「BBC music magazine」誌が選ぶ20人の偉大なピアニスト
2010年8月25日
先日「BBC music magazine」誌が“20人の偉大なピアニスト”のリストを発表した。これは100人の著名なピアニストにそれぞれが最も偉大だと考えるピアニストを3人選んでもらい、それを集計して導き出したものである。これには自身がその演奏を実演や録音で聴いたことのあるピアニストに限るという制限が設けられており、フランツ・リストやフレデリック・ショパンといった歴史的な名ピアニストは必然的に選考の対象外となっている。
このような基準で選ばれたピアニストは以下の通り。(以下煩雑になるので存命、故人を問わず敬称は略させていただく。)
- セルゲイ・ラフマニノフ
- アルトゥール・ルービンシュタイン
- ウラディーミル・ホロヴィッツ
- スヴャトスラフ・リヒテル
- アルフレード・コルトー
- ディヌー・リパッティ
- アルトゥール・シュナーベル
- エミール・ギレリス
- マルタ・アルゲリッチ
- アルトゥーロ・ベネデッティ・ミケランジェリ
- クリスティアン・ツィマーマン
- イグナツ・フリードマン
- ラドゥー・ルプー
- エトヴィン・フィッシャー
- ヴィルヘルム・ケンプ
- マレイ・ペライア
- グレン・グールド
- ヴァルター・ギーゼキング
- ヨーゼフ・ホフマン
- クラウディオ・アラウ
こうして選ばれた面々を見ると、さすがになるほどと思わされる。ラフマニノフはやはり、作曲家としてはともかくピアニストとしての評価は揺るぎないものであるようだ。私はこの20人の中では唯一、イグナツ・フリードマンというピアニストを知らなかった。調べてみると優れたピアニストであるにも関わらず音源が散逸してしまった等の事情のため過小評価されてしまっている人らしい。勉強になった。
一方、この種のランキングの常として、選から洩れた人の名を思い浮かべてみると奇異の念も抱かせられる。記事では意外にも票が一つも入らなかった名ピアニストとして、ヴィルヘルム・バックハウス、ジョン・オグドン、マウリツィオ・ポリーニ、ミハイル・プレトニョフ、エヴゲニー・キーシンの名が挙げられている。特にポリーニなどは現役のピアニストとしては最高の評価を受けている人の一人と思っていたので、この結果は私自身とても意外だった。(プレトニョフに関しては例の事件が影響したのかどうかはわからない。)
私がそれ以上に意外だったのは、票は入っているもののウラディーミル・アシュケナージが20人の選から洩れていることだった。まあこの種の企画というのは万人が納得するような結果にはならないものではあるのだが。
なお、100人のピアニストたちによる投票内容の全ては記事中に公開されていて、誰がどのように投票したのかを確かめるのはなかなか楽しい。中にはアート・テイタムとかエロール・ガーナー、キース・ジャレット、ビル・エヴァンスといった名前も挙がっているのが興味深い。日本人だと内田光子に投票している人がいるほか、選者として小川典子が参加している。この投票、みなさんはどうお感じになるだろうか。