終戦記念特別ドラマ「最後のナイチンゲール」
2006年8月23日
本田美奈子さんの歌う「アメイジング・グレイス」を主題歌に採用した終戦記念特別ドラマ「最後のナイチンゲール」(日本テレビ系列で22日21:00から放送)。見たいのだけど二時間半という長さに尻込みしてしまい、どうしようか迷った末、結局途中から見ることにした。
こんないい加減な見方をしてしまったので偉そうなことはいえないけど、平和の尊さを訴えかけるいい番組だったと思う。少し難をいうと出演した女優さん達がみな本土風の顔立ちの美人で、言葉も標準語なので沖縄らしさが感じられなかったこと、女生徒達のキャラクターが現代風の女の子に近かったためにやや時代錯誤にも感じられたことに不満を感じた。もう少し地域や時代に沿った描写なら真実味が増したのではないだろうか。
それからドラマの構成の仕方としては、ヒロインの婦長さんの死の設定が安易だったように思う。泉谷しげるさん演じる鬼軍曹の気まぐれという偶発的な要因による死というのではドラマに緊迫感が生じ得ないのではないか。生きることの尊さを説いた婦長さんが死ななければならないという事態に何か内的必然性が見られるような筋立てにしてあればより深く心に訴えかけるようなドラマになっていただろう。実在のモデルが存在するのなら無闇な脚色は控えなければならないが、フィクションとして制作されたのなら、もっと周到な構成がなされていた方がよかったと思う。ただそうはいってもやはり番組の最後に美奈子さんの歌声が聴こえてきた時には頑丈にできているはずの涙腺もかなり緩んでしまっていたようだった。
「アメイジング・グレイス」は多くの歌手によって歌われているが、元々はアメリカの黒人達が過酷な現実を生きのびるための心の支えとして歌い継いできた大切な歌。この歌がそうした文脈から切り離されて「平和への祈りの歌」として流通している現状を当の黒人達がどう受け止めているのか、正直にいうと私は少し気になっている。白鳥英美子さんはかつて仲間のミュージシャン達から「この歌は生半可な気持ちで歌ってはいけない歌なんだ」とたしなめられていたそうなのだが、最近の音楽界には少しそうしたつつしみが欠けてきているようにも感じられる。
しかしそれはともかくミュージカル「ひめゆり」への出演に使命感を覚え意を決して取り組んだ美奈子さんのひたむきな思いはこの日多くの人の心に真っ直ぐに届いたのではないだろうか。美奈子さんの愛したこの世界、いつまでも美しく輝いていて欲しいと願わずにはいられない。
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