安藤美姫さん 優勝おめでとう!!
2007年3月25日
生放送ではなかったけどどきどきしながら見守った女子シングルフリー。画面を見ながら何度も貰い泣きしそうになった。本当にうれしい結果になって夢を見ているような気分だった。
スザンナ・ポイキオさん
この人が放送されたのは少し意外だった。少しジャンプのミスも見られたが雰囲気のあるいい演技だったと思う。彼女のフリーは今シーズン何度か見てきたけどとてもいいプログラムだと思う。「ありがとう日本」も気が利いていた。
サラ・マイヤーさん
こちらもとてもいいプログラム。二つの映画音楽をつなぎ合わせているけど不自然なところがない。マイヤーさんの清楚な美しさを引き立てている。両腕のしなやかな動きに表情があり見入ってしまう。トウループでの転倒などもったいないミスはあったけど心に残る演技だった。大技がなくても見る人を満足させることのできる、貴重な選手だと思う。
中野友加里さん:プロコフィエフ シンデレラ
学生選手権で披露したという白い衣装での演技を期待していたのだけどピンクの衣装で登場。もちろんこちらも十分清楚でかわいらしい。トリプルアクセルに果敢に挑戦したが失敗(2回転にダウングレード)。得意のスピンでめずらしくバランスを失うミスもあったが、全体にはにこやかな笑顔でいきいきとした演技だった。2年連続の5位は素晴らしい成績。開会のセレモニーでの選手宣誓といい、フィギュアスケート大国日本が自信を持って送り出した3人娘の一人として立派に責任を果たしてくれたと思う。
カロリーナ・コストナーさん:SAYURI
まず衣装を見てがっかり。いつもコストナーさんはセンスのいい衣装を着ているのだけどこの色合いはいただけない。日本の着物にはまずあり得ない色使いであり、とても芸者らしくは見えなかった。中野さんとの「SAYURI」対決という点では文句なく中野さんに軍配を上げたい。
演技の中身に話を移すといきなりフリップで転倒、ルッツはダブルに。二度目のフリップも失敗と散々の内容だった。SPでは実に力強く安定感のあるジャンプを見せてくれていたのに、トリノオリンピックの頃に逆戻りしてしまったかのよう。普通の選手と逆の回転をする選手だが、この人のフリップは右足のインサイドにしっかりと乗らないうちに焦って跳び急いでいるような印象がある。本来は力のある選手なので、また練習を積んで本物の復活を果たして欲しい。
エミリー・ヒューズさん:シルヴィア
こちらは派手過ぎず地味過ぎず、いい色合いの衣装だったと思う。彼女によく似合っていた。フリップで転倒した後は気持ちを引きずらずしっかりと要素をこなしていた。しかし二度目のフリップとルッツをダウングレードされたことで点数が伸びなかった。
キム・ヨナさん:あげひばり
最初のトリプルフリップ–トリプルトウループのコンビネーションはとてもきれいだった。イナバウアーからのダブルアクセル–トリプルトウループや深くエッジを使ったストレートラインステップなど気持ちよさそうに滑っていて、腰の不安など全く感じさせなかった。しかし中盤でルッツで2度転倒してしまう。これが腰痛の影響なのかはよくわからない。二つ目のルッツは自動的にシークエンスと判定されてしまうので、その後のトリプルサルコウ–ダブルトウループは四つ目のコンビネーション/シークエンスとなり0点に。このダブルトウループの後少しぎこちない動作があったのであるいはここに腰痛の影響が出ていたかも知れない。
全体的にはしなやかでのびやかなヨナさんらしいとても美しい演技だったので二つの転倒が惜しまれる。しかし今月上旬の時点で痛みが再発したということは確実に大事な時期の練習量が不足していたはずで、それにもかかわらずこれだけの演技を見せられるということはあらためてずば抜けた才能を感じさせる。初出場で3位は立派な成績で、世界のトップレベルのスケーターであることを証明したといえると思う。これからがますます楽しみな存在だ。
浅田真央ちゃん:チャルダーシュ
公式練習で調子が今一つという情報を聞いていて、ヨナさんの直後という難しい滑走順もあり少し不安を持って見守っていた。しかしいざ始まってみるといつも通りの真央ちゃんだった。ステップからのトリプルアクセルはやや両足着氷気味ながら成功。続くダブルアクセルからのコンビネーションでトウループの着氷が乱れ回転不足を取られたほかレイバックスピンでレベルをとりこぼしてしまうなどのミスもあったが、全体には真央ちゃんでなければあり得ないほどの高いレベルの演技を見せてくれた。SPで失敗したトリプルフリップ–トリプルループのコンビネーションも見事に成功させた。(ステップをサーキュラーからストレートラインに変えたのにも注目していたけど、音楽の編集などはそのままのようで、これが何を狙ったものなのかはよくわからなかった。)
演技後は感極まってぼろぼろと涙をこぼしていた。SPの結果が悔しくて昨夜は眠れない思いで過ごしていたのではないかと思う。SPで出遅れても自分を見失わず、フリーで最高の演技をした精神力は素晴らしかった。惜しくも優勝はならなかったけど、真央ちゃんの凄さをあらためて世界に見せつけた大会だった。まだまだ若いし、今頂点に立ってしまうよりむしろよかったのではないか。これからの真央ちゃんの歩む道のりをしっかりと見届けたいと思わせてくれた。
キミー・マイスナーさん
めずらしく冒頭のルッツで着氷が乱れる。次のフリップの後にトリプルトウループをつけたが素人目にも明らかに回転が足りていなかった(ダウングレードされている)。本来は力のある人なのだけど、今回はあまりにも素晴らしい演技二つに挟まれてしまって少し影が薄かった印象。
安藤美姫さん:メンデルスゾーン ヴァイオリン協奏曲
肩に不安はあるものの調子はいいという情報が入っていて楽しみに見た。トリプルルッツ–トリプルループのコンビネーションは華麗に決めて見せた。この組み合わせは今大会では彼女だけが採り入れていた難度の高いもので、あらためてジャンプの安藤美姫としての存在をアピールした。続くサルコウは事前のインタビューなどから4回転にするものと思っていたが3回転に抑えてきた。結果的にはこの選択が効を奏したことになるが、どういう判断だったのか興味深いところ。あるいは真央ちゃんとの点差を意識したモロゾフ一流の冷徹な計算がはたらいたのだろうか。
ストレートラインステップはSPに比べるとややおとなしめだったろうか。しかしとにかく高度なプログラムをミスなく滑り切ったのが素晴らしい。決して表現力が持ち味の選手というわけではないが冒頭に細やかな手足の動きを配するなどメンデルスゾーンの音楽の世界を表現しようという意図も十分に感じられた。
演技が終わると真央ちゃんとどちらが上にいくかと固唾をのんで見守ったが安藤さんが1位と出て驚くと同時にうれしくなった。昨シーズンの姿があまりに痛々しくて、今シーズンはもう一度スケートにうちこむと決意した彼女を思い入れを持って応援してきたので感慨無量だった。荒川さんの輝いた姿を見てスケートへの情熱を取り戻し、基礎から練習し直して強い決意で臨んだ彼女だけど今シーズンも決して平坦な道のりではなかった。フランス大会では腰痛を起こし、グランプリファイナルでは体調不良から散々の成績になり控え室で号泣したともいう。全日本では演技中に肩を脱臼するというアクシデントにも見舞われた。それでも輝いた自分を取り戻そうと強い気持ちで自分を信じてスケートに取り組んできた彼女の努力がこうして華々しい成果となって報われたのは本当によかった。心からおめでとうと言って上げたい。
女子シングルに関しては事前に予想、というより希望していた通りの結果になった。素晴らしい戦いを見せてくれた選手のみなさんに心から感謝したい。