四大陸選手権2010 女子シングル

2010年1月29日

鈴木明子さん

SPでループの入り方を変えるという試みをしたが結果的にそれが裏目に出て失敗、それが影響したかどうかはわからないがフリーでも一つすっぽ抜けてしまった。しかしこの大会でそういうことを試してみたというのは賢明なことだったと思う。フリーでは失敗したループの直後のサルコウを急遽シークェンスにするという機転を利かせた落ち着きも見事だった。

レベル4の認定を受けたSPのステップは素晴らしく、元々エッジを深く使い重心を左右に大きく動かすことに定評があった鈴木さんのステップに、さらに上下の大きな動きが加わったところに工夫の跡が見てとれた。見ていてちょっとトリノ・オリンピックでの荒川静香さんのフリーの演技を思い出してしまった。女子のステップでのレベル4というのは、ISU公認の大会では確かカロリーナ・コストナーさんと浅田真央ちゃんに続いて三人目の快挙だと思う。


アマンダ・ドブズさん

初めて見る選手だけど目鼻立ちが整っていて見映えのする選手という印象を受けた。トリプルジャンプは実質トウループとサルコウしかないようでまだまだ成長途上の選手だが、今後順調に力をつけていけば人気が出てくるんじゃないかと思う。


浅田真央ちゃん

SPではトリプルアクセルがダウングレードされたがフリーでは二つとも認定された。フリーの特に二つ目は見た感じしょっと怪しいかな、と思ったのだけど、このあたり基準が一定していない気がする。SP、フリーともにいつもより助走のスピードが足りないような気がしたのだけど、数日前の朝日新聞の報道だと中京大学の湯浅景元教授が真央ちゃんの跳び方の特徴からすると遅めの助走の方が成功しやすいという分析をしているようなので、そういうアドバイスを受けてのことなのかも知れない。

コンビネーションを予定していた最初のフリップが単独になってしまったのはもったいないところで、欲を言えば後半のループかトウループの後にダブルループをつける機転を利かせて欲しかった。真央ちゃんの実力ならこの大会では問題なく優勝できたけど、オリンピック本番ではこういうことが命取りにもなりかねない。

全体に体の動きがやや重たいかな、という印象を受けた。SPで特にそう感じたのだけど、フリーでは逆にそれが荘重な曲調に合っているようにも思った。ステップなどは鬼気迫るような迫力を感じたのだけど、スコアを見るとレベル2の判定だったのは残念。PCSも抑え気味で、特にTRが低かったのが気にかかる。


今井遥さん

今回は怪我のため欠場した中野友加里さんの代役としての出場だったわけだが、雰囲気が中野さんによく似ているな、と思った。最初に彼女の姿が画面に移った時には一瞬中野さんかと思ってしまった。演技の内容もバレエ音楽を好んで滑った中野さんにかなり近い感じがする。ただし中野さんが彼女くらいの年齢の頃はあんなに表情豊かには滑っていなかった。もちろんトリプルアクセルという大技は今井さんにはないわけだけど。

冒頭のダブルアクセルを単独にしたことでコンビネーション・ジャンプの数が少なくなってしまったのがもったいなかったけど、シニアの国際大会デビュー戦としては上々のできといっていいのではないかと思う。このまま順調に伸びていって欲しいと願わずにはいられない、貴重な才能である。


キャロライン・ジャンちゃん

全米選手権でふるわなかったのは残念としかいいようがない。今シーズン不調の続いた彼女にしては今回はいい出来だったのだろうけど、105.68という点数を見て大喜びしている彼女の姿を見るのは何だか切ないものがある。

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幸田浩子さん 『スタジオパークからこんにちは』に出演

2010年1月18日

このブログではおなじみのソプラノ歌手の幸田浩子さんが今日放送のNHKの番組『スタジオパークからこんにちは』に出演した。トークは他愛もない話が多かったが、『スーパーJOCKEY』も真っ青なオーストリアでの舞台の話は聴いていて思わず興奮してしまった(その舞台、ぜひ3階席で見たかった!)。歌は「涙の流れるままに」と「カリヨン -新しい色の祝祭にて-」の二曲を披露してくれた。こちらはいつもながらの美しい歌声だった。ゆうべのうちに番組の公式サイトからメッセージを贈っておいたのだけど、ご本人には届けてもらえたのかな?

二期会のブログにはさらに今月中のTV出演二件が紹介されている。一つは来週放送の『迷宮美術館』。司会の住吉美紀アナウンサーとは大の仲良しとのことなので(参考:すみきちブログ。:ふたりの歌姫。)、息の合ったトークが期待できそう。もう一つは31日放送の『オーケストラの森』で、アレクサンドル・ラザレフさん指揮の日本フィルハーモニー交響楽団との共演で、ラフマニノフの「ヴォカリーズ」を聴かせてくれるらしい。こちらはまさに必見である。

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「すべてが変わるだろう」

2010年1月 6日

日本語詞:岩谷時子 作詞:P. Delanoë 作曲:M. Fugain
アルバム「JUNCTION」(1994.09.24)所収。

本田美奈子さんのレパートリーの中から年の初めに聴くのに相応しい曲を、と考えていたら、ふと「すべてが変わるだろう」という作品のことが思い浮かんだ。この曲は作詞作曲のクレジットからカヴァー曲であることはすぐにわかるのだが、私にはなじみのない曲なのでいろいろと調べてみた。

原曲はミシェル・フュガンさんというフランスの男性歌手が、自ら率いるビッグ・バザールというグループととも歌った「Tout va changer」という曲だった。1973年に制作されたアルバム「Fugain et le Big Bazar - numéro 2」に第一曲として収録されている。作曲はフュガンさん自身、作詞はピエール・ドラノエで、このコンビはサーカスのヒット曲「Mr.サマータイム」の原曲「Une belle histoire」を生み出した組み合わせでもある。

2005年に開催された『愛・地球博』ではフュガンさんの「Bravo, Monsieur le Monde」がイメージ・ソングに選ばれており、こうした点でも日本に縁のある方のようだ。2002年には娘のロレットさんを白血病で喪ったという切ない情報も目にしてしまった…。


美奈子さんはこの曲を1994年に制作されたアルバム「JUNCTION」に終曲として収録している。日本語詞はもちろん恩師の岩谷時子さんである。どういういきさつでこの曲をカヴァーすることになったのかはよくわからないが、おそらくはフランスの音楽事情に通じた岩谷さんの薦めがあってのことだろうと推測される。この「JUNCTION」は美奈子さんが『ミス・サイゴン』で圧倒的な評価を得た後に満を持して制作した5年振りのオリジナル・アルバムなので、美奈子さん自身もっと成長した自分に変わっていきたいという思いや、変われるはずだという自信の表れでもあったのかも知れない。

混声合唱のハミングの穏やかな響きに導かれ、美奈子さんは明日への希望を優しく歌っている。そこには未来への素朴な信頼や満ち足りた安らぎが溢れている。曲調がそうさせるのだろうが、「命をあげよう」の悲壮な願いとも、「つばさ」の自信に満ち溢れた高揚感とも異なる、独自の歌の世界になっている。これらのドラマティックな曲の後に終曲としてこの穏やかな歌を配したのは、実に巧みな配置というほかない。

そしてこの曲の大きな聴き所の一つは、間奏にフィーチャーされたパン・フルートのソロである。この楽器の朴訥とした音色がとても好きな私にはうれしい演出である。前奏などにもやはり管楽器が使用されているのだが、これはリコーダーだろうか。ブックレットには参加ミュージシャンのクレジットが記載されているのだが、残念なことにこの曲に最も鮮やかな彩りを添えている管楽器の奏者のお名前はどういうわけか記されていない。

岩谷さんの日本語詞は原詞の内容をかなり忠実に訳したものになっている。音節の数を合わせる必要から全体の情報量は減ってしまっているのだが、さすがに当代一の作詞家だけあって、内容のエッセンスをうまく抽出し、原詞に盛り込まれた世界観を再現しているのは見事である。


それにしても、この曲は考えれば考えるほど今聴くのに相応しい曲のように思えてくる。日本漢字能力検定協会が主催する「今年の漢字」に“変”が選ばれたのは一昨年のこと、そして昨年暮れに選ばれたのは“新”の一字だった。あらゆる意味で時代は今転換期にあり、漢検自身がまさにそうだったように、新しく生まれ変わることは避けることができない運命にあるといっていいだろう。世界も、そして私自身も。

「このままでいいのか、いけないのか、それが問題だ」—世界の演劇史上最も有名なセリフである『ハムレット』の中の言葉だが、従来「生きるべきか、死ぬべきか」と訳されてきた「To be, or not to be」という部分を「このままでいいのか、いけないのか」と訳したのは小田島雄志さんだった。今私たちに「このままでいい」という選択肢は残されていないように思える。

しかし一方で、私はどうしても『ワーニャ伯父さん』の中のワーニャとアーストロフとのやりとりを思い出してしまう。「どうやって新しい生活を始めたらいいのか」というワーニャの悲痛な問いかけに、アーストロフは「僕らにはもう希望なんてないさ」と突き放す。私にはこのアーストロフの諦観の方が近しく感じられてしまうのだが、美奈子さんに優しく「すべてが変る」とか「もう変わったよ」、「今夜人生 すばらしいね」などと歌ってもらえば、また明日への希望を信じる心を取り戻すことができそうな気にもなってくる。ここに歌われているような未来への無邪気な信頼は、私の心境からはあまりにも遠く懸け離れてしまっていた種類のものなのだが、今はしばし、美奈子さんの歌が形作る穏やかな世界に身を任せることにしたい。

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新年のご挨拶

2010年1月 1日

明けましておめでとうございます。日付が新年に変わって早々幸田浩子さんの歌声を聴くことができてご満悦でいるところですが、今年もまた音楽への愛を私なりに綴っていきたいと思います。本年もどうぞよろしくお願いします。


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