「ブルージン・ボーイ!」

2009年10月23日

作詞:安井かずみ 作曲:加藤和彦 編曲:武部聡志

周知の通り今月16日に作曲家、音楽プロデューサーの加藤和彦さんが亡くなった。いうまでもなく加藤さんは日本のポピュラー音楽の世界に甚大な影響を与えた人なのだが、私自身の音楽体験にはあまり縁のなかった人だと思い、特にこのサイトではふれないでいた。しかし加藤さんの作品で想い出深い曲が一つあったことに気がついて、そのことを少し語ってみようと思い立った。


ブルージン・ボーイ!」は1985年6月21日に発売された、森下恵理さんのデビュー曲である。森下さんはこの年にデビューしたアイドルの有望株の一人で、同期デビューの本田美奈子さんなどと賞レースを競い合った人である。溌剌とした元気のよさが印象的で、当時のアイドルたちの中ではやや特異な存在感のある人だったように記憶している。

この「ブルージン・ボーイ!」はそんな彼女にピッタリのノリのいい曲で、弾むようなビートと森下さんの軽快でさわやかな歌声が耳に心地よい、壮快なナンバーである。加藤さんの秀逸なポップ・センスを示す作品の一つだと思う。名曲なのか、と問われるといささか心許ないし、リアルタイムで聴いていた人が当時を懐かしんで聴く、というほかに今聴き直す意義があるのかどうかも、かなり微妙なところではある。しかしともかく、当時少年だった私が胸をときめかせて聴いていた楽曲であることは確かである。加藤さんの作品ではほかに「ドゥー・ユー・リメンバー・ミー」や「愛・おぼえていますか」なども好きなのだが、リアルタイムで聴いて想い出深い曲となると、この「ブルージン・ボーイ!」が一番である。


しかしこの人の亡くなり方が世の中に与えた影響のことを思うと暗澹とした気分になる。年間自殺者が三万人を超えている今の日本社会にあって、加藤さんのような著名人の行為が誤ったメッセージとして受け取られることは、ないとはいえないだろう。社会に与える悪影響という点では、一連の薬物事件をもしのぐものがあると思う。自分の作品を世の中に送り出すことで生きてきた人なら、そういうことも考える必要があったと思うのだが。なかなか外からは窺い知ることのできない事情のようなものもあったのかも知れないが、『ワーニャ伯父さん』に深い感銘を受けた経験のある私としては、どんなことがあってもそういう選択だけはして欲しくなかった。

まあともかく、少年の頃にこの曲から夢を与えてもらったことだけは、いつまでも記憶にとどめておきたいと思う。

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コメント

sergeiさん
 加藤さんはフォークルからリアルタイムで聴いてましたので、こんな最後はなんだよ!って驚きより先に、怒りを感じました。
 
 木村カエラさんとのコラボで楽しく歌われていたのに・・・
 まだまだ日本の音楽に影響を与えて欲しかったです。
 
 青春の1ページをありがとう! 加藤和彦さん やすらかに・・・ 合掌。

-> Kenおじさん

今頃「おらは死んじまっただ」って歌ってるんでしょうかね。常に世の中の半歩先を歩んだ人だと言われますが、その衝撃的な最期でも人の度肝を抜いてくれましたね。

自分も、木村カエラとユニットを組んでやっていたのくらいしか、
その音楽に触れる機会はなかったので、思い入れもないんですが、
あの自殺の仕方(場所)には、Kenおじさんとは別の意味で怒りを覚えました。
「死ぬんなら他人に迷惑かけないように死ね!」と…。
とはいっても、自殺っていうのはどんな風にやっても、
結局、人には迷惑がかかるんですけどね…。

-> ボランチさん

社会的に尊敬される立場にあり、それなりの分別もわきまえているはずの人がこういうことをしてしまったのは何とも残念ですね。残される人たちのこととか、社会に与える影響とか、そういうことを考慮して踏みとどまって欲しかったです。

ボランチさん
 人生色々ですが・・・生きられるのにって、生きたくても先に逝ってしまった泉水さんや美奈子さんが可哀想すぎる。
  
 ああした心理状態では、他のことやなんかは気付かないでしょうね。

sergeiさん
 行き詰ったとか云われていますが、もっといろんな音楽家と共演して新しい境地を見つけて欲しかったです。
 「イムジン河」など反骨精神が観られてたのに・・・
 
 E・クラプトン氏は引退などと騒がれても時折Liveツァーしたり、他の音楽家と共演したりで老いを感じさせません。まぁ〜私のほうが老いを感じてますが ^ ^

-> Kenおじさん

創作に行き詰まるというのは確かにとても苦しいことでしょうけど、取り敢えず生活に困るようなことはないはずで、今のご時世では贅沢な悩みというところかと思います。何もしないでいいからひとまずゆっくり休む、という選択肢が頭の中にあればこんなことにはならなかったんでしょうけどね…。


エリック・クラプトンさんとかジェフ・ベックさんとか、ローリング・ストーンズのメンバーもそうですが、みなさんお元気ですよね。私などまだまだ若造なので負けてはいられないと思いつつ、正直かなわないです。^ ^

>Kenおじさん
どんな事を悩んでいたのかは知りませんが、
いい年して甘ったれってるとしか思えないです。
推測されているようなレベルの理由で死んでたら、
この地球上から人類は半減するんじゃないでしょうか…。

って、この人ばっかり責めても仕方ないんですが…。

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