忘れてしまいたいこと
2007年1月31日
いつもお世話になっている美輪@brownycatさんの連載企画「川柳タッグマッチ」。第16回は「忘れる」をお題に書いておられるので自分も思いついたことを少し。
「忘れる」ということについて歌った歌で思い出すのは河島英五さんの「酒と泪と男と女」と円広志さんの「夢想花」である。ともに関西出身のシンガーソングライターの代表曲だが、この二曲、興味深いことに出だしの歌詞がほとんど一緒なのだ。忘れるという行為は自分の意志によってできることではない。忘れることができればもっと楽になれるはずの記憶を背負って生きる哀感を歌った名作二曲といっていいと思う。
「夢想花」についてはこんなことがあった。以前TVで円さんと島田紳助さんが共演していた時のこと、アシスタントの若い女性タレントを交えてのやりとり。
島田: この人知ってるか?
女性タレント: 知らない。
島田: シンガーソングライターとして数々のヒット曲があるんや。「夢想花」とか、「とんでとんで…」とか、「忘れてしまいたいことが…」とか、…
円: 全部一緒やないか!
今Wikipediaで調べたらこのやりとりは二人の定番でいつもやっているらしい。音楽界には「一発屋」と呼ばれる人がいて、時には揶揄の対象になったりもするが、誰でも知っている曲が一つあるというだけでも大変なことである。
忘れることについて最も印象に残っている言葉は作家のアントン・チェーホフによるものである。彼は「ワーニャ伯父さん」の前身である「森の精」についてこれが失敗作であることを認め、この作品については「忘れようと努力している」と語ったそうだ。忘れるというのは努力してできることではないのでこの言い方を意外に感じ、今も心に残っている。
人の心はハードディスクではない。嫌なことを全て「削除」のごみ箱に入れて消去することができたらきっと人生は楽になるのだろうけれど。
コメント
こんばんは〜(^o^)丿TBありがとうございます。
まあ私の「忘れる」のエッセイはノーテンキな代物ですが(笑)、忘れたいことほど忘れられない、というのは本当ですね。人は忘れようとしてではなく、忘れるともなく忘れてゆく。忘れたいと思っていることは、それだけ思いが強すぎるのでしょう。
-> 美輪@brownycatさん
覚えていなけらばならないことを忘れてしまったり、忘れていいはずのことが忘れられなかったり、人の記憶というのは厄介なものですね。何だかネタに困る度に美輪さんに助けてもらっている気がする今日このごろです。^ ^