世界選手権2008 男子シングル フリー

2008年3月23日

小塚崇彦選手

最初のコンビネーション・ジャンプは硬さが出たのか後ろのトウループがシングルに。その後はしかし予定した要素を着実に決めていった。後半に入って疲れが出たのかサルコウとルッツで転倒してしまったが、それでも彼のよさは十分に表れた演技だった。気がついてみればシーズン序盤にはやや水をあけられてしまったかに見えた同世代のパトリック・チャン選手をしっかりと上回って来シーズンの日本の出場枠三つを確保した。世界選手権初出場で8位は大健闘で、お父様も自らを超えていった息子の活躍に喜んでおられることだろう。


ジョニー・ウィアー選手

バトル選手とは対照的に4回転のトウループに挑戦してきた。アメリカ選手権で成功させていることがそうさせたのだろうか。残念ながらこれはダウングレードされて技術点を伸ばすことはできなかった。しかしそのほかほとんどミスのない、彼らしい優美な演技で魅了してくれた。これまでどうしても手の届かなかった表彰台に初めて立ち、あらためて彼の独特の表現力の素晴らしさを認識させられた気がする。


高橋大輔選手

始まる前ニコライ・モロゾフコーチと話す表情がとても硬かったので心配したが、悪いヨ間が的中した。4回転トウループとトリプルアクセルがいずれも二つ目で失敗。そのほかの要素も全体にやや雑な感じで、彼のよさが表れない演技になってしまった。最後のルッツの後にダブルトウループをつけた時は数が多いとすぐにわかったので泣きそうになってしまった。

結果論ではあるが、ランビエール選手、ジュベール選手といった4回転ジャンプを武器にした選手が必ずしも本調子ではなく、上にいるウィアー選手、バトル選手は4回転ジャンプを安定して跳べていないということを考えれば、4回転ジャンプは一つに抑えるという選択肢もあったと思う。今の彼ならそれでも総合力で上回ることもできたはずだ。ただ彼の最終的な目標をこの大会の金メダルではなく、バンクーバー・オリンピックでの金メダルにおくとすれば、今ここでこういう経験を積んだのは将来的にプラスになる判断だったとも言えるかも知れない。彼自身が一番悔しい思いをしているだろうから、その思いを今後のさらなる飛躍につなげて欲しい。


ブライアン・ジュベール選手

4回転ジャンプを三度跳ぶ予定でいたらしいが、これを一つに減らす安全策で臨んできた。前の選手たちの結果を見ればこれは正しい判断だったと言えるだろう。ただコンビネーション・ジャンプが一つ少なく、勝利を確信したかのようなガッツポーズから入ったストレートラインステップの後で跳んだダブルアクセルからのコンビネーションでトウループがシングルになったあたりが勝ちを決め切れれなかった要因だろうか。4回転ジャンプのないバトル選手をあなどって油断したのだとしたらもったいないことをした。しかし今シーズンは病気にも苦しめられたことを思えばこの大舞台で2位というのは彼にしては上出来と言えるのではないだろうか。


ジェフリー・バトル選手

昨シーズンの大会では同じく最終滑走で4回転ジャンプに無謀に挑戦し大きく崩れてしまったバトル選手だが、今回はやはり安全策を採ってきた。他の上位選手がいずれも完璧ではなかった状況ではこれが効を奏しまさかの金メダル。今シーズンの前半は不振が続き、正直そろそろ限界なのでは、などと不謹慎にも考えてしまったが、この大舞台には絶好調に仕上げてきた。4回転ジャンプを武器として使えるだけの精度がない選手なので、失礼ながら彼が世界チャンピオンに輝く日が来るとは思っていなかった。しかし元々総合的な美しさには定評のある選手なので、ジャンプだけがフィギュアスケートではないということをあらためて証明する結果になったとも言えるだろう。SPとフリーを通して完璧な演技で、彼ならではの美しい表現を見せての優勝を心から祝福したい。


全く予想もしなかった結末にしばし茫然となったが、考えてみれば4回転ジャンプが得意ではない選手が二人も表彰台に立ったというのはある意味極めてフィギュアスケート的な結果だったとも言える。表現力を魅力とする選手にとっては今後の励みとなる結末だったのではないだろうか。

Bookmark and Share BlogPeople 人気ブログランキング にほんブログ村

トラックバック

このエントリーのトラックバックURL:

管理者の承認後に反映されます。

http://vita-cantabile.org/mt/tb-vc/384

コメント

高橋選手、確かに出てきた時の表情が硬く、ちょっと嫌な予感はしましたが、何て言うか久々に「ダメダメな大ちゃん」を見てしまった気がします、、、。冷静さを欠いて、またしてもザヤックにかかってしまったわけですし、、、。優勝はともかく3位にはなれた可能性が高いのにもったいないことをしたな、最近は精神的にも強くなってきてたのに、、、とか考えだすときりがありませんが、彼が優勝者候補筆頭に挙げられていたほど実力があるのは確かですし、来年の世界選手権、再来年のオリンピックに向けて、出直して頑張ってもらいたいです!!

それにしても、安藤選手とプレオベール選手は棄権、高橋選手はフリーで大きな失敗で順位を落とすと言う、モロゾフチームにとっては、あまり運気?が良くなかったのかもしれませんね。


個人的には、ウィアー選手のフリーの演技はちょっと微妙でした。ショートは本当に彼らしい素晴らしい演技でしたが、フリーは比べるとコンビネーションも少なく、迫力などには欠けた感じでう〜んどうだろうかと思いましたが、大きな舞台の大事な場面で大崩れすると言う悪い癖を直し、しっかりまとめていたのは良かったと思います。メダルを取ってほしいなと思っていた選手のうちの1人でもありますし、ライザチェック選手不在の分も、よく頑張っていたと思います。


ジュベール選手は好きな選手なのですが、正直今回は、バトル選手を応援していました。今季は体調不良の中、本人も半ば優勝どころかメダルも難しいと思われた中、立て直してよく頑張ったと思う反面、ショート1位のバトル選手を残している状況で、安全策を取ったあの構成で、途中から優勝を確信していた態度には納得出来ませんでした。メダル候補の多くの選手が思った結果を残せていない状況の中、やることをきちんとやれば優勝が狙えると言う状況の中、おそらくまだ万全でない体調の中、彼としてはすごく頑張っていたと思います。でも、4回転がないからか、ショートで5点近く点差があったのに、バトル選手をあなどって(言い方が悪かったらすみません)優勝を確信したパフォーマンスをしたのは個人的にはいただけないかな、と。今回の結果を糧にして、来季はもっと攻める姿勢で滑ってもらいたいなと思います。

バトル選手は4回転はありませんでしたが。4回転を飛んでいなかった分も、すべてのエレメンツが丁寧で完璧ですごく良かったと思います。何よりも、去年も同じ最終滑走で、一気に崩れ、順位を落としてしまったことを今回は繰り返さず、自分の滑りが出来たことが一番素晴らしいと思います。本当に心から拍手を送りたいと思いました。シングルスケーターとしてはかなり年長ですし、国内タイトルも失ってしまい、おっしゃるとおり、「もう無理なのでは?」と言う空気の中、良く頑張ったと思います。

小塚選手も、ミスがありながら初出場であの順位は本当に立派でした。これは高橋選手もうかうかしていられないなと感じました。

-> モモさん

高橋選手は久しぶりに大崩れしましたけど、それでも4位にとどまったあたりは成長が見られますし、PCSで高い点をもらっているのは安定した評価が得られていることの証なのだと思います。そのあたりは以前とは違うような気がします。ルッツの後にトウループをつけてしまったのはもったいないミスでしたが、選手は夢中でダメとはわからなくなっていたのでしょうね。確かにチーム・モロゾフは今回はツキがなかったな、と思います。

ジョニーに関しては彼のクリーンなフリー・プログラムは最近滅多に見ないような気がして、今回これほど完成度の高い演技を見せてくれたことに感激しました。アメリカ代表としての責任を一身に背負ってよくやりましたね。

ジュベール選手の演技途中のガッツポーズはちょっと慢心だったような気がします。でも今シーズン病気にも苦しんだことを考えれば大健闘と言えるのではないでしょうか。

バトル選手のこれほどの活躍は予想していませんでした。昨シーズンと似た状況でしたが大違いの内容でしたね。4回転ジャンプがなくても世界で戦えるということを証明する優勝でした。

小塚選手もベストの演技ではありませんでしたが大健闘でした。今回の結果を励みに高橋選手や織田選手の背中を追いかけていって欲しいですね。

高橋選手の表情が硬くいつもの笑顔が消えTVを見ていて不安に思い、その不安が的中してしまいました。

真央ちゃんと比較するとメンタルの部分が弱いと感じてしまいます。
それにしても女性は強いですね。

-> moonさん

高橋選手はジャンプの調子が下降気味だったにも関わらず4回転ジャンプを敢えて2回跳んだ強気の決断が裏目に出た結果だと思います。今回はうまくいきませんでしたが、この経験は今後に必ず生きることでしょう。日本の女子が強いのは、伊藤みどりさん、荒川静香さんなど先人たちが道を切り開いてくれたこと、トップレベルの選手が複数いることが大きいと思います。

コメントを投稿

最新のコメント

author

author’s profile
ハンドルネーム
sergei
モットー
歌のある人生を♪
好きな歌手
本田美奈子さん、幸田浩子さんほか
好きなフィギュアスケーター
カタリーナ・ヴィットさん、荒川静香さんほか

最近のつぶやき

おすすめ

あわせて読みたい

Giorni Cantabili を読んでいる人はこんなブログも読んでいます。