安藤美姫さん 優勝おめでとう!!

2007年3月25日

生放送ではなかったけどどきどきしながら見守った女子シングルフリー。画面を見ながら何度も貰い泣きしそうになった。本当にうれしい結果になって夢を見ているような気分だった。


スザンナ・ポイキオさん

この人が放送されたのは少し意外だった。少しジャンプのミスも見られたが雰囲気のあるいい演技だったと思う。彼女のフリーは今シーズン何度か見てきたけどとてもいいプログラムだと思う。「ありがとう日本」も気が利いていた。


サラ・マイヤーさん

こちらもとてもいいプログラム。二つの映画音楽をつなぎ合わせているけど不自然なところがない。マイヤーさんの清楚な美しさを引き立てている。両腕のしなやかな動きに表情があり見入ってしまう。トウループでの転倒などもったいないミスはあったけど心に残る演技だった。大技がなくても見る人を満足させることのできる、貴重な選手だと思う。


中野友加里さん:プロコフィエフ シンデレラ

学生選手権で披露したという白い衣装での演技を期待していたのだけどピンクの衣装で登場。もちろんこちらも十分清楚でかわいらしい。トリプルアクセルに果敢に挑戦したが失敗(2回転にダウングレード)。得意のスピンでめずらしくバランスを失うミスもあったが、全体にはにこやかな笑顔でいきいきとした演技だった。2年連続の5位は素晴らしい成績。開会のセレモニーでの選手宣誓といい、フィギュアスケート大国日本が自信を持って送り出した3人娘の一人として立派に責任を果たしてくれたと思う。


カロリーナ・コストナーさん:SAYURI

まず衣装を見てがっかり。いつもコストナーさんはセンスのいい衣装を着ているのだけどこの色合いはいただけない。日本の着物にはまずあり得ない色使いであり、とても芸者らしくは見えなかった。中野さんとの「SAYURI」対決という点では文句なく中野さんに軍配を上げたい。

演技の中身に話を移すといきなりフリップで転倒、ルッツはダブルに。二度目のフリップも失敗と散々の内容だった。SPでは実に力強く安定感のあるジャンプを見せてくれていたのに、トリノオリンピックの頃に逆戻りしてしまったかのよう。普通の選手と逆の回転をする選手だが、この人のフリップは右足のインサイドにしっかりと乗らないうちに焦って跳び急いでいるような印象がある。本来は力のある選手なので、また練習を積んで本物の復活を果たして欲しい。


エミリー・ヒューズさん:シルヴィア

こちらは派手過ぎず地味過ぎず、いい色合いの衣装だったと思う。彼女によく似合っていた。フリップで転倒した後は気持ちを引きずらずしっかりと要素をこなしていた。しかし二度目のフリップとルッツをダウングレードされたことで点数が伸びなかった。


キム・ヨナさん:あげひばり

最初のトリプルフリップ–トリプルトウループのコンビネーションはとてもきれいだった。イナバウアーからのダブルアクセル–トリプルトウループや深くエッジを使ったストレートラインステップなど気持ちよさそうに滑っていて、腰の不安など全く感じさせなかった。しかし中盤でルッツで2度転倒してしまう。これが腰痛の影響なのかはよくわからない。二つ目のルッツは自動的にシークエンスと判定されてしまうので、その後のトリプルサルコウ–ダブルトウループは四つ目のコンビネーション/シークエンスとなり0点に。このダブルトウループの後少しぎこちない動作があったのであるいはここに腰痛の影響が出ていたかも知れない。

全体的にはしなやかでのびやかなヨナさんらしいとても美しい演技だったので二つの転倒が惜しまれる。しかし今月上旬の時点で痛みが再発したということは確実に大事な時期の練習量が不足していたはずで、それにもかかわらずこれだけの演技を見せられるということはあらためてずば抜けた才能を感じさせる。初出場で3位は立派な成績で、世界のトップレベルのスケーターであることを証明したといえると思う。これからがますます楽しみな存在だ。


浅田真央ちゃん:チャルダーシュ

公式練習で調子が今一つという情報を聞いていて、ヨナさんの直後という難しい滑走順もあり少し不安を持って見守っていた。しかしいざ始まってみるといつも通りの真央ちゃんだった。ステップからのトリプルアクセルはやや両足着氷気味ながら成功。続くダブルアクセルからのコンビネーションでトウループの着氷が乱れ回転不足を取られたほかレイバックスピンでレベルをとりこぼしてしまうなどのミスもあったが、全体には真央ちゃんでなければあり得ないほどの高いレベルの演技を見せてくれた。SPで失敗したトリプルフリップ–トリプルループのコンビネーションも見事に成功させた。(ステップをサーキュラーからストレートラインに変えたのにも注目していたけど、音楽の編集などはそのままのようで、これが何を狙ったものなのかはよくわからなかった。)

演技後は感極まってぼろぼろと涙をこぼしていた。SPの結果が悔しくて昨夜は眠れない思いで過ごしていたのではないかと思う。SPで出遅れても自分を見失わず、フリーで最高の演技をした精神力は素晴らしかった。惜しくも優勝はならなかったけど、真央ちゃんの凄さをあらためて世界に見せつけた大会だった。まだまだ若いし、今頂点に立ってしまうよりむしろよかったのではないか。これからの真央ちゃんの歩む道のりをしっかりと見届けたいと思わせてくれた。


キミー・マイスナーさん

めずらしく冒頭のルッツで着氷が乱れる。次のフリップの後にトリプルトウループをつけたが素人目にも明らかに回転が足りていなかった(ダウングレードされている)。本来は力のある人なのだけど、今回はあまりにも素晴らしい演技二つに挟まれてしまって少し影が薄かった印象。


安藤美姫さん:メンデルスゾーン ヴァイオリン協奏曲

肩に不安はあるものの調子はいいという情報が入っていて楽しみに見た。トリプルルッツ–トリプルループのコンビネーションは華麗に決めて見せた。この組み合わせは今大会では彼女だけが採り入れていた難度の高いもので、あらためてジャンプの安藤美姫としての存在をアピールした。続くサルコウは事前のインタビューなどから4回転にするものと思っていたが3回転に抑えてきた。結果的にはこの選択が効を奏したことになるが、どういう判断だったのか興味深いところ。あるいは真央ちゃんとの点差を意識したモロゾフ一流の冷徹な計算がはたらいたのだろうか。

ストレートラインステップはSPに比べるとややおとなしめだったろうか。しかしとにかく高度なプログラムをミスなく滑り切ったのが素晴らしい。決して表現力が持ち味の選手というわけではないが冒頭に細やかな手足の動きを配するなどメンデルスゾーンの音楽の世界を表現しようという意図も十分に感じられた。

演技が終わると真央ちゃんとどちらが上にいくかと固唾をのんで見守ったが安藤さんが1位と出て驚くと同時にうれしくなった。昨シーズンの姿があまりに痛々しくて、今シーズンはもう一度スケートにうちこむと決意した彼女を思い入れを持って応援してきたので感慨無量だった。荒川さんの輝いた姿を見てスケートへの情熱を取り戻し、基礎から練習し直して強い決意で臨んだ彼女だけど今シーズンも決して平坦な道のりではなかった。フランス大会では腰痛を起こし、グランプリファイナルでは体調不良から散々の成績になり控え室で号泣したともいう。全日本では演技中に肩を脱臼するというアクシデントにも見舞われた。それでも輝いた自分を取り戻そうと強い気持ちで自分を信じてスケートに取り組んできた彼女の努力がこうして華々しい成果となって報われたのは本当によかった。心からおめでとうと言って上げたい。


女子シングルに関しては事前に予想、というより希望していた通りの結果になった。素晴らしい戦いを見せてくれた選手のみなさんに心から感謝したい。

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世界選手権 アイスダンス FD

2007年3月24日

昨日行われたアイスダンスのフリーについても少し。


渡辺&木戸組:幻想即興曲

現役最後となる演技、音楽にのってとてものびやかに踊っているように見えた。この二人としては最高の演技だったと思う。木戸選手は最後感極まって涙をあふれさせていた。解説の宮本さんも涙声だったように聞こえた。世界選手権では自己最高となる15位は立派な成果だった。長い間お疲れ様でしたと伝えたい。


デュブレイユ&ローゾン組:At last

さすがに円熟の大人のダンスを見せてくれた。二人の雰囲気がとてもお洒落で見入ってしまう。点数は惜しくもデンコワ&スタヴィスキー組に抜かれてしまうが貫禄の演技だった。


ベルビン&アゴスト組:アメリ

今シーズン不調だったカップルだがこの大舞台にはいい状態で臨めた模様。最初のトゥイズルでベルビンさんがややつまずいてしまうミスはあったが、軽やかでいきいきとしたダンスを披露してくれた。前のフリーダンスは「伝わってくるものが何もない」というような辛口の評価が目立ったが、この「アメリ」は心に残るとてもいいプログラムだったと思う。最後のテンポを上げながら盛り上げていくところなどは実によかった。


デロベル&シェーンフェルダー組

このカップルはいつも独特の雰囲気のプログラムを用意してくる。正直にいうとあまり自分の好みではないが貴重な個性だと思う。ユーロで優勝し勢いにのって東京に乗り込んできたが、惜しくもメダルには届かなかった。


デンコワ&スタヴィスキー組

白い衣装でモーツァルトの「レクイエム」を演じ、天上的で幻想的な雰囲気を作り出した。まるで氷の上が天国になってしまったかのようだった。独創的な表現力は王者と呼ばれるに相応しいと思った。見事な2年連続の世界チャンピオン。


ドムニナ&シャバリン組:韃靼人の踊り

今シーズン勢いにのり躍進を遂げたカップル。スピードと躍動感に溢れ素晴らしい演技だと思った。場内の観客も熱狂していた。点数が思ったほど伸びなかった理由はよくわからない。場内もかなり不満そうな様子が伝わってきた。それでもこれからが楽しみな、ロシアにとっては頼りになるカップルだ。

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世界選手権 女子シングル SP

2007年3月24日

ついに始まったお待ちかねの女子シングル。誰もが予想しない驚きの展開になった。


カロリーナ・コストナーさん:パッヘルベルのカノン

スピードに乗って力強い演技を見せてくれた。ユーロでの好調を維持できている模様。ジャンプはトリノオリンピックの頃とは見違えるほど高さがあり安定していた。長い手足をいかしたスケールの大きな演技だった。フリーもこの調子ならメダル争いに加わってくるはず。


キミー・マイスナーさん

練習での不調が伝えられていたが本番はノーミスの見事な演技。3回転–3回転のコンビネーションジャンプはもちろん、ステップなども細かく丁寧に踏んでみせてくれた。GPSのフランス大会の際紛失した白の衣装は新調しなかったようで黒の衣装での演技だった。


キム・ヨナさん:ムーラン・ルージュ

同じく腰の痛みによる不調が伝えられていて心配したが、いざ始まってみればノーミスの会心の演技。負担がかかるだろうにビールマンスピンもこなし、イナバウアーも反っていた。

SPを終えて首位に立ち、初出場で初優勝も見えてきた。フリーは時間が長く要素の数が多いので、腰の状態が耐えられるか、スタミナがもつかがカギになるだろう。


ユリア・シェベシュチェンさん:シューベルト セレナーデ

ルッツの着氷が乱れたがミスを最小限に抑えベテランの底力を見せた。あまりきれいではないがビールマンスピンも見せるなど、新ルールへの対応に努力したこともアピールしていた。


中野友加里さん:SAYURI

最初のルッツの着氷の流れが悪かったがうまくダブルトウループをつけられた。次のフリップとともに巻き足も目立つなどよくも悪くも中野さんらしい演技。ステップもしっかりと丁寧に踏み、得意のドーナツスピンに加えビールマンスピンも見せるなど多彩な技を披露してくれた。


サラ・マイヤーさん:アランフェス協奏曲

ジャンプの着氷に乱れが目立った。それでもあの抜群のスタイルには見惚れてしまう。今シーズンのフリーはお気に入りのプログラムなのでぜひとも放送してくれることを願いたい。


安藤美姫さん:シェエラザード

肩の調子はまだ万全ではないと語っていたので少し不安も感じながら見守っていたけどミスのない完璧な演技で安心した。スピンでのビールマンポジションを欠いたのが唯一の影響だっただろうか。ステップは激しい動きなのでどこまでやれるのか最も心配していたけど迫力満点で実に素晴らしかった。

練習では4回転を成功させたそうで、フリーで挑戦してくるかが注目される。いい位置につけているので充実した演技を見せられればメダルはもとより優勝も見えてくるかも知れない。


浅田真央ちゃん:ショパン ノクターン第2番

6分間練習をリンクサイドで待つ表情にただならぬ緊張感が漂っていたので真央ちゃんもやはりプレッシャーを感じているんだな、と思った。それでも演技が始まると最初のルッツを軽々と成功させたので一安心。しかしその後コンビネーションジャンプでまさかの失敗。後ろにつけたループがすっぽ抜けてシングルになってしまった。真央ちゃんのループの失敗というのはほとんど見たことがない気がする。それでも気持ちを切らさずにそのほかの要素はきっちりとこなし成長したところも見せてくれた。

全体の動きはそう悪くは見えなかったので調子を落としているというわけではないように思う。あれはちょっと魔がさしたというところだろうか。首位とは10点差をつけられてしまったが、ヨナさんも安藤さんも状態にやや不安を抱えていることもあり、フリーで完璧な演技をすれば逆転も難しくはないはず。真央ちゃんにはちょうどいいハンディキャップといってもいいと思う。圧倒的な優勝候補の思わぬつまづきで、先の読めないある意味ではおもしろい展開となった。


エミリー・ヒューズさん:カルメン

彼女らしい元気一杯の演技。あまりカルメンらしくは見えないけどこれはこれで楽しくていい。上体をひねった変わったポジションのシットスピンも板についてきた。


アリッサ・シズニーさん

フリップは転倒、アクセルはパンクしてハーフに。相変わらずジャンプがガタガタ。それでも怪しい着氷ながらルッツを降りると後ろにダブルトウループをつけたところに意地を見た。世界一美しいスピンをはじめほかの要素は本当に美しいのに実にもったいない。フリーもぜひ見たいけどこの順位では放送してくれるかどうか…。


エレーナ・ソコロワさん:トゥーランドット

ベテランと呼ぶのは気の毒な笑顔のかわいいソコロワさん。今シーズンは調子の波が激しかったようだけど今回は元気なところを見せてくれた。ロシアが未だに彼女をエースとして送り出さなければならないところに苦しい台所事情が窺えるが、それはともかくこうして長いことファンを楽しませてくれていることに感謝したい。


真央ちゃんの出遅れは驚いたが、冷静にみればこれでメダル争いは混沌としてきておもしろくなったといえると思う。明日で競技は終わってしまうけど、真央ちゃんを含めてみんな会心の演技をしてハイレベルな争いになることを祈りたい。

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世界選手権 ペア フリー

2007年3月23日

昨日行われたペアのフリーについても簡単に感想を。


井上&ボールドウィン組:プッチーニ・メドレー

スロートリプルアクセルは転倒。スロートリプルループも失敗したり、ソロジャンプではめずらしく怜奈さんの方にミスが出たりと本来の力は出し切れなかった印象。それでも生まれ育った日本で現役最後の演技を披露するという目的を達した充実感は感じていたのではないだろうか。中間に配された「わたしのお父さん」のメロディーは怜奈さんの思いの込められたものであったはず。病気や国籍の変更など困難を乗り越えて競技を続け、世界の一線で戦ってきた怜奈さんの努力を心から讃えて上げたいと思う。


サフチェンコ&ショルコヴィ組:Mission

技への入り方に工夫の凝らされた高難度、高密度のプログラム。高い技術をアピールする演技だった。中間のオーボエだかコール・アングレだかのメロディーがとてもきれいで、SPよりずっと心地よく見ることができた。


申&趙組:タイスの瞑想曲

ひとまずは競技生活の区切りとなる大会を最高の演技で締めくくってくれた。力強く、情感あふれる「タイスの瞑想曲」だった。Sports@niftyの記事によると彼らがこの曲を選んだのはやはりソルトレークオリンピック金メダルのベレズナヤ&シハルリーゼ組を意識してのことだったらしい。国際大会にデビューした頃の彼らは決してこうした曲が似合うような存在ではなかった。あれから時を経て、技だけでなく表現力でも長足の進歩を遂げ、今やその美しさでも世界のトップに立つまでになった。

少し休んだ上で数年後に復帰することも視野に入れているとのこと。ぜひともバンクーバーオリンピックではまた彼らの姿を見たいものだ。もちろん、悲願の金メダルも大いに期待している。でもひとまず今は一言、長い間お疲れ様でした。


川口&スミルノフ組

「ブラジル風バッハ第5番」のアリアに乗せてしなやかで美しい演技を披露してくれた。いくつかミスはあったが全体には好印象だったので点数が思いのほか伸びなかった理由はよくわからない。あるいは最初のジャンプシークエンスがシークエンスと見做されずに要素が一つ減ってしまったというような事情でもあったのだろうか。


今シーズンが最後とも言われているベテランペアのぺトロワ&ティホノフ組とシュデク&シュデク組が怪我のために棄権してしまったのは残念だった。特にシュデク夫妻は引退を明言しており、自国開催の欧州選手権を最後にしてもよかったものを日本のファンに挨拶するためにこの大会に参加したとのことでもあり、6分間練習の最中のアクシデントによる棄権は悔やみ切れない思いでいることと思う。ドロタさんは号泣していたそうで心が痛む。とにかく遠い日本にまでやってきてくれたことにありがとうといいたいと思う。

追記:24日16時30分

金メダルを獲得した申&趙組が結婚することを発表した。ぴったりと息の合った演技の様子から二人の仲についても以前から取り沙汰されていたけど、これまではプライヴェートについて聞かれるのはあまり好まない様子だった。ひとまず競技から退くのを機にはっきりとさせておくことにした模様。

こうならなければ不思議というほど二人はお似合いのカップルだった。やはりそうだろうな、というのが多くのファンの気持ちだと思う。どうぞ末永くお幸せに。ついでにバンクーバーオリンピックには夫婦ペアとして出場して下さい(ツァオ&ツァオ組ということになるのかな?)、とも言っておく。

追記:25日18時00分

川口&スミルノフ組はトリプルトウループ–トリプルトウループのジャンプシークエンスが、最初のジャンプでスミルノフ選手の着氷が大きく乱れ、次のジャンプとの間が空き過ぎてしまったためにシークエンスと見做されなかった。このためにその後の単独のダブルアクセルがカウントされず、得点が伸びない要因となった。

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高橋大輔選手 銀メダルおめでとう!!

2007年3月22日

はらはらしながらも期待をかけて応援していた高橋選手が素晴らしい内容で銀メダルを獲得した。いい結果を残しても今までどうも半信半疑だったけど、本当に頼もしく成長してくれたと思う。この競技のファンをやってきてよかったと思える一日だった。


織田信成選手:Mission impossible

最初のトリプルアクセルからの3連続のコンビネーションは成功。三つ目のアクセルはおそらくトリプルの予定をダブルにしたものと思われる。全体にジャンプの構成が物足りなくなってしまった。またしてもザヤック・ルールに引っかかってしまったらしいが詳細は私にはわからなかった。ダブルアクセルを三度も跳ぶなどバランスも悪かったと思う。

直前にプログラムを変更したことで振り付けの通りに滑ることに専念している感じでやや薄味の演技という印象を受けた。チャイコフスキーの交響曲は彼にはなかなか難しいプログラムだったとは思うが、個人的にはやると決めたからには最後まで通して欲しかった。それでもフリー6位、総合7位の成績は地力のあるところを見せつけた結果ともいえる。今シーズンは全体にやや低調で、進むべき方向性に迷いも感じられたが、この経験を今後にいかせばさらに飛躍することができるはず。


アルバン・プレオベール選手

いつも通りの楽しいプログラム。これだけの大舞台で普段と変わらない演技が見せられるのは大した度胸だと思う。きれいに決まらなかったが彼にも4回転ジャンプがあるとは初めて知った。


トマーシュ・ヴェルネル選手

4回転トウループを2回決めるなどSPとはうってかわって会心の演技。ストレートラインステップでバランスを崩し最後のフリップで転倒するなどもったいないミスもあったが、世界のトップも狙えるなかなかの逸材だということを思い知らされた。


エヴァン・ライザチェク選手:カルメン

6分間練習で4回転–3回転のコンビネーションをクリーンに決める場面をカメラがとらえていたが、いざ本番では4回転の後オーヴァーターンしてしまう。トリプルアクセルからのコンビネーションもきれいに決まらず細かい点の取りこぼしが目につく演技だった。フリーの得意な彼にしては不本意な結果になってしまった。


ジョニー・ウィアー選手:ナザレの子

彼も細かいミスの目につく演技。荒川さんも仰っていた通りシーズン前半には明らかにスタミナ不足を露呈してしまったような演技が続いていたことを思えばよくできた方だと思う。彼も織田選手と同じく少し壁にぶち当たってしまっている印象がある。


ステファン・ランビエール選手

SPが覇気のない感じの演技だったので調子が悪いのかと思ったが、冒頭から苦手のトリプルアクセルを成功させるなど充実した演技を見せてくれた。二度目の4回転が決まらないなど彼らしくないところもあったが、今シーズンを通して弱気な発言を繰り返してきたことを思えばよくぞこれだけの状態に整えてきたと思う。プログラムの完成度としては満足のいくものではないが、実力のあるところを見せつけるフリーの演技だった。


ブライアン・ジュベール選手

冒頭の4回転トウループは彼にしては不安定な感じのジャンプだった。二つ目の4回転を回避したのはランビエール選手が一つしかクリーンに決められなかったのを受けてのことなのだろうか。彼にしては消極的な選択だった。全体にシーズン前半に比べて動きが重たく感じられた。それでもやはり今現在の第一人者としての実力を見せつける演技だった。


高橋大輔選手:オペラ座の怪人

冒頭の4回転トウループは手をついてしまう。しかしその後はほとんどミスのない充実した演技を見せてくれた。特に後半に集められたジャンプは苦しいはずだが見事に決めていた。ルッツやフリップの質はとてもよかったと思う。ステップは一番いい時に比べると少し切れが甘かったように見えたが、ともかくこのハードなプログラムを最後まで疲れを見せずに滑り切ったということが素晴らしい。

演技後は涙を見せていたが、今まで何度も経験してきた悔しい思いをこの演技に全てぶつけることができたのだろう。ジュベール選手が決して会心の出来ではなかったこともあり、金メダルを取らせて上げたかったがSPのわずかなミスが響いて惜しくも届かなかった。しかし日本男子初の銀メダルは素晴らしい快挙。ファンの一人としてこの結果を誇りに思うし、感動を与えてくれたことにありがとうといいたい。日本のフィギュアスケートファンにとって記念すべき日になった。


ジェフリー・バトル選手

彼の今の状況からすれば無理に4回転に挑む必要はなかったのではないかという気がする。SPは怪我の影響を感じさせない充実した演技だったが、フリーではミスを連発してしまった。それでもやはり彼らしいきれいなスケーティングは見事だった。


終わってみれば結局最終グループの6人全てが4回転に挑戦し、前のグループでもヴェルネル選手が2回成功させるなど、男子は再び4回転の時代が戻ってきたことを印象づける大会となった。その中で日本の高橋選手が世界のトップを争っているというのはファンにとって実に頼もしいこと。終了後のインタビューで高橋選手本人もコーチの本田さんもさらに上を目指す意欲を明言しており、今後がますます楽しみになる。

追記:23日18時50分

織田選手はコンビネーションジャンプを4回跳んでしまったために最後のコンビネーションに点がつかなかった。プログラム変更についてはSports@nifty青嶋ひろのさんのご意見に賛成。

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世界選手権 男子シングル SP

2007年3月21日

二日目はいよいよ男子シングルが登場。SPは12人の演技が堪能できた。


ライアン・ブラッドリー選手

バックフリップ以外の演技は初めて見た。欧米人にしては手足が長くなく、全体に丸みを帯びた体型は少し損をしている気がした。ストレートラインステップはエッジの深さは物足りないものの細かく丁寧に踏んでいる印象を受けた。


セルゲイ・ダヴィドフ選手

小柄な体格ながら丁寧できれいなスケーティングが印象的。サーキュラーステップなどは丁寧でとてもよかったと思う。シーズン序盤にはレベル1という厳しい認定をもらっていたそうだけど、今回はもっと高く評価されたのではないかと思う。


織田信成選手:Fly me to the moon

滑り出しから動きが硬くスピードに乗れていない感じ。トリプルアクセルはハーフアクセルになり点数が付かず。ちょっと右足を力んで大きく振り過ぎていたように見えた。スピンはランビエールの不調もあり一番よかったように見えた。


トマーシュ・ヴェルネル選手

あのピンクの衣装で「トッカータとフーガ」はちょっとコミカルに見えてしまうと思う。アクセルで失敗するなどユーロでの活躍からはほど遠い出来になってしまった。


ジェフリー・バトル選手

怪我でシーズン前半を棒に振り状態が懸念されたが大舞台に照準を合わせて調整できた模様。ジャンプに危ないところもあったものの全体には素晴らしい出来だった。ステップは高橋選手ほどエッジは深くないものの流れるような美しさがあった。


エヴァン・ライザチェク選手

4回転は手をついてステップアウト、二つ目のダブルトウループはカウントされないはず。それでもSPの苦手な彼にしてはまずまずの出来だったのではないか。首位との差は小さくないもののフリーでの爆発的な巻き返しが期待できる選手なので逆転優勝の可能性も十分にあると思う。


ステファン・ランビエール選手

滑り出しから覇気のない表情で調子が悪そうなのが窺える。苦手のトリプルアクセルの転倒は予想の範囲内にしても、トウループからのコンビネーションが3回転–2回転になってしまったのには驚かされた。スピンにもいつものスピードがなかったように思う。あの出来にしてはPCSが高かったような気がする。過去の実績に助けられたという面もあったのではないか。


ブライアン・ジュベール選手

直前に負った怪我の影響が懸念されていたが、見たところ全く影響はなかったようだった。4回転–3回転のコンビネーションジャンプは見事に成功。フリップで手をつくミスはあったものの、現在の第一人者としての貫禄を見せつける内容だった。金メダルに一歩近付いたと言えそうだ。


ジョニー・ウィアー選手

ジャンプの着氷などにちょっと怪しいところもあったが手堅くまとめた印象。今シーズンあまりいいところのなかった彼にしては、同じアメリカのライバル、ライザチェク選手を上回ったのは上出来というべきではないか。ただあの細かくリズムを刻んだ音楽に乗せたプログラムは彼の持ち味ではない気がする。


高橋大輔選手:チャイコフスキー ヴァイオリン協奏曲

最初のフリップの着氷が乱れ、その後のトウループが2回転にダウングレードされてしまった。ただその後のトリプルアクセルとルッツは軽い感触で跳べていたのでそれほど調子は悪くないように思う。フリップはむしろ余裕を持ち過ぎて着氷のタイミングが合わなくなってしまったように見えた。ステップは相変わらずじっくりたっぷりと見せてくれた。逆転優勝を狙うにはやや差が開いてしまったが、表彰台は十分に手が届く位置にあると思う。


アルバン・プレオベール選手

いつも通りのコミカルな演技。ただ高橋選手の直後ということもあってスケーティングの雑なところが目立ってしまったように思う。


エマニュエル・サンデュ選手

4回転は回避、トリプルアクセルも失敗。もう長いこと彼の会心の演技を見ていない気がする。独特の踊りのセンスは健在だった。


今日は放送時間一杯を使って多くの選手の演技を見せてくれて概ね満足。ただ素人のリンクサイドのゲストは一人でも多い気がするのに二人もいたのは余計だったのではないか。

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世界選手権 ペア SP

2007年3月20日

中野友加里さんの選手宣誓で始まった世界選手権。まずはペアのSPから感想。


張&張組

要素を一つ一つ丁寧にこなしているという感じで、彼らならではの豪快さがあまり感じられなかった。ただ目に見えるはっきりとしたミスはなかったので、点数があまり伸びなかったのは意外だった。ディダクションが2点あるがその理由はわからない。


龐&佟組

期待はしていたけど今シーズンは前半をずっとお休みしていたのでどれくらいできるか全く予想のつかなかったディフェンディング・チャンピオン。想像していたよりずっとよかった。スケーティングにのびやかさがあり、見惚れてしまう演技。これだけできるのなら当然メダル争いに加わってくるはず。


サフチェンコ&ショルコヴィ組

難度の高い技を詰め込んだ高度なプログラムを見せてくれた。高い身体能力が持ち味のペアで、一昔前の中国ペアを見ているような印象がある。もう少し情感を感じさせてくれるような演技だとなおいいのだけど。


井上&ボールドウィン組

得意のスロー・トリプルアクセルは残念ながら転倒。助走からややスピード感がなかったので無理そうだな、と思ったらやはりうまくいかなかった。それでも息の合った演技で魅了してくれた。サイドバイサイドのソロスピンの同調性は一番よかったのではないかと思う。


川口&スミルノフ組

ペア王国のロシア代表に急遽決まった川口悠子さんとアレクサンドル・スミルノフ選手の日露合同ペア。全体にバレエの素養を感じさせる身のこなしが素晴らしかった。先輩格のぺトロワ・ティホノフ組を上回る成績は実に立派の一言。活気のあるロンド主題のところにスパイラルを持ってくるなど振り付けにはやや問題があったような気がする。それでも人材難に苦しむ王国ロシアの救世主になりそうな予感は十分感じさせた。


申&趙組

技の力強さ、正確性、豊かな情感、どれをとっても素晴らしいの一言。ほかのペアとは別格だった。未だにパーソナルベストを更新できているというのに辞めてしまうのはやはりもったいない気がする。


ぺトロワ&ティホノフ組

息の長いペアで、この二人を見ないと世界選手権という感じがしない。細かいミスが出てしまって点数は冴えなかった。それでもこのペアらしい情感のある雰囲気は出ていたと思う。


もう毎回のことなのでいちいち言いたくないが、女子シングルの予告の合間に競技の様子を紹介するような放送のあり方にはほとほとうんざりする。某アナウンサー、「1988年のアルベールビルオリンピック」「1992年のリレハンメルオリンピック」「ふぎょうふくつ(不撓不屈?)」と言っているように聞こえたのは気のせい?

追記:21日18時10分

張&張組のディダクションはリフトでの回転数の超過の模様。点数が低かったのはディダクションに加えてリフト自体が0点となってしまったためらしい。確かにあのリフトは見ていて「あれ、いつもより余計に回っているのでは?」と思った。自分の観察眼も案外捨てたものではないな、とちょっと自信になった。

参考にさせていただいたサイト

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世界選手権 順位希望

2007年3月19日

いよいよ明日開幕するフィギュアスケートの世界選手権東京大会。事前の展望を簡単に述べておきたい。予想というよりは私の勝手な希望なのでそのつもりで。


女子シングル

1位安藤美姫さん
2位浅田真央ちゃん
3位キム・ヨナさん

真央ちゃんに死角はなさそうな気はするけど、今シーズンは安藤さんに思い入れを持って応援してきたのでここでも筋を通しておきたい。ヨナさんは正直ちょっと厳しいかな、とは思う。彼女のベストの演技にはならないとしても、ヨナさんらしいしなやかな演技を見せてくれることを期待したい。

中野さんは白い衣装のシンデレラを見せてくれるようで楽しみ。もちろんメダルの可能性も十分にある。後はやはり何といってもシズニーさんに注目。ジャンプは相変わらず不安定なようではらはらしながら見守ることになりそうだけど、世界一美しいスピンをはじめ総合的な美しさで魅了してくれるはず。


男子シングル

1位エヴァン・ライザチェク選手
2位高橋大輔選手
3位ブライアン・ジュベール選手

今最も勢いを感じさせるのはライザチェク選手だと思うので彼を一番に推しておく。高橋選手にはもちろん期待しているし、優勝の可能性も高いと思うけど、やはり彼の場合はあまり過度な期待をかけずに見守るのが正しい観戦マナーだと思う。でないと心臓に悪過ぎる。ジュベール選手は怪我からの回復具合がカギを握るだろう。当然優勝の可能性も十分にある。

織田選手はプログラムを変えたそうなのでそれが吉と出るか、凶と出るか。少しジュベール選手と印象がかぶってしまうプログラムになりそうなので損な気もするが…。


ペア

1位申&趙組
2位ぺトロワ&ティホノフ組
3位井上&ボールドウィン組

優勝候補筆頭は当然中国のベテランペア。数年後の復帰の可能性に含みを持たせてはいるけど一応今シーズンが最後になるようなので、ぜひ有終の美を飾る素晴らしい演技を期待したい。2位以下は全くの個人的な好み。

サフチェンコ&ショルコヴィ組の評価が急上昇中のようだけど自分としてはまだこのペアの演技に十分魅了されたという感触がないので、この大会でじっくりとお手並みを拝見することにしたい。


アイスダンス

1位デンコワ&スタヴィスキー組
2位デュブレイユ&ローゾン組
3位ドムニナ&シャバリン組

アイスダンスは正直よくわからないのだけど、デンコワ&スタヴィスキー組の天上的な美しさとデュブレイユ&ローゾン組の大人の洒落た味わいの演技との対決になると思う。自分としてはブルガリアのカップルの方を一押しとしておく。ドムニナ&シャバリン組は勢いを感じさせる。

ベルビン&アゴスト組はこのところ少し評価を下げてしまっているようだけど、変更したプログラムを十分にこなせているかどうかが上位進出のカギを握るだろう。


そのほか注目選手を挙げていくときりがないのでこれくらいにする。いろいろと希望はたくさんあるけど、とにかく選手達がみな自分の実力を発揮し、怪我等の事故がなく大会が滞りなく運営されることを一番の希望としておきたい。

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心をとらえたギリシャのマーメイド

2007年3月19日

現在行われている世界水泳メルボルン大会、シンクロナイズド・スイミングのソロTRで印象に残る演技を披露してくれた選手がいた。ギリシャ代表のデスポイナ・ソロムさん。

陸上での動作からすでに心を奪われた。私はシンクロについては技術的なことは全くわからないのだけど、フィギュアスケートに比べると無機質でメカニックな動きが目立つという印象があり、それがフィギュアスケートほどにはこの競技に夢中になれない理由でもあった。しかしこの選手はシンクロにしてはめずらしいほど動きにしなやかさが感じられ、音楽のとらえ方や表情の作り方に繊細で豊かな感性を感じさせるものがあった。それは色っぽさ、なまめかしさといってもいいようなものだったと思う。

ギリシャというとアテネオリンピックの時に女子のバレーボールチームが体の線がはっきりと出るユニフォームを着て話題になったが、あの時に受けたのと似た印象を持った。実況を真面目に聞いていなかったのだけど、確か16歳と言っていた気がする。とすると真央ちゃんと同じ歳ということか。随分と対照的なアスリートではある。結果は8位だったけどまだこれから伸びる余地が十分にありそうだ。名前を記憶に留めておきたいと思った。

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「おふくろさん」アレンジについての省察

2007年3月18日

このところ世間を騒がせている「おふくろさん」騒動、これまでいろいろと識者の解説や一般の方のコメントなどを見てきたが、この曲についてあまり思い入れがないと思しき人がおもしろがって法律論を繰り広げているようなものが多く、参考になる意見はあまりなかった。冒頭に付け加えられたセリフは川内氏の同一性保持権の侵害にあたるのかも知れないが、事前に氏の了承を取り付けていなかったのは当時の森さんの所属事務所スタッフの事務処理のミスであり、森さんの人間性云々とは別次元の問題である。この件は法律論は本質ではなく、おそらくそれ以前からくすぶっていた感情的対立がこの問題をきっかけに露呈したということなのだと思う。

川内氏が森さんの何に対して腹を立てているのかはよくわからない。私は報道で知る事実以外のことはわからないし、森さんのファンであるためにこのことに中立的立場からコメントするのは難しいので今回の騒動自体について深く立ち入ることは避けたいと思う。ここではほかの人があまりふれていない、この「おふくろさん」のアレンジの意味論について少し述べてみたい。


この問題が顕在化した当初に森さんが「この曲は森進一の『おふくろさん』として親しまれている」と発言したことが波紋を呼んだ。しかし実際この曲が森さんの歌唱とは切っても切れない関係にあるのは間違いないはずだ。

それは一つには森さんの歌唱があまりにも個性的で、そうしたスタイルがすでに深く人々に浸透してしまっているためである。みんなものまねはするけど、まともなカヴァーをするなどということは事実上困難だろう。私が唯一聴いたことがある"カヴァー"と呼び得るものは、NHKの『二人のビッグショー』で上田正樹さんと共演した時に上田さんが歌ったものである。(因みにこの時森さんは「悲しい色やね」を歌ったのだがこれがまた実に絶品だった。)

今回の騒動を受けて吉幾三さんが「歌いたい」と話しているというが、果たして音楽ファンはそれを許すのだろうか。私は吉さんの歌も好きだし、吉さんもまたそれなりに味わいのある「おふくろさん」を聴かせてくれることと思うが、こうした経緯で吉さんがこの歌を歌うということになれば、とても喜んで聴く気にはなれない。


それはともかくとして、もう一つこの歌を森さんと強く結びつけているのは、森さん自身の母を思う気持ちがこの歌に込められているということである。これを聴く人は誰もが森さん自身の人生と重ね合わせて聴いているはずである。

母思いの森さんにとってそもそも母への愛は歌を歌うことの動機の根幹をなしていた。だからこそ1971年に「おふくろさん」が発表されるや否やまたたく間に人気曲になっていったのだった。しかし73年、その最愛の母との死別により森さんは歌い続ける意欲を失ってしまう。

立ち直るきっかけになったのは74年に出会った「襟裳岬」だった。この歌を歌うことで再び歌手として生きていく意欲を取り戻していったのだった。「おふくろさん」はこうした森さん自身の人生の歩みに思いを馳せることなく鑑賞するのは不可能な曲である。


さてその問題となっている冒頭に短いセリフを加えたアレンジだが、私は以前から何度か聴いていて、今の森さんの気持ちを無理なく歌えるようにしたうまい工夫だな、と感じていた。というのも、母親を亡くした後の森さんにとって、この「おふくろさん」はリリースされた当時と同じ気持ちでは歌えるはずがないからだ。

実をいうと私は少し勘違いをしていて、最初にこの騒動を知った時は川内氏の作品が全て歌えなくなるとしたら「うさぎ」も歌えなくなってしまうのか、と思い込んでしまっていた。実際は「うさぎ」は保富康午氏の作詞で、今回の騒動の影響は受けずに済むと知って安堵すると同時に、問題のセリフを作ったのがこの保富氏だと知って腑に落ちる思いがした。

うさぎ」という曲はあるいはご存知ない方も多いと思われるが、やはり母ヘの思いを歌った素晴らしい名曲で、これこそまさに森さんでなければ歌えない逸品である。歌詞は森さん自身をモデルとしたと聞いている。ぜひ何かの機会に聴いてみていただきたい作品である。

思うに母亡き後森さんにとって母への思いを歌う意味はそれ以前と違ったものにならざるを得なかった。そのことを受けて作られたのが「うさぎ」であり「おふくろさん」冒頭のセリフだったのだろう。実際に森さんはあの後しばらくは「おふくろさん」は歌えなかったと述べている。あのセリフは決して伊達や酔狂で付け加えられたのではなく、新たな気持ちで「おふくろさん」を歌えるようになるためになくてはならないものだったのだと思う。

現状では「三文芝居」といった類の言葉ばかりが一人歩きしてしまっている感があるが、このアレンジが内的必然に基づいてなされたのだということが十分に理解されれば少しは事態の進展に向かうのではないだろうか。当面は「おふくろさん」を封印せざるを得ないとすれば、しばらくはこのまだ世の中に十分に知られているとはいえない「うさぎ」を歌う機会を増やしていくといいと思う。


孝行息子の日本代表のような存在である森さんがあのような悲しい別れを体験しなければならなかったということは、森さん自身ばかりでなく日本の音楽ファン全体の心性にも大きな影響を与えているといっても大袈裟ではないと思う。その時の森さんの絶望がいかに深いものであったか、今は私にも少しはわかる気がする。歌い続けるどころか、生きていく意欲さえ失ってしまっていたのではないだろうか。森さんのその心の痛みは、今も少しも変わらずに胸に生き続けているのだと推察する。だからこそあのような人の心を揺さぶる歌を歌うことができるのだと思う。

日本を代表する人気歌手でありながら絶えずこうしたトラブルに巻き込まれるというのはよほど不器用な生き方しかできない人なのに違いない。森さんの歌唱による「おふくろさん」が聴けなくなるとすれば日本の音楽界にとって重大な損失でもある。この問題が早く終息して、森さんに平穏な日々が訪れることを願わずにはいられない。

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「N響アワー」ベストソリスト2006

2007年3月18日

今日の『N響アワー』はN響会員が選ぶ2006年のベストソリスト10人の発表。最初の方はちゃんと見ていなかったのだけどなかなか楽しかった。簡単に感想を記しておきたい。


エレーヌ・グリモーさん バルトーク ピアノ協奏曲第3番 第1楽章

内省的でありながら洒脱な味わいも聴かせるという困難な二つの課題を苦もなく両立させていた。音色に香り立つような華やかさがある。あまりよく知らない曲だけど楽しんで聴けた。横顔の美しさには陶然となってしまう。


クリスティアン・テツラフさん ブラームス ヴァイオリン協奏曲 第3楽章

端正でクールな外見に似合わぬ熱演だった。ただ音色があまりきれいに聴こえなかった。


ザビーネ・マイヤーさん モーツァルト クラリネット協奏曲 第2楽章

バセット・クラリネットによる演奏。ところどころにこの楽器ならではの朴訥とした低音の響きが聴かれる。大好きなこの楽章、やはり聴いていると癒される。音色も歌い回しも素晴らしかった。私の好みからするとテンポが少し速かった気がする。


庄司紗矢香さん ベートーヴェン ヴァイオリン協奏曲 第3楽章

庄司さんの演奏はこれまで何度かTVで見たことがあるのだけどいずれもプロコフィエフみたいな小難しい曲ばかりだったので、こうしたポピュラーな名曲を聴けたのはよかった。華奢な外見から受ける印象に似てやや神経質な感じのする演奏かな、と思った。もう少し音色にふくよかさがあるとよかったと思う。それにしてもベートーヴェンはこういうロンド風の主題を作るのは天才的にうまいな、と聴く度に感嘆する。ノリントンさんの指揮は気のせいかも知れないがアクセントの置き方にやや癖があるように感じた。


いろんなソリストの演奏が聴けて楽しかったが、ひいき目もあるだろうけど私にはやはりグリモーさんの演奏が一番聴き応えがあった。豊かな音楽性とあのエレガントな美しさにはますます惹きつけられてしまう。

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太田由希奈さんへの質問

2007年3月18日

『フィギュアスケートDays』のオフィシャルサイトで実施されていた太田由希奈さんへの質問の募集、うろ覚えで締切は今週一杯と思っていたら16日(金)が締切だった。やってしまった!! と思ったけどフォームがまだ設置されていたので一応送信してみた。「ご質問は送信されました。」というレスポンスが返ってきたので向こうのサーバに届くことは届いたのかな、と思う。質問の方はまあどちらでもいいけど、「いつも応援しています」というメッセージを書いておいたので、それだけでもご本人に伝わることを願っている。

因みに質問したのは2点。

  • 普段どんな音楽を聴いていますか?
  • スケートで曲を表現する上で特に大切にしていることは何ですか?

あの豊かな表現力の秘訣は一体何なのか、ぜひ伺ってみたい。

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「カヴァレリア・ルスティカーナ」の舞台

2007年3月17日

昨日に引き続き朝日新聞の紙面から。土曜特集のbeにオペラ「カヴァレリア・ルスティカーナ」の舞台であるシチリア島のビッツィーニが紹介されている

私はこのオペラは全曲通して聴いたことはないのだけど、内容は二組の男女の愛憎が織りなす悲劇。あの美しい間奏曲はこうしたどろどろとした情念の渦巻くドラマの幕間を飾るものなのだと意識して聴くとまた違った味わいがある。

決闘というと私は「三人姉妹」を思い出す。決闘の場面自体は舞台に現れず、「トゥリッドゥが死んだ」という女性の叫びだけが悲劇の終幕を告げるというドラマツルギーは「三人姉妹」と共通するものがある。「カヴァレリア・ルスティカーナ」の初演が1890年、「三人姉妹」は1900年に完成し翌年1月に初演された。チェーホフがこのオペラを観たという可能性は…、どうなのだろう?

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小山実稚恵さん 朝日新聞夕刊に登場

2007年3月16日

今日の朝日新聞夕刊に小山実稚恵さんの記事が載っていた。ネットでも見られるのでまだの方はぜひどうぞ。

12年がかりで進行する連続リサイタルに挑戦中の小山さんだが、全24回のプログラムを既に書き終えてしまっているそうだ。年を経るうちに曲目などを変更したくなるような可能性は想定していないのだろうか。何ともスケールの大きな話ではある。

抱えている愛猫は"ルービンシュタイン"君と呼ぶらしい。小山さんというと私には技巧の冴えを持ち味とするピアニストという印象があるが、その彼女を以てしても頭の中で思い描く音楽と現実の演奏とのギャップに落胆してしまうのだという。あらためて音楽の奧深さを感じさせられる。

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ジャンプの見分け方 サルコウ

2007年3月13日

ジャンプの見分け方、最後に取り上げるのはサルコウである。例によって反時計回りの選手を基準にするので、時計回りの回転をする選手の場合は右と左が全て逆になるということを念頭において読んでいただきたい。


サルコウとは左足のインサイドで後ろ向きに滑りながらトウを突かずに跳ぶジャンプである。3種類あるエッジジャンプのうちの一つである。実際に跳ぶ際には左足を軸にターンをし右足を自然に前に出しながら踏み切るのが普通である。両足の前後関係からジャンプの回転と同じ方向に体をひねった状態になるのでトウループに次いで易しいとされている。見た目にも助走から踏み切りに至る動作の流れがとてもスムーズに感じられるジャンプである。

比較的難易度の低いジャンプであることから4回転を跳ぶ選手もいる。今のところ競技会での4回転ジャンプの成功例はトウループとサルコウしかない。女子で唯一4回転ジャンプを成功させた安藤美姫さんが跳んだのもこのサルコウである。


見分ける際には前述の通り助走から踏み切りへと至る動作の流れが最もスムーズなジャンプだということを意識しておくとわかりやすくなると思う。重要なポイントは踏み切りの時にトウを突かないエッジジャンプの一種ということである。これによってルッツ、フリップ、トウループと区別できる。前向きに踏み切るアクセルとは異なり後ろ向きに踏み切るのでこれも見分けるのは難しくない。比較的難しいと思われるのはループとの区別である。

サルコウはほとんど必ず踏み切り前にターンをし、その慣性を利用してジャンプの回転に移る。ループでもターンからすぐに踏み切るような跳び方をする場合もあるが、最も普通に見られるのは後ろ向きのままある程度の距離の助走をとって踏み切るケースである。このためジャンプの回転に移行するのに慣性を利用できず、両足の前後関係がジャンプの回転とは逆の状態になるので踏み切りへの動作が窮屈そうな印象を受ける。サルコウは左足を軸にしたターンから右足を前に出して踏み切る一連の動きがずっとスムーズで楽に跳んでいるように見える。こうした点に注意して見れば見分けるのは決して難しくない。


もう一つだけヒントをいうと荒川静香さんのトリノオリンピックでのフリー演技で、イナバウアーの後に跳んだコンビネーションジャンプの一つ目に跳んだのがサルコウである。この演技は録画して保存されている方も多いと思われるので、見ることができる場合はよく観察してみるといいと思う。流行語大賞にまで選ばれたイナバウアーなので、これからもTV番組等で放映される機会も多くあるはずである。録画が手元になくてもそうした機会を利用すれば覚えられるようになるだろう。


まとめ:サルコウの見分け方

  1. 左足のインサイドで後ろ向きに滑りながら右足を前に振り上げるようにして踏み切る。
  2. 助走から踏み切りへと至る動作の流れが最もスムーズなジャンプ。
  3. 3種類あるエッジジャンプのうちの一つ。
  4. 前向きに踏み切るアクセルとは違い後ろ向きの助走をとる。
  5. ループとは踏み切る直前の両足の前後関係が逆になり、ループに比べ楽に跳んでいるように見える。
  6. 荒川静香さんがトリノのフリーでイナバウアーの直後に跳んだジャンプ。
Figure skating_Jumps_Demonstration by Yukina Ota - YouTube
太田由希奈さんによる模範演技

目次

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音楽系バトン

2007年3月11日

いつも楽しいエピソードが満載で更新されるのを心待ちにしているももこさんのハイパークラシック♪に音楽関係のバトンがおいてあった。ももこさんみたいに命懸けのデートのような愉快なエピソードはないけど、おもしろそうなので自分もやってみようと思う。


音楽系バトン

1.最近良く聴く曲は?

本田美奈子 ミュージカル「十二夜」より「ララバイ」
いい夢を見られますように、との願いをこめて寝る前に聴いている。私はあまり夢は見ない方で、たまに見るのはろくでもないものばかりだけど。

2.テンション上がる曲は?

プリンセス・プリンセス「Diamonds」
私の音楽遍歴の原点ともいえる曲。音楽讃歌であり人生讃歌でもある中山加奈子さん作のこの詞と出会っていなかったら自分の音楽との接し方はまるで違ったものになっていたと思う。リズムとメロディーも私のツボを刺激するようで、今も聴くと血が騒ぐ。
ベートーヴェン ピアノ協奏曲第1番 第3楽章
私は癒しを求めてクラシックへの関心を深めてきたので、いわゆるアドレナリン湧出系の音楽はあまり好んで聴く方ではない。そんな私にも親しみやすい元気の出る曲というと何といってもこのベートーヴェン若き日の傑作。特にあのチャーミングなロンド主題は聴いていると心が浮き立ってくる。

3.切ない気分になる曲は?

Elsa 「T'en va pas」
高校生の時夕方のニュースのBGMとして流れているのを聴いて「何だ、この歌は?!」と驚愕した曲。聴く度に録音当時13歳のエルザさんのいたいけな歌声に無遠慮に胸を掻き鳴らされる思いがする。
プリンセス・プリンセス「ジュリアン」
これも中山加奈子さんのひたむきで真っ直ぐな詞が心にしみる名曲。「恋すると苦しくてあきらめようとするけれど/つぼみのままこの想いつむなんてできない」というフレーズなどは彼女の真骨頂である。とても好きなフレーズだったのだけど、美奈子さんが亡くなった時に自分は全くこの通りにできていなかったのだ、ということに突然気づかされた。今は少し心に痛い一節である。
ラフマニノフ ピアノ協奏曲第2番 第2楽章
敷居が高そうに見えて敬遠していたクラシックにはまるきっかけになった曲。最初に聴いたのがこの曲でなかったらこれほどクラシックを好きになっていなかったと思う。特に第2楽章は聴いていると切なくて胸が締めつけられるような気分になる。

4.カラオケでよく歌う曲は?

森進一 「襟裳岬」、「冬のリヴィエラ」
あまりカラオケはやらないし、特に最近はほとんど歌っていない。たまにある機会で歌うのは森さんの曲。特に「襟裳岬」は私にとって心の歌とでもいうべき存在で、カラオケで歌う機会こそ多くないもののいつも胸の中に鳴り響いている。この歌を口ずさむことでどれほど励まされてきたかわからない。

ほかに歌ったことはないけど歌えるようになれたらいいな、と思っているのは河島英五さん「酒と泪と男と女」、アリス「遠くで汽笛を聞きながら」など。「おふくろさん」は川内氏に叱られるといやなので今後も歌わない見込み。

5.癒される曲は?

本田美奈子 「この歌をfor you」
美奈子さんのやさしさに溢れた自作の詞が心にしみる逸品。大切な人を喪った悲しみをその人の歌声に癒してもらうというのは倒錯したことのようにも思えるが、一頃はこればかり聴いていた。
夏川りみ 「童神」
古謝美佐子さんのオリジナルの歌唱も素晴らしいけど私はりみさんの歌を愛聴している。透き通るようなやさしい歌声は心に安らぎを与えてくれる。
モーツァルト クラリネット協奏曲 第2楽章
モーツァルトの音楽は私には何だかハッピー過ぎてしっくりこないことが多いのだけど、例外的にツボにはまるのが晩年のこの作品。特に第2楽章は聴いていると崇高な気分になり、心が浄化されるような気がしてくる。
ラフマニノフ 晩祷
交響曲第2番については先日記事を書いたばかりなのでここでは彼の教会音楽を挙げておく。ピアノ音楽はよく知っているけど教会音楽は聴いたことがないという方にはぜひ一度聴いていただきたい作品。世俗作品にはない荘厳さに満ちているけど、ラフマニノフならではの旋律美はここでも健在である。聴いているとあまりの美しさにくらくらと目眩いを覚えるほど。アカペラコーラスがお好きという方には絶対のお薦め。

6.思い出のある曲は?

ダイアナ・ロス「If we hold on together」
洋楽には疎い私にとって数少ない思い入れのある曲。ある文学作品を初めて読んでいた時、近所で聴いている人がいたらしくて窓の外からこの曲が流れてきた。読み終えた時には作品から受けた深い感銘と共にこの曲のメロディーがすっかり頭にしみついていた。その作品は歌の世界とはかなり懸け離れた悲しみに満ちたものなのだけど、何となく繊細で叙情的なこのメロディーと合っているように思われた。このことについてはそのうちもっと詳しく書くかも知れない。

7.ライブで聴きたい曲は?

本田美奈子 「ラ・ボエーム」より「私の名はミミ」
美奈子さんに歌って欲しかった曲はいろいろあるけど、フジTVの特番で美奈子さんが「太陽のような存在になりたい」と語っていたと知って以来どうしてもミミと重ね合わせずにはいられなくなってしまった。これについてもいずれまた詳しく書くかも知れない。これはあの世に行ってからのお楽しみ♪ といっても美奈子さんと同じところに行ければの話だけど。

8.このバトンを5人に回してください

お時間のある方はぜひどうぞ。


書き終えてみて

他愛もないバトンと思って始めてみたけど書いているうちに興がのってきて、随分と自分の心のうちを吐き出したような気分になった。「心を込めて…」のライナーノートで井上鑑氏が「音楽を通して人が出会うことはたとえて言えば心の庭を見せてもらうことのようだ」と述べていた意味が少しわかった気がする。荒れ放題の私の庭は少しお見苦しかったかも知れないけどどうぞご容赦を。

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本田美奈子さん記念碑銘文 私案

2007年3月10日

以前に記した通り朝霞市本田美奈子さんの記念碑を設置することになった。これについては私も昨年四月の追悼展に行った後でこうした施設の建設について市役所に要望させていただいていたので、先日市役所にお礼のメッセージを送信しておいた。その序でといっては何だけど、記念碑をどういうものにするかは現在検討中とのことだったので、僭越ながらそこに刻まれる銘文について私が思っている案を提出させていただいた。


私が推薦したのは美奈子さん生前最後の作品となったミニアルバム「アメイジング・グレイス」のブックレットに記載されている美奈子さん手書きのメッセージである。美奈子さんは言葉を大切にする人で、いくつかの作品で作詞を手がけているほか詩やエッセイ風の文章も残している。いずれもみずみずしい鋭敏な感性による素晴らしいものばかりだが、このメッセージは私がとりわけ気に入っているものの一つである。歌とともに生きてきた自身の生涯を語った美しい文章で、ファンとしてのひいき目を抜きにして素晴らしいと思う。歌について語られた文章でこれに比肩し得るものとしては、私は紀貫之による古今集仮名序くらいしか思いつかない。不世出の歌姫の生涯を記念する碑に刻む銘文として実に相応しい文章である。最後の「このミニアルバムを…」以下の一文を削除すればそのまま使えると思う。

できることならここに全文を紹介したいのだけど著作権法的にどうなのかよくわからないのでやめておく。ただこのメッセージを見るだけのためにでもこのミニアルバムを手にしていただきたいと思う。それほど気高い美しさに満ちた稀に見る名文である。これを読むと美奈子さんの歌への取り組みが言葉への繊細な感性に基礎を置いているということが如実に理解できる。おそらく「笑顔」や「ありがとう」の詩などが候補に挙がっているものと思われるが、ぜひこの文章も選択肢の一つに加えていただきたいと思う。


メロディーが流れる仕組みも検討しているとのことだけど、これについては私はあまりこだわっていない。場所が朝霞駅前とのことなので、そもそも美奈子さんの音楽に聴き入るための施設とは考えにくい。これは美奈子さんの偉業を顕彰するための施設と理解するべきなのだと思う。単なるメロディーなのか、美奈子さん自身の歌声になるのかもあまりこだわっても仕方ないだろう。せっかく美奈子さんの美しい歌声が流れてきても、人混みの中で雑音や電車の騒音にかき消されてしまう可能性が大きいからだ。

単なるメロディーだとすると、曲は美奈子さんの持ち歌と見做し得るものに限定されるだろう。「アメイジング・グレイス」や「ジュピター」は除外されることになると思うが、美奈子さんの歌を使用することが可能だとすればこの限りではない。おそらくは「つばさ」を軸にして検討されることになると思う。個人的には「…マリリン」はやめて欲しいが、朝霞市民のみなさんや全国の美奈子ファンがそれで満足されるのなら強いて自分のわがままを通すつもりはない。


これは朝霞市が行う事業なので、基本的に大事なのは美奈子さんがこの地で育ったということを市民のみなさんが誇りに思ってもらえるような施設にするということだと思う。あまりファンとしてのエゴを押し通すことは慎みつつ成り行きを見守りたい。いずれにしても完成した記念碑をまた朝霞まで見に行くのが楽しみだ。

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森進一さん森昌子さんの長男がメジャーデビュー

2007年3月10日

昨日に引き続き森さん関連のニュース、といっても今回はおめでたい出来事。

森進一さんと森昌子さんの長男、森田貴寛さんがロックバンド ONE OK ROCK のヴォーカリスト Takaとしてメジャーデビューすることになった。貴寛さんはかつて当時の姓の森内貴寛の名でアイドルグループ NEWS のメンバーとして活動していたがその後 NEWS を脱退していた。私はこの間の経緯をよく把握していないのだけど、今回またロックバンドのメンバーとして音楽活動を再開することになったのは喜ばしい。ONE OK ROCK はインディーズで活躍してきたなかなかの実力派バンドらしい。偉大な両親に負けない活躍ができるか、実に楽しみだ。

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八代亜紀さん 河島英五さんの遺作を歌う

2007年3月 9日

このところ森進一さんの代表曲おふくろさん」を巡る騒動について書いた記事へのアクセスがこのサイトにしては異常な数に達していた。Yahoo!で「おふくろさん 騒動」で検索するとこのエントリーが一位に表示されていた(今は少し下がっている)のが原因である。このニュースを夕方にネットで知るとその日の『歌謡コンサート』をチェックしてその後すぐに記事を書いた。ワイドショーなどが一斉に報じるようになったのはその翌日からなので、この件について最も早い段階で反応したブログの一つだったのではないかと思う。ただ特に独自の情報があるわけでもないので、一位に表示されるというのは意外だった。せっかく来ていただいても新しい情報など何もなくて申し訳ないけれど。このサイトはどういうわけかYSTとの相性がいいようで、こういうことが時々ある。


この件について情報を追跡していたら思わぬ副産物があった。八代亜紀さんがこの春に七回忌を迎える河島英五さんの遺作「鰻谷」を歌ったというニュースである。このことは先月初めには明らかになり、すでにCDも発売されているそうだけど不覚にも最近まで知らなかった。今調べるとこの前の「歌謡コンサート」でも歌ったそうだ。

八代さんと河島さんというと河島さんが亡くなるほんの数ヵ月前にTVで共演していたのを思い出す。NHKの「二人のビッグショー」か何かだった。正確なことは知らないのだけどおそらく河島さん最後のTV出演だったのではないかと思う。その時はどこか体に不調があるとはとても思えないほど元気そうだったので、訃報を聞いた時には本当に驚いたものだった。二人とも絵心のある人で、八代さんは自身の大作を披露し、河島さんはその場で即興で人々が戯れる姿を描いてみせていたのが印象的だった。

もうあれから6年になろうとしているとは時の流れの早さに驚かされる。今度の新作には長男の翔馬さんがアレンジに参加し、先日のPRイベントには長女のあみるさんも駆けつけたという。二人とも名前をつけた時のエピソードなどを河島さんがインタビューで語るのをよく聞いていたので何となく他人のような気がしない。このスリーショットには感慨深いものがあった。6年経った今も河島さんは人々の心の中に生き続けていると感じさせられた。

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交響曲第2番にまつわるこぼれ話

2007年3月 7日

ラフマニノフの最高傑作の一つに「交響曲第2番 ホ短調 Op.27」という作品がある。私の最も好きなクラシックの名曲の一つで、紹介記事を書きたいのだけど思い入れが深すぎてなかなか言葉が出てこない。そこで内容についてはまたいずれかの機会に、ということにしてここではこの曲の演奏や受容の歴史にまつわるエピソードを、ややトリビアめいたことも含めて紹介してみたい。


この曲は1906年から翌年にかけて作曲された。完成したのはこの頃国内で起きた政情不安を逃れるために滞在していたドレスデンでのことだった。彼が交響曲を作曲していると知った指揮者のアルトゥール・ニキシュはそれを自分に献呈して欲しいと要請していた。しかしラフマニノフは曲を完成させるとそれを長年の恩師であるタネーエフに献呈したため、ニキシュとの仲は険悪になってしまったらしい。

初演は1908年ペテルブルクのマリインスキー劇場で作曲者自身の指揮で行われ、前例のない大失敗に終わった第1番とは対照的に熱狂的に迎えられた。"「悲愴」以来の傑作交響曲"とも評されたと伝えられている。しかしその後この曲は時の経過とともに人々から忘れ去られるに至る。

一般にラフマニノフは濃厚なロマンティシズムを湛えた作品で大衆からは熱狂的な支持を受けたが、批評家からは酷評されることの多い作曲家だった。ロマン主義からの離脱への志向が顕著になった20世紀にあってなおチャイコフスキーのような作風を頑なに堅持し続ける彼は、"保守的で没個性的な時代遅れの作曲家"と見做されていたのだ。それでもピアニストとしての圧倒的な名声の故もありピアノ作品についてはそれなりに評価されていた。しかし管弦楽作品の多くは正当な評価を受けず、顧みられることがなかったのである。

幸いなことに彼の管弦楽作品に共感を寄せる指揮者が少なからず登場することによって、交響曲についても次第にその真価を知られるようになってきた。壁の東側ではクルト・ザンデルリングさん、エヴゲニー・スヴェトラーノフさん、西側ではアンドレ・プレヴィンさんや指揮稼業を始めたヴラディーミル・アシュケナージさんらがその嚆矢となったようである。特にこの第2番はその叙情的な美しさの故に人気が高まっている。現在では多くの人気指揮者がレパートリーに加え、録音も数多く存在し実演される機会も少なくない。


ところで日本では1990年代にこの曲の受容史にちょっとした事件が起きた。フジTV系列で94年に放送された和久井映見さん主演のTVドラマ『妹よ』で、唐沢寿明さん演じる青年のお気に入りの曲としてこの作品が紹介されたのだった。当時このドラマはかなりの人気を誇り、この曲のことも世の中の話題になったようだ。

CDショップには「ラフマニノフの交響曲第2番のCDが欲しい」という客が増えたという。ところが当時ほとんどの店には在庫がなく対応に苦慮したそうで、中には「交響曲がそんなに有名なはずはないから」と協奏曲のCDを紹介した店もあったらしい。おかしなエピソードではあるが、そんな時期にあっていち早くこの曲に注目したドラマ制作者の見識には敬服せざるを得ない。なお現在はある程度クラシックの品揃えのあるCDショップなら最低でも一枚は店頭に在庫があるはずで、入手するのは困難ではない。


私自身はこの当時クラシック音楽にはほとんど関心がなく、ドラマも見ていなかったのでこの事実は後から知った。ただ『妹よ』と聞くとちょっと思い当たるふしがある。このドラマの最初の放映から数年後のことだと思う。ある日の夕方何気なくTVをつけてチャンネルをいじっていたらドラマの再放送をやっていて、岸谷五朗さんのあまりの迫真の演技に釘付けになってしまったことがある。確か新宿の歌舞伎町にある女性を探しに行き、水商売の女性にしつこくつきまとってものを尋ねているうちにやくざに絡まれてボコボコにされる、というようなシーンだった。その後自分の部屋に戻ると和久井映見さん演じる妹が驚いて出迎えていたという記憶がある。今思うとあれが『妹よ』だったのではないかという気がする。

残念ながらその時どんな音楽が流れていたかは全く覚えていない。ただあるいはもしかするとこの曲がBGMとして流されていて、意識はしなかったけどその美しさに聴き惚れてしまっていたのもチャンネルを動かせなくなった原因だったのかも知れない。この曲の第3楽章の導入部を聴いた時に何となく聴き覚えのあるメロディーだな、と感じたのでその時に聴いていたという可能性はあると思う。

岸谷五朗さんといえば周知の通り元プリンセス・プリンセスのヴォーカリスト奥居香さんの夫君にして、ミュージカル『クラウディア』で本田美奈子さんと共演し葬儀では弔辞を読み上げた人物である。どういう訳か知らないが私の音楽遍歴の節目には彼の姿が現れる。何か不思議な縁を感じてしまう。


この曲はラフマニノフならではのロマンティックな詩情が全編に溢れる彼の最高傑作の一つである。特に第3楽章の叙情豊かなメロディーの美しさは比類がなく、クラシック屈指のヒーリング・アダージョといえるだろう。コンピレーション・アルバムなどにこの楽章だけ収録されることも少なくない。この曲を聴いたことのない方にはこの楽章だけでも聴いていただきたいし、この楽章だけ聴いたことがあるという方にはぜひ全曲を聴いていただきたいと思う。

こんな素晴らしい名曲が比較的最近まであまり知られずに埋もれていたというのだから世の中とは不思議なものだ。私が最初に聴いた時の感想は「音楽とはこれ程まで美しくなり得るものなのか!」というものだった。音楽についての認識そのものをこの曲によってあらためさせられたといっても過言ではない。もし子供の頃にこんな曲と出会っていたら本気で指揮者を志していたかも知れない、などと時々思ったりもする。そうなっていれば自分の人生は随分違ったものになっていただろうな、と考えるといろいろな感慨にとらわれてしまう。もちろんそれはそれで厳しい人生になったに違いないけれど。

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「見上げてごらん夜の星を」

2007年3月 6日

作詞:永六輔 作曲:いずみたく 編曲:井上鑑
アルバム「心を込めて…」COCQ-84139(2006.04.20)所収。

本田美奈子さんのデビュー21周年にあたる昨年4月20日、未発表音源等を集めたアルバム「心を込めて…」が発売された。美奈子さんはその前年に20周年を記念してアルバムを制作する予定でいたものの病気が発覚し延期を余儀なくされ、一年遅れの記念アルバムの制作を目標に闘病に励んでいた。その願いはついに叶わなかったが、彼女の音楽仲間のみなさんの熱意によりこの日の新譜発売が実現した。タイトルは彼女がファンヘのメッセージなどの最後にいつも必ず書き添えていた言葉から採られている。

突然の逝去から短い期間で複数のレコード会社に跨って音源を収集しアルバムを制作するのは容易なことではなかったはずだが、制作スタッフの美奈子さんを思う気持ちが困難をはねのけたのだろう。美奈子さんがいかに仲間たちから敬愛されていたかを窺い知ることができる一枚である。


この「心を込めて…」の冒頭に収録されているのが「見上げてごらん夜の星を」である。坂本九さんが歌ったこの名曲はアルバム「時」のセッションで録音されたが、全体のバランスを考えてアルバムへの収録は見送られたものである。おそらくはいずれ何らかの形で発表することを想定していたもので、いわゆる"没音源"とは異なると見做していいと思う。

坂本九さんが亡くなったのは美奈子さんがデビューした年の夏のことだった。500人を越える犠牲者を出したあの惨事は、九さんのあの朗らかな歌声を喪った悲しみと共に人々の記憶に焼き付いている。おそらくデビューしたばかりの駆け出しのアイドル歌手だった美奈子さんの心にも深く刻まれたことだろう。その九さんよりもさらに若くして自分がこの世を去ることになるとは少しでも考えたことがあったろうか…。


一般に美奈子さんの歌唱は独自の鋭敏な感性で楽曲をとらえた上で濃密な表情付けを施したものである。そのためにこぶし、ルバート、ポルタメントといった様々な技巧が用いられている。これは彼女があこがれていたサラ・ブライトマンさんとはっきりと異なる点である。サラさんは自身の繊細で美しい声を飾り立てずに聴かせることに重きを置いており、美奈子さんに比べてかなり淡泊な歌い方をしている。

また本来のクラシックでは基本的にこぶしはご法度だし、現在ではポルタメントも避けられる傾向にある。美奈子さんがこうした技法をためらいなく使用できるのは、彼女が元々演歌歌手志望であり、クラシックの正規の声楽のトレーニングを受けていないことがプラスに作用しているものと思われる。

クラシックでこれらの技法の過度な使用が戒められているのは、やり過ぎてしまうと下品な表現に陥ってしまうためである。しかし美奈子さんはそうした技法を大胆に使用しながらも決して清楚な美しさを失っていない。これは美奈子さんの歌唱の際立った特徴といっていいと思う。


この「見上げてごらん夜の星を」に関しては最初に聴いた時は随分ルバートの効いた歌い方だな、と思った。繰り返し聴いてみると特に四度表れる「幸せを」の歌詞の部分で効果的に用いられているのがわかる。「ささやかな」の"な"から「幸せを」の"し"へと移るところでためを作り、聴き手に注目を促すかのように曲に変化を与えている。これはおそらく即興的に加わったニュアンスではなく美奈子さん固有の解釈なのだと思われる。そしてそれは歌詞の内容を十分に意識してなされているものと見て間違いない。やはりここでも美奈子さんの言葉への鋭敏な感受性を聴き取ることができる。

中間の「手をつなごう…」の部分をはさんで歌い方を変えているのも注目される。後半では幾分声を強くしているほか、「光りが」の"り"、「星が」の"し"では途中で音程を上げるこぶしが効かされている。このために四度同じメロディーが繰り返されても決して単調に聴こえることはない。

歌の世界では日本語の"ん"はハミングで歌うというのが基本のはずだが美奈子さんは「ごらん」を口を開けて歌っているようだ。前半は少しわかりづらいのだが後半部では明らかに口を開いて発音している様子が見てとれる。この理由はよくわからないが、美奈子さんの癖かも知れないし、あるいはハミングでは十分に強い声が出せないと判断してのことかも知れない。

それはともかくこの歌は美奈子さんのひたむきな心が真っ直ぐに聴き手の心に飛び込んでくる渾心の歌唱であり、「心を込めて…」の冒頭を飾るに相応しい一曲である。聴いていると美奈子さんがささやかな幸せを運んできてくれたような気分になることができる。


考えてみれば近頃は夜空を見上げることも少なくなっている。どんな時も夜空の星に宇宙の悠久を思う心のゆとりは失いたくないものだ。寂しい時には星を探して夜空を見上げてみよう。美奈子さんがいつも私たちを見守っていてくれると信じながら…。

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桑田真澄 オープン戦初投板

2007年3月 5日

マイナー契約でパイレーツの春季キャンプに参加している桑田真澄投手が、日本時間今日未明レッズとのオープン戦に登板し1イニングを無失点に抑える好投を見せた。ZAKZAKに詳しい内容が紹介されている。残念ながら対戦打者の左右の区別がわからないのだけど、先頭打者が左だとするとショートゴロに打ち取った外角直球というのは新たに覚えたというツーシームかも知れない。

首脳陣の評価は日に日に高まっているようで開幕メジャー入りの可能性も出てきたようだ。本人は結果は気にせずこの舞台で投げられること自体を心から楽しんでいる様子。その初々しい姿は"38歳の野球少年"と呼びたくなる。ファンとしてもとにかく彼が純粋に野球に打ち込む姿をしっかりと見届けたいと思う。

追記:19時00分

映像で確認したところ初めの二人が左打者で最後が右打者だった。先頭打者を打ち取った球種は見にくい角度からの映像でよくわからなかった。

追記:22時00分

NHKのニュースでセンターカメラからの映像を確認したが、先頭打者を打ち取った球は素人目には普通のストレートとの区別はつかなかった。二人目のバッターを空振り三振にとった球は高めに浮いていたもののそれ程危ない球には見えなかった。

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美奈子さんの「アメイジング・グレイス」

2007年3月 2日

昨日ちょっとした偶然で本田美奈子さんの「AVE MARIA」についてのSchweizer_Musikさんによるレヴュー記事を発見した。最近見つけたある音楽ブログを見ていると、その方が美奈子さんの亡くなった日に追悼のメッセージを捧げておられるのに気がついた。「ああ、この方も早過ぎる死を惜しんで下さっていたんだな」と思いながら何気なくトラックバックをたどっていってみたらこの記事に出会ったのだった。このブログは以前から時折拝見していて、クラシックについての深い造詣に感じ入るとともに、自身音楽の専門家でありながら素人の音楽ファンとも対等な目線で交流しておられることに深く敬服していた。だからこの方が美奈子さんの晩年の活動を高く評価して下さっていたことはうれしい驚きだった。近年ブロガーの数は激増していて、私もつい一年ほど前に始めたばかりなのだが、ブロガーの世間というのが意外に狭いものなのだ、ということを感じさせる出来事でもあった。


クラシックの専門家の方がこれほど詳しいレヴューをされているのはほかに見たことがなく、ご本人のご了承もいただけたのでファンサイトにこの記事を紹介してみた。ファンにとってはこうした評価は実に貴重なもので、喜んでいただけるのではないかと思う。

ただ美奈子ファンの中には「アメイジング・グレイス」についての記述を不審に思う方もあるいはおられるかも知れない。このことについて少し私見を述べておいた方がいいような気がする。


「アメイジング・グレイス」はジョン・ニュートンによる賛美歌でメロディーはアイルランドの民謡から採られたともいわれるが、主にアメリカの黒人達によって歌い継がれてきた名曲である。その意味ではゴスペルや黒人霊歌の一種とも見做すことができる。しかし美奈子さんの歌唱はそうした伝統にはとらわれず、ここでも繊細で情感をこめた自身のスタイルを貫いている。そのためにゴスペル本来の姿からは懸け離れた「アメイジング・グレイス」になってしまっている、というのがSchweizer_Musikさんが“選曲ミス”と指摘された趣旨だと思う。私も現在の美奈子さんとこの曲との結びつき方には少し違和感があるので、こうした指摘をされる理由はよく理解できる。

日本ではこの曲は白鳥英美子さんが好んで愛唱していたり、最近ではTVドラマでヘイリーさんによる歌唱が主題歌に採用されたこともあって、こうした叙情的なスタイルもすんなりと受け入れられているように見える。美奈子さんの逝去後にこの曲が繰り返し報道で流されたために今ではすっかり彼女の代表曲として扱われている感もある。最近出版された「アメイジング・グレイス」の解説書では美奈子さんを「日本で最もアメイジング・グレイスを有名にした歌手」として紹介しているともいう。

美奈子さんの歌唱によってこの曲を知ったという方や、この曲の歌唱によって美奈子さんのファンになったというような方には"選曲ミス"との指摘は心外でもあるかと思う。美奈子さんのファンとしては美奈子さんの歌う「アメイジング・グレイス」こそが最高だ、と感じるのは自然なことだ。私自身美奈子さんの繊細で叙情的な歌唱もこれはこれで素晴らしいと思うし、メロディーが元はアイルランド民謡だったとすればこうした歌い方はこの歌のルーツを解き明かすものでもあるように感じている。ただ、美奈子ファンとしてもこの歌は人類共通の文化遺産であり、特定の歌手の持ち歌のような扱いをするのにはなじまない存在なのだということは十分心得ておくべきだと思う。

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