかしともかく由希奈さんの元気な姿が見られて満足だった。インタビューでは高い声でにこやかにうれしそうに話していた。フリーの方が多く練習してきたとのことなのでどんな「火祭りの踊り」になるのか楽しみ。明日はジャンプはサルコウとトウループだけ、というわけにはいかないはずだけど、今の力を全て出し切れるよう祈りたい。


浅田舞さん:ピアソラ Oblivion〜Libertango

舞さんらしい優雅な演技。持ち前のしとやかな美しさにスケール感が加わりつつあるように思う。スパイラルなどは特にポジションの美しさに加えて迫力を感じさせる。スピンではビールマンポジションでの回転が不足していたようだった。


中野友加里さん:SAYURI

今シーズンはここまでまだ会心の演技をできていなかったが、今日は一番の出来ではなかったかと思う。ジャンプの巻き足は相変わらずだが難度の高い構成を全て成功、NHK杯では思わぬミスの出たスピンも安定していた。グランプリファイナルの出場を逃した分、コンディションの調整はうまくいっている様子。明日もこの調子なら世界選手権出場にも手が届くかも知れない。トリプルアクセルの成否も注目される。


村主章枝さん:ラヴェル ボレロ

ルッツからのコンビネーションのダブルトウループの着氷の流れが悪いな、と思って見ていたら続くフリップは回転が足りず両足で前向きに降りてしまった。間違いなくダウングレードされているだろう。全体にNHK杯の時のような躍動感に欠けていたと思う。いつも大事な試合には万全の状態で臨んでくる村主さんだが、今回はハードなスケジュールのせいもあってか少し動きが重たそうに見えた。それでもフリーではベテランらしく勝負強さを発揮しそうな気がする。世界選手権の切符は中野さんと競り合う位置にいるが、意地の張り合いが楽しみでもあり、少し切なくもある。

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全日本選手権2006 男子シングル SP

2006年12月28日

いよいよ今日から始まった全日本選手権。情報を遮断して結果を知らずに見たが大きな波乱はなく、まずは順当な結果になったといえるだろうか。やはり高橋・織田両選手の優勝争いと、それに次ぐ選手達の表彰台を巡る戦いという展開になった。期待された小塚選手にジャンプの失敗があったのは残念だった。


神崎範之選手:ボレロ

トリプルアクセル、トリプルトウループ–トリプルトウループ、トリプルルッツとジャンプを全てクリーンに成功させた。音楽の流れに乗ったノーミスの演技で本人もうれしそう。濱田コーチに抱きしめてもらえて羨ましい。濱田コーチ満面の笑顔のはずなのにカメラが全く映してくれなくて悲しかった。


高橋大輔選手:チャイコフスキー ヴァイオリン協奏曲

三つのジャンプは全て流れに乗った美しいもので、今シーズンの好調さを感じさせる演技だった。特に最初のフリップはとても素晴らしいと思う。トリプルアクセルも余裕があった。彼のコーチでもある解説の本田さんはスピン、ステップの出来映えにやや不満そうだった。それでもスピンはNHK杯のフリーの時よりはかなりよかったと思う。ステップでは少しつまづきかけたようなところがいくつかあったようだけど、それでも華麗さは際立っていた。本田さんは練習で彼の力を知り抜いているからこその意見なのだと思う。現時点での日本の第一人者としての貫禄を示す余裕の演技だったと思う。


小塚崇彦選手:サラバンド

冒頭のトリプルアクセルでいきなりの転倒。跳ぶ前からかなり力んでいる様子が見てとれて危なそうだと思ったら本当に転んでしまった。続くコンビネーションジャンプでも二つ目が2回転に。公式練習で足を怪我したそうで、その影響があったのかも知れない。のびやかで滑らかなスケーティングは健在だった。


中庭健介選手:ロドリーゴ アランフェス協奏曲

得意の4回転トウループは不発。はじめから3回転にするつもりで跳んでいたように見えた。トリプルアクセルでは転倒してしまった。少し調子が悪かったのだろうか。この曲はどうしても本田さんのプログラムを思い出してしまうので彼には少し損な選曲だと思う。


織田信成選手:Fly me to the moon

トリプルアクセルは空中でかなり軸がゆがんだ危ないジャンプだった。それでも持ち前の膝から下のやわらかさをいかして無事に着氷した。全体には相変わらず楽しそうな感じが伝わってくる彼らしい演技だった。フリーはプログラムを変えるともとれる発言をしており、明日はその点も注目される。


町田樹選手

ジュニアの日本選手権で優勝した期待の若手選手。小柄な体を一杯に使ったいきいきとした演技だった。将来的にはもう少し演技にメリハリをつけて、情感をこめられるようになるといいと思う。


南里康晴選手

コンビネーションジャンプの二つ目のトリプルトウループの着氷が乱れたがほかに大きなミスのない演技でSPを終えて3位につけた。高橋・織田両選手に次ぐ位置にいる選手達は実力が伯仲しており、どの選手にも表彰台に上がる可能性がありそうだが、その中でも彼が一番調子がよさそうに見えた。フリーでも今日の調子を維持できるかが注目される。


フジTVの編集はVTRとCMの合間に演技を流すような放送で、見ていて全く臨場感がなかった。その点ではTV朝日のグランプリシリーズよりもひどかったような気がする。実況と解説は落ち着いていて気持ちよく聞いていることができた。

感想の書かれたブログ

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「悲しまないで」Op.14-8

2006年12月23日

先日銀座の山野楽器本店に行った際、クラシックの売り場を覗いてみたら前から入手しなければ、と思っていたラフマニノフの歌曲全集が店頭に置いてあった。少し迷ったけど、いずれは手に入れる必要のあるものだったので買うことにした。ラフマニノフの歌曲を収めたCDはいくつか持っているけど、全集でないと収録されていない作品に強い関心があったのだ。これについては書きたいことがたくさんあるので、いつか時間と気力のある時にでも記事にするかも知れない。

ここではそれとは別に、この全集でとても心に響く素晴らしい詩に出会ったので紹介してみたい。アレクセイ・アプーフチン(1840-1893)の作品である。私の下手な訳で申し訳ないけれど。

悲しまないで

ああ、私のことで悲しまないで!
私は苦しみのない場所にいるの
過ぎ去った悲しみの悪夢は忘れて。
あなたの記憶の中の私を
春の最初の日よりも輝かせて
ああ、私がいないと寂しがらないで!
私たちにお別れはないの、
私は以前と変わらずあなたの心のそばにいるわ。
相変わらずあなたの苦しみには不安になるし、
あなたの愁いは私を悩ませるの
生きて! 生きなくちゃいけないわ!
もし奇跡のような力に導かれて
あなたが喜びや安らぎに出会うことがあったら、
ねえわかって、それは私が
ここから答えているからなの
あなたの傷ついた魂の呼び声に。

本田美奈子さん、今ごろは私たちのことをこんな思いで見つめてくれているのかな、と思ったら暖かい気持ちになった。こじつけかも知れないけど美奈子さんに会いに行ったその序でにこの詩と出会えたというのは、美奈子さんが導いてくれたのかも知れないと思っている。言葉や歌の力についてあらためて思い知らされた、そんな出会いだった。

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桑田真澄 38歳のメジャー挑戦

2006年12月22日

今シーズン限りでジャイアンツを退団した桑田真澄投手がパイレーツとマイナー契約した。すでに今週初めに伝えられたニュースだけどやっと今頃になって感想を書く気分になった。桑田のことについては書き出したらきりがなくなってしまうので簡単に感慨を記しておきたい。


桑田真澄は私が最も思い入れを持って応援してきたアスリートの一人。ここ数年はシーズン終了が近づく度に翌シーズンの去就にやきもきしてきたが、今シーズンはすでに夏頃にジャイアンツとの契約が困難なら移籍先を探してでも現役を続けたいという意向が伝えられていたので落ち着いて成り行きを見守ることができた。私も気持ちが切れていないのならどんな場所でもいいから野球を続けて欲しいと思っていたのでそういう意向でいてくれることに安心していたのだった。だからジャイアンツのHP上で退団の意志を表明した時も驚きはなかった。むしろ恩義を感じ強い愛着を抱いているはずのジャイアンツを去ってでも野球を続けたい、とはっきりと言明してくれたことをうれしく思った。

当初獲得に意欲を見せていたゴールデンイーグルスが撤退した時は少し不安になったが渡米してメジャーの関係者と接触して好感触を得た、と伝えられたことで夢は大きく膨らんできた。元々桑田は現在のようにメジャー移籍が日本の野球選手にとって現実的な目標となるよりも以前からメジャーヘの志向を抱いてきた選手。様々な経緯でその道は閉ざされてきたが、今になってそのチャンスが与えられたことは感慨深い。

複数の球団からのオファーがあったが彼が選んだのはパイレーツだった。金銭的にはもっといい条件を提示した球団があったようだけど、パイレーツを選んだ理由を尊敬するロベルト・クレメンテがかつて在籍していたからと説明していた。本人は言及しなかったが最もメジャー昇格と先発ローテーション入りの可能性が高いということも理由の一つだったのではないかと思う。私としても彼が実際にメジャーのマウンドに立つ姿を見たいので、このチームを選んだことを歓迎したい。

今の彼が現実的にメジャーでどの程度やっていけるのかは私にも全く見当がつかない。しかしともかく彼が自分の可能性を信じて挑戦する姿をしっかりと見届けたいと思う。


強引な球界再編への動きや金に物を言わせた先の見えない戦力補強など、様々なことを目にしても桑田が在籍しているから、というだけでジャイアンツファンを続けてきた。しかしこれでもうジャイアンツを応援しなくてもいいのだと思うと、何だかほっとしたような、寂しいような、複雑な気分になる。来シーズンからはどんな風に日本の野球を見ればいいのだろう?

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亀田興毅 初防衛戦に勝利

2006年12月20日

因縁の試合の再現となった亀田興毅の初防衛戦、今回は3ー0の判定で亀田が防衛を果たした

フィギュアスケートグランプリファイナルのエキシビションと時間が重なったので録画で見た。本来なら生放送であるボクシングの方を優先させるところなのだけど、まともな試合になるのか極めて疑わしかったので後で早送りしながらチェックするだけで十分だろうと思ったのだ。果たしてまともに見る価値のない凡戦だった。

ランダエタがどこまで本気で臨んでいるのかがこの試合の重要なポイントの一つだったのだけど、両者ともまともにヒットしたパンチは一つもなかったのではないだろうか。試合が終わっても双方ともにダメージを受けるどころか顔が腫れ上がってもいないようなボクシングの試合というは初めて見た気がする。ボクシングというよりは寸止めの空手を見ているような気分になった。終盤に亀田が手先だけの細かいパンチを当てていたので一応判定には文句のつけようがないが、両者ともどこまで本気だったのか極めて疑わしい。あれがもし本気だったというのならどちらも世界戦を戦うにはあまりにも技量不足だったといわざるを得ない。

議論を呼んだ8月の試合は結果はともかく内容ではそれなりに見どころのある試合だった。しかし今回はタイトルマッチとしてはあまりにもお粗末な試合だった。ビデオを早送りしながら見るのも馬鹿らしかった。お金を払ってあの試合を見た人が気の毒だ。

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『すぽると!』の特集見逃した…

2006年12月20日

昨日の深夜PCで作業をしていて、このブログのアクセス解析をチェックしてみたら検索ワードのトップが太田由希奈さんだった。あまり記事は書けていないけど一応わざわざ由希奈さんのためにカテゴリーを設けているので、今までも由希奈さんで検索してここを訪問して下さる方は少なくなかった。ただその数がちょっと異常だったので由希奈さんに何かあったのかと思ってファンサイト「Excellent Spin」の Fan Board を覗いてみてびっくり。『すぽると!』で由希奈さんの特集をやっていたとのこと。全く知らずに見逃してしまっていた。昨日はあまりのショックでそのままふて寝をしてしまった。

今日になって昨日の朝刊のTV欄をチェックすると、『すぽると!』のところに「氷上復活劇」とだけ書いてあった。ちゃんと由希奈さんの名前を出していてくれれば多分見落とすことはなかったはずなのに…。個人でサイトを開設している人だって自分の書いたページが検索にひっかかりやすくなるように気を配るものなのに、どうしてこんな曖昧な記載しかしなかったのか。由希奈さんの現在の知名度からすると直接名前を出すより少し謎めいた書き方をした方が一般視聴者の関心を引きやすいと判断したのだろうか。まあ毎週火曜は荒川さんが出ているので欠かさずチェックしておくべきだったのだろうけど…。

見逃してしまったのはショックだけど、フジTVが全日本で由希奈さんの演技を放映することに前向きでいるということが確認できたのはよかった。グランプリシリーズでは某局の編集方針に毎回のように驚かされてきたので、由希奈さんの順位がふるわなかった場合カットされてしまうのでは、という不安は心の中から去らなかったのだ。フジTVにはこういうやり方で全日本への関心を煽ったからにはどんな結果になったとしても由希奈さんの演技を放映する義務があるのだと心得て編集してもらいたい。

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コメント&TB 不具合のお詫び

2006年12月18日

今日の夕方にスパム対策を講じたのですが、少し失敗して一時的にコメントとトラックバックができない状態になっていたようです。もしこの間にコメントやトラックバックをしようとしてできずにいた方がおられましたらお詫びします。

現在はできるようになっているはずですが、もしまだ不具合があるようでしたらお知らせ下さい。

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グランプリファイナル2006 女子シングル フリー

2006年12月18日

男子に引き続き女子も波乱の展開に。安藤さんも高橋選手と似たような症状、真央ちゃんもどうやら万全でなかったらしい。何とも見ていて切ない大会になってしまった。

放送は例によってシェベシュチェンさんの演技をカット。ペアとアイスダンスは2時間の枠で12組全てのカップルを放送したのになぜ地上波でのシングルは10選手の演技を放送できないのか、考えると腹が立つ。


村主章枝さん

日本勢の中では最もフリーの順位がよかったのでまずまずいい演技だったのかと期待して見たのだけど、ルッツからのコンビネーションの次に跳んだフリップがダブル、次のトウループがシングルと冴えないスタート。キャメルスピンでバランスを崩す場面もあり、サルコウもダブル。全体に元気のない演技になってしまった。村主さんも体調不良だったらしい。


サラ・マイヤーさん

見ていて切なくなるような演技が多かった中で清楚な美しさでほっとなごませてくれたのがこの人の演技。腕の動きが表情豊かで見惚れてしまう。解説のみどりさんも指摘されていたように彼女にとてもよく合ったプログラムだと思う。ジャンプの細かなミスは気にならなかった。

彼女のファイナル進出には組み合わせに恵まれたという面があり、3位に入ったのも周りの自滅に助けられたからでもある。それでも派手な大技を持たない選手でもこうした大きな大会で表彰台に上がれるということが示されたのは何だかうれしいような気もする。


キム・ヨナさん:ヴォーン=ウィリアムズ あげひばり

最初にヨナさんが優勝という結果を知った時にはこうした勝ち方では素直におめでとうとはいいにくい気分だな、と感じていた。でも実際に演技を見てみるとやはり素晴らしい出来だったと思う。腰の状態は万全ではなく、彼女のベストの演技というわけではなかったかも知れないが、難度の高いジャンプの構成に加え、あの独特のしなやかな表現はグランプリファイナル優勝に恥じない演技だった。

周りの自滅に助けられた結果でもあり、本人も優勝できたのは「真央がミスしたから」と語っているそうだけど、参加した3つの大会全てに安定した力を発揮できたからこそ得られた栄誉といっていいだろう。世界のトップ選手の仲間入りを果たしたことを証明する結果であり、これを自信にしてさらなる進歩を遂げて欲しい。


安藤美姫さん:メンデルスゾーン ヴァイオリン協奏曲 ホ短調

深夜にオンラインリザルトを見ながらフリーでシェベシュチェンさんより低い点が出た時には目を疑った。一体彼女に何が起こったのか、と心配になったが、高橋選手と同じく体調不良だったとのこと。最初のルッツがシングルになったのを皮切りにジャンプがことごとくすっぽ抜けてしまった。インタビューでは少し笑みを浮かべていたが、あまりの悔しさに笑うしかなかったのだろう。控え室では泣きじゃくったという切ない情報も伝えられている。

今シーズン見違えるように復活を果たした安藤さんにはかなり肩入れして応援してきたのでこの結果は私にもショックだった。とても残念だけど過ぎたことは仕方がないので全日本や世界選手権でこの悔しさを晴らして欲しい。


浅田真央ちゃん:モンティ チャルダーシュ

安藤さんが下位に沈んだのを見た時点で真央ちゃんの優勝を確信したのだけど、真央ちゃんまでが失速してしまった。冒頭のトリプルアクセルが回転不足で両足着氷の末に転倒。その後も全く真央ちゃんらしくないミスの連続だった。ルッツでの転倒なんて真央ちゃんにしては考えられないミス。コンビネーションジャンプの予定もいともあっさりと諦めてしまっていた。

最初のトリプルアクセルで失敗するとそれを後に引きずってしまう、というのはこれまでも指摘されてきた欠点だけど、それにしてもあまりにひどい出来だった。ほかの選手たちと違って真央ちゃん本人はいわなかったけど、周囲からは風邪をひいていたという証言も出ているらしい。

インタビューでは泣きそうなのをこらえながら話しているのがはっきりとわかり、聞いている方も切なくなってしまった。これまで何度かの真央ちゃんの敗戦はたまにはこういう経験をするのもいいのではないか、と思える内容だったけど、今回は見ていてかわいそうになった。でもまだまだ若い選手なのだからこれを乗り越えて強くなっていって欲しい。


それにしても怪我、アクシデント、体調不良と波乱に満ちた大会だった。その昔チャイコフスキーが交響曲第6番「悲愴」の初演のためにこの町を訪れて、生の水を飲んでコレラに罹り亡くなったというエピソードを思い出してしまった。みんなこの後の大会参加に支障が生じなければいいのだけど。

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グランプリファイナル2006 男子シングル フリー

2006年12月17日

トップ選手が集まっているだけにハイレベルな戦いが期待されたファイナル。しかし始まってみるとライザチェクに続きジョニー・ウィアーがフリーを棄権して4人の争いに。しかもそのうち高橋選手とプレオベール選手が体調不良と冴えない試合になってしまった。特に高橋選手はSPの出来が非常によかっただけに残念。体調管理もアスリートの大切な仕事とはいえ気の毒な結果だった。


織田信成選手:チャイコフスキー 交響曲第4番

SPが彼らしくない出来だったので心配したけど、フリーは持ち味が出ていい演技だった。挑戦すると公言していた4回転ジャンプを回避したのも好結果につながったのだろう。最後のダブルアクセルの着氷が乱れたほかは大きなミスはなかった。初のグランプリファイナルの表彰台は今後の飛躍に向けて大きな自信になることと思う。


アルバン・プレオベール選手

ジャンプには安定感のある選手だが、今回は二つ目のトリプルアクセルで転倒してしまった。それでも持ち味のユーモラスな表現で楽しませてくれた。彼も体調がよくなかったそうだけど、あまりそういうことは感じさせず、痛々しい演技にはならなかったのは大したものだと思う。


高橋大輔選手:オペラ座の怪人

昨日深夜の時点でリンクから自力でキス&クライに戻れなかったなどというショッキングなレポートが伝えられていたのでかなり覚悟をして見たのだけど、実際見た印象はそれほどひどいものではなかった。体調不良という事実を先に知ってから見たせいもあり、むしろそんな状況でよくこれだけの演技ができたものだと驚かされた。冒頭の4回転トウループも何とか降りていたし、二度のトリプルアクセルもクリーンだった(加点ももらえている)。明らかに様子がおかしくなったのはループの着氷で乱れた後からだったろうか。胸を押さえるような仕草が目立ち、苦しそうな表情を浮かべるようになった。ストレートラインステップの最後は演技にならなくなってしまった。

それでも地元ロシアの観衆は熱狂的な拍手で応えていた。思うにロシアのスケートファンにはやや淡泊な表現のジュベールよりも彼のような濃厚な味わいの演技の方が好みに合うのではないか。明らかに何かトラブルがあったにも関わらず最後まで演技を続けたことへの賞賛という面もあっただろうが、モスクワでの世界選手権で後半"へたれて"しまった時とは全く違った印象を与えることはできたと思う。この大きな大会に万全の状態で臨めなかったのは気の毒だが、それでも2位に入ったという自信を胸に今後に向けて調整して欲しい。


ブライアン・ジュベール選手:ロミオとジュリエット

注目された4回転ジャンプは最初のトウループからのコンビネーションは決まったがサルコウはトリプルに、二度目のトウループは転倒で成功したのは一つだけだった。ロシア大会にくらべるとやや物足りない内容ではあったが、それでも地力のあるところを見せつけての優勝。毎日新聞が彼の「この試合は、欧州選手権と世界選手権の練習のつもり」という発言をいち早く伝えていて、最初に知った時は少しカチンときた。ただネットでは見られないのだけど今朝の朝日新聞の報道だと「ライバルたちの棄権や自滅に助けられての優勝では素直に喜べない」という趣旨で発言したようにもとれる。翻訳によるニュアンスの変化ということもあるので、このあたりの解釈には慎重さが必要だと思う。

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グランプリファイナル2006 結果速報

2006年12月17日

すでに男女シングルとアイスダンスで結果が出ているけど思わぬ展開にびっくり。以下ネタばれ注意して下さい。


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グランプリファイナル2006 女子シングル SP

2006年12月15日

女子に関しては煽りのVTRや饒舌な松岡修造氏のトークなどはあったものの全選手の演技を放送してくれて一応満足のいくものだった。ただ大会運営の面で村主さん、シェベシュチェンさん、マイヤーさんの乗ったバスが渋滞に巻き込まれて会場への到着が遅れるという残念なトラブルが起きてしまった。こういうことで選手が力を出し切れないというのはとても残念。明日はこういうことのないようにして欲しい。しかしそうした条件の中でもパーソナルベストをマークしたマイヤーさんは素晴らしいと思う。


サラ・マイヤーさん:ロドリーゴ アランフェス協奏曲

派手な大技はないけど手足の長い恵まれた体型をいかした美しい演技。これまであまり目立たない感じの選手だったけど地道に続けてきた努力が今になって花開いているのだと思う。素人目にはTESでこれだけ高い点数が出る理由はわかりづらいのだけど、見た目の美しさには心を惹かれてしまう。フリーもとてもいいプログラムなので明日が楽しみ。


村主章枝さん:ラヴェル ボレロ

ルッツからのコンビネーション、フリップはいつも通りのきれいなジャンプ。ところがアクセルがシングルになるまさかのミス。動揺したのかその後のスピンでもバランスを崩していた。見せ場のストレートラインステップも少し勢いが感じられなかった。インタビューではバスが遅れるアクシデントが演技に影響してしまったと認めていた。このことはやはり不運で残念だった。フリーでは今日の分まで勢いに乗った会心の演技をして欲しい。


キム・ヨナさん

スタジオゲストの荒川さんも表現力を絶賛していたが、その通りのしなやかで美しい演技。自分で音楽をしっかりと感じながら踊っていることがはっきりとわかるところが素晴らしいと思う。ルッツの着氷がやや乱れたのはご愛嬌。腰に痛みを抱えているそうなのだけど、フリーでも持ち味を発揮して魅了して欲しい。


浅田真央ちゃん:ショパン ノクターン第2番

どこといって隙のない完璧な演技。NHK杯ではルッツの着氷がやや乱れたことを考えると今回の方がいい出来だったと思う。あの時は地の利にも恵まれていた感があるので今回の点数が真の実力を表す結果といえそうだ。少しずつノクターンの音楽が体にしみついてきているようにも感じられる。明日はこれまでまだクリーンに決めていないステップからのトリプルアクセルが決まるかも注目される。


ユリア・シェベシュチェンさん

いきなりフリップがダブルになるミス。ルッツからのコンビネーションは決めたものの、アクセルもシングルになってしまう。ジャンプが持ち味の彼女が二つもミスしてしまったのは痛かったが、それでも今の彼女は決してジャンプだけではない、というところも感じさせてくれる演技だったと思う。


安藤美姫さん:リムスキー=コルサコフ シェエラザード

トリプルルッツ–トリプルループのコンビネーションなど、難しい構成のジャンプを全て成功。そのほかの要素も丁寧にこなして今シーズン成長した安藤さんの真価をまざまざと見せつける演技だった。ストレートラインステップの中ほどは少しつまづいてしまい、本人も気にしていた様子。それでもそれでもよく神経の行き届いた手の動きなどでアラビア風の踊りを表現できていた。真央ちゃんとの差は小さいので明日の出来次第では逆転優勝も十分あり得るだろう。期待通りのハイレベルな争いで楽しみになってきた。

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グランプリファイナル2006 男子シングル SP

2006年12月15日

ファンの声を参考に改善されつつあるかに見えたTV朝日の放送だが、またしてもプレオベール選手の演技が放送されないという事態に。現地の映像なのかわからないがカメラワークでもありえない失態が起きてしまった。ライザチェク選手棄権について何の説明もないなど、男子に関してはストレスのたまる放送だった。


ジョニー・ウィアー選手

トリプルアクセルはいつも通り高さと幅のある出来映えだったがその後のスケーティングでまさかの転倒。普通転ぶような箇所ではなかったので本人も驚いたろうしその後の演技にも影響があったと思う。ルッツからのコンビネーションは無事成功したがフリップがダブルに。調子はそれほど悪そうには見えなかったのでもったいない演技だった。


高橋大輔選手:チャイコフスキー ヴァイオリン協奏曲

フリップからのコンビネーション、トリプルアクセルと実に軽々と成功。NHK杯の時からそうだったのだけど無駄な力が抜けてとても軽い感触で跳べているのでよほど調子がいいのだと思う。フリーでもまた4回転に期待できそうだ。その後のルッツは何とカメラがフレームからはずしてしまうという大失態をしでかしてくれた。お蔭でどんな内容だったか確認できないのだけど少し乱れたジャンプだったらしい。

スピンはNHK杯の時よりもスピードがあり軸もしっかりとれていたと思う。ステップはいつも通り素晴らしかったがやや慎重で丁寧に踏んでいる印象があった。本人もインタビューでもう少し激しくやりたかったという趣旨のことを述べていた。

1位のジュベールとはほとんど差がないのでフリーの出来で勝負が決まることになる。演技中やインタビューの際、とても引き締まった表情をしていたので明日もいい演技になることを期待したい。


織田信成選手:Fly me to the moon

いきなりトリプルアクセルで転倒。フリップもシングルになるなどいつも安定感のある織田選手らしからぬ演技。ストレートラインステップではNHK杯の時と同じ場所でバランスを崩していた。彼がこうした乱れ方をするのは珍しいと思う。この大会ではフリーで4回転を跳ぶと明言しており準備をしてきた模様なので、もしかすると4回転の練習がトリプルジャンプの感覚を狂わせてしまっているのではないかと思う。明日はその4回転をどうするのかも注目される。


ブライアン・ジュベール選手

4回転トウループはお手つきながら一応成功、後ろにダブルトウループのコンビネーションをつけた。力強さを感じさせるいつもの彼らしい演技だった。総合的には高橋選手の出来の方がよかったような気がするけど僅差でSP首位に立った。明日はどんなジャンプの構成で臨むのかが注目される。

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グランプリファイナル2006 順位希望

2006年12月14日

いよいよ今週末に迫ったグランプリファイナル。あまり予想とかするのは好きではないのだけど、大きな大会なので簡単に事前の展望をしておきたい。タイトルにもあるように、こうなったらいいな、という私の勝手な希望なのでそのつもりで読んでいただけたら、と思う。


女子シングル

1位 安藤美姫さん
2位 浅田真央ちゃん
3位 キム・ヨナさん

男子シングル

1位 ブライアン・ジュベール選手
2位 高橋大輔選手
3位 織田信成選手

ペア

1位 申&趙組
2位 ぺトロワ&ティホノフ組
3位 井上&ボールドウィン組

アイスダンス

1位 デンコワ&スタヴィスキー組
2位 デュブルイユ&ローゾン組
3位 ドムニナ&シャバリン組

女子シングルは真央ちゃんが強いのはわかっているけど、今回は安藤さんに花を持たせて上げたいと思ってこのようにした。男子シングルは高橋選手に優勝して欲しいと思うし、その力はあるはずだけど、やはり彼の場合は過剰な期待をかけずにうまくいったらもうけもの、くらいのゆとりを持って応援した方がいいと思うので優勝はジュベール、としてみた。

ペアはやはり今充実している中国のベテランペアに期待している。ロシアペアも地元で持ち味を発揮して欲しい。怜奈さんたちのプッチーニ・メドレーも楽しみ。張&張組は今のところトリノで見せてくれたような覇気が感じられないので上位に入れなかったのだけど、彼らの実力を考えれば上位に予想するべきなのだろう。

アイスダンスについてはよくわからないのだけどデンコワ&スタヴィスキー組の天上的な美しさに満ちたFDをかって優勝とした。デュブルイユ&ローゾン組の大人の味わいも楽しみ。ドムニナ&シャバリン組はFDの「韃靼人の踊り」が荒削りながらスピードと躍動感に溢れていて魅力的。ベルビン&アゴスト組は残念ながら欠場となってしまった。

ここに名前を挙げなかった選手についてももちろん応援しているので、ファンの方はどうぞご容赦を。

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本田美奈子さん最新アルバム「優しい世界」

2006年12月13日

山野楽器 衣装&パネル展

先日の日曜日(10日)、山野楽器銀座本店で開催された本田美奈子さんの衣装&パネル展に行ってきた。ビデオ上映も展示の品々も朝霞や渋谷で行われたイベントにくらべると規模が小さかったけれど、美奈子さんが確かにここにいてくれる、と感じられて暖かい気分になった。特に初めて見る新アルバムのジャケット写真で着ているドレスは素敵で、いつものことながらあまりの細さに美奈子さんの可憐な姿を思い浮かべ、あらためて愛惜の念を強くした。

今のところイベント開催が首都圏に集中していて、遠くにお住いのファンのみなさんには申し訳ない気がする。早く全国各地でも開催されるよう祈りたい。


本田美奈子さん最新アルバム「優しい世界」

「優しい世界」収録曲
1. 優しい世界 作詞:佐藤ありす 作曲:NIEVE
2. Sweet Dreams 作詞:かみにしやすし 作曲:小森茂生
3. FLOWER 作詞:有森聡美 作曲:NIEVE
4. 満月の夜に迎えに来て 作詞:本田美奈子. 作曲:本田美奈子.
5. shining eyes (juzzy funk mix) 作詞:有森聡美 作曲:本田美奈子.
6. Sweet Dreams (sk55 re-mix) 作詞:かみにしやすし 作曲:小森茂生
全編曲:小森茂生
初回限定盤付属DVD
impressions 作曲:山梨鐐平 編曲:田代修二

美奈子さんの新アルバム「優しい世界」、発売から数日遅れてやっと手にした。初回限定盤と通常盤、両方求めたので初回限定盤に付属のDVDと合わせて3枚の大切なディスクである。


このアルバムで何よりもまず目につくのはブックレットに収録された写真やDVDの映像の美奈子さんの美しさである。あまりにも可憐なありし日の美奈子さんの姿を目にしながら、自分がついていくことのできなかった理由がわかってきたような気がする。

私の場合、美奈子さんを人として、女性として愛する思いが強過ぎて、そのことがかえって美奈子さんの音楽との間に距離をつくってしまったのだと思う。美奈子さんを単に実力派の女性歌手として認識することができていれば、もっと屈託なく美奈子さんの音楽に接することができたのだろう。ミュージカルで大活躍していると聞けばたとえそれまで全く関心がなかったとしても、ミュージカルってどんなものなんだろう、と目を向けてみる気にもなったかも知れない。これだけの情報社会なのだからその気になれば美奈子さんの近況について調べることなどいくらでもできたはずなのだ。

私はきっと、自分には手の届くはずのない存在だとわかっていながらあの美しい姿を見ているつらさに耐えられなかったのに違いない。かつて不完全燃焼に終わった美奈子さんへの思慕に、うかつにもう一度火をつけてしまったらどんなにつらい思いをすることになるか。それがわかりきっていたので美奈子さんに近づいていく勇気を持てなかったのだと思う。突然の悲しい知らせには否も応もなく焚き付けられてしまったけれど。こんな風に説明したら美奈子さんついていけなかったことを許してくれるかな…。

楽曲に目を転ずると最も気を引かれるのはやはり「FLOWER」の歌詞である。すでに多くの方が指摘されているように、この詞は美奈子さん自身の姿を思い起こさせる。迷いに迷いながら歌の道を歩き続けてきた美奈子さんを、大地に根をはって吹きつける風に耐えながら咲く可憐な花になぞらえているように思われるのだ。おそらく有森聡美さんは、ちょうど「勝手にさせて」でMickyさんがしたように、意識して美奈子さんをモデルとしてこの詞を書いたのではないかと思う。聴いていると美奈子さんが自身の言葉では言い表せなかった思いを、作詞家の力を借りて高らかに歌い上げているような気がしてくる。


ここに収録されているのは96年頃にバンダイ・ミュージックエンタテインメントからリリースする予定のアルバムのために制作された音源である。ただしヴォーカルトラック以外は今回新たにアレンジ・ミックスし直されたものらしい(DVDの「impressions」はオリジナルのまま)。「shining eyes」以外は未発表曲ということになるが、厳密にいうと「満月の夜に迎えに来て」は駅・コンビニエンスストア等に設置の機械を通してMDへのダウンロードという形でリリースされていた。

自作の「満月…」を中途半端な形でリリースしたのを除いてはお蔵入りにしてしまったということは、おそらく美奈子さんはこれらの楽曲に十分満足していなかったのではないかと思われる。それでも今となっては美奈子さんの歌の世界を理解する上で貴重な資料であることは間違いない。美奈子さんも自分の歩いてきた道のりをよりよく知ってもらえることになったのを喜んでいるだろう。聴きながら美奈子さんの歩んだ人生についていろいろと思いを巡らせたくなる、そんなアルバムである。

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NHK杯2006 エキシビション

2006年12月12日

感動のNHK杯から一週間。まだ書いていなかったエキシビションの感想を含めて少し振り返ってみたい。


一番驚いたのはベアトリサ・リャンさんの演技。試合では力強いスケーティングが印象的な彼女だが、エキシビションではしっとりとした曲に乗せて柔軟性をアピールした演技を見せてくれた。イナバウアー、シャーロットスパイラル、バレエジャンプなど、どれも十分に美しい技だった。こういう普段とは違った面を見ることができるのもエキシビションの楽しさだ。

浅田真央ちゃんはいつもの「ハバネラ」。フィリッパ・ジョルダーノさんによる癖のある歌唱といい、黒とショッキングピンクの衣裳といい、あまり真央ちゃんに似合うとは思えず、見ていて今一つ乗り切れなかった。アンコールで見せてくれた「ノクターン」の方がやはりしっくりとする。

村主章枝さんは「イパネマの娘」。衣裳や照明がボサノヴァの雰囲気と合わないような気がしたけど、村主さんらしくサービス精神一杯の演技。上着を一枚脱ぎ捨てたところでは客席の村主ファンが鼻血を噴き出す音が聞こえたような気がした。

私が一番よかったと思ったのは中野友加里さんの演技。得意のスピンを存分に堪能させてくれる構成でうっとりとなった。中野さんの清楚な美しさに惚れ直してしまった。


ほかに心に残ったのはやはり申&趙組の「My way」。おそらく今シーズンが最後となる彼らの決意が感じられるようで感慨深かった。この曲はフランク・シナトラ引退の噂を聞いたポール・アンカがシャンソンにオリジナルの英語詞をつけてはなむけに贈ったもの。シナトラはこの曲のヒットにより歌手として復帰を果たしたのだった。張&張組が昨シーズンにくらべやや精彩を欠いている現状では彼らはグランプリファイナルの優勝候補であり、このままいけば世界選手権でも覇者となる可能性は十分にある。あるいはひょっとして彼らもシナトラのように競技を続ける方向に気持ちが傾いていくこともあるかも知れない、そんなことを考えさせられるプログラムだった。


今大会の放送で多くの方が五十嵐文男さんが解説をされていないのを残念がっておられたけど、何と今年から競技本部長を務めておられたとのこと。より高い見地から大会運営を監督する立場に立たれたようで、これは五十嵐さんのために喜んで差し上げるべきことなのだろう。

五十嵐さんの解説はファンが専門家から何を聞きたいと思っているかを熟知した上で演技の合間に簡潔にコメントを挟み、決して鑑賞の妨げにならないよう気を配った、実に優れたものだった。選手に注ぐ眼差しも温かく、特にトリノオリンピックのエキシビションでスルツカヤさんを称えた言葉などは素晴らしかった。今後はあの解説を聞くことができないのは残念だけど、また違った立場からフィギュアスケートの発展に尽力して下さるのだと思う。(ただ実を言うと以前私が衣裳のセンスがどうしても好きになれない複数の選手について「この選手はいつも衣裳がいいですね」とコメントされているのを聞いて以来、審美的なセンスについてはあまり真に受けない方がいいのかな、と思いながら聞いていたのも事実なのだけど。)


放送についてはさすがにNHKは落ち着いて見られた。中でも実況の森中アナウンサーは素晴らしかったと思う。民放のアナウンサーはぜひあれを手本にして鑑賞の妨げにならない実況のあり方を研究して欲しい。というよりできることなら森中さんにTV朝日のアナウンス室まで出向いてレクチャーしていただきたいくらいだ。

その森中アナウンサー、印象的だったのはキム・チェファさんの演技の時、カメラが濱田美栄さんの姿をとらえる度に間髪を入れず「濱田コーチが…」と言及していたこと。きっと彼も田村岳斗さんや私と同じくあの方の美貌に心を奪われてしまった一人なのに違いない。


ほとんどのフィギュアスケートファンがそうだと思うけど、私も日本選手だけでなく外国選手にも熱い共感をこめて声援を贈ってきた一人。だからもしコストナーさんやゲデヴァニシヴィリさん、ランビエール選手などが出場し会心の演技をして表彰台の一角にくいこんだとしても、それはそれで心から祝福していたと思う。それでもやはり男女シングルで日本選手が表彰台を独占したのは感慨深い出来事だった。八木沼さんがジャンプで転ぶ度に心を傷めながら応援していた頃はこんな時が来るとは夢にも思わなかった。多くの方の長年の努力の結晶がこうした形で報われたのだと思う。国際大会としては外国からの参加選手の顔ぶれがやや寂しくなってしまったことの帰結とはいえ、たまにはこんなこともあっていいのではないかと思う。


最後に少し気になっていることを一つ。今回高橋大輔選手はSP、フリーともにストレートラインステップでレベル4を認定されていて、“世界一のステップ”の称号が伊達ではないことを証明してみせた。ところでまだほかのサイトで話題になっていないようなのだけど、実はカナダのパトリック・チャン選手もSPのサーキュラーステップでレベル4をもらっている。ステップでのレベル4認定はこれまでプルシェンコと高橋選手しかもらったことがないと聞いていたけど、彼が3人目の選手ということになるのだろうか。チャン選手のSPは地上波でもBSでも放送がなかったのだけど、どんなものだったのかぜひ見てみたかった。

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京都新聞 太田由希奈さん記事

2006年12月 8日

京都新聞に太田由希奈さんの記事が掲載された。(まりりんさんに教えていただきました。ありがとうございます。)

すでに伝えられてきたことではあるが、競技を辞めてしまおうという思いはかなり深刻なものだったようだ。気持ちを切らさずに復帰を決意してくれたことをファンとしてうれしく思う。今季は東京を拠点に活動するという。これまで京都出身の由希奈さんには何となく距離感を感じてしまうことが多かったのだけど、少し身近に感じることができそうだ。たまに自分の演技をビデオで見て『捨てたもんじゃない』ってと語ったそうだけど、あなたの演技を心待ちにしているファンがたくさんいるということをわかって欲しい、そう思わずにいられなかった。

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トラックバック・ピープルにフィギュアスケートの話題を作成

2006年12月 8日

BlogPoepleの提供するサービス「トラックバック・ピープル」にフィギュアスケート全般の話題がなかったので作成してみました。よかったらご利用下さい。

フィギュアスケートについての記事を書いたら http://member.blogpeople.net/tback/07664 のアドレスにトラックバックを送信して下さい(会員でなくても利用できると思います)。会員の方はこの話題のリンクリストを作成することができます。みなさんのお役に立てれば幸いです。

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「impressions」

2006年12月 6日

作曲:山梨鐐平 編曲:田代修二
シングル「Shining eyes」(1996.07.21)所収。現行のCDでは「I LOVE YOU」MJCD-20054(2006.03.29)に収録されている。

本田美奈子さんはマーキュリー・ミュージックエンタテインメントから「JUNCTION」と「晴れ ときどき くもり」のアルバム2枚をリリースした後、バンダイ・ミュージックエンタテインメント、マーベラスエンターテイメントと所属レコード会社を移っている。この二社(バンダイからはシングル「Shining eyes」一枚をリリースしたのみだが)には合わせて七年間在籍し、その間にリリースされた音源は全て今年3月に発売されたアルバム「I LOVE YOU」に収められている。

この七年間は美奈子さんにとって多くのミュージカルに出演し高い評価を得ていた時期で、歌手として充実した日々を過ごしていたとみていいだろう。しかしこの間にリリースされた音源がわずかにアルバム一枚分しかないというのは、ミュージカル女優としての活躍に比してレコーディングアーティストとしては極めて苦しい状況に立たされていた証拠ともいえる。デビュー15周年を記念して発売されたのが(アルバムではなく)マキシシングル(3曲収録の「Honey」)でしかなかったのはその象徴である。

中身を見てみても、アニメとゲームの挿入歌がその多くを占めている。アニメソングは子供好きだった美奈子さんにとって相応しい仕事だったと見ることができるが、ゲーム関連の歌となると、本田美奈子ともあろう人がなぜこのようなことに手を染めなければならなかったのか、と少し腹立たしい気分にもなる。この時期にもっと理解あるレコード制作者に恵まれていれば多くの名曲が生み出されていたはずだと思うと悔やまれてならない。

ミュージカルというのはもちろんこのジャンル固有のファンも多いけれど、一般の音楽ファンからすると死角に入ってしまいがちな領域である。私自身、美奈子さんの動静はずっと気になっていたにもかかわらず「AVE MARIA」の発売まで満足な情報も得られずにいたのはそのためでもある。美奈子さんの歌手としての力量が生前十分に認知されなかった原因の一つはこの時期のレコーディングの不作にあるとみて間違いないだろう。「AVE MARIA」の制作スタッフとの顔合せの席で美奈子さんが「私はこのアルバムに命を懸けています」と語ったと伝えられているが、こうした事情を勘案すればその思いの切実さが少し理解できる気がする。


そんな環境にある中で完成にこぎつけていた未発表の音源を集めたアルバム「優しい世界」が今日発売になった。初回限定版に付属のプライヴェート映像を収録したDVDでBGMとして流れているのが1996年7月21日にバンダイからリリースされた「impressions」である。

シングル「Shining eyes」のカップリングとして収録されたこの曲は、実際にはマーキュリー在籍時に牧田和男さんのプロデュースにより制作されていた音源である。それだけに「I LOVE YOU」収録の楽曲の中では一際異彩を放つ作品である。歌詞がなく母音のみで「uuu...」と歌われているが、ポップスの世界では“ヴォカリーズ”という用語が一般的でないようで、「I LOVE YOU」のライナーノートには「スキャット:本田美奈子」と記載されている。

私がとりわけこの曲に心惹かれ注目するのは、後のソプラノアルバムにおけるラフマニノフの「ヴォカリーズ」や「パッヘルベルのカノン」を予感させるものとなっているからである。歌詞がなくヴォカリーズによって歌われていることに加えて、大まかにいえば曲調の上で「ヴォカリーズ」を連想させ、構成には「カノン」と共通するものがあるのだ。


この曲は愁いを帯びた情緒たっぷりの旋律が二度繰り返された後、やや活気のあるリズムで切迫した盛り上がりを形成し、ギターを中心とした間奏を挟んでもう一度最初の主題が歌われる、という構成になっている。

曲調は終始一貫して深い憂愁を帯びたロマンティックなもので、どことなく「ヴォカリーズ」や「ソルヴェイグの歌」を思わせる。美奈子さんの歌というと一般的には「つばさ」や「ジュピター」など力強さを感じさせるものに人気があるようだけど、私自身はむしろこうした聴いていてしみじみと泣けてくるような曲調のものに一番の親しみを覚える。この「impressions」も特にお気に入りの一曲である。

作曲の山梨鐐平さんからはすでにアルバム「晴れ ときどき くもり」で「私たちのTreasure」と「June」の2曲の提供を受けており、互いに気心の知れた間柄だったのだろう。牧田和男さんの証言によると「June」の収録の際は泣きながら歌っていたそうで、この「impressions」でも曲の世界に自ら深く没入したロマンティックな歌唱を聴かせてくれている。


そして特筆すべきなのは冒頭の主題を二度目に繰り返すところからマルチトラックの手法により美奈子さん自身の声による対位旋律が加わることである。これはアカペラで自身の声だけによって最も手のこんだポリフォニーの形式であるカノンを実現した「パッヘルベルのカノン」の前触れをなすものとも見ることもできる。曲調は「カノン」とは大きく異なるが、盛り上がりの部分のリズムには「カノン」を彷彿とさせるものがある。

「impressions」は「カノン」ほど精緻な構造ではなく、比較的シンプルな2声の対位法ではあるが、比類のない効果で聴く人を魅了する。均整のとれた構築美を本質とする「カノン」では濃密な表情付けを避けたやや淡泊な歌い回しをしているが、ここではロマンティックな曲調に合わせて情緒たっぷりの歌を聴かせている。二つの声部それぞれが情感をこめて自己主張をしながら、それが一つに溶け合って絶妙なハーモニーを形成する様は圧巻である。評論家の宇野功芳氏がマタチッチによるブルックナーの交響曲第7番の演奏について「対旋律のすみずみまでカンタービレが効いている」と評しているのだけど、そんな言葉を思い出したくなる、見事な歌唱である。


シングルのカップリング曲(昔風にいうと“B面”)というのは歌手にとってはセールスプロモーション的な制約からは比較的自由に、自分のやりたいことに思い切って挑戦できる貴重な場なのだと思う。「この歌をfor you」がまさにそうだったが、この「impressions」も美奈子さんの創意がダイレクトに伝わってくる意欲作になっている。美奈子さんの歌心に酔いしれながら創造性にうならされる、そんな贅沢な時間を与えてくれる名品である。

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NHK杯2006 男子シングル フリー

2006年12月 3日

まさかとは思ったが本当にやってくれた。女子に続き男子シングルでも日本勢の表彰台独占。日本男子も世界のトップと互格に戦える力があることをまざまざと見せつけてくれた、そんな大会になった。織田・高橋両選手が1位と2位を占めることは確実な情勢だったけれど、シニア1年目の小塚選手が3位に入ったのは大健闘。リー選手の不調に助けられた面もあったとはいえ素晴らしい快挙だった。今後の飛躍に向けて大きな自信を手にしたのではないだろうか。


諸般の事情でリアルタイムでは観戦できずBShiの生中継を録画したものを見たのだけど、手違いで織田選手のところからしか録画できていなかった。というわけで感想もダイジェストになってしまうけど、肝腎な部分を録り損ねなくて本当によかった。


織田信成選手:チャイコフスキー 交響曲第4番

2度のトリプルアクセルのほか全ての要素をミスなく演じた会心の演技。GEOの減点が一つもないのが素晴らしさを物語っている。強いて言えば2度目のルッツの後はトリプルの予定だったのではないかと思う。特にスピンのスピードは際立っていたように思う。

これだけ完璧な演技をしながら高橋選手に及ばなかった理由を考えると、やはり4回転ジャンプを欠いていたことと、SPに比べるとやや曲に乗り切れていない印象があった点が挙げられるだろうか。もちろん十分に音楽を表現できてはいたけれど、彼自身のSPや高橋選手のフリーがはまり過ぎといえるくらい素晴らしかっただけにやや見劣りしてしまう面もあったかも知れない。


アレクサンドル・ウスペンスキー選手

トリプルアクセルはステップアウトしてしまい次のトリプルトウループはジャンプシークェンスの扱いに。全体にややスピードや躍動感に乏しい感じがした。独特の雰囲気を持った選手なのでロシアの次代を担うエースへと成長していって欲しい。


小塚崇彦選手:ショパン ピアノ協奏曲第2番

冒頭トリプルアクセルはクリーンに決める。問題のフリップからのコンビネーションは二つ目のトウループの着氷でオーヴァーターンしてしまったものの予定通りトリプルを成功させた。フランス大会以来着実に進歩しているのが見てとれる。ほかにループの着氷が乱れるミスはあったものの、持ち味のやわらかくのびやかなスケーティングで魅了してくれた。中間のスローパートでの情感の出し方も非常にうまい。何も技をしていない部分で拍手をもらえる演技力は若いのに大したものだと思う。グランプリシリーズ初の表彰台は立派な快挙で、今後の活躍が一層楽しみになる。


李成江選手

4回転トウループ–ダブルトウループのコンビネーションは見事に成功。次のアクセルはシングルに。この後トリプルアクセルを2度跳んでいるのは予定を変更したのだろうか。中国大会を喘息のため欠場しコンディションは万全でないようで、最後はかなり苦しそうだった。シングルフリップはほとんどステップの延長のような気の抜けたジャンプになってしまっていた。それでも4回転ジャンプを常に試合で跳ぶだけの技術を維持しているのは立派なことだと思う。


高橋大輔選手:オペラ座の怪人

昨日のSPのジャンプがどれも非常に軽い感触で余裕を持って決めていたので調子はよさそうだと思っていた。期待通り4回転のトウループに成功。その後も予定していた技を次々と成功させていった。強いて言えば2度目のトリプルアクセルの着氷がやや不安定で、おそらくトリプルを予定していたコンビネーションがダブルトウループになってしまったのが目に見えるミスだろうか。

一番のポイントだった後半のジャンプも今回は正確に決めてきた。キャンベルカップとスケートカナダで跳ぶ前に転倒してしまったループも着氷がやや乱れたものの無事成功。これまで2度はこのあたりでミスを連発してしまったためにプログラム自体の印象が薄くなってしまっていたのだけど、これだけ技が的確に決まると実は素晴らしく中身の濃い完成度の高いプログラムなのではないかと思えてきた。

ジャンプを後半に集中して跳んだことでスタミナはかなり消耗したようで、最後はややバテ気味だった。そのためかストレートラインステップは素人目にはいつもよりエッジが浅かったような気がしたのだけどジャッジからはレベル4の認定をもらっている。サーキュラーステップも含めてほとんどのジャッジが加点しており、「世界一のステップ」の呼称が伊達ではないことを証明する演技だった。

ストレートラインステップの前にためを作って呼吸を整えるのは演出の面から見てもメリハリがきいていい工夫だと思う。ただPCSでTRだけほかの項目よりやや低く抑えられているのはここがマイナス評価になっているのかも知れない。

解説の本田さんがすぐに指摘し、本人も語っていたように全体にスピンのスピードがなかったのが物足りない点ではある、しかしまだ改善の余地があるのにこれだけの高い点数を叩き出したというのが素晴らしいことだと思う。

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NHK杯2006 女子シングル フリー

2006年12月 2日

有力選手の欠場が相次ぎ予想されたこととはいえ、本当に日本の3選手が表彰台を独占するという結果になった。素晴らしい快挙を心から祝福したい。このことに一番プレッシャーを感じていたのは中野友加里さんのようで、連覇については全く意識しなかったが自分が3位に入り損なって表彰台独占を逃したらどうしよう、と思っていたとのこと。無事実現できてさぞほっとしていることだろう。


キム・チェファさん:プロコフィエフの音楽より

SPはミスなく乗り切ったがフリーではジャンプでミスを連発し冴えない演技。美しい濱田コーチも表情が曇ってしまっていた。音楽は多分ピアノ協奏曲第3番を中心につなぎ合わせたものだと思うが、ピアノが刻む細かいリズムに動きを合わせることが全くできていなかった。今の彼女の力からすると難し過ぎる選曲ではなかったかと思う。


レスリー・ホーカーさん

ピアノが奏でる情感溢れる音楽とホーカーさんの笑顔が印象に残るプログラム。新婚さんの幸福感が表情に表れているように感じた。ミスの多い演技ながらほかの選手にもミスが相次いだためフリーでは6位に入った。苦労しながらも競技を続けて来た努力が報われたといえるかも知れない。


トゥグバ・カラデミルさん

SPに比べると振り付けに個性が感じられるプログラムだった。こうしたセンスは少し男子のエマニュエル・サンデュに似ているかな、と思った。


ジェンナ・マッコーケルさん:フリーダ

シングルアクセルやダブルフリップで拍手が起きる痛々しい演技。それでもSPより個性が感じられるプログラムなのがよかったと思う。こうした味わいの方が彼女に合っているようで楽しそうに滑っていたような気がする。


クリスティーヌ・ズコフスキさん:アラビアのロレンス

今まであまり気にならなかったのだけど最初に跳んだループと2度目のサルコウがかなり巻き足になっているように見えた。本来はもっとジャンプに安定感のある選手なのだと思うけどミスが多かったのが残念。表現も少しもアラビア風のテイストが感じられなかった。彼女にはあまり似合わない音楽だったのではないだろうか。


村主章枝さん

ジューリンによる振り付けでユーモラスな動きも多く取り入れた、SPとは違った味わいのプログラム。"女優"と称される村主さんには相応しいプログラムともいえそうだが"シンデレラ"には見えなかった。私の好みとしてはSPの方がよかったと思う。それでもルッツとフリップを2度ずつ決めるなど村主さんらしい高度な演技だった。

最後のジャンプ、サルコウがシングルになってしまったのが唯一のミスだった。6分間練習でサルコウを決めていたのでやはり今回は入れてくるのだと思い注目して見ていたがスタミナを消耗したところで決めるのは難しかったようだ。いわゆる"大プロジェクト"はジャンプの面では不発に終わったが、いつも新たな課題に挑戦を続ける姿勢は立派だと思う。


ベアトリサ・リャンさん

ルッツで転倒してしまったのを皮切りにジャンプが壊滅的になってしまった。彼女も本来はもっとジャンプの力がある選手なのだと思う。ジャンプが安定すれば独特の力強いスケーティングが映えるようになると思う。


中野友加里さん:プロコフィエフ シンデレラ

冒頭トリプルを狙ったアクセルはすっぽ抜けてハーフアクセル、ループはシングルに。フリップも少し怪しい感じがしたがダウングレードには至らなかった。中国大会よりはずっとのびのびと滑れている感じがした。表情もやわらかく、インタビューの受け答えも笑みを浮かべながら落ち着いて話していた。まだ暫定2位の段階で「少し休んで全日本に備えたい」と話していたのがおかしかった。


アリーナ・マルティノワさん:ミンクス ドン・キホーテ

ジャンプでミスを連発。ほとんどのジャンプで高さと回転が足りていなかったように思う。大柄な選手で動きの機敏さにはやや問題があるようなので、こうした細かいリズムを正確に刻むバレエ音楽は滑りづらいのではないかと思う。音楽に追い立てられるように演技していたのが印象に残った。もう少し彼女の長い手足をいかしやすいようなプログラムで滑らせて上げたいと思う。


浅田真央ちゃん:チャルダーシュ

問題のステップからのトリプルアクセルは着氷後ステップアウトしてしまったが回転は足りていたので一応成功。ただし狙っていた加点は得られず減点されてしまった。サーキュラーステップでバランスを崩し歩いてしまった部分があったほか、2度目のルッツはやや着氷が危ない感じだった。それでも後ろにダブルトウループとダブルループをつけてしまうあたりは真央ちゃんらしいところ。全体には極めて高度な内容の演技で高得点をマーク。トータル199.52点というのはスルツカヤさんを抜いて歴代1位の記録だという。

欲をいえばサーキュラーステップはちょうど音楽が加速していく部分なのだけど正確に動きをリズムにあわせようという意識が見られないのが惜しいところ。こうした点が改善されたらそれこそ恐いものなしになるだろう。インタビューでは今後伸ばしていきたい点についてきかれると「スピンとかステップとか表現とか」といった答え。やはりまだ技術的な点への意識が強いようだ。ファイナルについては「今日のような…」と言いかけて「今日よりも…」と言い直していたのが印象的。こういうところが真央ちゃんの素晴らしさだと思う。連覇には「ちょっとは自信があります」とのこと。おそるべき16才だ。


ファン・ダンさん

エンニオ・モリコーネのロマンティックな音楽に乗せての優雅な演技。トウループの着氷でのお手つきなどはあったがミスは最小限で満足そうな表情だった。衣装もスカートが短いのが気になったが品のいい色合いでよかったと思う。

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NHK杯2006 男子シングル SP

2006年12月 2日

女子に続き日本選手が高いレベルで競り合う見応えのある展開になった。早くも明日のフリーが楽しみ。


高橋大輔選手:チャイコフスキー ヴァイオリン協奏曲

フリップからのコンビネーションをはじめ全てのジャンプを軽々と成功させる。トリプルアクセルも十分余裕を持って着氷していた。ステップの素晴らしさは相変わらず。ノーミスの演技でパーソナルベストをマークした。彼にはこういうドラマティックな曲がよく似合う。4回転ジャンプのないプログラムとしては最高峰に属する内容だったと思う。

明日はやや苦手としている感のあるフリー。挑戦すると言明している4回転ジャンプが成功するか、後半に集中するジャンプをミスなく乗り切ることができるかがポイントになりそう。ループには十分気をつけて欲しい。


アレクサンドル・ウスペンスキー選手:サラバンド

3つのジャンプほか全ての要素をミスなくこなす。欲をいえばもう少しスピードがあるとなおよかったと思う。長身で雰囲気のある選手で今後の活躍が期待される。


ケヴィン・ファン・デル・ペレン選手:アルビノーニのアダージョ

同じく3つのジャンプを含めてノーミスの演技。スピンではスピードが落ちてしまう部分も見られた。


李成江選手

4回転トウループに成功。本田さんらと競い合ってこのジャンプを成功させてきたベテラン選手の意地を感じた。表現もかつてほど稚拙な感じはなく、年を重ねても進歩を続けているところが素晴らしいと思う。


織田信成選手:Fly me to the moon

トリプルアクセルは空中で少し軸がゆがんだがひざと足首のやわらかさをいかして危なげなく着氷。ストレートラインステップでは最後の新体操でいう"もぐり回転"のような動作でバランスを崩してしまった。しかしミスは最小限でパーソナルベストを更新。わずかの差で高橋選手に次いで2位につけた。

刈屋アナウンサーによると彼はこの曲を最初に聴いた時にはおじさんくさくて自分に似合うかな、と思ったが今ではすっかり曲にはまってしまっているとのこと。その言葉通り曲に入り込んでのびのびと演技できているのが素晴らしい。フリーでの安定感では高橋選手を上回るものがあるので逆転優勝のチャンスも十分にありそうだ。


小塚崇彦選手

トリプルアクセルはやや着氷に難があった感じだがやはり下半身のやわらかさをいかして無事に乗り切った。フランス大会では転倒してしまったフリップは着氷に流れがなく次のトウループはトリプルの予定がダブルになる。それでも本人はフランスでの失敗を繰り返さなかったことで十分満足そうな様子。チェンジャン選手との差はわずかで女子に続き男子も表彰台独占の可能性もあるが、あまりそういうことは意識せずのびのびと演技して自分の持てる力を出し切って欲しい。

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NHK杯2006 ペア フリー

2006年12月 2日

ペアについても少しだけ。

申&趙組は「タイスの瞑想曲」に乗せての情感溢れる演技。中国大会の時は不注意で見逃してしまったので今回見られてうれしかった。最後は曲にかなり遅れてフィニッシュしていたのでディダクション2点はそのせいだろうか。特に音楽とのシンクロが破綻してしまったわけでもないようなのにあれほど遅れた理由はよくわからない。息の長いペアだけど最初の頃はこうした優美な曲を滑りこなせるような選手達では決してなかった。本当に格段の進歩を遂げたペアだと思う。今回が最後のNHK杯になるようだけど有終の美を飾ることができてよかった。おめでとうと(まだ世界選手権その他が残っているけど)お疲れ様をいって上げたい。

張&張組は一つ一つの技は豪快に決めて見せたけどやはり申&趙組の後では情感に欠ける印象が残るのは否めない。マルクー&バンタン組もまだ技をこなすのに精一杯という感じ。ただ雰囲気のあるペアなのでこれからが楽しみ。若松さんは和風美人であの衣装はよく似合っているけどはまり過ぎて旅館の仲居さんみたいに見えてしまうかも知れないと思った。

追記:12月2日

Sports@niftyの青嶋さんの素敵な記事を読んで下らないことを書いてしまったのを反省。お口直しにそちらをご覧下さい。

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NHK杯2006 女子シングル SP

2006年12月 1日

BShiと地上波で観戦(ただし受像機は通常のTV)。やはりNHKの放送は落ち着いて見ていられる。ただ地上波では民放の真似をして日本の3選手の演技の前に紹介VTRを流していたのが気になった。


キム・チェファさん:ラ・クンパルシータ

3回転ジャンプはトウループとサルコウ、と難度は低めながら丁寧なスケーティングが印象に残る演技。傍らで微笑む濱田コーチが相変わらず美しい。彼女をフレームアウトさせたカメラマンに石をぶつけたくなる。


レスリー・ホーカーさん

長年の恋人と結婚したそうで笑顔が印象的な選手。中間のスローパートの音楽は「レ・ミゼラブル」のファンティーヌが歌うメロディーだと思う。この役を歌う予定でいた本田美奈子さんのことを思い出してほろりとさせられた。


トゥグバ・カラデミルさん

フリップの着氷に失敗しコンビネーションにできず。しかし次のサルコウの後にダブルトウループをつける機転はなかなかのもの。丁寧な滑りが印象に残ったがもう少し動きに切れがあるとなおよかったと思う。おそらく母国ではこの競技のパイオニア的存在なのだと思われる。さらに成長してトルコ女性の美しさを世界にアピールして欲しい。


浅田真央ちゃん:ショパン ノクターン 第2番

めずらしくステップからのルッツで着氷が不安定。カメラの角度からはわかりづらかったのだけど空中で軸が斜めになっていたらしい。本人曰くこれで緊張が解けたとのことで、その後はいつもののびのびとした真央ちゃんの演技を披露してくれた。本来は4分を超えるの曲の後半部分だけを使用しているのでドラマティックな抑揚には乏しいが、見た後にじわりと感動が胸にしみてくるプログラムに仕上ったと思う。TESが40点を越えたというのは過去にあっただろうか。驚異的な点数でSP首位のスタートを切った。


ファン・ダンさん:ニーノ・ロータ ロミオとジュリエット

のびやかで丁寧に滑っていていい演技だったと思う。衣装がもっと品のいい色合いならなおよかった。音楽はTVの字幕でもISUのバイオグラフィーでもチャイコフスキー作となっているけどこれはニーノ・ロータの誤り。


村主章枝さん:ラヴェル ボレロ

スケートカナダの時はあまりボレロらしくは見えなかったけど今回は素晴らしいボレロに仕上っていたと思う。細身のシングルスケーターでもこの曲を踊りこなせるということを証明できた、そんな印象を受けた。特にプログラムの最後、高速のアップライトスピンからストレートラインステップにかけての盛り上がりはこの曲ならではの醍醐味を味わわせてくれた。ステップは両手足で巧みに音符を拾っており、技術的な難度の面ではどうかわからないが曲調の表現という点では最高のものだったと思う。

解説の佐藤有香さんも仰った通り真央ちゃんに決して引けをとらない内容だったと思うが、点数で及ばなかったのはスポーツなので仕方のないところ。村主さんはいつもPCSのTR(技のつなぎ)が低く抑えられているけど、やはり動きの少ないルッツの助走が原因なのだろうか。明日のフリーではジャンプの構成をどう変えてくるのかも注目される。


中野友加里さん:SAYURI

めずらしくコンビネーションスピンでバランスを崩す。本人にも原因がよくわからないようだ。全体としては中国大会の時よりもずっとのびのびと滑れていたし、表情もやわらかかった。あのミスはどこか調子が悪かったわけではなく、むしろ調子がよすぎて魔がさしてしまったのではないかと思う。明日はトリプルアクセルに挑戦してくるかも注目される。


ジェンナ・マッコーケルさん

イギリスの選手の演技を見るというのは非常にめずらしいと思う。動きに少し優美さが欠けていたという印象を受けた。地上波ではカットされていた?


ベアトリサ・リャンさん

ルッツの着氷は非常に危なかったが何とかこらえダブルトウループもつけた。しかしフリップでは転倒してしまう。全体には力強さを感じさせる演技だったと思う。


クリスティーヌ・ズコフスキさん

3回転–3回転を予定したコンビネーションジャンプは初めのトウループの着氷が乱れ二つ目のトウループがダブルに。全体に一つ一つの技を丁寧にこなそうとしているのは伝わってくるが、同世代の高い技術を持った選手達と競い合っていくには何か印象に残る技が必要になってくるのではないか、と思った。


アリーナ・マルティノワさん

長い足をまっすぐに高く掲げたスパイラルは迫力満点。ただ全体にはやや長い手足を持て余し気味の演技に見えた。恵まれた体型であることは間違いないのでそれをいかせるように成長していって欲しい。次代のロシアのエースとしての活躍が期待される。トリノオリンピックにヴォルティコワさんの代替でこの人を派遣できなかったのはやはり年齢制限の問題だったのだろうか?


日本の3選手が上位を占める予想通りの展開だが3人ともそれぞれ個性的な演技を披露してくれてうれしかった。この中の誰かがファイナルに進めなくなるのは残念。明日はみな悔いのない演技ができるよう祈りたい。

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