世界選手権2009 女子シングル フリー

2009年3月30日

アリッサ・シズニーさん

今日はいい方のシズニーさん。ジャンプがそれなりに決まれば持ち前の美しさが引き立ってくる。しかしSPと揃わなかったのが残念なところで、アメリカは3枠を得ることができなかった。それを思うと下位二人の順位の合計でも3枠を確保できてしまっている日本女子の実力ってすごい。


村主章枝さん

サルコウの失敗はある程度織り込み済みだとしても得意のフリップの二つ目が乱れてコンビネーションにできなかったのはもったいなかった。でも総合で8位はさすがに実力者だな、と思わせられる。


サラ・マイヤーさん

今シーズン怪我のためにほとんど試合に出られなかったマイヤーさんだが、根性で仕上げてきたといった風情の演技で存在感を見せつけた。新しいプログラムのピアノ協奏曲「黄河」は一度だけ見たけど細身の体が壮大な音楽に負けてしまっている感じがしたので、昨シーズンのプログラムに戻したのは正解だったと思う。


アリョーナ・レオノワさん

グランプリ・シリーズではうまくいかなくて悲しそうな表情を浮かべているところの方が印象的だったのだけど、ジュニアの世界選手権のフリーの演技終了後には飛び跳ねて喜んで見せて本来はとても陽気なお嬢さんだということが判明したレオノワさん。この大会でもSP、フリーともに素晴らしい笑顔を見せてくれた。あの笑顔の愛くるしさにはどことなくエレーナ・ソコロワさんを彷彿とさせるものがある。このところ低迷が続くロシア女子だけど、これからもぜひあの笑顔で活躍を続けて欲しい。


浅田真央ちゃん

最初のトリプルアクセル–ダブルループのコンビネーションは見事に決まったものの二つ目のトリプルアクセルは回転不足で転倒。ルッツを回避してトウループに代えたのは妥当な判断だけど、サルコウをループに代えて二つ目のフリップの後のループをダブルにしたのは真央ちゃんにしては消極的な選択なので、あるいはどこかが本調子ではなかったのかも知れない。四大陸選手権の時に一部で報じられた右膝の故障というのは真央ちゃん自身が否定したそうだけど、これまで有言実行を旨としてきた真央ちゃんが今回はあまり連覇という言葉を口にしなかったのには何か理由があったのではないか。今日のジャンプの構成を見てそんな風に感じた。


ジョアニー・ロシェットさん

ループがダブルになるミスはあったものの後半の二つのジャンプ・シークェンスをクリーンに決めて見せた。私が見たことのある限りではあれが二つとも成功したのは今回が初めてだと思う。特にトウループ–サルコウはシークエンスとはいっても降りた右足を左足に踏み替えてすぐにサルコウを跳んでいるので非常に難しい技だと思う。彼女が世界選手権初の表彰台というのはちょっと意外だけどそういわれると確かにそうだった。今シーズンはヨーロッパ勢が総崩れで、アメリカ選手も振るわない中、アジア勢の間に割って入っての銀メダルば実に見事だったと思う。


安藤美姫さん

こちらも真央ちゃんと同じくルッツの後のループをダブルにする安全策。事前に足のトラブルがあったようなのでそれに即しての対応だったのだと思う。しかしほかはダブルアクセル–トリプルトウループのコンビネーションを含め予定したジャンプを全て成功させ(ただしループはダウングレード)、総合で3位、フリーだけなら2位という素晴らしい成績となった。これで途中棄権した昨シーズンの悔しさを晴らすことができて、さぞうれしいことだと思う。あらためて安藤さんの存在感をアピールした試合となった。

ちょっと意外なのはこれまでスケーティング技術をそれほど高く評価されてきたわけではない安藤さんやロシェットさんがPCSのいくつかの部門で8点台をもらっていること。SPではヨナさんのPCSの高さに驚かされたのだけど、フリーでは真央ちゃんも含めて8点台がいくつも出ているということは、女子シングルのPCSの算定基準が変わってきているということなのだろうか。

なお、安藤さんにしても真央ちゃんにしてもいえることだけど、今シーズンを通じて見て感じたのはこれまでこの二人が得意にしてきたトリプル–トリプルのコンビネーション・ジャンプが武器として通用しなくなってしまっているということ。今シーズンは回転不足の基準が厳しいということもあるようだけど、彼女たちの技の精度自体もやや劣化しているというようなことがもしあるのだとすると、これは何か対策を考えないといけないような気がする。


キム・ヨナさん

後半にサルコウがダブルになるミスはあったものの、心配されたスタミナ切れによる大きな崩れには至らなかった。苦手のループを回避してイナバウアーからのダブルアクセルに変更したのは当然の判断だろう。SPでの圧倒的なリードをさらに広げての圧巻の優勝だった。

200点を大きく越える歴代最高得点には驚くばかりだけど、ジャッジ・スコアを見ると最初のフリップは‘!’マーク、それから私には理由がよくわからないのだけど最後の足替えのコンビネーション・スピンが規定違反ということでノーカウントになっている。そのせいもあって技術点はそれほど無茶苦茶に高いわけではないので、この快挙にはPCSの基準がこれまでと変わったらしいことが大きく作用したものと思われる。おそらく真央ちゃんもクリーンな演技ができていればこれくらいのPCSはもらえていたはずなので、今後の女子シングルはより一層高い得点で争われることになるのかも知れない。


カロリーナ・コストナーさん

SPに続きとにかく衣装が素敵。白地に金の模様が入ったシックでゴージャスなデザインに彼女のブロンドの髪が美しく映えていた。これまでのショッキング・ピンクの衣装はドヴォルザークの室内楽には合わないんじゃないかとずっと思っていたので、この変更は私にはうれしかった。

しかし肝腎の演技はというと最初のルッツがお手つき、ダブルアクセルの後のトウループはダウングレード、ほかはトリプルジャンプが一つも入らないという惨澹たる内容。私は今シーズンの彼女の演技は女性らしいやわらかな雰囲気が出てきてとてもよくなったと思っているのだけど、それと反比例するようにジャンプの質が悪くなってしまっている。フィギュアスケートって本当に難しい競技だな、と思う。

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世界選手権2009 女子シングル SP

2009年3月29日

地上波放送を見ての感想をダイジェストで。


安藤美姫さん

ルッツからのコンビネーションは今シーズンの厳しい基準からすると回転が足りないかな、と思ったらやはりダウングレードされたらしい。それでもほかは充実した演技でシーズン・ベストをマーク。特に目を引いたのはステップで、安藤さんのステップというとこれまで両腕を大きく使ってダイナミックさを強調するようなものだったという印象があるのだけど、今日の演技ではエッジを丁寧に深く使おうとする意識が強く感じられた。

今月に入って足を痛めたという情報もあり、フリーでは4回転は封印することを決めているらしいが、今日のインタビューではトリプル–トリプルを回避することも視野に入れているようだった。ただSPを見た感じではジャンプの難易度は多少下げてもそれなりの結果は出してくれそうな気がする。


浅田真央ちゃん

6分間練習でルッツの踏み切りを何度も確認している様子が映し出されたが、どうもうまくいっていないようだったので心配して見ていたらやはりルッツがダブルになってしまった。インサイド踏み切りにならないよう意識するあまり思い切って跳べていないように見えた。それでもルッツ–ループは今シーズン初めて回転をしっかり認定されたようなのでそれは収穫になったと思う。ヨナさんに大きく離されてしまったので連覇はかなり厳しくはなったけど、真央ちゃんのことなのでまだ何が起こるかはわからない。


カロリーナ・コストナーさん

いつものことながら衣装のセンスが素晴らしいな、と思う。フリップはお手つき、ルッツは両足着氷と細かいミスはあったけど今シーズンの彼女としてはいい方の部類というところか。安藤さんやジョアニー・ロシェットさんとのメダル争いに割って入れるかどうか注目される。


キム・ヨナさん

フリップからのトウループで着氷後の流れがヨナさんにしてはやや悪かったような気がしたが、スローで見ると回転は文句なく足りていたようだった。それにしてもすごい得点で、ことにSSの8.45という点数はどうかしているんじゃないか、という気もするが、それだけ今のヨナさんのスケーティング技術が抜きん出ているということなのだろう。ロシェットさんと8点以上、真央ちゃんとは10点以上という大差をつけてトップに立ち、念願の初優勝が現実味を帯びてきた。これまではフリーの後半にややスタミナ切れを起こすことが多かったので、最後まで気を抜かずに充実した演技を続けることができるかどうかがポイントになりそうだ。


エレーネ・ゲデヴァニシヴィリさん

世界ジュニア選手権が本当に久々にいい内容で安心させてくれたエレーネさんだが、今回もいい演技でいよいよ本格的に復活しそうな気配を見せてくれた。フリップを回避してトウループを採り入れた無理のない構成が好結果をもたらしたといえるかも知れない。体型がちょっと絞り切れていな感じではあるけど、それでもルッツを跳べているというのは今の状態が彼女にとっての適正な体重ということなのだろうか。

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世界選手権2009 男子シングルフリー

2009年3月27日

地上波放送を見ての感想をごく簡単に。


織田信成選手

最初の4回転トウループ–トリプルトウループのコンビネーション・ジャンプを見事に成功。しかしその後2回目のトリプルアクセルが単独になって、またザヤックをやらかさないかと心配して見ていたらやはり予想通りに4つ目のコンビネーションを跳んでしまった。これをやってしまうと4回転の成功が帳消しになってしまうというのに…。しかし本人はとにかく4回転が成功したことに満足している様子だった。

ついこの間イチロー選手が犠牲バントを試みていたシーンを見たばかりなので、日本チーム最年長でオリンピックの3枠確保に責任を持たなければならない立場の彼が自分の演技のことしか口にしないのはやや違和感のあるところではあった。結果ぎりぎりで3枠を確保できたものの、ジェレミー・アボット選手あたりが会心の演技をした場合、あのザヤック違反が取り返しのつかないミスになっていた可能性もないわけではなかった。もちろん、フィギュアスケートは個人競技なのでいかなる意味でも自己犠牲精神というものは必要ないのだが、3枠確保に責任を持とうとする意識は彼自身の成長にもつながったはず。むしろ彼よりも年下の小塚崇彦選手の方が率先して枠のことを口にしていたというのはちょっと寂しいことのような気がする。まあそれはともかくこの大きな舞台で4回転ジャンプを成功させたということで彼の競技人生もまた新たな段階へとかけ上がったのは間違いない。来シーズン以降彼がどんな成長を見せてくれるのかが楽しみだ。


エヴァン・ライザチェク選手

4回転ジャンプを回避したのは物足りないけど、長い手足が氷に映える。演技終盤に観客を盛り上げるのがうまい彼の持ち味が発揮されて、地元の観衆は熱狂的に沸き立っていた。昨シーズン怪我で出場を回避した悔しさがあるだけにさぞうれしい優勝だろう。

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侍ジャパン 二大会連続の優勝

2009年3月24日

WBCの決勝戦、日本は延長戦の末韓国を5-3で下し、二大会連続の優勝を果たした。ヒットを15本も打ったのだからもう少し楽に勝てるはずだったんじゃないか、とか、ダルビッシュが余計なドラマを演出してくれたな、とかいろいろ思うところはあるけれど、とにかく素晴らしい優勝で、一人の日本の野球ファンとしてこの結果を誇らしく思う。世界規模の大会での二連覇というのは途轍もなくすごいことだ。そんな偉業をやすやすとやってのけた選手たちを心から称えたい。

前回はいろいろなめぐり合わせがうまくかみ合っての優勝という感じがしたけど、今回はまさにチャンピオンになるべくしてなったという気がする。韓国戦以外はほぼ楽勝といえる内容だったし、韓国とも5試合をトータルで見るとやはり総合力で一歩上回っていたと思う。メジャー・リーガーの揃ったアメリカに真剣勝負の場で、それもアウェイで勝ったというのは本当はとてもすごいことなはずなのだけど、イチローのいう通りそれほど特別なこととは感じなくなっているところに日本の野球界の充実ぶりを見る思いがする。ヴェネズエラなどその他のメジャー・リーガーを擁したチームも本来の実力はこんなものではないはずなのだけど、この大会は調性気分で臨んで勝ち抜けるようなものではないということははっきりした。大会に臨む真剣さの度合といった要素も含めて、日本はチャンピオンに相応しいチームだったと思う。

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侍ジャパン 決勝進出

2009年3月23日

WBC準決勝、侍ジャパンはアメリカを9-4で下し、前回大会に続く決勝進出を決めた。北京オリンピックの時はメダルを逃したとかいう以前にトップ・アスリートとしてちょっと恥ずかしいプレーが出てしまっていたので、今度の大会では結果はともかく日本の野球ファンであることを誇りに思えるようなプレーを見せて欲しいと思っていたのだが、その通りの戦いぶりでここまで到達してくれてうれしい限りである。世界規模の大会で二大会連続の決勝進出というのはもうすでに十分過ぎるほど立派な成績なので、決勝はとにかく持てる力を精一杯発揮して侍ジャパンらしい試合をして欲しい。


大会運営については相変わらず気になるところがある。前回の反省を生かして当該国出身の審判を起用しないようにしたのは一歩前進だが、大会を主催するのがメジャー・リーグだといういびつさは依然としてそのままになっている。いかにイングランドがサッカー発祥の地だとしてもイングランドのサッカー協会がワールド・カップを主催したらおかしいのと同様で、こういう国際大会は参加各国が民主的に運営する国際組織が主催するのでなければ筋が通らない。

現在のこの状態はフェアであることを何より重んじなければならないスポーツの大会において最低限必要な条件が欠けているというほかはない。この大会を野球の世界一を決める権威ある大会として位置づけていこうとするのであればこのことはまず何より先に取り組まなければならないはずだ。今のところ日本チームが勝ち続けているせいもあって日本のメディアもこうしたことをあまり論じていないようだが、私はこのことはもっと声高に主張する必要があると思う。


同じ相手とばかり何度も対戦するという勝ち上がり方式も解せないところだ。こういう国際大会の意義として、普段あまり文化交流の機会がない国や地域との親睦を深めるというのも重要なことなのだが、日本は日頃から政治、経済、文化などあらゆる局面で深い関わりのある韓国とばかり、明日の決勝も含めると5度も対戦することになる。敗者復活を採用するのは理解できるとしても、アジア・ラウンドを勝ち上がった2チームは二次ラウンドでは別々の組に割り振るのがまともな判断というものだろう。

二次ラウンドのもう一方の組も、アメリカとヴェネズエラ、プエルト・リコ、それにオランダに足元をすくわれなければ進出してくるはずだったドミニカは、いずれもメジャー・リーガーによって構成されたチームで、普段レギュラー・シーズンで対戦している顔ぶれが集まっている。どうしてこういう不均衡な組み合わせにしたのか、理解に苦しむところだ。当初は単なる負け惜しみにしか聞こえなかったフィデル・カストロ前議長の「アメリカは自国が準決勝に勝ち上がれるようにキューバと日本と韓国を同一の組に入れた」というコメントも、こうして実際に日本と韓国が準決勝を圧倒的な内容で勝ち上がった今になってみると信憑性を以て響いてくる。


まあ言いたいことはいろいろとあるけど、せっかくのスポーツの祭典なので楽しまなければ損というもの。明日の決勝を戦う侍ジャパンの選手たちに日本から精一杯のエールをおくりたい。

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池辺晋一郎さん 『N響アワー』の司会を退任

2009年3月22日

作曲家の池辺晋一郎さんが22日の放送で『N響アワー』の司会を退任した。これまでの在任期間は13年にもなるそうで、私がこの番組をよく見るようになってからはずっと池辺さんの司会で楽しませてもらってきた。クラシックのことなどほとんど全くわからなかった頃に、この番組で随分いろいろと勉強させてもらってきた。時には寒い駄洒落に凍えそうになりながらも、クラシック音楽を肩が凝らずに気楽に楽しむことができたのはやはりあの明るく気さくなお人柄に負うところが大きかったと思う。

最後の放送で流された音楽が、3曲のうち2曲がラフマニノフだったというのも感慨深い。池辺さんは実験的な前衛音楽の全盛を知っている世代に属する方だと思うけど、つまらない偏見にとらわれずにこういう音楽を取り上げてくれたことも番組の魅力だった。心からお疲れ様と申し上げたい。

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『のど自慢 チャンピオン大会』で「つばさ」の歌唱

2009年3月14日

『平成20年度 のど自慢 チャンピオン大会』が今日放送された。昨年11月9日放送の高知県土佐大会で見たつばさ」を歌った保育師の女性も出演するというので楽しみに見た。

土佐大会でも20組の中で最後に歌ったのだけど、このチャンピオン大会でもまた一番最後の登場となった。本人はかなり緊張していたようだけど、出場した15組のトリを飾るに相応しい堂々たる歌唱だった。本田美奈子さんもさぞ喜んでくれただろう。やさしい人柄が歌声からも窺える、とてもきれいな人で、こんな保育師さんに育ててもらえる子供たちは本当に幸せだと思う。

ほかの参加者の歌の中では私は「笑って許して」や「夫婦船」、「越中おわら節」、「さくら」、「もののけ姫」などがよかったと思った。この大会は例年ある種の物語性のある背景を持った出場者が最優秀賞や優秀賞を受賞するという傾向にあり、やや情実に流された審査ではないかと思う部分がなくはないのだけど、それはともかく出場したみなさん全てが素人離れしていて、それぞれに素晴らしい歌唱だったと思う。

『のど自慢』という番組は歌が人々の生活の中でどのように生きているかを知るのにとても貴重な機会で、最近は見ていないことが多くなっているのだけど私はとても好きな番組である。特にこのチャンピオン大会はさすがに選び抜かれた人たちだけのことはあって、毎年のことながら歌の持つ力というものをあらためて認識させられる。

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秀逸なBGMのセンス

2009年3月10日

昨日映画と音楽との幸福な邂逅というテーマについて書いたばかりだが、今日も続けて映像と音楽の結びつきに関する話題を。朝日新聞のTV欄に、読者からのTV番組にまつわる質問に編集部が調査して回答するというコーナーがある。今朝のそのコーナーで取り上げられていたのは、「『世界一受けたい授業』という番組で毎回問題にぴったりの曲が流れるのだけど、誰が選曲を担当しているの?」という質問だった。なぜ今朝のこのコーナーが気になったかというと、私はこの番組はたまにしか見ないのだけど、以前見た時にやはりBGMを聴いて選曲のセンスに感動したことがあったからだった。

私が見たのは2004年にノーベル平和賞を受賞したワンガリ・マータイさんが来日した際に番組に出演した時のことで、この時流されたVTRに使われていたのがラフマニノフの歌曲「Здесь хорошо」(ここは素晴らしい) Op.21-7をサラ・ブライトマンさんが歌ったものだった。この作品は地球の未来に思いを馳せながら聴くのには実にぴったりの曲で、私はよくぞここでこの曲を使ってくれたものだと感激したのだった。その時のことは以前のブログに簡単に記してある。

編集部の回答によると、この番組で音楽を担当しているのは黒澤隆昌さんという方で、2004年の放送開始以来ずっとこの方がBGMの選曲をしているのだそうだ。今朝の記事のお蔭で今回あらためてお名前を挙げて敬意を表することができるのはありがたいことだ。と同時に世の中に同じことを気にかけている人がいる(もっともこの質問をした方が注目していたのはダジャレのセンスのようだが)と知ることができたのもちょっとうれしいことだった。

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『逢びき』を見た

2009年3月 9日

先日映画『逢びき』を初めて見た。ラフマニノフのピアノ協奏曲第2番が効果的に使用されたことで有名なこの映画、一度見ておかなければとかねがね思っていたのだけど、このほどDVDを借りることができてようやく念願が叶った。


この映画の存在自体はかなり以前から知っていたのだけど、原作がノエル・カワードだということは比較的最近になって知った。カワードについては私は大学の語学の授業で『Private Lives』という戯曲を読んだことがあって、ちょっと馴染みのある名前なのだった。この作品は実に他愛もないラヴ・コメディで、それなりにおもしろいことはおもしろったのだが、特に感銘を受けるということもなく、私にとってカワードといえば、『かもめ』のコスチャのセリフに倣っていうと、「チェーホフテネシー・ウィリアムズを読んだ後にカワードを読む気にはならない」というような存在だった。

その後さらに彼が俳優として出演した『パリで一緒に』というオードリー・ヘップバーン主演の映画を見たことがあるのだけど、これがオードリーがキュートで美しいという以外には何の見所もない、実におちゃらけた作品だった(念のためくどいようだけど断っておくと、オードリーはいつも通りにきれいでチャーミングだった)。そんなわけで私にはカワードというとばかばかしい喜劇という印象が強かったので、この『逢びき』という悲恋を描いた作品が彼の原作だったというのは私にはやや意外だった。


前置きがやや長くなったが、古今の恋愛映画の傑作と呼ばれるこの作品はさすがに見応えがあった。お互いに配偶者のある男女がふとしたきっかけで出会い、惹かれ、そして苦しみの中で別れを決断するというだけのシンプルな筋立てではあるが、誰もがこの二人の胸中に深く入り込み、共感せずにはいられないという、そういうツボが見事に押さえられている。

物語の進行がヒロインの独白に本質的に依存しているという点があまり演劇的でないように思えるのだが、映画化に際し敢えて舞台では実現不可能な手法を用いようと意図したのだろうか。それからあの別れ方はちょっと残酷なような気もするのだが…。こういうちょっと意地悪な結末にしたところに彼のコメディ・センスが発揮されていると見るべきなのか。いずれにしてもこの作品は私にとってこの高名な劇作家のことを見直すきっかけとなったことは間違いない。


そしてすでに言い尽くされていることではあるが、ラフマニノフピアノ協奏曲第2番はこのドラマの情感をいやが上にも盛り立てている。主人公の二人とは異なり、この取り合わせは映画とクラシック音楽との幸福な邂逅だったといえそうである。ただラフマニノフ作品は悪い意味で“映画音楽”と揶揄されてきた歴史があるようなので、もしこの映画がそうした風潮の一つのきっかけになったのだとすると少し複雑な気分にもなる。

以前NHKFMの『気ままにクラシック』という番組を聴いていたら、リスナーから「映画『逢びき』に使われている音楽は何という曲ですか?」という質問が寄せられたことがあった。この時パーソナリティーを務めていた鈴木大介さんと高橋由美子さんは音楽そっちのけでハンバーグの話題に突入していった。笑いながらも半ば呆れて聞いていたのだけど、教育テレビの『N響アワー』の時間にこの映画が話題になった時にもやはり池辺晋一郎さんがハンバーグの話をしていた。ダジャレ好きの人にとってはこの語呂合わせへの誘惑は避けて通れないものであるようだ。


ピアノ演奏を担当したアイリーン・ジョイスというピアニストはヒロインのローラ役を演じたシリア・ジョンスンにも劣らぬ素晴らしい美人である。実は私はこの人のCDを以前から持っているのだが、それはただジャケットの写真のあまりの美しさに惹かれて中古CDショップで入手したもので、『逢びき』のサウンドトラックを担当していたことはライナーノートを読んで初めて知った。オーケストラと指揮者が違うので、このCDに収録されているのは映画に使用された音源とは違うようだ。

彼女はちょっと変わった生い立ちでいろいろと興味深い人なのだが、例によって日本語の資料はあまりないようだ。音楽がこれほど話題となった作品で演奏を担当した人だというのに、あまり知られていないというのは意外な気がする。しかもそれが目の覚めるような美貌の持ち主だとなれば、もっと関心が高まってもいいと思うのだが…。

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「風のくちづけ」

2009年3月 6日

作詞:本田美奈子. 作曲:オットリーノ・レスピーギ 編曲:井上鑑
アルバム「」COCQ-83683(2004.11.25)所収。ミニアルバム「アメイジング・グレイス」COZQ147-8(2005.10.19)にも収録されている。

このところ春は名のみで寒い日が続いていたが、昨日はやや暖かくなり、春がそこまで近づいていることを感じさせた。今回はそんな春を待ちながら過ごす日々に聴くのに相応しい曲を取り上げてみる。

本田美奈子さんはクラシック・アルバムの第2作「」に「風のくちづけ」という曲を収録している。原曲はオットリーノ・レスピーギの「リュートのための古風な舞曲とアリア」第3組曲のイタリアーナである。


この曲集は16世紀から17世紀にかけてのリュートのための作品を弦楽合奏に編曲したものだそうで(第1組曲と第2組曲は管弦楽への編曲)、イタリアーナはその第1曲である。レスピーギというと何といってもローマ三部作が突出して有名だが、こうしたユニークな作品も残しているということは知らなかった。レスピーギが生きたのはすでにロマン主義が終息に向かい新たな音楽への志向が胎動し始めていた頃で、そんな時代に敢えてバロックかもしくはそれよりもさらに古い時代の音楽を自身の創作に取り入れていたというのは興味深い。彼は最後のロマン派ともいうべきセルゲイ・ラフマニノフのピアノ曲を管弦楽に編曲するという作業も行っているのだが、この二人の間にそうした時代感覚に共通するものがあって実現した試みだったのかも知れない。

このイタリアーナはやや愁いを帯びた短調の旋律による典雅な舞曲で、聴いているといにしえの空気が時代を越えてふと甦ってくるような感覚を覚える。美奈子さんがどのような意図でこの曲を歌うことを選んだのか、よくわからないがあるいはこの第3組曲のシチリアーナが近年TVCMに使用され話題になったことに触発されたものだったのかも知れない。


この歌曲への編曲で特筆すべきなのは何といっても丸田美紀さんによる琴をフィーチャーしていることである。元々はリュートのための作品だったこの曲に、同じ撥弦楽器である東洋の琴を使うという発想はさすがに井上鑑さんならではの秀逸なセンスだと思う。この古典的な楽器によってかき鳴らされる音響は例えようもなく雅びていて、16世紀のイタリアよりももっと遠いどこかの時空へ浮遊するような感覚にとらわれる。これほどの表現力のある楽器なのに、現代の音楽になぜもっと使われないのだろう。


歌詞は美奈子さん自身がつけたものである。「時」のライナーノートにはプロデューサーの岡野博之さんが当初ヴォカリーズで歌う予定だったのを急遽書き下ろしたという説明が記載されている。実はこれには歌詞をつけて歌う予定でいた「ゴッドファーザー愛のテーマ」が作曲者のエンニオ・モリコーネさんの許可が下りず、ヴォカリーズに変更せざるを得なかったために代わりに「風のくちづけ」を歌詞つきで歌うことになったということだったらしい。急な変更にも関わらずこの詞をすらすらと書き上げたようなので、曲調がよほど美奈子さんの心に馴染んでいたものと思われる。

私がこの歌を春に相応しいと考えるのはもちろん歌詞に「春」という言葉が二度表れるのもさることながら、最後の方に「おぼろ月夜」という言葉が登場するのによることろが大きい。美奈子さんにとってこの旋律は春の霞みがかった月夜のイメージだったのだろう。この言葉からは当然唱歌の名曲「朧月夜」が連想されるわけだが、美奈子さんは2002年に『題名のない音楽会』に出演した際に布施明さんとのデュエットでこの歌を歌っているので、作詞に当たってはやはりこの歌のことを意識していたに違いない。

実は私はこの歌にちょっとほろ苦い想い出があって、そのせいで朧月夜という言葉を聞くだけでも心がざわめいてしまうところがある。美奈子さんにももしかしてこの唱歌には何か特別の思い入れでもあるのかと想像すると何やら親近感のようなものが芽生えてくる。美奈子さんはどんな思いをこめて「風のくちづけ」の歌詞にこの言葉をしたためたのだろうか。そんな想像をめぐらせながらこの歌を聴くと、少しの痛みとともにある種の懐かしさが胸に甦ってきて、美奈子さんに古いかさぶたをはがしてもらっているような、そんな夢見るような不思議な心地にさせられる。

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知られざる人気歌手: テレサ・ブリュワーさんのこと

2009年3月 3日

今回は日本ではあまり知られていないらしいアメリカの歌手について書いてみる。私はジャズのことはあまりよく(というかほとんど)わからないのだけど、2000年に「ユニバーサル 女性ヴォーカル・コレクション」というシリーズが発売された時に「女性ヴォーカルなら楽しんで聴けるかも知れない」と思い、どれか一枚聴いてみようと思い立った。その時にジャケットの雰囲気や帯に記載されている紹介文から自分に合いそうなものを、と思って選んだのがテレサ・ブリュワーさんの「When Your Lover Has Gone 」というアルバムだった。

このアルバムについてはもちろん歌手についての予備知識もないままに聴いてみたのだが、期待した通りに優しい声としっとりとした歌唱が魅力的で、このアルバムはすっかり私のお気に入りとなったのだった。ライナー・ノートの小川隆夫氏の解説によると彼女は元々はポップス歌手として活躍した人で、このアルバムはその彼女がジャズ・テイストを纏って歌うという趣向のものだったようだ。そういう幾分マイルドなジャズ・テイストが私にはちょうど合っていたのかも知れない。


ところがこのテレサ・ブリュワーという歌手についてもっと知りたいと思っても詳しいことはほとんどわからなかった。アメリカではかなりのビッグ・ネームらしいのだが、日本ではあまり知られていないようで、日本語の文献でこの人についてふれたものに出会うことはほとんどなかった。唯一わかったのが雪村いづみさんが彼女のカヴァー曲「想い出のワルツ」でデビューしたということだった。

それがしばらく前にWikipediaのボブ・シールの項目を見て、ジョージ・ダグラスというペン・ネームで「この素晴らしき世界」を作ったこの人物の妻がテレサ・ブリュワーだったということを知り、自分の中でこの人への関心が再び高まってきたのだった。それで先日Wikipediaの英語版の項目を翻訳して新規記事を投稿してみたのだが、いろいろと調べてみてあらためて魅力的な人だと思い知った次第である。


私が聴いたアルバムに収録されているのはほとんどが失恋をテーマにした曲で、彼女はそれを実にしっとりとした情感をこめて歌っているのだが、本来のポップス歌手としてのヒット曲にはむしろかなり陽気な歌の方が多かったようだ。このアルバム一枚だけからでは窺い知ることのできない広がりのある芸風の持ち主だったらしい。

私生活ではレコード・デビューと同時期かむしろそれより早い時期に最初の結婚をし、四人の娘に恵まれたが、常に歌手活動よりも家庭生活の方を優先するやさしいお母さんでもあったようだ。1960年代以降はあまり大きなヒットに恵まれなかったのは娘たちと過ごす時間を優先させていたためという事情もあったらしい。「私の最大のヒットは娘たち」とも語っていたという。

この「When Your Lover Has Gone」というアルバムの彼女のキャリアの中での位置付けも少し理解できるようになった。レコードのセールスという点では軽快なポップ・ソングがヒット・チャートの上位を賑わせることが多かったものの、テレサ本人はむしろバラードを歌うことを好んでいたとのことなので、このアルバムはある意味では彼女の本来の美質が最も発揮された一枚だったのかも知れない。


今回の作業に当たってあらためて調べてみても、やはり日本語の資料はいくつかの一般の音楽ファンの方によるレヴューのほかはほとんど見出せなかった。2007年に亡くなっていたことも私は英語版を見て初めて知った。単に私が見逃していただけなのかも知れないが、日本ではほとんど報道されなかったのではないだろうか。日本の音楽界はこの人の音楽を雪村いづみさんのカヴァーを通して接点を持った以外はほとんど受容してこなかったようだが、それは実に大きな損失だったように私には思われる。

どれだけ需要があるのかわからないが、この翻訳作業によって彼女が日本でも少しでも広く認識されるようになれば、と思う。まあ雪村いづみさんのファンの方なら興味を持って読んで下さるだろうか…。

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