世界選手権2011 女子シングル

2011年5月19日

すっかり遅くなってしまったけど世界選手権の感想まとめ。


安藤美姫さん

抜群の安定感で素晴らしい優勝だった。前回の優勝は僅差の競り合いの中で勝利が手許に転がりこんできたといった感じの結果だったけど、今回は勝つべくして勝ったという内容だった。本人としてはフリーの後半でダブルアクセル–トリプルトウループが抜けてしまったのが少し心残りかも知れない。しかしトリプル–トリプルもダブル–トリプルもない構成で優勝という結果からは、フィギュアスケートは単発の技ではなくて総合力が問われる競技なのだということをあらためて認識させられる。

シーズン途中で曲を変更したSPの「ガブリエルのオーボエ」は穏やかな曲調に当初は戸惑っていたようにも見えたが、すっかり板についてきた感じがする。トリノ・オリンピックのシーズンに「戦場のメリー・クリスマス」を選んだ時は明らかな選曲ミスだと思ったものだが、それを思うと実に感慨深い。

そしてまたエキシビションが素晴らしかった! 彼女が4回転サルコウをひっさげて颯爽と登場した頃には、競技以上にエキシビションでの演技が楽しみな選手になるとは思ってもみなかった。震災の被災者の心情を幼い頃に父を亡くした自分の気持ちに重ね合わせて共感する様子が演技からひしひしと伝わってきて、本当に素晴らしい選手になったな、と感嘆した。


キム・ヨナさん

事前の情報では好調と伝えられていたのでSPでトリプルルッツをステップアウトしたのには驚いた。フリーではルッツからのコンビネーションは見事に決めたものの、サルコウからのコンビネーションやフリップでミスが出てしまった。やはりこれほど試合から離れているとヨナさんほどの選手でも勘が鈍るのだろう。全体の印象としては手足を柔らかく使って表情をつけた演技が相変わらず優雅で美しかった。

SPはあまりバレエらしくは見えなかったけど、ピーター・オペガードコーチは敢えて従来の『ジゼル』のイメージを変えようと意図して衣装をデザインしたということなので、そういうコンセプトのプログラムならそれはそれでよかったのではないかと思う。フリーは個性的でいいプログラムだと思ったけど、さすがに今回が初めての披露ということで表現がやや淡泊に見えた。できれば来シーズンもこのプログラムを滑って、もっと完成度の高い演技を見せて欲しい。衣装は“Homage to Korea”と銘打つならチマチョゴリ風の民族衣装みたいなものにしてもよかった気がする。


カロリーナ・コストナーさん

シーズン序盤は怪我の影響でルッツとフリップを跳んでなかったけど、今大会ではSP、フリーともにフリップを入れてきた。SPでは転倒してしまったけど、フリップに挑戦できる程度には足の状態が改善しているのならフリーではかなり健闘するのではないかと予想していたら、期待した通りの素晴らしい演技だった。個人的にはこの人フリーが今大会の演技の中で一番心に残った。今シーズンはプログラムが二つともとてもよかったので、それが銅メダルという形で結果に出てすごくうれしい。


アリョーナ・レオノワさん

この人の大躍進はうれしい誤算だった。ジュニアチャンピオンに輝いた後、シニアではやや伸び悩んでいた感があったけど、これまでのもやもやを払拭するような活躍だった。ロシアはジュニア世代の台頭が著しくて、クセニヤ・マカロワさんも含めて現状ではトップ選手の位置にいる彼女たちも安閑とはしていられないわけだけど、今大会は彼女たちの意地と底力を感じさせる結果となった。

プログラムが二つともとても凝っていて、彼女の個性をうまく生かしていると感じた。会心の演技ができた時の喜び方がとにかくかわいいのが魅力的だ。


アリッサ・シズニーさん

SPではフリップ、フリーではルッツで転倒…。ある意味彼女らしい結果ではあったけど、しかしともかく一頃のことを思えばよくここまで立て直してきたものだと思う。引退というような話も出ていたが、せっかくこれだけの成績を残せるようになったのだから、もう少し競技を続けて欲しい。


浅田真央ちゃん

競技が始まる前の段階からすでにいわれていたが、とにかくやせ過ぎなのが目についた。足に力が入ってない感じで、演技が痛々しく見えてしまった。スピンの失敗というのも普段ならあり得ないミスだった佐藤信夫コーチからは回避を薦められていたようだが、こんな状態でもトリプルアクセルに跳んできたところは真央ちゃんらしかったけれども。地震の影響で開催が一か月ほど延期されたことが、真央ちゃんの場合にはマイナスに作用してしまったのかも知れない。自己最悪の6位というのは不本意な結果だろうけど、これもソチへ向けての一つのステップととらえて前を向いて進んでいって欲しい。


村上佳菜子ちゃん

そう悪い出来ではなかったと思うのだけど、今一つ点数が伸び切らなかったのが残念だった。確かにジャンプはいい時にくらべると力強さがなかったように感じたけど。これもシニアの壁ということなのか。しかしこの調子で実績を積んでいけばすぐにまた高い評価を得られるようになるだろう。


男子についてはまた後日。

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