グランプリファイナル2010

2010年12月16日

女子シングル

例年女子はミスの多い試合になることが多かったのだけど、思いもかけないほどいい演技の続出で大いに興奮させられた。中でもアリッサ・シズニーさんはこれまでの数年間を考えれば信じられないほど安定した演技で、SP、フリーを通してダブルアクセルがステップアウトしただけの最小限のミスに抑えての見事な初優勝だった。シニアのグランプリシリーズに初参戦したシーズンに一目惚れして以来ずっと応援してきた身として感慨に堪えない。スピンやスパイラルのポジションの美しさは誰もが認めるところだったが、佐藤有香さんに師事してからジャンプの安定感が増し、スケーティングの質もさらに向上してきたように思う。もう長いことあの不安定なジャンプに泣かされてきたので、この安定感をはたしてどこまで信用していいのかは未だ半信半疑なところもあるのだが、ぜひこの調子でシーズン後半も活躍して欲しい。

カロリーナ・コストナーさんも優れた潜在能力を持ちながらジャンプの不安定さに泣かされてきた選手の一人だが、今シーズンは怪我のためにジャンプの難度を落とした構成にしていて、それが功を奏して銀メダルに輝いた。正直あのジャンプ構成で佳菜子ちゃんの上にくるというのは信じ難い気もするのだが、ルッツとフリップを欠いている点にさえ目を瞑れば最高に素晴らしい演技で、この人の魅力にあらためて開眼する思いだった。

村上佳菜子ちゃんも初出場での表彰台は素晴らしい快挙だった。特にトリプルトウループ–トリプルトウループのコンビネーションは見事な出来映えでGOEも高く評価されている。フリップがやや不安定なのが気がかりだが本来は得意なジャンプなのでそう心配しなくても大丈夫だと思う。

鈴木明子さんも十分に実力を発揮してくれたのだけど、わずかなミスで表彰台を逃す結果に。特にSPのステップでリンクの端から端までをしっかりと使わなかったためにレベル1と判定されてしまったのはもったいなかった。安藤美姫さんはSPで出遅れてしまったがフリーは素晴らしい演技だった。新しいSPはこれまで彼女が滑ってきたのとはタイプの異なるがとても素敵なプログラムなので、全日本ではより完成された演技を見せて欲しい。レイチェル・フラットさんは持ち前の安定感がなく不本意な結果に。体が重過ぎたのではないかという指摘もある。まあ彼女の場合は全米選手権に照準を合わせればいいというところもあるのかも知れないが。


男子シングル

チャン選手と織田選手というこれまで4回転ジャンプを(あまり)跳ばなかった選手達が率先してSPから4回転に挑んできているというのが非常に興味深い。パトリック・チャン選手はSPではアンダーローテーションの判定だったがフリーでは成功、フリーの中盤にいくつかミスがあったがそれを引きずらずに立て直したことで初の栄冠に輝いた。元々スケーティング技術には定評のある選手だけに、4回転ジャンプの成功率も高いとなると混戦の男子シングルの中でますます優位に立っていくことになるだろう。唯一死角といえるのがトリプルアクセルの不安定さで、今後はそのあたりが課題になっていくことだろう。

織田信成選手はSPでのコンビネーション・ジャンプが素晴らしかった。あれほど見事な4回転トウループ–トリプルトウループは滅多に見ることができないものだ。フリーではまたしても逆転を許してしまつたが、もっと自分の演技に自信を持って臨めばいい結果もついてくるはず。

小塚崇彦選手はインフルエンザ・ワクチンの影響もあったらしく実力を出し切れなかった。練習中の事故に責任を感じて終始冴えない表情だったのは気の毒だった。高橋大輔選手もめずらしく得意のステップでつまづくなどや精彩を欠いた。本人は否定しているけどあの衝突の影響はなかったはずはないと思う。この二人にとってはちょっと不運結果になってしまったけど、全日本選手権に向けて気持ちを切り替えて臨んで欲しい。

トマーシュ・ヴェルネル選手は4回転ジャンプを回避して完成度を高める戦術を採りながらミスが出てしまった。フロラン・アモディオ選手は彼なりに実力は発揮できたのだろうけど、世界のトップを争うにはまだ足りないものがあるということだと思う。この経験を糧に、さらなる飛躍を遂げて欲しい。

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コメント

シズニーさんが優勝したので、絶対に記事が出るはずと思って待ってましたよ!私もシズニーさんの優勝は嬉しいですし、それに佐藤さんが関わっていると言うのがさらに嬉しいです。ショートで良くてもフリーで崩れることが多いシズニーさんなのでハラハラしていましたが、ほぼミスのない演技でほっとしました。でも、そのわりに2位のコストナーさんとの点差がないのが気になりましたし、男女合わせて今回の順位に意義はありませんが、今に始まったことではありませんが、点数のつき方と言うのは不透明だなと感じた点はあります。それと、やはり例の衝突の件は、小塚君にとっても大ちゃんにとっても、やはり不幸なアクシデントであり、今回の結果に無関係ではないと思います。織田君にしても、他の2選手が不調で、言い方が悪いですがそれを出し抜いて優勝を取る!と言う風には思えず反ってプレッシャーになってしまったようで残念ですが。

続きです。きっと他の選手の調子が悪くてチャンス!って言うのではなく、みんなが全力を出し、その結果接戦になっていた方が良かったのかなと言うか。他の選手の分も自分が結果を出さなければと言うプレッシャーもあったと思いますが。いずれにしよファイナルの結果より世界選手権とオリンピックの結果が大事なので、今回の結果は気にせず頑張って欲しいです。

-> モモさん

お久しぶりです! シズニーさんの優勝うれしかったですね♪ コストナーさんの順位が佳菜子ちゃんの上にきたのは最初驚いたのですが、怪我を抱えながらも自分のできる最善を尽くしたことが幸運を引き寄せたのかも知れません。

男子は日本の選手が初めて優勝するチャンスだと思ったのですが、直前に不運な事故があったのは残念でした…。二人とも万全のコンディションで臨ませて上げたかったですね。まあでも織田選手も含めてこの経験を全日本以降の試合に生かして欲しいと思います。

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