「海辺の祈り」

2012年1月29日


東日本大震災の犠牲者への追悼や復興への祈りとして発表された音楽作品をこのサイトでいくつか紹介してきたが、今回は近藤浩平さんによる「海辺の祈り〜震災と原子炉の犠牲者への追悼」Op.121を取り上げたい。近藤さんはいち早くこの災害に反応し、昨年4月の時点で本作を発表していた。私も早い段階で聴いて感銘を受け、ここで紹介したいと思っていたのだが、もたもたしているうちにすっかり時間が経過してしまった。しかしこれだけ待った(?)甲斐があって昨年12月に神戸新聞の記事でこの作品が取り上げられ、作曲の詳しい経緯や背景なども含めて紹介できることになったのは幸いだった。

記事によると震災前からノルウェイのファゴット奏者、ロベルト・ロネスさんから作品の委嘱を受けていたのがファゴット独奏のための作品となった理由のようだ。ファゴットの朴訥とした音色で歌われるもの哀しい旋律は、津波に襲われて全てが失われた被災現場に一人呆然と立ち尽くしているかのような寂寥感を醸し出す。福島県を中心に東北地方の民謡を多く聴いてリズム感や節回しを採り入れようとしたとのことで、目に浮かぶ状況は全く絶望的であるにも関わらず、どこか安らぎのような感覚さえもたらされるのは、そのようにして生まれた旋律の懐かしさ、親しみやすさゆえなのだろう。

ここに紹介した動画はもちろん作品を委嘱したロネスさんによる初演である。近藤さんはほかにもいろいろな楽器のための編曲をも手がけ、ご自身の公式サイトで公表されている。特に左手のピアノのための編曲は智内威雄さんによって演奏され、動画も公開されている。智内さんはさらに近藤さんにこれと対になる作品を依頼し、「海辺の雪〜震災と津波の犠牲者への追悼」Op.122が生まれた。こちらも演奏の動画が公開されている。

近藤さんとはTwitterで少しやりとりをさせていただいたこともあるのだが、時代の状況に真摯に向き合いつつ創作をされる方で、そうした姿勢はこの作品が震災だけでなくやがて生じるかも知れない原発事故の犠牲者にも捧げられていることにも表れている。本作はそうした鋭敏な感性が生み出した賜といえるだろう。ぜひ多くの方に、震災の犠牲となった方々の魂や、被災された方々の今なお続く苦しい生活に思いを馳せつつ聴いていただきたい作品である。


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南波志帆さん「少女、ふたたび」

2012年1月27日


すっかりブログの更新をサボっていて、これが今年最初のエントリーになる。今更だけどみなさま本年もよろしくお願いします。


さて、今年最初のエントリーは最近見つけたお気に入りの歌手の動画から。南波志帆さんの「少女、ふたたび」という歌である。YouTubeの登録チャンネルの更新情報に出ていたので何気なくアクセスしてみたら、透明感のあるさわやかな歌声に、一度聴いただけですっかり魅了されてしまった。

南波志帆さんはその個性的な声によって独自の幻想的な歌世界を作り出している。少女から大人へと移り行く多感な時期の心象風景というのはありふれたテーマではあるが、彼女の歌声には現実と空想の垣根を軽やかに越えるような独特の浮遊感がある。こうした世界観は、原田知世さん、斉藤由貴さん、遊佐未森さんといった歌手たちとも共通するものを感じる(たとえが古い?)が、もちろんそうした歌手たちの単なるコピーには決して終わっていない。

まだ18歳とのことだが、すでにインディーズでデビューしてから3年以上のキャリアがあるらしい。その存在にもう少し早く気づくべきだったかとも思うが、これからいよいよ本格的に活躍していくことになるであろう歌手なので、その過程を見守っていくのが楽しみだ。


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