フランス大会2009 女子シングル フリー
2009年10月18日
カロリーナ・コストナーさん
G線上のアリアなどを組み合わせたプログラムは魅力的だったけど、ジャンプの精度が悪すぎ。いかにスロースターターとはいえ、この調子では先が思いやられる。この人が調子よければ女子シングル全体がもっと盛り上がってくるはずなので、復調が待たれるところ。
キャロライン・ジャンちゃん:チャイコフスキー 『くるみ割り人形』より「パ・ド・ドゥ」
この曲を聴くといつも、単なる下降音階がチャイコフスキーの手にかかると何てロマンティックな音楽になるんだろう、と感嘆してしまう。キャロラインちゃんらしいとてもかわいらしい演技だったけど、ジャンプがいくつかダウングレードされたこともあって点数は伸びなかった。今度は彼女が点数を見ながら首を縦にうなずくところを見たいものだけど…。
アレクシ・ギルズさん
多分初めて見る選手。いかにもアメリカのお嬢さんらしい感じの女の子、という印象を受けた。最初にいくつか予定していたジャンプを失敗してしまったけど、途中からは溌剌としたところも見せてくれた。
中野友加里さん:ストラヴィンスキー 『火の鳥』
冒頭のトリプルアクセルは回避してダブルアクセル–ダブルアクセルのシークエンスに。これは肩の事情もありやむを得ないところだろう。その分全体にはジャパンオープンの時よりも生き生きと滑れていて、曲に負けない力強さが出せていたと思う。
浅田真央ちゃん:ラフマニノフ 前奏曲嬰ハ短調
最初のトリプルアクセルは見事に成功したものの、二つ目は回転不足。後半にはめずらしくダブルアクセルで転倒と、いいところと悪いところが出た演技だった。ステップはいつもと比べると膝の曲がりがやや少ないかな、と感じた。それと、やはり気になるのは後半に単独のループを跳んでいること。昨シーズンの後半くらいからそうなのだけど、プログラムにトリプル–トリプルのコンビネーションを採り入れることはもう諦めてしまっているのか…。厳しい試合を勝ち抜いていくためにはこれは必須になってくる技だと思うので、この点での消極的な姿勢は少し不安になる。
キム・ヨナさん:ガーシュウィン ピアノ協奏曲
通俗的な人気曲であるラプソディー・イン・ブルーではないところが凝った選曲で、それがどんなプログラムに仕上がっているのかに注目していた。ラプソディーのようにキャッチーなフレーズに溢れた曲ではないだけに、地味な印象にもなりかねないのでは、と心配していたが、ヨナさん自身の動きがとても表情豊かだったので、十分に魅力的なプログラムだと思った。トータル・プロデュースとして成功していると思う。要素が一つ足りない状態で最高得点の記録を塗り替えてしまうというのは見事というほかない。しかしフリップをやめてしまったのはなんだったんだろう…。
男子シングル フリー
織田信成選手:チャップリン・メドレー
織田選手でなければあり得ない、実に素晴らしい演技だった。サーキュラーとストレートラインの二つのステップなどは、難しいステップを踏みながら随所にチャップリンを彷彿とさせる仕草が入っているというとても凝った構成で、こういう要素をそれに相応しく演じられるのは、フィギュアスケートに名選手多しといえども彼しかいないだろう。4回転ジャンプを回避したことを物足りないとは感じなかった。SPではその低さに悔し涙を流したPCSも、フリーでは十分に高い点をもらえていた。
こういうわかりやすく自分の個性に合ったプログラムをオリンピック・シーズンに採用するというのはとても賢明な判断だと思う。彼ならまだまだプログラムの完成度を上げていくこともできるだろう。今シーズンは日本選手は男子もとても有望そうだと思った。
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