NHK杯2007 女子シングル SP
2007年11月30日
浅田舞さん
急遽出場が決まったために調整不足の上に数日前から発熱していたとのことで精彩のない演技に。二週間ほど前に全日本選手権に備えて靴を新しくしたばかりで、本来なら今はそれを慣らすために過ごしたかったらしい。澤田亜紀さんの欠場による代替出場は彼女の調整日程を狂わせる結果になってしまった模様。せっかくのチャンスだったのに何だかもったいないことになってしまった。鈴木明子さんなら準備が調っていたのだろうか、とかいろいろと考えてしまう。しかしとにかく解説の荒川静香さんも仰ったように、明日のフリーを終えてこの大会に出場したことが彼女にとってよかったと思えるような結果になることを祈りたい。
ラウラ・レピストさん
スケートカナダではSPで浅田真央ちゃんや中野友加里さんら強豪を抑えてまさかのトップに立ったフィンランドの新鋭。このNHK杯ではトウループからのコンビネーションジャンプをトリプル–ダブルに抑える安全策でノーミスの演技。持ち前のフィンランド選手らしい情感のある滑りは健在だった。スケートカナダではプレッシャーからかフリーで崩れてしまったけど、今回は失うものは何もないというつもりでしっかりと最後まで自分の力を発揮して欲しい。
武田奈也さん
小さい頃からTVで見てあこがれていたNHK杯に出場できてうれしいと話す奈也さん。予定した要素をしっかりとこなし自分でも手応えを感じていた様子。ジャンプの構成については今はこれでいくということで納得しているとのこと。フリーでものびのびと滑ってこの大会に出場できる喜びを体で表現して欲しい。
エレーネ・ゲデヴァニシヴィリさん
ルッツはステップから入る難しい踏み切りで成功させたがフリップでは転倒。最悪の状態は脱したものの本格復活まではもう一息というところか。それでも投げキスで始まるモロゾフらしい振り付けをチャーミングに踊ってみせてくれた。
アリッサ・シズニーさん
めずらしくジャンプも含めてノーミスの演技。この人がルッツとフリップを両方成功させたのはかなり久しぶりに見たような気がする。ジャンプさえ決まればほかの要素の評価は高い選手なので高得点を叩き出した。TESは一位のコストナーさんとほとんど変わらない。スピンは相変わらず美しかったが、最後は荒川さんが仰ったように時間が足りなくなって急にやめたような感じになったのがもったいなかった。もう少し長い時間見ていたかったところ。フリーでもぜひ今日のような調子で滑って欲しい。
カロリーナ・コストナーさん
三つのジャンプ全てが不安定だったもののダウングレードはなかったとのことで高い点が出た。結局トリプル–トリプルのコンビネーションジャンプに挑戦したのは彼女だけだった。ここしばらくの彼女としてはかなりいい内容の演技だったと思う。SPを終えてトップに立ったが、フリーでもこの調子で滑ることができるかが注目される。
サラ・マイヤーさん
フリップはロングエッジと取られたのではないかと思うがほかに大きなミスはなく高い得点を叩き出した。フランス大会では要件を満たさないとしてノーカウントになってしまったシットスピンも今回は得点がついたものと思われる。
このSPは衣装も音楽もマイヤーさんの表情豊かな滑りも全てが調和していて、今シーズン見たプログラムとしては最も気に入っている。ただ今回ステップをサーキュラーからストレートラインに変えてきた理由はよくわからない。フランス大会の時のサーキュラーステップから両腕で見えないロープを手繰り寄せるような仕草へと至る流れがとても好きだったので前の方がよかったような気がするのだが。
個人的にはこの人にファイナルに進出して欲しいと思っているのだけどどうなることやら。
安藤美姫さん
ルッツからのコンビネーションはダブルループに。本人の話ではフリップの矯正に取り組んだ副作用でルッツが不安定になっているとのことで、6分間練習でタイミングが合わなかったのでニコライ・モロゾフコーチと相談してトリプルを避けたという。全体に何となく慎重に滑っているように見受けられた。スパイラルはスピードがなくチェンジエッジのところではっきりとバランスを崩していた。先ほどのニュース9での荒川さんの話ではステップもいつもの力強さがなくレベル2の判定だったとのこと。ただ今回ほかにステップでダイナミックな動きを見せるタイプの選手がいなかったこともあって、ほかの選手との比較ではやはり力強さを印象づけていたと思う。
SPを終えて二位という結果ではあるけれど、トップのコストナーさんとの差は小さく、彼女がフリーもトリプル–トリプルのコンビネーションを含めてノーミスで滑るとはなかなか考えにくいので逆転優勝の可能性は十分にある。明日はとにかく荒川さんも仰っていたように思い切ってカルメンに成り切って演技して欲しい。
NHKの放送は余計な編集がなくてとにかく快適の一言。民放各局のスタッフは自社の放送とよく見比べてみて欲しい。