復活した伝説のフェスティバル

2008年9月19日

既に旧聞に属することになるが今年の4月29日に伝説のロック・フェスティバル「NAONのYAON」が17年ぶりに復活開催された。この時の模様を収録したDVDが来月発売になることがタワー・レコードからアナウンスされた。“ナオンのヤオン”と聞いてピンとくる人がどれくらいいるのかわからないが、ちょうど私くらいの世代の人にとってはある種の懐かしさを以て響く言葉なのではないだろうか。

「NAONのYAON」とはロックバンド、SHOW-YAの提唱により企画され、1987年から1991年にかけて毎年秋に日比谷公園の野外音楽堂で開催されていた女性ミュージシャンのみによるロック・フェスティバルである。当時絶大な人気のあったプリンセス・プリンセスも毎回参加して中心的な存在としてこのイベントを盛り上げた。このフェスティバルは当時の女性アーティストたちの活躍を象徴する存在でもあった。これに出演したアーティストたちの存在がなければ後のSPEEDZONEなどの少女グループの活躍もあり得なかっただろう。


このフェスティバルは当時出演したアーティストたちにとっても特別に意義深いものだったのではないかと思う。私は以前日比谷公園を訪ねた折りに、周りの風景を見ながらふとプリンセス・プリンセスの「Diamonds」の冒頭の一節が思い浮かんだことがあった。今思うとあれは偶然ではなくて、作詞した中山加奈子さんの脳裏には実際にこの公園で行われた「NAONのYAON」の熱狂の余韻があったのではないかという気がする。

もっとも現実には「NAONのYAON」は再三雨に祟られたイベントだったようで、「冷たい泉に素足をひたして」という言葉から想起される爽快さからは懸け離れた雰囲気だったらしい。しかも周囲には確かにビルは多いものの“skyscraper”と呼ぶほどの高い建物はなかったりもする。しかし勝手な思い入れかも知れないが私にはこのフレーズのイメージの源泉としては、高層ビルの建ち並ぶ副都心よりも、都会の中のオアシスのようなこの公園の方が似つかわしいように感じられるのだ。


何年か前にNHKの教育テレビで日本のポップスの歌詞から社会を読み解くという趣旨の教養講座が放送されたことがあった。この時講師として招かれていた女性研究者の方(お名前を失念してしまった)は80年代の女性の社会進出を象徴する楽曲として渡辺美里さんの「My Revolution」を挙げていたのだけど、この時代の女性アーティストの活躍は「NAONのYAON」を抜きに語ることはできないだろう、と考えている私としてはちょっと悔しい思いをしたものだった。

そんなこともあって今年の6月に Wikipedia にこのイベントの項目を立てておいた。これでその悔しさを少しその悔しさを晴らした気になっているのだがどんなものだろうか。まあせめてこのささやかな記事がその文化史的な意義への理解に少しでも貢献することになればいいのだが。


なおこのフェスティバルには本田美奈子さんも1988年の第2回に MINAKO with WILD CATS として参加している。その縁で今年復活したイベントには LIVE FOR LIFE が参加して募金活動を行った。SHOW-YA のボーカリストでこのフェスティバルの発案者である寺田恵子さんによるイベント・レポートには美奈子さんの名前が“出演者”としてクレジットされているのがうれしい。

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