グルジア国立バレエ『ロメオとジュリエット』
2010年6月10日
グルジア国立バレエの『ロメオとジュリエット』の舞台が先週金曜に教育テレビで放送されたが、録画しておいたものを見た。バレエには全く詳しくなく、この作品は初めて見たのだが、ジュリエット役のニーナ・アナニアシヴィリさんの踊りが際立って優美で品格が高いのは初心者にもはっきりとわかった。既にお年は40を大きく越えていて、全幕物の主演をつとめるのはこれが最後とのことなのだが、それでも立派に14歳の少女に見えてしまうところがすごい。
対してロメオ役のアンドレイ・ウヴァーロフさんが16歳の少年にはとても見えなかったのが惜しまれる。いや、決して老けて見えたわけではないのだが、体格があまりに屈強過ぎて、この感受性豊かな少年を演じるのに相応しい繊細さが、身体の所作から感じられなかったのだ。
セルゲイ・プロコフィエフのこの作品は音楽だけなら(抜粋で)何度か聴いたことがあるが、音楽だけでは正直さほど魅力的とも思えなかったのだが、これはやはりバレエのための音楽なのであって、実際にダンサーたちに踊られることによって光り輝く作品なのだと実感した。ダヴィド・ムケリアさん指揮による東京ニューシティ管弦楽団は弛緩のないきびきびとした演奏でダンサーたちを引き立てていた。
ウィリアム・シェイクスピアによる原作には名高い「薬屋の場」というのがあるのだが、このバレエ版ではそれが全く影も形もないということは初めて知った。ジュリエットが死んだと聞かされて死を決意したロミオが貧しい薬屋から毒薬を買う場面はこの劇のハイライトの一つと云うべきもので、この場面こそが『ロミオとジュリエット』に単なるメロドラマにとどまらない深みを与えているのだ。この劇を翻案するのにこの場面を省略してしまうというのは私には考えられないのだが、この名場面の価値をセリフ抜きで身体の所作だけで表現するというのは、確かにあまりに困難かも知れない。
音楽が好きでフィギュアスケートにも興味があるとなると、バレエにも当然関心があっていいはずなのだけど、これまでなぜかあまり食指が動かずにいた。でもこれから少しずつ学んでみるのもいいかな、と思い始めている。
コメント
お久しぶりです。
「ロメオとジュリエット」映画ではニーノ・ロータの音楽でオリビア・ハッセー主演が本命盤でしょう。
バレエはレベルが高すぎて諦めてしまった。(笑)でも、プロコフィエフは立派なロシア・バレエを製作し、魅せる演出ですね。数年前、CMで使われた「騎士たちの踊り」(全曲版インデックス)が記憶に新しいでしょうか。
「全曲版」はゲルギエフがベストですが、最近になって購入したアシュケナージもピアニストだからという酷評を覆す舞踏向けに作られ、ロシア指揮者の醍醐味が味わえます。演技上のパ・ド・ドゥ。曲中のヴァリアションは映像、音声共、全曲ならではの特権ですね。
-> eyes_1975さん
お久しぶりです。「モンタギュー家とキャピュレット家」はCMで有名になりましたね。音楽だけ聴いているよりバレエの伴奏として聴く方がずっと説得力があると感じました。録音は一枚も持っていないのですが、バレエのDVDが欲しくなってしまいました。^ ^