日本代表 カナダと引き分け
2007年9月27日
ラグビー・ワールドカップの最終戦、日本はカナダと対戦し12-12で引き分けた。カナダは密集の近辺では力強さを発揮したもののバックスへの展開ではセンターでクラッシュする度に陣地が後退する創造性を欠いた攻撃に終始し、恐さを感じさせなかった。対する日本も相変わらずタッチキックの精度を欠き、マイボール・ラインナウトでも度々ボールを失う要領の悪さでいらいらさせられた。
日本の先制トライはウィング遠藤の相手数人のタックルをかわす力強いランが生み出した。カナダの動転トライはモールで押し込んで取ったもので、ともに両者の特徴が表れたトライだった。カナダの逆転トライはゴール前での再三のピンチを粘り強いディフェンスでしのぎ、ようやくターンオーバーで抜け出した瞬間に反則を犯しペナルティーをとられたところで奪われたトライだった。何とももったいない失点だがこれは不可抗力だっただろう。
ロスタイムでの同点トライは中継するテレビ局の不手際でSH金がラックから持ち出して右へ展開する場面からの映像しか見ていないのだけど、連続したオープン攻撃が生み出した日本らしいトライだったとみていいだろう。16年ぶりのワールドカップ勝利はならなかったが、小さくとも確かな一歩を踏み出した、価値ある引き分けだった。
日本にとってカナダは地力ではほとんど遜色ないものの、試合運びのまずさなどからこれまでなかなか勝つことができずにいた相手である。今回この大舞台で引き分けることができたのは日本のラグビー界にとって大きな収穫といえるだろう。
試合後は地元観衆からも大きな“ジャポン”コールが起こっていた。ロスタイムでの同点トライ(ゴール)という劇的な試合展開もさることながら、ボールを大きく左右に動かす日本の連続攻撃が観客を楽しませていたからこそだろう。ウェールズ戦の一つ目のトライが地元メディアでも大きく取り上げられたことでもわかるように、日本のラグビーには世界の目の肥えたラグビーファンをうならせるだけのものが確かにあるのだ。ぜひ日本のラグビー協会にはこの成果を無駄にせぬよう、先を見据えた普及と強化に取り組んでくれることを期待したい。
この試合の結果を受けて日本協会は今後も当面カーワン体制を維持していく方針のようだ。就任からわずか8ヶ月でここまでチームを仕上げたのはやはりカーワンの功績だろう。低く鋭いタックルを80分間続ける粘り強いディフェンスを最重要の課題とする方向性は間違っていないと思う。今大会ではタッチキックを再三ミスするなどハーフ陣がフォワードを楽にするようなゲームメイクができていなかったのは改善すべきポイントだろう。さらに欲を言えば今後はもう少し展開攻撃の創造性に磨きをかけて欲しい。就任から8ヶ月ではなかなかそこまで手が回らなかったという面もあるだろうし、怪我人が相次いだ影響も大きかっただろう。しかし日本のバックスはまだまだやれるはずだ。ぜひ日本に相応しいラグビーのスタイルを構築してもらいたい。
最後に地上波TV放送について苦言を呈しておく。上に引用した記事にもある通り、日本テレビによる中継では最後の日本の同点に追い付くトライのシーンがカットされた。そもそもなぜ10分遅れの録画放送などという中途半端なことをするのか理解できない。深夜の時間帯だというのにロスタイムが長引いても収められるだけの時間枠をどうして確保することができないのか。試合前のカナダ国歌斉唱の場面がカットされたことも含めて、ラグビーが好きではない人が番組を制作しているとしか考えられない。まあそもそもまともなラグビーファンならスカパーの放送を見るべきなのだろうけど…。
TV局にこんな仕打ちを受けるのもラグビー人気の凋落がそもそもの原因である。繰り返すが日本ラグビー協会の人気復興への取り組みに期待する次第である。